王女とエンジニアの恋物語
コペルニクス王国物語 激動編
〜王女とエンジニアの恋物語 日常の日々〜
二〇五五年八月三十日八時三十分
A二〇一がサラの診察と右肩と腕の処置を行った。サラは。ぼっとしていたがA二〇一の一言で目を覚ました。
「サラサマ。フクブカラ。シンオンガキコエマスノデ。イチドサンフジンカ二イクコトヲオススメシマス」
「腹部から心音ですか?」
「マダ。オトガチイサイデスノデハッキリトシマセンガ。ワタクシノヨソウデハ。サンシュウメカトオモイマス」
「えっ。私。妊娠している?えっ………………」
サラは。自分が妊娠していることに驚き動揺したが、一人で悩んでいても仕方がないので。とりあえずクレマに相談することにした。サラは恐る恐るクレマに妊娠していて三週目ではないかとA二〇一に伝えられたことを報告した。クレマは笑顔でおめでとう。サラがお母さんになるのねと喜んでくれた。サラはものすごく怒られると思っていたので、クレマが喜んでいるのをあっけに取られて見ていた。
「マーガレット」
「はい。奥様お呼びですか?」
「サラと一緒にシャルム総合病院の産婦人科に行ってもらえますか?」
「えっ。奥様。お嬢様と産婦人科ですか?」
「そうよ。病院には私から連絡入れておくので。お願いしときます」
「はい。わかりました。お嬢様お着替えになって。病院に行きましょうか?」
「あっ。はい」
「お嬢様大丈夫ですか?今は落ち着いて大丈夫ですが。お母様が喜んでくれているのにすごく違和感があって」
「確かにそう思いますが。今は何も考えずにご自分の事だけ考えてください」
「分かりました。マーガレット迷惑かけると思うけどよろしくお願いします」
「お嬢様。私にはお気遣いは無用ですので」
「はい。わかりました」
マーガレットは。サラを車に乗せ。シャルム総合病院に向かった。病院に着くとティモルが入り口で待っていて。産婦人科へ案内した。待合所でサラは自分でどうしていいのかわからず下を向いてじっとしていた。診察室に入り先生に妊娠を伝えられた。
「サラさん。三週目と言われた。とりあえずおめでとう。A二〇一が伝えなければ。普通三週目で妊娠を発見できないと思います。今は。妊娠している自覚がないと思いますし。まだ胎児が成長するかわからない時期なので様子を見ましょうか?」
「はい。わかりました」
妊娠三週目と言われたが、ほとんど放心状態でマーガレットとティモルが説明を聞いていた。ティモルはサラが妊娠したことをヒロに伝えようかと言ってくれたが、サラは。ヒロには後日、自分で伝えると言った。マーガレットは。サラを連れてお屋敷戻りクレマに妊娠一か月で三週目と産婦人科の先生から言われたことを伝えた。クレマはサラに安静にするように伝え、マーガレットに部屋に連れて行って着替えさせて休ませるように伝えた。その日の夜。クレマとティモルの間で出産までの費用と子供の籍をどうするのか話し合い出産まではティフォリア家が、出産後の育児費はアガパンサス家が持ち子供の籍に関してはヒロとサラで決めてもらうことで話がまとまった。ティモルはヒロがサラさんを妊娠させてしまったことを謝罪したが、クレマは、逆に孫の顔が見せられると言って喜んでいた。ティモルもそれには納得してしまい無事に子供が生まれることを願った。
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二〇五五年九月一日七時三十分
妹のマリーと一緒に、フラワーパーク前のバス停でシャルム駅行きのバスを待っていた。
「お兄ちゃんが私と同じバスに乗るなんて。どうしたの?もしかして。駅でサラさんと持ち合わせですか?」
「そうだよ。今日からサラと同じ電車に乗るからこのバスになった」
「じゃ駅でサラさんに会えるかな?」
「それはわからない。乗る電車はマリーが乗る一本後の電車だから?」
「え〜っ。同じ電車じゃないのだ。つまんない」
「しょうがないだろ。授業の始まる時間が違うのだから」
ヒロはマリーとバスに乗り駅に着いた。マリーは電車の時間があるので。バスを降りたらすぐ駅の改札に向かった。ヒロは改札に向かう階段の横でサラが来るのを待っていた。
「ヒロ君。おはよう」
「シィーナさんおはようございます」
「彼女待っているの?」
「はい。」
「問題なければ。私も一緒に待っていい」
「多分大丈夫ですので。いいですけど」
「ありがとう。彼女が来たらオジャマムシは退散しますので」
「あっ。はい」
サラは。マーガレットさんの車で駅まで送ってもらっていた。駅に着くと階段の横にいるヒロを見つけ駆け寄ってきた。
「ヒロさん。遅くなってごめんなさい」
「時間は大丈夫だけど。走ったら危ないよ」
サラは。少し不思議そうな顔をして。
「あっ。そうだね。どころで。隣の女性は?」
「バイト先の一学年上のシィーナ?」
「シィーナ・マスタングと言います。ヒロ君の彼女を見たくて一緒に待っていました。サラさんびっくりさせてごめんなさいね。お邪魔虫は退散します」
「シィーナさん。今度お会いしたらヒロの秘密教えてください」
「了解。バイト先での失敗の数々暴露しますよ」
「お願いします」
サラとシィーナは手を振って別れた。
「私たちも行きましょうか?」
「そうだね。サラさん。誰とでも合わせられるのだね」
「そうでもないよ。ヒロがシィーナさんの名前を完璧に答えていたら状況は違ったかも」
「サラ。朝から脅さないでくれよ」
「仕方ないでしょう。連絡もなしに。朝からきれいな女性の人と横並びでいたら。少しいい気はしないと思うのですけど」
「そうだね。今度から前もって連絡します」
「お願いします」
「サラ。体調は大丈夫なの?」
「うん。今日は大丈夫なのかな?ヒロと初めての通学ですから。だから朝からいい感じでいつもより、気合入ってしまってセットするのに時間かけすぎてしまって遅くなってしまった」
「!大学行くとき。いつもこのぐらいなのかなと。見ていたけれど。そうではなかったの?」
「そうね。いつもはここまでしないかな?」
「電車が来た。そういえばヒロはいつもどの列車にのっているの?」
「この電車ではなく。二つ後の電車に乗っている」
「二つ後の電車?だから。二年半会ったことなかったのね」
「それもあるけど一番の要因は。僕が女性に対して興味をあまり持っていなかった」
「なるほど。アリリアさんもいたしね」
「うん。それもあるかな」
ヒロとサラは電車に乗り。急行で一駅の学園南口駅で降車した。改札を出て西階段を降りた。本来ヒロは東階段を降りて大学に行くのにサラと一緒にいる時間を長くするため、西階段を使った。
「ヒロごめんね。わざわざ遠回りさせてしまって」
「大丈夫だよ。ひと電車早いのにも乗っているし」
「ありがとう。行ってきます」
「行ってらっしゃい」
サラは。ヒロに妊娠したことを伝えきれなかった。
二人は手を振って それぞれの大学に向かった。
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ヒロとサラが一緒に通学を初めて一週間。サラが重い口を開いた。
「ヒロさん。黙っていたけど。私。妊娠しているの?」
「!えっ。サラさん。きつい冗談は…………」
「冗談ではなくて、今。妊娠五週目」
「…………」
ヒロは放心状態のまま大学に向かった。
翌日。ヒロは終始無言だったが、駅を降りて大学に向かう前に(十六時にここで待っておいてください)と伝えて大学へ向かった。十六時に学園南口で待っていると。ヒロが来て話始めた。
「サラさん。今からお屋敷に行ってもいいですか?」
「お屋敷に来られるのですか?」
「うん。国王様とクレマ様にお話をしたくて」
「分かりました。お母様に連絡してみます」
サラがクレマに電話をして。ヒロがお会いしたいことを伝えたら。(いいですよ)と返事が返ってきた。二人は駅までマーガレットに迎えに来てもらい、お屋敷に向かった。お屋敷到着すると。応接室でクレマが待っていた。ヒロは。応接室に入ると。ひざまずいた。
「クレマ様。大変申し訳ございません。僕は大変なことをしてしまいました」
「ヒロさん。何のことでしょうか?」
「サラ王女を妊娠させてしまったので。ほんとにすいません」
「その事ですか?サラから誘ったのでしょう。ヒロさんにお世話になり。お礼が出来る事はご奉仕しかないと思い。体を許したとお聞きしましたが。ですから別にヒロさんが謝らなくてもいいのですが。それより。これからどうするか考えないといけませんね」
「僕が。気を付けて避妊しなかったのに責任があります」
「ヒロさん。できてしまったことを悔やむより。これからどうするか考えてください」
「一つお聞きしてもよろしいですか」
「何でしょうか」
「サラ王女に僕の子供を産んで頂いてもいいのでしょうか?」
「ヒロさん。それは私に聞かれても困ります。産むか産まないかはサラの判断ですので」
「サラ。ヒロさんが子供を産んでもらっていいのでしょうかと聞いていますけど。どうされます」
「ヒロさん。産んでもいいのですか?」
「!サラさん。僕の子供でよければ」
「ありがとう。お母様。ヒロさんの子供産んでもいいですか?」
「サラ。あなたが生みたいのであれば私は反対しませんが。今後どうするかを考えないといけませんね」
「お母様。ありがとうございます」
「クレマ様。ありがとうございます」
二人は、サラの部屋に行き、少し話をした。
「サラさん。本当にごめんね。僕が安易に考え。行動したからこんなことになってしまって。申し訳ないです」
「ううん。もともと私から誘ったのだし全然気にしなくていいよ。それに。理由はわからないけど。お父様やお母様が喜んでいるので」
「サラ。順番逆で申し訳ないけど。僕と結婚してください」
「!えっ」
「僕は。サラと人生を共に生きたいし。サラに未婚の母になってほしくない」
サラは少し考えたが。ヒロの考えを尊重することにした。
「ヒロさん。ありがとう。私でよければお願いします」
「サラありがとう。今度婚約指輪買ってきとくね」
「ヒロさん。婚約指輪はこれで十分です」
サラはヒロに左手薬指にしている。ラピスラズリの指輪を見せた。
「サラさん。分かりました。出世したらいいのを買うので。それまでということで。お願いしておきます」
「はい。今はこれで十分です」
ヒロは話が終わると、自宅に戻った。ヒロは。ティモルにサラの妊娠の話をした。
「母さん」
「どうしたの。改まって」
「実は。サラさんの事なのだけど」
「サラさんが妊娠した事かい?」
「母さん知っていたの。知っていたというより。クレマから連絡を受けて。産婦人科の予約を取ったのは私だから」
「………………」
