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第19話 聖女と冒険者



 なんだろうか。口を出せるような雰囲気ではない。カイリ・シュバルツは真剣に遠くを見つめている。どうせシリアスなことでも考えているんだ。


 ……くそめんどくせぇ。だから、適当なことでも言っておこう。


「気張るな。それこそ遊び心が足りないだろ」


 そういうとカイリは笑う。声を出して笑う。


「ははっ! たしかにそうだね! 教えてもらったついでに教えてあげる。私があなたにこだわる理由はね。弟と同じ名前だからだよ」


 そういったカイリは大きく伸びをするとガーゴイルの焚き火から離れていった。それを機としてシャルが近寄ってくる。


「カイリさんと話してわかることありますか?」

「いいや。ただ、俺と同じ名前の弟がいるらしい」


 それ以上は言わない。俺の推測になるから。


 カイリには死んでしまった誰かの分まで生きる必要がある。誰かに何かをするまで死ぬわけにはいかない。


 それだけで予想は付く。誰かに大切な誰かを殺されて、その復讐のためにカイリは生きているのかもしれない。


 しかし、あくまで推測だ。推測で話すのは危うい。だから、話すのは憚られる。


 ……復讐のためだけの人生は虚しい気がする。でも、それを説得できるだけの経験がない。人に話すのに十分な経験がない。だから、カイリに話す資格なんてない。


「あなた、他に気がついたことありますよね? 何も話さずにいるつもりですか?」

「何にも気づいていねぇよ。事実しか話してねぇ」

「……本当ですか?」


 どんだけ信用ないんだよ、俺。ライフカードゼロですか? 選択肢なんてないっていうのか?


「勝手な推測で人を騙してしまう真似なんてしたくねぇからな」

「構いませんよ」

「何がだよ」

「私なら騙しても構いませんよ」


 ……何故? そう思い、逡巡する。


「わからん」

「そうですか。私はあなたが前置きしてくれれば考える余地があると思ってるんです」


 ああ、そうか。それぐらいには信用されているのか。俺は他人の信頼なんて信じてない。信じられない。だから、言葉にされなければわからない。


「そうかよ。別にカイリについては信用してもいいと思うぜ」

「そうですか。理由については話してくれますか?」

「別に構わないけど……面白いか?」

「面白いかではなく、納得できるかです」


 面白いのが会話とは限らない。つまらない話も会話か。しかし、できるなら楽しく会話したい。


「そうしたら、語尾にゲスでもつけて話すか」

「何故ですか?」

「面白いからでゲス」

「……」


 シャルからの視線が冷たい。しかし、挫けて負ける気はない。


「そうゲスね。まずは彼女は魔族に追われてたゲスよね。それが人間社会に入りたい理由だったゲス」

「……」

「それじゃあ、人間を裏切ることもあるかもゲスけど、どうやらサンドリア以外にも魔族の国があるらしいゲス」

「……その話し方をやめていただけませんか? イライラして内容が入ってきません」

「嫌でゲス」


 自ら進んで語尾にゲスを付けて話しているのだから止めるわけにはいかない。あ、待って。杖を振りかぶらないで。


「ゲスっ! でゲス……」


 結局、ぽかっと殴られ顔を地面に強打する。……威力が高すぎるんだよ。


 頭をさすりながら立ち上がる。


「もう言わないですか?」

「わかった。やめる。ゲス」

「最後のは罵倒ですか?」

「やめろ! 杖を掲げるな! 長物武器で攻撃したときの主な死因は脳挫傷だぞ!」

「……はぁ。やめますから話の続きをお願いします」


 ふっ、恐ろしい女(イケメン風)。爽やかに恐怖心を抱きながら真面目に話し始める。


「他の魔族の国があるって話したよな? どうやらそこからも狙われているらしい。それなのにカイリが『みんなの分まで生きなきゃ』と言った。意味不明だろ?」

「ええ、たしかにわかりませんね」

「だから、推測した」


 考えた。予想した。おそらくの結果を出した。あっているのかはわからない。


「まず、みんなっていうのは誰なのか」

「カイリさんの仲間ということですか?」

「そうだな。まずは仲間が思い当たる。“みんな”だから複数人だろう。その仲間って魔族だと思うか?」

「カイリさんが魔王の娘なのですから魔族では?」

「そうだよな。でも、カイリは魔族に追われているんだぞ」

「なるほど。そうすると魔族内でもカイリさんの派閥とそうでない派閥があるのですね。それでカイリさん派閥は追いやられている」


 シャルは話を解釈すると納得する。俺も同じ推測をしていた。


 魔王が倒されて、魔王の国はカイリ派とそれ以外に分かれた。その中でも過激な連中が連座を要求し、カイリ派は追われていった。この可能性は高い。


「でもな、『このまま死ぬ気はない。あいつを……』とか言ってたんだわ」

「それならば、何もおかしくないのではないですか? カイリさん派以外を許さないということではないですか?」

「それなら複数だろう。“あいつ”なんて単数を使う必要ないだろ」


 カイリはある特定の人物に対して恨むように遠くを睨んでいた。


「たぶん、カイリの仲間は死んで、その犯人をカイリは知っている。おそらく、犯人は一人というよりも統率者。チームを率いてカイリの仲間を死に追いやった。しかも、魔族からカイリが追われていることを考えると……」


 自分で話していてカイリの状況について芳しくないことに気が付く。


「国家規模の魔族を敵にしている……だと?」

「自分で言っておいて、何故疑問系なんですか」


 シャルが半目で俺を見ている。


 やめろ! そんな視線を向けるな! 新しい扉が開いちゃうだろ!


「ともかく、めんどうなことになったのは理解できたわ」

「……行動が軽率なんですよ」


 憎まれ口のようにシャルは言って、大きく息を吐いた。こういうときでも、なんやかんやでシャルは手伝ってくれる。

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