まつばぎく/忍耐
ホワイトデーのお返しのシルバーリング。光流は想像以上に喜んでくれた。
いつも嬉しそうにリングを見つめる姿にドキドキしてしまう。
俺の愛しい人へのプロポーズ。
一度目のプロポーズは光流から。
二度目のプロポーズは俺から。
一度目のプロポーズは残念ながら記憶にないけど俺と光流を繋ぐ大切な約束。
二度目のプロポーズは光流の不安、いや、自分の不安を取り除く意味でも大事な証。
光流はもてる。
自分では感じないようだがかなりもてる。何人、闇に沈めてきたことか。
いつか光流に置いて行かれしまうんじゃないかって不安になる。
俺よりいつも先にいってしまう光流。
どんなに待っていてほしくてもどんどん先に行ってしまう・・・。
仕方ない、どうしようもないことだとわかっていても納得がいかなかった。
俺は子どもだ。光流にそばにずっとそばにいてほしい。
光流をしばるってわかっていても我慢ができなかった。
ごめんね、光流・・・俺、光流を手放すことなんて出来ないんだ。
幸せに、世界一幸せにするから許してね、光流。
「すみれ~、なにしてるの~?」
一人リビングで作業をしていると洗濯物を干し終わった母さんが声をかけてきた。
書きかけの紙から目をそらさず答える。
「将来設計。」
「将来設計?」
「そう、将来設計」
「なんでまた?」
なんでまたって聞かれても困るけど・・・とりあえず・・・
「母さん、うるさい。」
けれど、母さんはそんな言葉にはめげない。
そうでなければ、俺の親なんて出来ないが・・・。
「いいじゃない、気になるんだから~、どれどれ~」
母さんがテーブルの上から書きかけの将来設計を取り上げる。
まだ、途中だから早く続きを書きたいんだけど・・・。
すると、突然母さん読んでいた設計図から顔をあげた。
「・・・あんた」
「・・・なに?」
「22もしくは23歳に結婚って・・・早くない?」
「そう?」
早くないでしょう。大学卒業してるし。
ちょうどいいと思うけど。
「そうってあんた・・・その次の25~26歳には出世だって・・・」
「要領よくいけば、そのぐらいには出世できるはず」
母さんがあきれた顔で俺を見るが関係ない。
計画通りに進むとは思わないけど近い形にすることは可能だ。
早く、光流を俺の大切な人だとわからせないとどこから伏兵が現れるかわかったものじゃない。
この間の合コンであらかたつぶしたがお邪魔虫は次から次へと降ってわいてくる。
光流が魅力的なのは嬉しいが、お邪魔虫はいただけない。
密やかに(光流に)ばれないように抹殺しなければ・・・。
「すみれ・・・あんた黒いこと考えているわね・・・」
「・・・」
流石、俺の親。
「すみれの黒い笑顔なんて見慣れたわ。光流ちゃんの前ではあんなに可愛らしいのになぜ、それ以外は黒いのかしら。だいたい、昔から・・・・くどくどくどくどくど」
「・・・」
こうなった母さんは父さんにしか止められない。
黙ってやり過ごすか、どこかに逃げるか・・・
ふっと卓上カレンダーに目が留まった。
ちょうど明日は休みだし光流とデートに行きたいな・・・
ここ最近、光流忙しかったし二人っきりでどこか。
よし、光流を誘いに行こう。
まだ、くどくどと呟き自分の世界に入っている母さんを放置し、早速光流を誘いに隣の家へ。
「お邪魔しまーす」
「あら、いらっしゃい。すみれちゃん」
「お邪魔します。光流は部屋ですか?」
「えぇ、あの子ったら部屋の掃除するって張り切っていたけど、少し前から音がしないから疲れて寝ているんじゃないかしら?」
「起こしちゃって大丈夫ですか?」
「そろそろ、夕飯だしお願いできるかしら?」
光流はお母さん似なので未来の光流をみているみたいなので少し緊張する。
いつもにこにこしていてやさしい、けれど怒るときは怒るっていう感じの人だ。
さて、許可ももらったし光流を起こしにいくか。
『こんこん』
「光流?」
『こんこん』
「光流?入るよ~」
やっぱり光流は寝ていた。
とっても気持ちよさそうだけど夕飯も近いし、なにより明日のことも聞きたいのでゆっくり揺さぶる。
「ひかる」
「ひーかーる!」
「ひーかーるー!!」
「ひーかーるー!!!」
「光流!!」
名前を呼んでも目を覚まさない光流が心配になる。
諦めず何回も呼ぶと光流がやっと目を開ける。とっても眠そうだけど。
「名前呼んでも返事しないからびっくりしたよ~!・・・でさ、僕、今日ずっと考えてたんだけど・・・あの明日休みだし・・・で、デートとか・・・。」
ちょっと不安になって早口になる。
すると光流は、寝ぼけているのか首の背に手を伸ばすと引き寄せ口付けを落としてきた。
「・・・!?」
「おかえりなさい・・・。」
あ な た・・・。ぐー・・・。
「え!?、ちょ!?光流!?放置!?えぇ!?」
「ちょっ・・・まじ?!!光流~!!!!」
いったいなにがおきたんだー!!
次回は勇者をUP予定w