「今後の事は。クレマと話しているから気にしなくてもいいけど。サラさんには気を使ってあげるように」
「はい。わかりました」
ヒロは。自分が知らない間に親同士で話しが進んでいることでショックを受けた。
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二〇五五年九月十一日十九時
サラがマーガレットに送ってもらいヒロの自宅に来た。サラは。アガパンサス家の人に妊娠の報告とヒロと入籍をすることを伝えた。入籍日は。後日報告することを伝えた。
話を終えたサラは。ヒロに時間を計ってもらいながらプレゼンの練習をした。
ティモルがお風呂どうすると聞いてこられたので。サラはティモルと一緒に入ってもいいですかと尋ねたらいいよと言われたので一緒に入った。サラは着替えを持ってきていなかったが以前来た時のが。残っていたのでそれを着た。ネグリジェの変わりはヒロにパジャマを借りた。サラが部屋に戻るとヒロがお風呂に入った。お腹が冷えるといけないのでベッドで横になっていたらいつの間にか寝てしまった。ヒロは部屋に戻るとサラが寝ていたので床に布団を引き床に就いた。
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二〇五五年九月十二日七時
A二〇一がサラのけがの処置をしに来た。サラは処置している間も、寝たままで起きなかったので。A二〇一は。ヒロに左太もものけがは完治していることを伝え。来週ぐらいにプレートを外す事を伝え帰っていった。
ヒロは。サラを起こしていいものか。どうかわからなかったのでティモルに相談しに一階に降りた。
「母さん。サラを起こしていいものかどうか迷っているのだけど、どうしたらいいですか」
「そうだね。ほんとは。起きるまでそっとしておくのがいいのだけれど。今でどのくらい寝ている感じかな」
「僕がお風呂からあがって部屋に戻ると寝ていたので、今で十時間ぐらい寝ている感じ」
「十時間。そのくらい寝ているのだったら、一度起こしてみて。サラさんに様態を聞いてみてから判断してみたら」
「分かった。母さんありがとう」
「ヒロ。あんまり無理はさせないようにね」
「うん。そうする」
ヒロは部屋に戻り。サラを起こしてみた。
「うんん。あっ。ヒロさん。おはようございます」
「おはよう。調子どんな感じ」
「少しだるくて眠い」
「分かった。も少し寝ていたらいいよ」
「うん」
ヒロは。サラをもう少し寝かせることにして。一階に降りてティモルに話した。
「母さん起こしてみたけど。少しだるくて眠いと言っていたのだけど。今日の外出控えたほうがいいかな?」
「遠出は避けたほうがいいかも。でもずっと寝かすのではなく。少しは歩かせないと足腰が弱るからね」
「やっぱり夜のレストランの予約キャンセルしようかな?」
「そこまでしなくてもまだ大丈夫だと思うし。それにサラさん。楽しみにしているのでしょう」
「お母さん行ってきます」
「いってらっしゃい」
アキレアが仕事に出かけた。
「私もそろそろ行く用意しようかな」
ヒロは部屋の戻り、大学の課題を始めた。しばらくしてサラが起きてきた。
「ヒロ。朝食とりました?」
「まだだよ。一緒に食べる?」
「うん。着替えるから待っていて」
「分かった」
「ヒロ。母さん仕事行くから。あとよろしく」
「ティモルさん。おはようございます」
「あら。サラさん起きたの?大丈夫?」
「はい。気分もいいので大丈夫だと思います」
「あまり無理しないように。私は行くね」
「ありがとうございます。行ってらっしゃいませ」
ティモルは仕事に出かけた。ヒロとサラは一階に降り朝食を頂いた。
「ティモルさんの朝食一か月ぶりかな。やっぱりおいしい」
「母さんに。サラがおいしいって喜んでいたって伝えとくよ」
「お願いしておきます」
「ヒロさん。今日どこに連れて行ってくれるのですか?」
「トゥーナ島に行ってマグロの養殖場の見学とレジャー施設があるから遊んでからシャルムに戻って。六時に予約しているレストランで食事をして帰る予定ですが」
「はい。わかりました。九時ぐらいに出ましょうか?」
「サラさん。大丈夫?大丈夫でなくなったら。ヒロにお姫様抱っこしてもらいますので」
「分かりました。九時に出ましょうか?」
「はい。よろしくお願いします」
ヒロとサラは九時に家を出て。シャルム港に行きトゥーナ島行きの船に、乗船した。ちょうど高速船の船に乗れたので四十五分でトゥーナ島の玄関の人工島に到着した。ここから。本島へは。リニア鉄道に乗り場向かう。
「ヒロさん。フェリーは何故。直接。島に接岸しないのですか?」
「サラさん。列車に乗ればわかります」
二人は三両編成の列車に乗りサラは海面を見た。
「!ヒロさん。もしかして。海中を泳いでいるの。マグロですか?」
「そうですが。泳いでいるのはマグロだけではありませんけど」
「どういう事でしょうか?」
「実は。マグロの餌となるイワシ・アジ等も泳いでいます。ペッティーナ島でマグロの餌をなる魚を養殖しています」
「そうなのですね」
「ここは。世界で初の自然に近い形でのマグロの養殖を行っています。それで島の外遊五キロの場所に柵を作り外部と遮断しています。
列車は。五分程で島に着いた。
「ヒロさん。トゥーナ島に来たことあるのですか?」
「うん。大学一年の時、夏休みにサークルのメンバーで来たことがあるのだ」
「そうなのですね。私まさか。人工島から島までの五キロが養殖場になっているとは思わなくてびっくりしました」
「そうですよね。島の周りが養殖場になっていますから。多分世界を見ても。ここだけだと思います」
「もしかして。ここも父が手掛けたのですか」
「そうです。ここに詳しい人に聞くと。十五年前に。プロジェクトを立ち上げ。当初五年間は苦戦の連続だったそうです。はじめは三種類のマグロを飼育していたのですが。最終的には。クロマグロという品種だけになり。軌道に乗るまで七年の月日がかかったそうです」
「なぜそこまでかかってしまったのですか?」
「当初の立ち上げメンバーがマグロの生態に詳しくなかったのが。最大の原因だと言われています」
「マグロの生態ですか?」
「そう。マグロの生態です」
「マグロは。まずメスが回遊産卵をし。オスが精子を巻き。受精したら卵は。一日でふ化する。そうしたふ化した稚魚が育ち。ヨコワになり。マグロになるのですが。その稚魚の餌が問題で。マグロは稚魚の時は。餌が不足すると。共食いするのでふ化した稚魚に比べ激減したので。当初。理由を違うことが原因だと思っていたようで。対応が遅れたのと。外敵の侵入を甘く見ていたのもあります」
「外敵ですか?」
「はい。鳥やサメやシャチです」
「今でこそ。しっかりした外枠で囲ってありますが。当時は。簡易的なものだったので。外敵に襲われ。せっかく育ったマグロが捕食されたりしていたそうです」
「それで七年という月日がかかったのですね」
「そういうことになります。お昼ですが養殖場に隣接されているレストランのマグロカツバーガーとマグロ丼にしようと思っていますが」
「マグロカツバーガーは想像つくけど。マグロ丼はわからないです」
「マグロ丼は日本が発祥で、丸くて深めの器に。白いご飯を器の八分目まで入れて。その上にマグロの大トロ。中トロ。赤身の切り身を。円を描くように並べ。真ん中に葱と日本の生わさびのすりおろしたものを乗せて特製たれをかけて頂くものです」
「う〜ん。ヒロさんの話を聞いているだけで。まぐろ丼おいしそう。食べてみようかな?」
「昼食は決まりですね」
ヒロとサラはマグロの養殖場の見学をした。トゥーナ島のマグロの養殖場は普通の養殖場のように。いけすで。マグロを育てるのではなく。マグロが島を周回するような養殖場になっているので。島と人工島の中央に海中見学施設を作り。三百六十度。養殖マグロが回遊している姿が見られるようになっている。サラは。マグロの力強い泳ぎに感動した。養殖場の見学を終えて隣接するレストランに行き。ヒロはマグロカツバーガーを。サラはまぐろ丼を注文して商品が来て少し戸惑っていたが。マグロ丼の上から特製たれをかけてあげ。マグロでごはんを包む感じでつかんで食べるといいよと教えた。サラは言われた通りにマグロを包む感じでつかんで、恐る恐る口運んだ。
「!おいしい。とってもおいしい」
サラはマグロとごはんと特製たれの絶妙なバランスに大トロ・中トロ・赤身の違う食感でマグロ丼のとりこになった。ヒロは。今日。サラを連れてくるの。迷っていたが。喜んでいる姿を見ていると連れてきてよかったと思った。昼食をとった後。ロープウェイに乗り展望台に向かった。ヒロは。サラを展望台の芝生広場に連れて行った。
「サラさん見てごらん。ここからのシャルムの街並み」
「きれい。シャルムの街並み対岸から見ると新鮮で違う街に見える。風も下と違って涼しいし気持ちがいい」
サラは芝生に寝そべり空を見上げ、話を始めた。
「ヒロさんと知り合ってひと月半、私。ヒロさんと知り合ってほんとよかったと思っているの。ヒロさんに助けてもらった頃は。全然意識していなかったけど。一緒に生活しているうちに。この人と一緒に居たいと思うようになったの。自分の人生が百八十度変わった感じで。今。とても幸せ。ヒロさんにはすごく感謝しているし。これからも私を大切にして頂ければと思います」
「はい。大事にします」
「ヒロさん。私の事。いつから意識していました?」
「サラさんを初めて見た時は素敵な子だなとしか思ってなかったけれど。話をしているうちに。サラさんを好きになっている自分がいる。けれど王女さんだから。気持ちがはいらないようにしようと思っていた。サラさんと一線超えるまでは」
「一線超えるまでですか?」
「はい。一線を越えたことで僕自身。責任を背負ったわけで。サラさんに対して正直な気持ちで接しようと決めました。でも交際を申し込んで。返事を頂くまではすごく不安でしたし。今も。これから子供もできるしすごく不安になっています」
「そうですね。私も子供ができたことで。不安ですけど。お互いの両親が応援してくれているのですごく心強いです」
「そうですね。でも不思議なのは、僕がサラさんに手を出して妊娠させても。誰一人として怒られもしないし注意もされないなぜだろう?」
「その件に関しては。折を見て両親に聞いてみようと思うの?」
「僕も母さんに聞いてみようかな?」
「そうですね。でも多分。本当の事は誰も教えてくれないと思いますけど」
「そうだろうな。サラさんそろそろ下に降りようか?」
「はい。」
サラはにっこり笑ってヒロに答えた。
