ミミズと骨と土
「うぉっはよー!!元気してた?」
早朝、空は雲は一つも無い快晴。
生徒、教官達は都市の城壁の入り口付近の外側で馬車と共に集まっている。
ウィル「おはようございます……。」
「あれ、元気ないじゃん?どしたん、はなしきこか?」
「寝不足です。昨日あまり寝付けなくて。
というかローズさんここB組のところですよ」
ローズ 彼女はレイズの友人である。
少し変わった人であるが、
彼女の特徴はなんといっても都市ローダと名前が似ていることだ。ややこしい
「わーってるって、いや、ほら、あれだよ、"会いに来ちゃった"ってやつ」
「用があってここに来た訳じゃないんですか?」
「用っていうか、ほら、あそこにレイズいるの分かる?」
ローズが指を指した方向にはレイズと男子生徒二人が集まっている。
「あれは、……」
「あれ、順位トップ3が集まってんの。特にあの細目のやつ、順位2番なんだけど、あいつにどうも慣れなくてさぁ」
レイズと集まっている二人のうち一人は薄目の見馴れない顔つきをしている。
そしてもう一人は
「あれは、…」(あの人は、試験でレイズ君の次に試合をした人!!あのとき、倒れてる僕をめちゃくちゃ怖い目付きで見てきたんだ、あぁ嫌な思い出)
「そんなわけで、ここに避難してきたってわけ、んじゃ深い理由も語ったし、他の友達の方行くわ」
「ん、あ、はい、それじゃぁ」
「おーいマリー!って君も寝不ー……
離れていく彼女の声が小さくなって聞こえなくなった。
(とゆうか、あの人すごい人だったんだ。)
ざわざわ……
向こうが少し騒がしくなった。
「団長だ!!」
(団長?)
「しかも、団長のとなりにいるのはあの四権騎士の一人、グローザルじゃないか!?」
奥から見えてきたのは髪がない白ひげのやつれたおじいちゃんと全体的に黒い服装をした大柄の男の二人だ。
黒い服装男「今日は無理をなされなくともよかったのですよ団長」
おじいちゃん「何を言っておる、ワシは今元気いっぱいじゃぞ?」
(あんなおじいちゃんが団長?体大丈夫なの?)
ざわざわ
空気が変わった。そろそろ時間が来たようだ。
教官「よし!全員集まっているな!!」
生徒達の前に出て何やら話している
教官「今日集まってもらったのは他でもない、野外実習に参加してもらうためだ!」
「実施内容は"閉暗所での魔物の対処"つまりダンジョンに潜り、魔物を倒してもらう!」
「ダンジョン!?」 ざわざわ
ざわざわ 「まじかよ」
「入って大丈夫なの?」
「宝あるかな」
ざわざわ
「ここから馬車で西ローダ ゲンテル地域の騎士団が管理している攻略済みのダンジョンに向かう」
「攻略済みか~」
「宝ないな」
「時間だ!さっさと馬車に乗れ!」
皆が続々と馬車の荷台に乗っていく。
(ダンジョンか~、僕の村にもちっちゃいのがあったけど、怖くて結局入ることできなかったな。
前々からこういうの憧れてたから楽しみだな)
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その後、馬車で移動中、荷台の中にはウィル達がいる。
ガタガタ
トレイス「なぁ、みんな、実はこの近くには廃村があるんだけど、なんでその村が廃村になったと思う?」
ヒュート「疫病が流行ったとか?」
「そうゆうのじゃない」
ラミル「若者が都市に流れて限界集落になったから廃れた」
「なんでそんな現実的なの」
ヒュート「ほら、ウィルの意見は?」
ウィル「え、……えっと、みんな魔物に殺されたとか?」
「ちがう!そうゆう暗い現実的なのじゃない!」
ラミル「せいかいはー?」
トレイス「村人全員が突然消えたんだ!ひゃーこわー」
ヒュート「ウィルのが正解っぽいね」
ラミル「骨まで食べちゃったのかな」
トレイス「おい、消えたんだって、もっとロマン持とうぜ!ほら、国の実験で~とか、謎の組織が~とか」
ケイグリック「おい、みんな」
トレイスの話を遮って彼が言った。
トレイス「なに?もしかしてケーズも興味ある?」
ケイグリック「違う、お前らなんも感じないのか?あと俺の名前はケイグリックだ」
ヒュート「分かってるって、ていうか君ってそんなに感覚鋭かったんだ」
トレイス「はぁ、まじかよ、俺の気のせいだと思いたかった」
「?どうしたのみんな?なんの話?」
ヒーン(馬の鳴き声)
ガタ ガタ
ガタガタ
周りの馬車が次々に停止した。
「え、なになに」
教官らしき人が立ち上がり
「生徒の安全が第一だ!騎士は武器を持て!来る敵を処理しろ!」
ゴゴゴゴゴ
地面から馬車の荷台に振動が伝わってくる。
(うそ、地震!?)
