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第三話 運命の出会い



「だ、大丈夫ですか、、?、」



 先刻までの怒りと悔しさが塗れた意識の中、いきなり頭上から凛とした声が耳に入ってきた。

 怒りでいっぱいだったがその声を聞き、俺は渋々、屈んでいた顔をあげる。

 すると、そこには物凄く綺麗な女性がこちらの顔を眺め不安げな顔を浮かばせていた。


「あぁ、だ、大丈夫です。ちょっと絡まれちゃって、ハハッ」


 俺はいきなり声をかけられた事の驚きから、怒りが一時的に落ち着き、急いで喉の奥からつっかえた適当な言葉が口にでた。

 しかしさぞ、憎しみと怒りに支配されていた顔が彼女の一言でほろほろと怒りの感情ごと、崩れ落ちるような感覚した。

 なんで、いまこのタイミングで、こんな綺麗な人が声をかけてきているのか、頭が回らず理解ができない。

 ただ目の前に立つ彼女はまるで、天界の天使のような眩しさだった。俺は思わず息を呑む。

 いままででこれほど綺麗な人を見たことはあっただろうか、テレビで見る女優を比べてもむしろこの女性の方が綺麗じゃないのかと思わせる美貌。

 あまりにもの美しさに劣等感に塗れた俺にはそれがなお美しい陽光のように見えた。


「ほんとですか?え!鼻血出てるじゃないですか!大丈夫ですか、、?あ、これ使ってください。」


 彼女は怒りに支配されていた悪魔のような恐怖など意ともせず、俺に優しさを差し伸べてくれた。すると彼女はポケットからポケットティッシュを取り出し、俺に渡してくれる。


「歩けますか、、?誰にこんな、、大丈夫?」


 先刻まで自分中心にしかなかった思考が、俺は彼女のあまりにもの優しさに、俺は喧嘩を買った事すら情けなく思えてくる。


「ありがとうございます。ちょっとヤンキーにガンつけたら絡まれちゃって、、」


 彼女は不安げな顔をした。凄く美しい見惚れてしまう顔だった。というか見惚れていた。

 そんな事を思っていたら、地面に尻をついていた俺に手を差し伸べてくれた。


「えー、ダメですよ。そういうのは警察呼ばないと。」


 そんな風にいうと、手を差し伸べてくれたとき、彼女の髪からスッとラベンダーのような良い匂いが、口腔に入り込んでくる。

 あまりにも急に起こった出来事と、その匂いに俺の意識は心拍数と共に彼女をがっしりと捉えて離さなかった。

 ドクドクと脈打つ鼓動が耳の中で反響するのを感じる。俺はこんな綺麗な上に、天使の優しさを受けたことで、ドキッとし顔を赤くして彼女の顔を直視できなかった。


「ほ、ほんとですよね。ハハッ23にもなって情けない。」


「そんな事ないです。だけど、喧嘩なんてしちゃダメですよ。。」


 俺は脈打つ鼓動の中、更に恥ずかしさでいっぱいになる気がしたが、ここで目を逸らしながら話すのも失礼だと思って彼女の顔へと目を向けた。

 すると目の前には彼女の心配と不安げな顔があった。

 だが俺はそれとは裏腹に、彼女のきめ細かな白いマシュマロのような肌にくっきりと筋の通った鼻、とてもぱっちりとした大きな二重の目に、118カラットのダイヤや古の宝石にも引けを取らない煉瓦色に透けた綺麗な眼、時代が違えば傾国の美女とも呼べる美しい姿に呆気を取られてしまっていた。




「どうしました、、?」


 俺はふとあまりの綺麗さに呆気にとられていた意識が、彼女の声で意識を取り戻す。そしてすぐに会話を続けた。


「い、いえ。わざわざありがとうございます。なんで助けてくれたんですか。こんなの関わりたくないですよ。普通。」

 俺のふいに思った疑問を彼女は分からなかったのか、おかしそうに首を傾け俺の目を真っ直ぐ見てこう言う。


「えーと、人が困ってたからじゃないですか、、?普通に心配になったから声かけたんですよ。助けるのに理由なんてそんなにありません。それに見て見ぬ振りはしたくないから。」


 俺は自分のした質問に自責の念を感じた。俺にとって当たり前の事が、こんなにもちっぽけな事なのだろうかと、俺は自分にはそんなことが出来ないと思い、より自分との違いに引け目を感じた。