二人は。ロープウェイに乗り下に降りた。下に降りたら。記念のお土産を買って。人工島への列車に乗り。人工島でフェリー乗り換え。帰りの船旅を楽しんだ。シャルム港に着き、予約したレストランに向かった。レストランに到着するとサラがおしゃれなレストランと言ってくれたので。ヒロは。ほっとした。レストランの中に入り予約しておいたヒロ・アガパンサスと伝えたら、窓際の席に案内された。
「サラさん。二十一歳の誕生日おめでとう」
「ヒロ。今日は私の為にレストラン予約してありがとう。今までで一番うれしい誕生日」
「喜んでもらえて。僕もうれしいよ。これ誕生日プレゼント」
「えっ。今日は何もいらないと言っていたでしょう」
「僕自身。お嫁さんになる人の。最初の誕生日に何も送らないなんてできないので」
ヒロは。ウエストポーチから四角い箱を取り出しサラに渡した。サラは四角い箱をもらうと箱を開けるとダイヤの指輪が入っていた。サラは目に涙を浮かべた。
「あれだけ婚約指輪はいらないと言ったのに。困った人ですね」
サラは。目に涙を潤ませている。
「サラさんに何を言われても。これだけは渡すことにしていたので」
「ヒロさん。ありがとう。今日は私の人生の中で忘れられない日になりそう」
「喜んでいただけて大変光栄です。正直。返品されたらどうしようかなと思っていたけど」
「そうですね。多分妊娠がわかる前だったら。返していたかもしれないけれど。今は結婚することも決まっているし。来年の六月にはお互い父親。母親になるからそれまでに自分がすべきことを行うと思っていますので」
「そうか読まれていたのか?」
「そうですよ。もう夫婦同然ですら」
「夫婦同然か?サラには隠し事できないな?」
「できないというよりか隠し事しないでください」
「分かりました。浮気したら浮気したといいます」
「!浮気は絶対許しません。監獄送りにします」
「えっ。こわっ。浮気したら監獄に送られるの?」
「はい。監獄で反省してもらいます」
「浮気しないようにしないようにしよう」
「浮気はしない。懸命な答えです。あと二人でいる時は。敬語はなしでお願いしたいのですが」
「わかりました」
二人で話が盛り上がっている途中で、前菜三品とサラダとスープが提供された。サラは店員さんお説明を真剣に聞いて、ヒロにこの前菜、私でも作れるかなと聞いてきたので、作り方がわかれば、サラだったら作れると思うよと、ヒロは答えた。
前菜を食べ終えた頃にメインのパスタ、雲丹のマファルディーネが出てきて、サラは驚いた。
「ヒロ。これパスタ?」
「そうだよ。あみあみになっているから驚いただろう」
「うん。写真撮ってもいいかな?」
「いいと思うよ」
「サラは写真を撮ってから、パスタを頂いた。雲丹のソースが。絶妙にパスタに絡んでおいしい。ヒロこの店。得意のネット検索で調べたの?」
「ううん。友達に教えてもらった」
「そうですか?」
ヒロは。サラに笑顔で対応されて、結婚したら自分の中で尻にひかれる予想をしていた。
パスタを頂いたら。店員さんが直径十センチのケーキを持ってきて。サラの前に置いて小さい花火に火をつけハッピーバスディを歌ってくれた。サラは喜んで店員さんに、ありがとうと、伝えた。花火が消えたらサラは花火の軸を抜いて食べ始めた。
「ヒロこのケーキなんて言うの?」
「いちごモンブランケーキ」
「あれ。モンブランって。栗ではないのですか」
「違うよ。モンブランは山の名前であり、ケーキの名前の別名は白い山。白い婦人と言われているらしい。だからケーキのモンブランは山の形に似ていたら。クリームは何でもいいのでこの店は苺クリームで山を表現している。とてもおいしいだろ?」
サラは。にこりとほほ笑んで答えた。
「うん。そんなに甘くなくとてもおいしいです」
サラはケーキを平らげると店員さんを呼んで。ケーキのテイクアウトは、ないのか聞いたが、テイクアウト用はないと伝えられたので残念がっていた。食事が終わり、ヒロとサラは店を出て、サラをお屋敷に送ろうとしたら、サラが今日はヒロの家に泊まることになっているのでと言ってきたのでヒロは自宅に向けて車を走らせた。家の着くとティモルがサラの誕生日プレゼントでマタニティドレスを買ってきてくれていた。
サラは喜んで部屋に戻って。試着してみた。サラは、鏡に映った自分の姿を見て。不思議そうな顔をしていたが。母親になるのだという自覚が芽生えた感じがした。その夜二人で話し合い十月十五日に入籍することを決め。床に就いた。
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二〇五五年九月十三日七時三十分
ヒロはサラはと一緒に起きて、朝ごはんを頂き。車に乗り、ティフォリア家に向かった。屋敷の前でサラを下ろし、アルバイト先のコンビニエンスストアに向かった。一方サラは、母親のクレマにティモルからマタニティドレスをもらって事とヒロから婚約指輪をもらったことと入籍を十月十五日にすることを伝えた。
「お母様マーガレットに私達の代理人として入籍届を出しに行ってもらってもいいでしょうか?」
「ん?そうね。プレゼンテーションが終わってから二十日ですね。そのほうがいいかもしれませんね」
「ありがとうございます。マーガレット頼みたいことがあるのですが?」
「お嬢様。なんでしょうか?」
「私とヒロの婚姻届けを提出してもらいたいのだけど」
「私が。でしょうか?」
マーガレットは。少し驚いた顔をした。
「はい。できればお願いしたいのですが。ダメでしょうか?」
「いいえ。そうでなくて私が提出に行ってもよろしいのですか?」
「ぜひお願いしたいのですが」
「分かりました。お受けします。それでいつ行けばよろしいですか」
「十月十五日にお願いしたいのですが」
「わかりました。婚姻届けの提出の件。お受けしました」
「ありがとう。マーガレット感謝します」
その夜。サラはヒロに電話をして、お母様が入籍をしていいと言ってくれた事とマーガレットが入籍の書類を提出してくれると言ってくれたことを伝えた。ヒロは、ほっとしていたが、すんなり行き過ぎているのが、逆にすごく不安だった。
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二〇五五年九月二十四日二十時
サラが。ヒロの家にマーガレットさんに送ってもらい。プレゼンテーション用の服や書類を持ってきた。ヒロはマーガレットさんに、明日のプレゼン会場の入場券を三枚渡した。マーガレットさんはお礼を言ってお屋敷に戻っていった。
「サラ。とうとう明日だね。」
「そうね。とりあえず頑張るだけ」
「プレッシャー感じてないね」
「だって私には何もないから。今日リハーサルがあって。私と違って会社の命運とか自分のプライドとか言っていた人がいる中で、私だけが大学生で。結構。気楽な立場だったので周りの人が大変そうに思えたら。プレッシャーがどっか行ってしまって」
「そういえば。僕もプレゼン時周りの人から気楽でいいなと言われたことがあった」
「皆さん大変なのだと思った。サラ。そろそろプレゼンの練習しようか?」
「うん。練習始めるね」
サラはヒロの前でプレゼンの練習をした。細かい部分の微調整をしながら一時間程練習した。ティモルが、お風呂で呼びに来た時、サラが今日、ヒロと一緒に入ってもいいですかと言った。ティモルもヒロもびっくりしたが、ティモルが、ヒロがよかったらいいと思うよ。と言ってくれたのでヒロに聞いてみた。ヒロは恥ずかしそうに(いいけど)と言った。ティモルはヒロが変なことしたら浴槽に沈めていいよと言ったら、変なことしませんと即答した。
サラは。ヒロとお風呂に入った。ヒロは最初。目のやり場に困り挙動不審者みたいになっていたが、二人で浴槽に浸かりヒロの上にサラが同じ体制で座った。
「私。一度これしてもらいたかったの?」
「この態勢」
「そうこの態勢。ヒロの上に座って湯船につかるなんか安らぐ」
サラは少しの間。湯船につかり、湯船を出て背中だけヒロに流してもらい先にお風呂を出た。ヒロはその後。自分の体を洗ってからお風呂を出て。部屋に戻った。部屋に戻ったら。サラが日記を書きながら。ヒロに無理言ってごめんねと謝ってきたが。ヒロは。最初は目の行き場に困ったけど最後なれたのか落ち着いてサラの顔を見られるようになったと話した。二人は。ベッドに入り。サラは久しぶりに腕枕をして貰いながら床に就いた。
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二〇五五年九月二十五日七時
A二〇一が処置をしに来た。サラは。A二〇一に右腕の状態を聞いてみた。
「ワタクシノヨソウデハ。アトイッカゲツホドデ。ウデノプレートヲハズセルトオモイマス」
「ありがとう」
サラは起きてヒロを起こし一緒に朝食を食べに降りた。
「サラさん。私はいけないけれど。プレゼン頑張ってね」
「はい。頑張ります」
ヒロとサラは朝食をとった後、シャルム国際ビルに向かった。八時三十分に到着した。
「少し早く着すぎたかな?」
「ううん。ゆっくり準備できるからよかったです」
二人は十五階まで一緒に行き。サラは受付を済ませて控室に向かった。ヒロは開場の時間まで待合用のロビーで椅子に座りゆっくりしていた。九時十五分になり開場になったが、マリーやマーガレットさん達が来るまで待つことにした。九時四十五分を過ぎて、マリーが汗を拭きながらロビーに来た」
「マリー。何かあった?」
「車三台の玉突き事故があったらしくて。バスが動かないから駅から歩いてきた」
「玉突き事故って珍しいなというかありえなくない?」
マリーは。困惑した顔で答えた。
「そうなのよね。歩いている人たちも口々にありえないと言っていた」
ヒロもこのご時世に玉突き衝突なんて考えられないなと思いながら。マリーにジュースを買って渡してあげた。
「お兄ちゃん。ありがとう」
「いいえ。ご苦労様でした」
マリーは。にこっと笑って頷いた。
==
その頃サラは。カモミール教授が時間になっても来ないので。携帯に電話をした。
「カモミール教授どうかしました」
「理由がわからないけど渋滞で車が前に進まないの」
「ティフォリアさんのプレゼンまで間に合わないかもしれない」
「私はどうすればよろしいですか?」
「組織委員会の人に代わってもらえますか?」
サラは。組織委員会の人と代わった。
カモミール教授は。時間に着けないかもしれないとのことで。代役を立てていいかと話し。私の代わり。アガパンサス君を代理で出てもらえるようにお願いした。
組織員会で話し合いを行いプロジェクターの操作だけならいいでしょうという事で許可が下りた。サラは。館内放送でヒロを呼んでもらった。
〈お客様のお呼び出しをいたします。ハイドランジア工科大学のヒロ・アガパンサスさん、至急関係者受付までお越しください〉