ゴゴゴゴゴ
ヒュート「ここ離れた方が良さそうだね」
ゴゴゴゴゴ
彼がそういうと乗っていた皆か馬車から降りて、距離を取った。
ゴゴゴゴゴ
ウィル「え!?みんな!?」
ケイグリック「どうしたウィル?離れた方が良いぞ」
ヒュート「そうだよーなんてったって下からだからね」
「下!?」
(え、うそ)
ゴゴゴゴゴ
揺れの音が大きくなった。
「やばい、離れなく
ドォン!!
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地面から大樹の根のような巨大なミミズが飛び出した。
ヒュート「あれ?ウィル吹っ飛んでない?」
20メートル、いや、もっと高い
彼は先程の衝撃によりどこかに飛んでいっている。
ヒュュュュ~~
「うそ!!ちょっと!やばい!!」
(なんでこんな高さに!?嘘でしょ!死ぬってこの高さは!)
米粒ほどに小さく見えたヒュートが大声でこう言った。
「ウィルー!!とりあえず魔法で衝撃防げー!」
ヒュート「ふぅ今年一番の大声出したわ。さて、どうする?」
ラミル「僕らは生徒なんだから、強い騎士待つでしょ」
トレイス「でもよー出てきたの、このでかミミズだけじゃないぜ、しかもミミズもこの一匹だけじゃないし」
ドォン! ドォン! ドォン
ドォン!! ドォン!
再びいたるところでミミズが飛び出した。
ミミズが飛び出たところの穴から大勢の動く骸骨が這い出てきた。
ヒュート「このスケルトン、トレイスが言ってた村人じゃない?」
トレイス「違うだろ、戦争で死んだ兵士とかだろ、ここ戦地だったし」
ケイグリック「とりあえず、ミミズは騎士に任せてこのスケルトンの数を減らすでいいよな」
ヒュート「そうだね」
トレイス「よっしゃ!」
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ヒュュュュ~~~ー
(もう地面が目の前に!とりあえず、落下の衝撃を防がないと!)
キキキキィ
体を包み込むように球体の骨を出した。
ドォン
………
「はぁッ!痛っつた!」
地面にめり込んだ球体の骨から出てきた。
(骨の中でおもいっきり打ちつけられた……)
ふと周りを見ると
先程まで開けた場所で馬車に乗っていたはずが、打って変わって森に入ってしまった。
「たぶん、飛んできた方向はあっちだな、みんなと合流しなきゃ」
泥に手をつけ立ち上がった。
グチャ グチャ
グチャ グチ
昨日の雨でぬかるんだ地面が足に吸い付く。
しばらく歩くと木々が倒れて、地面がえぐれている場所に出た。
(うわ、土砂崩れか?昨日結構降ったしな)
ウィルは一瞬そこをわたるのを躊躇った。
(ここを歩くのは怖いけど、さっさとみんなのところに行かないと)
グザッ
土砂に足を入れたとき、
ガバァ!!
地面からスケルトンの手がウィルの足を掴んだ。
「うわぁ!なに!?」
捕まれた足をあわてて振りほどいた。
ドサッ
振りほどいたときにしりもちをついてしまった。
そして手が空になってしまったスケルトンは、
ゆっくり地面から這い出た。
驚いたことに首がない骸骨だ。
(やば、スケルトンだ!……でも相手は一人、魔法のリーチを利用して近づかせずに倒そう!)