「そうかも、、しれないけど、そんな真っ直ぐに助けられるなんて凄いですね。俺にはそんな勇気ないです。」

 そういうと、彼女はクスッと笑う。


「そんなの勇気なら、あなたもあるじゃないですか。だってこの怪我喧嘩でしょ、?さっき、貴方の方向から3人くらい走って逃げてましたよ、、?」


 まさか、、見られてたのか、、


 あんか恥ずかしいところを、と思ったが、ここであたふたするのはダサすぎるから、俺は素直に負けを認めた。


「ハハッ、ボコボコにやられましたよ。しかもこんなダサいところ見られて笑恥ずかしいです」

 俺の恥ずかしくて目も当てられない形姿から、俺は自虐することで、自分を納得させる。

 しかし彼女はこっちをみて笑顔でこういった。


「ダサくたって、いいんですよ。私だってたまにカッコ悪いときだってあるし、気持ちはわかりますけど。」

 なんて優しいんだ、、、

 こんなにもダサい姿で地面にうずくまっていた俺にここまで優しくできるなんて、俺には到底できやしない。

 むしろ、ここまで優しい人も珍しいんじゃないか。そう思ったけど、俺はそれよりも素直に自身の感謝を彼女に伝える事にした。


「笑すごいな。。でも、こんな優しさに触れられて少し嬉しいです。これなら怪我してよかったのかも。」


 そういうと彼女は驚いた顔でこういう。


「えぇ、こんな怪我してまだそんな冗談言えるんですか、、?」


「事実です。笑」

 自然と、俺は彼女に対して好意を伝えていた。

 俺には不釣り合いかも知れないけれど、だけど、これほど優しい人はもう今後二度と現れない気がするから。

 だからこそ、真面目ぶった話はせず、すこしふざけてみせた。

 仲良くなれたらなんて烏滸がましいのかもしれない。

 だけれど、これほどの優しさと綺麗な人に受けた恩を返したくなった。

 そして、俺は彼女の名前が気になった。


「お名前、なんていうんですか?」


「え、名前ですか?

 水華。です。みんなからはたきみかって呼ばれてます。」


 突然聞いたからか少し彼女は驚いたがすぐに答えてくれた。なんせ人との関わりを経ってきたからか、距離の詰めかたがあんまりわからない。

 だけど俺は彼女の名前の響きに心地の良さとそれに綺麗だと感じた。

 しかし、俺は(たきみか??)とそれを聞いてニックネームの語源が気になる。


「なんでたきみかなんですか?」


「苗字が瓏瀬だから、たきみかです。」


 俺は思ったよりも端的な理由に、名付けた人の安直さを感じた。だけど、確かに名前がたきせみかなら、たきみかって呼ぶのもわかる。

 すると彼女もこちらを見て聞いてきた。


「お兄さんは名前なんて、いうんですか?」


 そう彼女も同じ質問をしてきた。

 だから俺はすぐに


「自分は玲。莇生玲です。」


そう自分の名前を答えた。


「凄いかっこいい名前ですね。れいさん?っていうんだ。」


 彼女がそう言ってきたことで俺は頬を赤くした。

 自分の名前を女性に呼ばれたのはいつぶりだろうか。

 長い間女性と関わっていないのもあったけれど、やはり抵抗がなくなっている気がする。

 だけど俺がそんなことを考えていると彼女は急に慌てた素振りを見せこう言ってきた。


「あ、やばい。すみません、!わたしそろそろ大学あるから帰らないと!」

 俺は彼女がつげた唐突の別れに引き止める訳にも行かず、運命の出会いはここで散るのだろうかと思った。

 ただこんな短時間で寂しいなと感じた俺は変だろうか。

 俺は急に迫った別れに内心で寂しさを露わにした。

 こんな気持ちになるのは久しぶりな気がする。


「あ、わざわざありがとうございます。助かりました。」

 俺は感謝を述べると共に、ここで終わるのかと焦燥を感じ始める。

 せめて連絡先でも聞きたいそう思った。

 だって、こんな出会いもうないかもしれない。いや、もうないだろう。

 だけど、俺は言葉にしようとも、ナンパなんてした事がないから胸がつっかえて、喉の手前で言葉が出てこない。

 ここで聞き逃したらもう二度と会えないかもしれない。

 そう思う気持ちが俺を焦燥へと駆り立てる。


「あ、あの!」


 俺は必死で振り絞って声が出た。

 何を言おうか、どう聞こうか、そんな事を考える余裕もなく俺は口にした。

 とても不恰好かもしれない、だけどこんなに綺麗な人ともし次があるなら、そう思う気持ちが俺の凝り固まっていた勇気を動かす。ここで終わりたくない。


「よかったら、もっと仲良くなりたいです。だから、連絡先!連絡先、交換しませんか!」


言ってしまった。。嫌われただろうか、こんな突然にいう男はチャラいと思わないだろうか。


 慣れない事をした反動か不安が俺を押し寄せる。

 そんな不安と共に俺は相手の次の言葉が何が返ってくるか不安で心臓が口から出そうになる。

 なんせこんなことは23年生きてきて初めてだった。だけど、相手の反応は俺の思っていたほど悪くは無かった。


「いい、ですよ?LINEでいいですか?インスタもやってるんですけど」


 俺はまさか交換できると思っていなかったからか、え、っと思わず声が出てしまう。こんなあっさりできるものなのかと自分を疑ってしまった。

 だが数刻もせず、交換できるという事実に気づいて俺は歓喜した。

 この短い時間で終わるはずの時間が、可能性という花が咲いたと思うと無性に嬉しくなった。

 俺はLINEと言おうと思ったが、日々の生活が見れるのかと思うと、インスタを聞きたくなった。

 だから俺はLINEとは言わずにインスタを聞く事にした。


「インスタにしませんか?あんまりLINE使わなくて」


 俺の適当な言い分に彼女は違和感持つ事なく「いいですよ?」といいインスタのQRコードを見せてくれたので、心踊る気分で読み取った。

 すると彼女の(たきみか)という名前のユーザーが出てきて俺は追加する。

 自分たちはお互いにフォローを通すと、彼女は時間がないため帰ろうとする。


「すみません!時間なくて、!よかったらまた連絡してください!基本暇なんでいつでも返せます!」


「わかりました!また連絡しますね。」


「はい!」


 彼女はそういうと長い髪を靡かせ、走って帰って行った。彼女の去り際を見て、俺は嬉しさと共に刹那の天使に見惚れ、姿が見えなくなるまで眺めていた。






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