「お兄ちゃん呼ばれているよ?」
「そう。みたいだね。サラさんに何かあったのかな?」
「だったら早く言ってあげたら」
「行ってくる」
ヒロは。関係者の受付に行き。放送で呼ばれたヒロ・アガパンサスと名乗り。関係者控室に向かった。中に入るとそれぞれの担当者が来ないのか。部屋の中は混乱していた。
サラは。ヒロの前に走ってきた。
「ヒロさん」
「サラさん。どうかした?」
「実はカモミール教授が渋滞で時間にこれそうにないからヒロさんを代わりにと組織委員会の人にお願いして、認めてもらったのでプロジェクターの操作お願いしたいのですが?」
「わかりました。僕でよければ」
「ありがとう。お願いします。でも渋滞なんて珍しいよね」
「マリーがね。車五台の玉突き事故があって町の中渋滞しているって言っていた」
「玉突き事故?何かの間違いでは?」
「そうだね。僕も玉突き事故は。久しく聞いていないな」
「ヒロさん。それと開始時間が三十分遅れるそうです」
「分かりました。では少し練習しながら打ち合わせしますか」
「そうしましょうか」
サラとヒロは出番まで控室で。打ち合わせをしながら出番まで待った。出番の時間が着てお互い落ち着いてやろうねと言ってステージに向かった。サラはステージに立つと自己紹介をして、オールオーバーボディスーツのプレゼンテーションを始めた
「お兄ちゃん帰ってこないと思ったら、サラさんと一緒にプレゼンテーションをしているし」
「おかしいですね。カモミール教授がプロジェクターの操作をするはずになっていたのに。教授に何かあったのですかね」
「お兄ちゃんとサラさんすごく息がぴったり」
「お姉さま。すごく落ち着いて。言葉の強弱もしっかりして聞き取りやすい」
サラのプレゼンテーションに会場全体が聞き入っていた。ヒロのプロジェクターの操作とサラの発言、見て聞いている人々を魅了して、サラのプレゼンテーションは終了した。
「サラさん完璧だったね」
「これもヒロさんのおかげ。ありがとう」
二人は控室に戻り。くつろいでいた。書類審査を合格した十五組のプレゼンテーションの終わりかけた頃。カモミール教授が到着した。
「カモミール教授。大変でしたね」
「ティフォリアさん。私の事はいいけれどプレゼン大丈夫でした」
「はい。ヒロさんが居てくれたので大丈夫でした」
「アガパンサス君。ご迷惑かけてごめんなさいね」
「いいえ。僕はほとんど何もしていませんので」
「そう言っていただけたら助かるわ」
「サラさん。カモミール教授が来られたから。僕は客席に戻るね」
「はい。またあとでね」
「はい。カモミール教授。あとよろしくお願いします」
「アガパンサス君。ありがとうね」
「失礼します」
ヒロは。控室を出て客席に戻った。客席に戻ったらみんなにご苦労様でしたと言われた。
「お兄ちゃん。サラさんと息ぴったりだったね」
「そんなに息ぴったりだった?」
「はたで聞いていて。こんなに呼吸が合うものかなというくらいあっていたよ」
「お世辞抜きでそう言ってもらえると嬉しいよ」
「あっ。表彰式が始まるよ」
「そうだね」
表彰式が始まった。アイデア賞。敢闘賞。優秀賞一組の発表が終わった後。司会者が優秀賞、聖スィートアッサム女子大学造形美術科三年。サラ・ティフォリアさんと呼んだ。カモミール教授は驚きのあまり頭が真っ白になっていた。その後。最優秀賞の発表があり司会者が名前を呼んだ名前の人をステージの中央へ呼んだ。カモミール教授に後押しされサラは。他の人と共に。ステージの中央に立った。観客から拍手が送られ,サラの目から涙があふれてきた。司者が優秀賞をとった感想を聞かれ。サラは涙声で答えた。
「まさか。私みたいな素人が。こんな名誉のある賞を頂けるとは思ってもいませんでした。これも私の為に。尽力を尽くしていただいた周りの人のおかげだと思います。カモミール教授ありがとうございました」
カモミール教授はサラを抱きしめた。
「ティフォリアさんおめでとう。頑張ったかいがあったね」
「みんなが。みんなが力を貸してくれたから…………」
「サラが優秀賞をとった?」
「お嬢様。すごいです」
「お姉さま。来年は私がその上をもらいます」
「フローレンス様。今から燃えていらっしゃいますね」
「サラさん。すごい。お兄ちゃんにはもったいないかも」
ヒロを含めて五人がすごく感動をして。サラの偉業を喜んだ。表彰式が終わり。サラとカモミール教授は取材を受けていた。ヒロはサラの取材が終わるのを待つことにして、マリーをマーガレットさんに連れて帰ってもらうようにお願いをした。サラの取材が終わったのは、表彰式が終わって一時間後だった。サラとヒロはカモミール教授と別れお昼ご飯を食べに行くことにした。
「サラおめでとう。ご褒美に昼食何が食べたい」
「マグロ丼」
「!マグロ丼。トゥーナ島まで行くの?」
「シャルムにないですかね?」
「そういえば。あったような気がする」
ヒロは。スマートフォンでマグロ丼を取り扱っていて近い店を探した。車で五分の場所にある和食専門店スアンに行くことにした。二人はスズアンに入りサラはマグロ丼。ヒロは海鮮丼を注文した。
「サラ。優秀賞おめでとう。ほんとびっくりした」
「私も名前呼ばれたとき。頭が真っ白になってしまって。優秀賞をとったなんてまだ信じられない。優秀賞とれたの。ヒロのおかげだと思っている。ありがとう」
「僕は何もしていないよ」
「そうかな?いろいろアドバイスしてくれたしヒロが居なかったら、まず賞どころか書類審査も通ってなかったと思う」
二人が注文したマグロ丼と海鮮丼が運ばれてきたので食べ始めた。サラがヒロのどんぶりの中に気になるのがあったのかじっと見ていたので、ヒロがどんぶりをサラの前に置いた。サラはニコリとし。ヒロのどんぶりから帆立とイクラをもらった。
食事の最中に向かいの席から男の人が怒鳴る声がした。
隣にいる店員らしき人に怒鳴っている。
店員はどうしたらいいのかわからず困っている。
「ヒロ。マグロって。筋合ったらだめなのですか?」
サラは。向かいの人に聞こえる声でヒロに聞いてきた。
「そんなことないよ。魚は。泳ぐから筋肉には必ず筋がある。マグロが大きくなればなる程。筋も太くなる。それに筋が太い部分は。おいしいとされている。僕の海鮮丼に盛り付けてあるサーモンの白い線も筋だよ。ただ。サーモンと違ってマグロは。鰓を自分で動かせないから。泳いで鰓から酸素を取り入れて。二酸化炭素を排出している」
「!魚も酸素が必要なのですか?」
サラは。驚いた顔をしていた。
「そうですよ。だから時々聞きませんか。魚が浜に打ち上げられて死んでいる話を。その時。酸欠を起こし。二酸化炭素を体内から排出できなくなるので死んでしまうのです」
「そうなのですか。でも勉強になりました」
「よかったです」
ヒロは。ふと横を見ると。店員が男性に頭を下げこちらに向かい。ヒロとサラの横を通る時。店員さんが頭を下げてから。奥に下がった。
二人は。食事を終えたら。ヒロはサラをお屋敷まで送り。十七時からのアルバイトに向かった。二十四時に仕事を終えて家に帰ってからサラからのメールを読んで驚いた。サラを優秀賞にするのに。裏操作をしたとの情報が流れて。お屋敷に記者がいっぱい来たけどオールオーバーボディスーツデザイン組織委員会がリーク者と情報を流した人に対して告訴をしたとの情報が入り記者の人は帰っていったの。家族みんなほっとしていました。ヒロさん。今日はありがとうございました。明日。シャルム駅で待っています。おやすみなさい。と打ってあった。ヒロはスマートフォンで組織委員会の事を調べたら告訴に踏み切った元となる採点表の提示がしてあった。
採点二〇〇点満点(デザイン一〇〇点・プレゼン一〇〇点)
最優秀賞 サリエド・マッケンリー 合計一九四点(D九十六点・P九十八点)
優秀賞 サラ・ティフォリア 合計一九三点(D九十四点・P九九点)
優秀賞 マゼンダ・フラン 合計一八九点(D九十四点・P九十五点)
敢闘賞 ビオラ・デリクシア 合計一八八点(D九十三点・P九十五点)
デザイン賞 アーノルド・マレフィセ 合計一八六点(D九十四点・P九十四点)
ヒロは点数に驚いた。サラのデザイン二位プレゼン一位になっていた。ヒロは、明日から何かが起こりそうな予感をしながら床に就いた。
==
二〇五五年九月二十六日午前七時三十分
ヒロがバス停でバスを待っていると。マリーが走ってバス停に来た。
「マリー。どうしたの?今日から科目別のテストで。いつもより三十分遅く出るのではなかった?」
「そうなのだけど。友達のカトリーナが。サラさんに会いたいって言うから。お兄ちゃん七時三十分のバスに乗って。シャルム駅でサラさんと待ち合わせしているからとライン送ったら。今日会うって返事が来たからあわてて出てきたの。サラさん急に会っても怒らないかな」
「大丈夫だと思うよ」
「よかった」
ヒロとマリーはバスに乗りシャルム駅に着いた。バス降り場にカトリーナが待っていてマリーと話をしている。ヒロはいつもの所で立っていると。シィーナさんが来て。ヒロ君。(おはよう)だけ言って横に立った。
ヒロは。サラに〈サラに会いたい女子に囲まれています〉と送ったら
(ヒロさん。モテキ到来)と返事が返ってきた。ヒロは。サラずれている。みんな僕に会いに来ているわけでないのにと心で叫んだ。サラが到着したらみんなが。サラさんおめでとうと言ってそれぞれ駅のホームに向かった。友達を連れてマリーが近づいてきた。
「サラさんおはようございます。昨日はおめでとうございます」
「マリーちゃん。昨日は来てくれてありがとう。今日から試験で遅いのではないのですか?」
「友達が合いたいというので連れてきました」
「初めまして。マリーちゃんの友達のカトリーナ・ユニカリアと言います」
「カトリーナさん。初めましてサラ・ティフォリアです。よろしく」
「昨日のプレゼンを見て感動してマリーちゃんに無理言って。会えるようにしてもらったのです。お会いできてうれしいです」
「わざわざありがとう。今後ともよろしく」
「はい」
サラは。カトリーナと握手をしてから。ヒロとホームに向かった。
ヒロは。いつものように東口の階段を降りてサラと別れた。
夕方。学園長に呼ばれ。サラのデザインをしたオールオーバーボディスーツの制作の発表とヒロの取材を。明日十六時から行うと伝えられた。ヒロは取材の承諾をした。夕方、サラに電話をした。
「サラさんのデザインしたオールオーバーボディスーツ。ハイドランジア工科大学で制作することになったよ」
「!えっ。それほんとなの」