ウィルはサッと杖を取り出した。
……よし、いくぞ…
(食らえ!飛骨!!レイズ君のオマージュだ!)
自分の頭上に小さめの岩ぐらいの骨の塊を出し
ズォ!!
おもいっきり骸骨に飛ばした。
ガシャン
貧弱な骨の体では無理があったのだろう、一瞬にして関節がバラバラになった。
「よし!見たか!これが成長した僕の
ガバァ バァ
ガバッ ガバッ
ガバァ ガバァ
複数の骸骨が地面から這い出てきた。
驚くべき事、全員首なし。
(…………いや、大丈夫!このぐらい楽勝
ガァシッ!
不意を突かれた。背後から骸骨が肩を掴んできた。
………
「ギャアァァァァァ!!」
手を上げて驚いた。
ダダダ!!
パニックになって走り出した。
夢中で走った。気づいたときには骨の気配はなくなっていた。
アアアアアアア!!アアアアア!アァ!
はぁはぁはぁ……はぁ……はあ、スゥ~!(息を吸う音)
はぁ!!(大きな溜め息)
(早くみんなの元に戻ろう)
そうして歩いていると。
「これは……村…?」
古びた人工物を見かけた。
所々壊れた木でできたそれは小さな村の入り口で、自分の村でもそういったものはある。
気になって少し入ってみることにした。
入り口を進むと村の中が明らかになった。
地面にはレンガがしかれて、建物もレンガでできている。
カー カー カラスが沢山いるのが分かる。
(人の気配がない……廃村……なのかな…そういえばトレイス君が廃村があるって言ってたな)
ある程度進むと村の中心と思われる場所に出た。
カー カー
そこには水が流れていない噴水、欠けたベンチ、点いていない街灯があり、いわゆる廃れた広場といったものだ。
しかし、その中で異様なものがあった。
(なにこれ……)
カー
その中央には、複数の血まみれの椅子が向かい合って円を囲むように置いてあった。
カラスは椅子をつついている。
(うわぁ~これ、血?)
よく見るために近づいた。
椅子のサークルの中にもう一つ椅子があった。
よく見るとその椅子だけは血がついていなかった。
(不気味だ、怖)
カーカー カー いてっ カー
カーカー カー やめろよ!
(!?誰かいるの!?)
カラスの鳴き声の中から人の声が聞こえた。
カーカー カー
気になって辺りを見回すと、カラスがたかっているのが見えた。
恐る恐る近づく。
バサッバサバサバサバサ
ある程度近づいたところでカラス達が数匹を残して飛び去った。
カラスがコンコンとそれをつつく。
「おい!いい加減にしろ!やめろよ!」
「え!?」
そこには頭蓋骨だけのスケルトンがカラスにつつかれている姿があった。
その事にも驚きはしたが、もっと驚くべき事にそれははっきりと喋っている。
「が、あ……ぁ(驚き)」
ドサッ 思わずしりをついた。
バサバサ
その音で残っていたカラスが去った。
……あ
頭蓋骨「ん?」 こっちに気づいた。
頭蓋骨「おぉ!よかった!ちょっとお前、俺のこと運んでくれねぇか」
あ………あ…
「おい、どーした?」
………
「骸骨が喋っちゃ変か?」
…………はい…、
「……そうか……まぁ別に危害加えようってんじゃない、俺をあるとこまで運んでいってほしいんだ。ほら、見た通り俺は歩けねぇからよ」
ウィル「それは別にいいんですけど……」
頭蓋骨「なんかあんのか?」
ウィル「いや、今実技演習、ていうか、野外授業っていうか……」
頭蓋骨「お前、学生か!ってことはつまりもしかしてローダ騎士育成所か?」
(昔の学校の名前を……)「はい…」
「ならよかった!実はいきたい場所は学校の近くなんだ!ならよそれが終るまで待っとくからよ俺を連れてってくれ」
………「え」
「いや、だからよ、俺を連れてってくれ」
………「あ、いやです」
………
「……え!?いやお願いだって!そのカバンの中に入れてくれればいいんだよ!」
……んー
「いやだって君を持ってるのがみんなにばれたら…
~~~~~~~~~~頭の中~~~~~~~~~~
生徒A「なにお前、こんなの持ってるの!」
生徒B「骸骨じゃん!趣味悪~」
生徒C「殺したやつの頭か?それ」
ウィル「いやあの
全員「かっえれ! かっえれ! かっえれ!