「うん。夕方。学園長に呼ばれて。サラさんのオールオーバーボディスーツの制作をすることになったと伝えられ。よろしくお願いしておきますと言われた」
「では。私のデザインしたボディスーツをヒロさんが制作してくれるのですか?」
「そうゆうことになります」
「ヒロさん。よろしくお願いします」
「はい。頑張ってサラさんが理想とするボディスーツを制作するよ」
「ヒロさんが私のデザインしたボディスーツを制作してくれるとは夢にも思ってなかったのですごく嬉しいです。頑張って製作お願いします」
「はい。頑張るよ」
ヒロはサラに。明日取材があることを伝え。どこまでの話までだったらいいか尋ねた。サラは妊娠していること以外なら話をしてもいいですと、ヒロに伝えた。ヒロはありがとうと言って、電話を切りアルバイトに出かけた。アルバイトに行ってトラデスにボディスーツの制作をするようになるのでまだ日程は決まっていませんが当面。土日しか入れなくなると思いますと伝えた。トラデスさんからもしもの時はよろしく頼みますと言われたので了承した。
アルバイトが終わり。帰宅してからメールの確認をしていると、マイク・シュナイザー氏からプレゼンの事に対してお祝いの言葉を頂いた。サラもルビアスさんからお祝いのメールを頂いたと。メールが来ていた。ヒロはお祝いの言葉のお礼と、来月にサラと入籍することを
マイクさんにメールで送信し床に就いた。
==
二〇五五年九月二十七日七時五十分
いつものようにシャルム駅でサラを待っていると。メールの着信音が鳴った。マイクさんからだった。メールの内容を見てびっくりした。サラが妊娠している事と。春休みの二月にイギリシア旅行に行くと打ち込んであった。
サラがシルビアスさんとのやり取りで教えたらしい。サラが来た時、駅のホームに向かいながら話をした。
「サラさん。マイクさんからメール来たのだけれど」
メールの内容を見せた。
「ヒロさん。ごめんなさい。ルビアスさんが妊娠したと知ってつい教えてしまったの。それと二月にイギリシアに行く話だけど勝手に決めました」
「伝えてしまったことは訂正きかないから。それに合わせて予定を決めないといけませんね」
「はい。勝手にお話を進めてごめんなさい」
ヒロは授業が終わり、来客用の応接室に向かった。廊下でドラセナとアナナスが話しかけてきた。
「ヒロ。九月三十日の金曜日にお祝いのパーティーを行う予定でいるのだけれど、開催してもいいかな?」
「お祝いのパーティー?」
「そうだよ。先日のオールオーバーボディスーツのプレゼンテーションで優秀賞をとった件のパーティー」
「あれは。サラさんがとった賞で。僕には関係ないと思うのだけど」
「俺はそう思はないぜ?」
「ドラセナ。どういう事」
「ヒロがプレゼンに出たことで。ここの大学の評価が上がって。俺たちすごくうれしいのだ。それでお祝いをしようと。当然サラさんにも来てもらいたいのだけど」
「わかったサラさんと相談してみる。いつまでに返事をしたらいい」
「できれば前日までにお願いできれば」
「わかった。それまでに返事するよ」
「よろしく」
ヒロは。ドラセナとアナナスと別れ応接室に向かい。扉のドアをたたき入室した。
入室するとモーリスさんと女性の記者の人。学園長が座って待っていた。
「やあ。ヒロ君久しぶり」
ヒロは。驚いた顔をしてモーリスに話しかけた。
「モーリスさん。どうしてここにおられるのですか?」
「知り合いの記者から。僕がヒロ君を知っているということで。彼女の取材の補佐を頼まれて一緒についてきています。彼女の名前はビアンカ・ギルバート。今年の新入社員で。今日が初めての単独取材なのでよろしくお願いします。話はすべて彼女がするのでヒロ君お手柔らかにお願いしときます」
「あっ。はいわかりました」
「はっ。初めましてサクティスジャーナルのビアンカ・ギルバートと言います。今日は取材を承諾していただきありがとうございます。早速取材をさせて頂いてよろしいでしょうか?」
「はい。構いませんがギルバートさん。緊張しておられるみたいですが大丈夫ですか?」
「ご心配には及びませんのでお話をお聞きしたいと思います」
「まず。お聞きしたいのが。アガパンサスさんは先のオールオーバーボディスーツのプレゼンテーションでどういう経緯でプロジェクターの操作の操作をすることになったのですか?」
「はい。本来。プロジェクターの操作は、聖スィートアッサム女子大学のカモミール教授がするはずだったのですが。追突事故の渋滞に巻き込まれた影響で来るのが大幅に遅れるので。カモミール教授が運営委員会の人と話をして。僕をプロジェクターの操作をしてもいいかどうかお願いしたら。問題ありませんとのことで。僕がプロジェクターの操作をすることになりました。カモミール教授は最後の組のプレゼンテーションの時に来られましたので。ご存じだと思いますが。表彰式はカモミール教授が出ています」
「ありがとうございます。次にサラ第一王女とどういう関係でしょうか?」
「一応。お付き合いをしています」
「ということは。将来結婚されて。アガパンサスさんが国王になるということでしょうか?」
「僕は。国王にはなりません。私は機械の制作に関わる仕事をしていくので」
「その件は。サラ王女は。ご存じでしょうか?」
「承諾してもらったうえでのお付き合いですので」
「私でしたら。国王になって国を動かしたいですけど」
「多分そう言われる方が。大半だと思いますが。僕は国を動かすのではなく。国の支えになりたいのです。ですから僕が国を支え。サラ王女が国を動かす。これはあくまでサラ第一王女と結婚したらこうしようと二人で決めていることですので」
「…………」
ギルバートは。沈黙してしまった。
「ギルバートさん。どうかされましたか」
「すいません。私もっと安易な考えでサラ王女とお付き合いされていると思っていたので。話を聞いていて。自分自身が小さく見えてしまって」
「ヒロ君ごめんね。知人から。もし彼女がつぶれて話せなくなったら僕が代わりに聞いてほしいことがあると言われたことを質問させてもらっていいかな?」
「いいですけど」
「今後。貴族の方から反発を受けるかと思いますがどうされますか?」
「いろいろ言われる方もおられるかと思いますが。サラ王女にふさわしい人間になれるよう誰にも何も言われないくらいの結果を残していきたいです」
「わかりました。オールオーバーボディスーツの制作の件ですが。ヒロ君から学園長にお願いとかはしていませんか?」
「オールオーバーボディスーツの制作に関して。僕からの働きかけはありませんし。僕が動くより。学園長自身が動いても何ら不思議ではないので」
「ヒロ君。どういうことですか?」
「学園長。国王様との事をお話してもよろしいでしょうか?」
「アガパンサス君が知っている事。話してあげてください」
「はい。学園長と国王様は大学時代の旧友で今も交流があり。学園長は裏で。僕とサラ王女の間に入ってくれているようでしたので」
「アガパンサス君。知っていたのですね」
「知ってしまったのではなく。そう感じていましたので。その理由として。実は。僕はサラ王女とお付き合いしてから。一度もサラ女王のご両親に僕自身の普段の生活ついて聞かれたことがないのです。家の事に関しては。母親同士が大学時代の友人ですので家での事は。知られていたと思いますが。学校の事をご存じなのが不思議だったのです。先日。学園長から国王様が旧友だと。伝えられた時。すべてが理解できました。」
「アガパンサス君は察知力も素晴らしいな」
「ギルバートさん。モーリスさん。質問はありませんか?なければ失礼させて頂いてもいいですか?」
「はい。今日はありがとうございました」
「もし何かありましたら。ご連絡いただければと思います。失礼します」
ヒロは応接室を後にした、サラから駅で待っていますというメールだけ入っていたので心配で。走って駅に向かった。
==
ハイドランジア大学応接室
「モーリスさん。話がしっかりできなくてすいませんでした。編集長がモーリスさんを付けてくれた意味が分かりました。すごく勉強になりました。ありがとうございました。アガパンサスさんは。私より六歳下なのに。私は彼の壮大な考えについていけなくなってしまって自分の未熟さを痛感しました」
ギルバートはモーリスがいてくれて助かったと思った。
==
ヒロが駅についたら。サラが男子学生に声を掛けられていたが。ヒロが来たのがわかると走ってヒロの所へ来た。
「サラさん。大丈夫?顔色だいぶ悪いけど」
「うん。授業が終わる前くらいから調子悪くて。一人で電車に乗れそうにないから。ヒロさんにメール入れました」
「荷物持つよ」
「ありがとう。お願いします」
ヒロはサラに合わせて。ゆっくりとホームに向かった。ホームに着くと急行が到着したが一駅とはいえ、十分間サラを絶立たせるのは大変だと思い。急行待ちをしていた普通電車に乗った。ヒロはサラを座らせて横に座った。サラは。ほっとしたのかヒロにもたれかかり眠った。ヒロは。マーガレットにサラの現状を報告し二十分後。シャルム駅に迎えに来てもらうようにお願いした。シャルム駅に到着すると。ヒロはサラを抱えながらおろし、ゆっくり歩かせて。マーガレットの待っている駅のロータリーまで連れて行った。車にサラを乗せ一瞬。家に帰ろうと思ったが。お屋敷に着いた後が心配になったので一緒に乗っていくことにした。お屋敷についたらマーガレットに荷物を持ってもらい。サラを抱き上げ部屋まで運んでベッドに寝かせた。サラの着替えをマーガレットにして貰っている間にティモルに。サラの調子が悪いので落ち着いたら。帰ります。メールを送った。ヒロは心配そうにサラが寝ているのを見守っていた。二時間程たった頃。サラが目を開けた瞬間。布団で顔を隠した。
「サラさん。何で顔を隠すの?」
「ヒロさんが寝顔を見ているから」
サラは。そっとかおを布団からだし。ヒロを見た。
「サラさんの事心配だし。苦しそうだったから。それより落ち着いた?」
「はい。寝ていたら少し楽になりました」
「サラさん。明日から大学行くのが大変だったら、無理せずに休んだほうがいいかもしれませんね」
「はい。わかりました」
「ゆっくりしてください」
「はい。今日は送ってくれてありがとうございます」
「いいえ。どういたしまして。そろそろ帰るね。そうだ伝えておかないといけないことがあった。金曜日にドラセナたちがお祝いしたいと言っていたのだけれど。お断りしておきます」
「断ってもいいのですか?」
「断っても大丈夫だよ」
「ごめんなさいね」
「サラさんが謝る事ではないですよ」
ヒロはサラの部屋を出て行った。サラはそのまま眠りについた。
ヒロは部屋を出て。帰ろうとしたらマーガレットさんに家まで送りますと言われ。一度は断ったが申し訳ないのでと言われ甘えることにした。家についたら夕食をとりお風呂に入ってドラセナにお祝いのパーティーの件の断りを入れた。ドラセナはヒロだけでもと言ったが。今はサラのそばにいてあげたいのでと断り。お祝いのパーティーをするのであれば十月の第二週以降にしてほしいとお願いした。ドラセナはみんなと相談して決めると言って電話を切った。ヒロは申し訳なく思っていたが。どちらかと言われれば。サラを選ぶと決めているのでと心で割り切った。明日の準備をして床に就いた。
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二〇五五年九月二十八日午前七時
サラから(動くのが大変なので。今週いっぱい学校を休むことにします)とメールが入った。
ヒロは(大変だけど頑張って金曜日はバイト休みなので。学校が終わったらサラさんに会いに行きます)と返信をして学校に向かった。夕方。顧問のハーデス教授に呼ばれた。「ヒロ君。新学年にあたる三月からオールオーバーボディスーツの制作に入ることが決まったので伝えておきます」
「わかりました。準備はしっかり行います」
「頼みましたよ」
「はい」
ヒロは。大学の集大成が。サラのデザインしたオールオーバーボディスーツの制作になるとは思ってもみなかった。その事を大学の帰りにサラのメールで報告した。すぐに返事は返ってこなかったが。いつものおやすみメールと一緒によろしくお願いします。と返信した。ヒロは。いつものようにアルバイトに行き。帰宅してから明日の準備をして床に就いた。
==
二〇五五年九月三十日八時
ヒロは大学の通学途中にサラに今日行くけど。何か食べたいものないかメールを送ったが。大学の帰りに着信を見ても返事がなかったので。マーガレットさんにメールでサラの状況を聞いてみたら。調子悪いみたいで今日一日ベッドで寝ているとのことだった。ヒロは起きたらお腹がすいているかもしれないと思い。最近。サラが。はまっている海鮮系のどんぶりを三種類用意して。お屋敷に向かった。お屋敷についたら。マーガレットさんが対応してくれ、サラの部屋に入った。サラはまだ寝ているようだったので。ベッドの横に椅子を持ってきて座った。三十分程してサラが起き。ヒロを見て声を掛けてきた。
「ヒロさん。来てくれてありがとう」
「うん。サラさん大丈夫?」
「そうですね。病気で体が重いわけではないので大丈夫だけど、つわりがこんなに大変だとは思わなかったので。気がめいってしまいそうです」
「こういう時。男って役に立たないよな。僕はサラさんと変われたら変わりたいよ。見ているのがつらくて」
「ヒロさんありがとう。気持ちだけでもうれしい。でも子供を産むって言うことは女性にしかできないことだから頑張るね。お母様も私とフローレンスを同じ思いをしながら生んでくれたから私が逃げるわけいかないもの」
「女性ってすごいと思う。命をかけて子供を産むのだから」
「そうでしょう。ヒロさん。子供産んだらヒロさん感謝してください」
「はい。わかりました。感謝します。サラさんお腹すいてないですか?一応。海鮮丼。マグロ丼。サーモンいくら丼の三種類買ってきたのですけど」
「食べます。どれにしようかな?ヒロさん。全部の蓋開けてもらっていいですか?」
「はい」
「全部食べたいな?」
「よく張りだな」
「どれもおいしそうだもの。どうしようかな?ヒロさん悪いのですが。丼ぶりを食堂まで運んでもらえませんか?」
「いいですけど。食堂に持って行ってどうするのですか?」
「三種類。少しずつ器に入れて食べます」
「あっ。そういう事ですか?」
サラは。起きてヒロと一緒に食堂に向かった。食堂に入ると食事を終えたクレマが食後のコーヒーを飲んでいた。
「サラ。起きてこられましたか?」
「はいお母様。お腹がすいたので、ヒロさんが買ってきてくれた海鮮系のどんぶりを少し頂こうかなと思い食堂に来ました」
サラはおもむろに、取り皿とスプーンを食器棚からとり出した。それぞれのどんぶりにスプーンを差し、すくって取り皿に入れ食べ始めた。クレマはサラがおいしそうにどんどん食べているのを見てあっけに取られていた。
お腹いっぱいと言った時にはすべてのどんぶりが半分以下になっていた。クレマがびっくりして。サラにそんなに食べて大丈夫と尋ねたら。大丈夫ですと返事が返ってきた。サラはヒロに泊まってもらえないか尋ねたら。今日はいろいろと準備してきてないので断られたので、クレマにヒロの家に泊まりに行って尋ねたら。ティモルに聞いてから判断しますと言って電話を掛けた。ティモルがいいよと言ってくれたので。クレマはサラに外泊の許可を出した。サラは部屋に戻り着替えと服をもって食堂に降りてきて、ヒロを引っ張ってお屋敷を出て行った。クレマはサラの残していったどんぶりの残りを食べながら、あの娘ほんと変わったなと思っていた。
このどんぶりおいしい。あとで主人と一緒に食べようと思い。どんぶりにふたをして。サラの使ったお皿だけかたづけた。
サラは。とてもいい気分で車に乗り。ヒロの家に向かった。
「ヒロさんごめんなさい。急に押し掛ける形になって」
「うん。僕はサラの気持ちがわかるから何も言わないけれど。できるだけ無理を言わないようにしてあげてほしいけど。でも今は仕方かな。今日は一緒に居たかったのですか?」
「うん。無理言っているのはわかっているのだけれど。ずっと一人で寝ているとだんだんネガティブになっていくようで。」
「そうだね。調子の悪い時ってネガティブになりやすいから。これからはできるだけ会いに行くようにするから」
「うん。わかった。でも無理だけはしないでね」
サラがヒロに家に着いたらティモルとマリーが出迎えてくれた。
「サラさん。調子どう?」
「はい。少し落ち着いてきたように思えます」
「そうかい。ということはもうすぐ安定期に入るね。そしたら。つわりも落ち着くかな?」
「えっ。安定期に入ってきたら。つらい思いしなくてもいいのですか?」
「そうだよ。つらい思いしなくてよくなるよ」
「よかった。妊娠している間ずっとつらいのかと思っていました」
「サラさん。子供はどっちがいいとか思っているのですか?」
「そうね。男の子がほしいけど。最初は女の子でもいいかなとも思っています。でも元気な子が生まれてくれれば。どちらでもいいかなと思っているのだけれど」
「そういえば私っておばさんになりますよね?」
「本来なら。マリーちゃん叔母さんになるけど。高校二年生ではさすがにきついので。お姉さんでいいと思うけど」
「そうね。しゃべれるようになったらマリーお姉さんって呼んでもらおうかな?」
「マリー。気が早すぎじゃない」
「お母さん。その辺は早く決めとかないと。しゃべりだしてからでは遅いと思うけど」
「そうかね」
「そうだよ」
「ところでサラさん。お風呂入る?」
「はい。ヒロさんと一緒に入ります」
「サラさん。お兄ちゃんと一緒に入って大丈夫?」
「ご心配には及びません。お兄さんは。一緒に入っても何もしませんので」
「へえ〜。お兄ちゃんがね」
「マリー。僕がサラさんにへんな事をするって思っているだろう?」
「当然でしょう」
「マリーちゃん。あんまりお兄さん責めないで。私が悪いのだから」
「サラさんがそういうなら。このへんにしとくけど」
「マリーちゃん。ありがとう」
「ヒロ。夕食どうするのだい」
「食べます」
ヒロとサラはリビングに行き。マリーは自分の部屋に戻った
「母さん。一つ聞きたいことがあるのだけど」
「答えないといけないかい」
「聞きたいことわかっているの?」
「ヒロが聞きたいと言えば今一つしかないだろう。今は教えなれない。でも今思っていることが正しいと思って行動してもいいと思うよ」
「分かった。ありがとう母さん」
「ヒロ君。何のこと話していたの?」
「僕の事を聞きたかったのだけど教えられないって言われた」
「ヒロ君でも教えてもらえない事あるのだ。」
「うん。サラさん。お風呂入ろうか?」
「は〜い。」
ヒロはサラと一緒にお風呂に入り。自分の部屋に戻り。くつろいだ。
「サラ。急だけど明日の午前中。ウェディングドレスの試着をしに行かないか?」
「ウェディングドレスの試着?どういう事?」
「僕たちの入籍の日。何かするみたいだから。サプライズをしようかなと」
「何かするって?まさかそんなことある」
「母さんとクレマ様ならあり得ると思う」
「分かった。明日の衣装合わせは内緒にしておけばいいのね」
「そうだよ。」
「う〜ん。なんかワクワクしてきた。明日に備えて早く寝よう」
「そうしますか」
サラはヒロに。いつものように腕枕をして貰い床に就いた。
二〇五五年九月三十一日八時
ヒロとサラは一緒に起きて朝食を頂き。サラは荷物のかたづけ。ヒロは。アルバイトに行く準備をして出かける用意をした。ヒロはサラを車に乗せ市内にあるレンタルコスチュームの店に行った。店に入ると色々なウェディングドレス、タキシードなどが置かれていた。ヒロは白のタキシード。サラは白と薄いピンクのウェディングドレス二着を試着した。ヒロのタキシードは決まったが、サラは少し目移りしてしまい。黄色と紫のウェディングドレスの試着もした。サラはいろいろ考えて。白と黄色のウェディングドレスの、二つに絞った。ヒロにどちらがいいか聞いたが。どちらも似合ってきれいだよと言うだけで、決めかねていたが。レンタルできる日を聞いてみたら。白は十五日。二十九日ともレンタルできるようだが。黄色のウェディングドレスが十五日だめだったので。十五日だったら。白のウェディングドレス。二十九日だったら黄色のウェディングドレスにすることに決まった。ヒロはレンタルの予約が終わると。サラをお屋敷まで送り。その後アルバイトに向かった。休憩中。レンタル衣装店で取ったサラの四種類のウェディングドレスの写真を見て、見とれていたら。後ろから店長に声をかけられた。
「ヒロ。誰の写真?」
「サラさんの写真」
「ヒロ。結婚式上げるのかい?」
「いいえ。結婚パーティーです」
「サラさんか?きれいだしうらやましいな?」
「店長。先に結婚してすいません」
「いいよ。結婚は縁の問題だと思っているから」
二十四時に仕事を終えて帰ってからサラのおやすみメールに、体調少し良くなっているようなので、月曜から大学に行こうと思っていますと付け加えてあったので、無理はしないでくださいと、明日十八時に仕事が終わるので顔だけ出しに行きます。何か欲しいものがあれば買ってきますので、教えてくださいと送信した。ヒロはお風呂に入ってから床に就いた。
==
二〇五五年十月一日五時