うわぁぁぁぁぁあ!!
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ってなるかもですし」
「そゆうこと?俺が喋る骸骨だからみんな怖がるってことじゃねぇんだ」
「じゃ僕、急がないといけないんでご達者で」
ウィルはその場を後にして去ろうとしたとき、
「おい、行っても意味ないと思うぜ」
歩きかけた足を止めた。
「え」(どういうこと?)
「あそこにいるのは巨大な魔獣と魔物が沢山いる、小さな旅団なら一瞬で壊滅だろう。だが、あれは勝つさ、騎士団なんだろあれ、到底お前が行っても結果は変わらない、だからもうちょっと俺の話を聞いてけ」
(なんで、みんなのことが分かるんだ……?)
骸骨の真っ黒い目が一瞬光ったような気がした。
「お前弱いだろ」
「…はい……?」
「劣等感に苛まれていつも辛いだろ、あの人にはなれない、自分はみっともないって」
「……はい…」
「強くなりたいだろ」
「……」彼をじっと見る。
骸骨は一瞬上から目線になった
「俺が教えてやるよ、剣も、魔法も」
不安そうな目で見つめた。
「今はこんな成りだが、生きてた頃は戦士だったんだ」
………
しかたない……
ここまで言ってくれて置いてくのは可哀想だったので、連れてくことにした。
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山に囲まれた平地には馬車と生徒と騎士団そしてそれを襲う複数の巨大なミミズ、そして大勢のスケルトンがいる。
後方の少しばかり豪華な馬車がある、そこから男が降りて言った。
グローザル「私が団長をお守りします。他の者は生徒達を!!」
団長「ホッホッホッ、わしは大丈夫じゃよ、それよりはあっちを守れ」
馬車に乗ったおじいちゃんが言ったことを男は少し考え込んだ。
グローザル「……了解しました」
団長「そういえば、久しぶりに"あれ"が見たいのぉ」
男は片膝をつき、頭を下ろすと
ボォア
と黒い霧となって霧散した。
ゴゴゴゴゴ
ボォン!
おじいちゃんの乗っている馬車の近くから、巨大ミミズが飛び出た。
ミミズ「ききいぃぃぃぃぃ!!アアアアアアア!」
「ホッホッ、耕す場所を間違えたな……糸虫め」
ボッ(発火する音)
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山の中でウィルは両手で頭蓋骨を抱えて歩いている。
骸骨「ところでよぉ、野外授業ってどんな内容なんだ?」
ウィル「何か、騎士団が管理してるダンジョンに入るって言ってましたよ」
「ダンジョン!いいなぁ~、ロマンの塊だからなぁ。あ、知ってるか?ダンジョンってのはもともと金持ちとか、兵士達の墓場なんだぜ」
「……へ~」
「そんなんだからよ、当たりのダンジョン引いたら高価な掘り出し物がジャンジャン出てくるんだ」
「はえ~」(凄いしゃべるな)
廃村を出て、しばらく歩いた。
もうそろそろ皆が見えてもいいはずだ。
しかし周りは木々で埋め尽くされ、先の方も森が続いている。
(こんなに、離れてたっけ……もしかして道間違えた?)
「ごめん、道間違えたかもしれない」
足を上げる度に地面が足を引っ張ってくる。
「いや、間違ってないぜ、確かに向こうにいる」
………「なんで分かるの?」
「俺は目がいいんだ」
……「そう」
「あと残念なお知らせだが、こっちに向かってくるやつがいる」
「…?…!もしかして皆!」
「お前んとこのお仲間さんは地面を泳ぐのか?」
ゴゴゴゴ
え
ゴゴゴゴゴ
まってまさか
ドォン!!
地面からミミズが飛び出す。
その衝撃で周りの木々は倒れ、土が盛り上がった。
ウィルは腰が抜けて地面に座り込んでいる。
彼が持っていた骸骨は少し離れたところに落ちた。
「あ………やばい」
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