ヒロは。起きてアルバイト先のコンビニエンスストアに六時に出勤した。いつものように業務をこなし休憩に入ったら、サラからメールがあり。〈休憩に入ったら電話ください〉とのことだったので、電話をした。
「サラ。どうかした?」
「あっ。ごめんなさい。電話をしてくださいとメールを送ったから心配した?」
「うん。何もなかったらいいけど」
「ヒロ。昨日言っていた十五日の件だけど、今日お母様から。お屋敷で十四時から私たちの結婚のお祝いをするから予定を入れないように言われたの」
「直接言われたの?」
「うん。言っておかないと。あなた達。予定入れてしまって。当人なしでお祝いパーティーになったら困るので」
「だいぶ僕たちの行動パターン読まれているみたいだね」
「そうみたいですね。でもそれもありかなと思うけど」
「そうだね。わかってくれていたほうがこちらも動きやすいので。サラ?」
「何?」
「色ドレスも着る?」
「えっ。色ドレス?着たいけど?…………」
「じゃ決まりだね。今度の水曜日バイト休みだから。レンタルコスチュームの店にもう一度行って。衣装合わせとセットの話しようか?」
「ほんとにいいの?」
「いいよ。僕にはまだ盛大な結婚式出来ないし。今の僕には自分のできる範囲で。サラにしてやれることをしかできないので」
「ありが〜とう」
サラは。泣き出した。
「そんな。泣かなくてもいいよ」
「だって。うれしくて涙があふれてきちゃったもの」
「もう。仕事に戻らないといけないので電話切るね」
「今日。会うの。楽しみにしています。お仕事頑張ってください」
「うん。頑張るよ」
ヒロは。サラとの電話を切り仕事に戻った。十八時に仕事が終わり、メールを見ると〈ホットドッグとミルクティー〉をお願いしますと受信していたので。〈わかりました。今から行きます〉と送信してミルクティーとホットドッグを各二個ずつ購入してお屋敷に向かった。お屋敷に着くと、マーガレットさんが出迎えてくれた。
「ヒロ様。何かいい匂いしますね」
「これどうぞ」
ヒロは。マーガレットにミルクティーとホットドッグを手渡した。
「ヒロ様。よろしいのですか?」
「いつもお世話になっていますので」
「ありがとうございます」
マーガレットさんは、嬉しそうに受け取った。サラの部屋に入ると。サラが学校の課題をしていた。ヒロは机の横にミルクティーとホットドッグを置いて。課題が終わるのを待った。
「終わった。ヒロさん。ミルクティーとホットドッグ。ありがとう。ところで色ドレスの件だけどほんとに衣装直ししてもいいの?」
「いいよ。昨日の写真見ていたら色ドレスも着てもらいたいなと思って」
「!昨日の色ドレスの写真?そういえば撮っていましたね。見せてください」
「うんいいよ。これ」
「ヒロ。この写真見ながらにやけていませんでした?」
「にやけていません」
「ほんとに?」
「ん〜。少しにやけていいたかも」
「やっぱり。でもきれいに撮れているから許してあげる」
「ありがとう」
ヒロはサラとたわいない会話とお祝いパーティーの作戦を二時間程話して帰宅し夕食をとりお風呂に入りサラにおやすみメールを送り。課題をしてから床に就いた。
翌日からサラも少し体調がよくなったみたいで普通に大学に通うようになった。夕方サラからメールがあり。〈今日から大学にマリアが来ました〉と入っていた。水曜日には衣装合わせをしに。レンタルコスチュームの店に行き。黄色のドレスの確認をしたが。空いてないとのことで薄いピンクの色ドレスを二種類試着して前回と違う形のドレスにした。そして行きつけになったジュエリーショップで結婚指輪購入した。残念だったのが最短で指輪が出来るのが十七日の午前中なので十五日は指輪なしでいくことにして、指輪は十七日に取りに行くことにした。
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二〇五五年十月十五日十時
ヒロは。サラをお屋敷まで迎えに行き。役所に行き婚姻届けを提出した。書類を提出した時。係の人がびっくりして顔を見ていたが。お互い免許書も提出したのですんなり書類がとった。婚姻の証明書をもらった時。役所の人たちから結婚の歌うたってもらい。祝福までしてもらった。二人は幸せ気分で。レンタルコスチューム店に向かった。店に到着すると店員さんが黄色のドレスがキャンセルになり。レンタルが可能ですが、衣装合わせされますかと言われたのでサラは思わず。はい。衣装合わせしますと答えた。よほど着たかったのかテンションが一段と上がった。ドレスを合わせたら。肩を少し詰めるぐらいでいけるとの事なので。お屋敷でスタッフの人に詰めてもらうことにした。それに合わせて飾りも黄色の色を用意して貰った。サラのスマートフォンが鳴り。会場(応接室)に入る出席者のお出迎えをするので十三時三十分にはお屋敷に戻るように言われた。ヒロとサラは衣装を着る時間もあるので急いでお屋敷に戻り。スタッフの人と一緒に部屋に入り着替える時間があまりないので。すぐ着ることができる白ドレスを着て。お客様のお迎えに出ることにした。ヒロはある程度自分で行い。少しの修正と化粧をして貰った。サラは。スタッフの人と悪戦苦闘しながらドレスを着て飾りつけ。化粧をして貰い。何とかマーガレットさんが呼びに来るまでに準備ができた。マーガレットさんは、サラの部屋に入り二人を見たびっくりしていたので。サラがスマートフォンで写真を撮った。
「お嬢様。その写真削除してもらえませんか?」
「えっ。削除ですか?」
「はい。お願いします」
「せっかくいい写真が撮れたと思ったのですけど」
「お嬢様。お願いします」
「わかりました」
サラは。マーガレットが驚いた写真を削除した。
マーガレットも会場に降りてこないのでクレマが身に来て二人を見て。驚いたがすぐ冷静になった。
「マーガレットが戻ってこないと思ったら、そういう事ですか?」
「二人とも。お客様のお迎えに出ますよ」
「はい」
二人はクレマの後をついて会場(応接室)の裏から入り表ドアの内側で待っていた国王様の対面側に立った。対面側のサラの姿を見て。国王は涙を流しだした。それを見たクレマがハンカチを出しあなたも親ですねと言った。
「これはクレマの演出?」
「いいえ。私は関与しておりません。私も驚いておりますが。あの子たちこれだけでは終わると思わないほうがいいと思います」
「クレマはまだ何かあると思っているのかい」
「はい。あの子たちは人を驚かせることを楽しんでいますから」
「そうか。サプライズを楽しみにしておこう」
国王が合図をしたらドアが開いた。お客様が来場してきた。今日は親族と国王様とお付き合いのある三十人が集まった。司会者の人からヒロとサラは自己紹介され挨拶を始めた。
「本日は忙しい中。私たち二人の結婚お祝いパーティーにご出席いただきありがとうございます。今日の門出にこれだけ多くの親族関係者の皆様に着て頂き光栄に思います」
「僕自身。サラ王女と結婚できるとは思っていませんでしたのでまだ夢を見ているようです努力して。正式な結婚式を行えるようにしたいと思います。今後ともよろしくお願いします」
「私は貴族でなく一般の方を夫に向かえました。貴族の皆様からは批判を受けるかと思いますが。そこはぶれずに彼をパートナーとして支えていきたいと思います」
「未熟な二人ですが。よろしくお願いします」
親族から拍手が起こり。二人は、ほっとして席に座った。
その後。アキレアの乾杯で会食が始まった。親族の人たちが二人の周りに集まり。おめでとうと言って写真を撮った。そして中盤に差し掛かった頃、司会者から、案内があった
「新郎新婦様より、ビンゴ大会を行うとの話があり。急きょお話があり執り行いますので、私の所へビンゴカードを受け取りに着て頂けますでしょうか?」
全員、ビンゴカードを受け取った。司会者から商品についての説明があった。
「一等トゥーナ島観光券+シャルム国際ホテル宿泊。二等シャルム国際ホテル内レストランペア食事券。三等シャルム国際ホテル内デザートバイキングペア食事券を事です。ビンゴが始まりお客様から歓声が上がり盛り上がり始めた。サラは色ドレスに着替える為。一度部屋に戻り衣装替えをした。
サラがヒロにエスコートされ黄色の色ドレスで登場すると場内が沸いた。二人のお祝いパーティーが終わり、ヒロとサラは入り口に立ちお客様の見送りをした。見送りが終わると二人は部屋に戻り。服を着替えベッドに転がった。疲れたのか二人とも眠ってしまった。どのくらい寝ただろうか?マーガレットが夕食の準備ができたので起こしに来てくれた。
「ヒロ様。お嬢様。夕食の準備が出来ておりますので。食堂までお越しください。
「はい」
「サラさん。夕食を頂きに行きますか?」
「はい。行きましょうか」
ヒロとサラは。夕食を頂きに食堂に向かった。夕食を頂きくつろいでいると国王様が来られサラにドレス姿。奇麗で感動したと伝えた。サラは喜んだ。サラはお風呂に入り特についた。ヒロは家に帰りお風呂に入り床に就いた。
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入籍して二日後の十月十七日。二人にとって忘れられない事件が起こった。
二人はいつものように。大学で授業を受け。ヒロが六限で終わりだったので先に帰り結婚指輪を取りに行き。シャルム駅でサラを乗せてお屋敷まで乗せて帰る予定をしていた。サラは、マリア、サツキ、ミーナの四人でシャルム駅を降り。バスロータリーを歩いていた時、五人の男たちに囲まれ。サラは背後からナイフを突きつけられた。
「サラ・ティフォリアさんお久しぶりですね」
サラは。後ろを振り返り。驚いた顔をした。」
「あなたはシモンズ」
「名前を憶えてくれていただきありがとうございます」
「私に何の御用ですか?」
「僕が君に用があるから」
「!キングス」
サラは表情をこわばらせた。
「友達に怪我をさせたくなかったら。おとなしくしてもらえますか?」
「わかりました」
「マリアさん。何処に行くのですか?」
「私はここまでの約束」
「マリア。ここまでの約束って。またサラをキングスに売ったの?」
「マリアさんは。新型の携帯欲しさに。サラ王女を呼び出してくれたのだね」
サラ。サツキ。ミーナが同時に叫んだ。
「!マリア」
「………………」
四人はワゴンにのせられ。キングスの父親が管理する倉庫に連れていかれた。
「キングス。私に用があるのでしょう。三人を放してあげなさいよ」
「はなして警察に通報されても困るので。要件が終わるまでここにいてもらいますよ。オイ三人を縄で縛れ」
「はい」
マリア、サツキ、ミーナの三人は縄で縛られた。
「サラ。私達を置いて逃げて」
「うるさい。黙れ。」
「キャー」
キングスは。サツキを平手打ちした。
「サツキ。キングス三人には手を出さないで」
「おとなしくしていれば手を出しませんよ。サラ王女」
「キングス。あなたは何をしたいのですか?」
「君を傷物して誰も君と結婚できなくしてあげるよ」
「サラ逃げて。私達にかまわず逃げてあなたがこれ以上。傷着くことはないのよ」
「うるさい。黙らないか」
「キャ〜。サラ逃げて」
「そうはいかないよ」
シモンズがサラの背後からスタンガンを首元に充てようとしたが。サラが右手で払った。
「バチ〜ン」
サラの右腕に装着していたメディカルスーツから火花が散った。
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病院で待機していたA二〇一が。サラのメディカルスーツの異常を感じ。警護ロボ二台と一緒に病院を出た。
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「うっ」
サラは右腕を抑え。両ひざをつき倒れそうになったが。おなかの子を守ろうと必死でこらえたが。再び背後からスタンガンを当てられ。棒立ちになってしまった。シモンズはチャンスとばかりに。サラの左顔面に。ナックルダスターを手に付けたこぶしを振り上げた。「ガキッ」
サラは。たまらず右腕から倒れていきお腹に衝撃を。与えないように完治していない右手を出し最大限かばおうとしたが右腕に激痛が走り。そのまま右前顔面から倒れていった。
「サラ〜。」
サツキとミーナが叫んだが。サラは意識が遠のいてきていて叫び声がかすかに聞こえたぐらいだった。キングスは喜びスマートフォンでサラが傷着いた姿を撮り。全員でサラを蹴るように指示しその様子をスマートフォンで撮影した。サラは必死で体を丸くして、お腹をかばいながらお腹をけらないでと。叫んだ。倉庫のドアが開いた。
「警察だ。全員武器を捨て両手を上にあげろ」
キングスとシモンズは警察に踏み込まれ驚いていた。
「なぜ警察が?この場所に」
「サラ〜」
警備ロボがサラの前に立ちシモンズ達の攻撃を防御した。
ヒロがサラを抱き上げようとした。
「ヒロサマ。サラサマヲウゴカサナイデクダサイ」
A二〇一が叫んだ。ヒロはサラを抱き上げずキングスに叫んだ。
「キングス。人の嫁になんてことするのだ」
「人の嫁。お前。サラといつ結婚したのだ」
「二日前に入籍した。お前だけは絶対許さない。ヒロはサラの左薬指に結婚指輪をはめた。なんでお前はサラさんを道具としか考えないのだ。サラだってどこにでもいる普通の女の子なのだぞ。もしもの事を呼んだ」
ヒロは。キングスに近づき殴りかかろうとしたが警察が叫んだ。
「アガパンサスさん。マレイドアさんに手を出したら。あなたも。逮捕されますので」
ヒロは。キングスを殴ることをやめた。その後。A二〇一にお腹の子の状態を聞いたが今は何とも言えませんとの事で、病院にサラを搬送した。キングスは。シモンズと仲間三人は警察に連行されていった。ヒロは自分の車で病院に向かった。マリア、サツキ、ミーナの三人は救急車で念のため病院に搬送された。ヒロが病院に着いて、受付でサラの病室を聞いていると、ティモルが寄ってきた。
「サラさん。八〇二六号室だけど。何があったの?」
「今は話したくない。今はサラのそばにいてあげたい」
「分かった。何か必要なものがあればメールちょうだい」
「母さん。ありがとう」
「あっ。そうそうお腹の子。大丈夫だって。でも。お腹を腕でかばったのか腕があざだらけになっていたそうだよ。」
ヒロは。お腹の子供が無事なので少しほっとした。そしてサラのいる八〇二六号室に入ったが。半袖の病院服から。肌が露出する部分すべてに包帯が巻いてある。サラの姿を見てすごく悲しくなった。ヒロはもう少し早く駅についていれば。こんなことにはならなかったと思い悔しさと後悔で胸がいっぱいになった。しばらくしてサツキ・ミーナが来て。サラの状態を見に来たが。その姿を見て絶句してしまった。ヒロは二人にサラは大丈夫だから帰って。ゆっくり休んでと言って家に帰した。帰る間際に電車の到着時間を聞いた。
入れ替わりで主治医の先生とクレマとマーガレットが病室に入ってきた。クレマはサラの姿を見て。あまりにひどい姿だったので。その場に倒れこんでしまった。
「奥様。大丈夫ですか?」
「クレマ様」
ヒロは。補助ベッドを出し。マーガレットと一緒にクレマを寝かせた。
「ヒロさん。マーガレットごめんなさい。サラの姿を見て何かいたたまれなくなって」
「クレマ様。すいません。あと五分早く駅についていたらこんなことにはならずに済んだのにほんと申し訳ないです」
ヒロは。クレマに謝罪した。
「ヒロさん。自分を責めないでください。サラもそれを望んでないと思いますので。スレイロー先生。サラのけがの状態の説明。すいませんがこのままで聞かせてもらってもよろしいですか?」
「はい。わかりました。説明させて頂きます」
「よろしくお願いします」
「サラ様のけがの状態の説明を始めます。左顔面に打撃痕があり。左頬が腫れ。下あごが粉砕骨折し口の中も内出血していましたので。下あごに固定のプレートを入れ。口腔内は止血をしています。メディカルスーツは。心臓部の電子機器が破損していましたので。今。新しいメディカルスーツを発注しました。三日で納品されます。倒れた衝撃で右頭部から顔面にかけて損傷していましたので。薬を塗った被覆材を張っています。右腕はプレートが入っているので骨折はしなかったもののプレートが少しずれたので再手術をしました」
「……………」
全員。沈黙した。
「あと全身にけられた後のあざが無数にあります。胎児に関しては少し胎盤からの出血はみられますが安静にしていれば大丈夫です。しっかり、しゃべれるようになるまで三週間。入院は一か月。完治するまで五か月です」
「わかりました。スレイロー先生ありがとうございます」
先生は説明を終えると部屋から出て行った。
「ヒロさん。サラをお任せしてよろしいですか?」
「はい」
「マーガレット。お屋敷に戻ります」
「はい。奥様」
その時。病室のドアをノックする音がした。マーガレットがドアを開けるとマレイドア夫妻が立っていた。クレマを見るなり。膝を落とし。謝罪した」
「クレマ様。キングスがサラ王女に対して怪我をさせて申し訳ありません」
クレマは険しい表情をしながら話をした。
「申し訳ありませんが。今日はお引き取り願いますか?」
マレイドア夫妻は。困った顔をしたが。クレマの言葉に頷いた。
「わかりました。後日。お屋敷にお伺いいたします」
マレイドア夫妻は。後日お屋敷に行くことを伝え帰っていった。
クレマもヒロにサラの事をお願いして病室を出てお屋敷に戻った。ティモルが仕事終わりに様子を見に来てくれた。
「ヒロ。サラさん目を覚ましたかい」
「まだ気を失ったまま」
「何か必要なものあるかい」
「出来たらノートパソコンとケーブルを持ってきてもらえたら助かります」
「今日必要?」
「ううん。明日でいいですので」
「わかった。明日持ってくる」
「お願いします。今日は家に帰りませんので」
「はい。見守ってあげてください」
「母さん。ありがとう」
「頑張ってね。おやすみ」
「おやすみなさい」
ヒロはサラの顔を見ながら(どうしてサラが何故こんなにひどいことをされないといけないのかすごく理不尽に思えた。消灯時間を迎えて、ヒロも少し仮眠をとることにして。詰所から毛布を一枚借りて。椅子に座り仮眠した。早朝、サラは目を覚ましヒロが横に座っているのに気づき声を出して呼んだが。ヒロには届かなかったので、左手でヒロを触ったら起きてもらえるかなと思い。頑張って手を伸ばしヒロの手を触った。
「!サラさん気がついた。よかった」
ヒロは涙ぐんだ。
「ひ・ろ・し・ん・ぱ・い・か・け・て・ご・め・ん・な・さ・い」
「体。大丈夫?」
「う・ご・く・と・い・た・い・け・ど・だ・い・じょ・う・ぶ・で・す」
「意識戻ってよかった。本当に良かった」
「ひ・ろ・こ・ど・も・ま・も・れ・な・く・て・ご・め・ん・な・さ・い」
「大丈夫だよ?」
「?」
ヒロは、サラの手をおなかに充ててあげた。
「う・ご・い・て・る・よ・かっ・た」
サラはお腹の子が無事だったことを喜んで涙があふれてきた。ヒロは顔を近づけ。サラの背中をさすり。安静にしとくようにと伝え。今は寝るのが一番だからと言ってサラを寝かせた。サラはお腹から手を下ろすとき薬指に違和感があったので。顔の近くまで手を持ってきて確認した。
「!あっ・けっ・こ・ん・ゆ・び・わ・ひ・ろ・あ・り・が・と・う」
「いいよ。ゆっくりお休み」
「う・ん・お・や・す・み」
サラは。ヒロが見守ってくれている安心感と。痛みからくる疲労ですぐに眠りについた。
七時になり、看護婦さんが検診と点滴に来た。
「奥さん気がつかれましたか?」
「はい。朝方気がつきました。今は寝ています」
「それはよかったですね。できるだけ安静にしてあげてください」
「はい。わかりましたありがとうございます」
看護婦さんは、点滴と傷口の消毒と包帯の交換を行って、あとで手?敵を外しに来ますと言って帰っていった。入れ替わりでティモルが病室に来た。
「ヒロ。おはよう」
「おはようございます」
「パソコンとケーブル持ってきたよ」
「母さん。ありがとう」
「サラさん。どう?」
「朝方起きたけど。だいぶ痛そうで。話するのに。苦労していた」
「それはしょうがないよ。下あごが骨折して。口の中が腫れているから。でも気がついてよかったね」
「うん。僕もすごくほっとした」
「あんまり無理しないようにね。何かあったら連絡して」
「ありがとう。仕事頑張ってください」
「うん」
ティモルは仕事に入った。ヒロはパソコンを開いて、遠隔で授業を受けレポートを手出した。昼過ぎにマーガレットが来て。サラの着替え等を持ってきた。ちょうどその頃。サラが目を覚まして起こしてほしと言ったので。ベッドの上の部分だけを起こし。そこのサラを座らせる感じで、寝かせた。
「サラ。少しはましになった?」
「あ・さ・よ・り・は・い・た・く・な・い・か・な」
「何かしてほしいことある?」
「よ・こ・に・す・わっ・て・ほ・し・い」
「いいよ」
ヒロはサラの左横にすってあげると。サラはヒロの右肩に頭をもたれさせた。
マーガレットが用事を済ませ帰ろうとしたらサラがありがとうと言ってマーガレットを見送った。マーガレットは、早く元気になってくださいといって帰っていった。
それから三週間でしっかり話せるようになり。その二週間後には退院し。翌週の月曜日から元気に大学に通い始めた。その間にキグナスの裁判があり。マレイドア家より示談での話の申し入れがあり。ティフォリア家は受けることにした。裁判でマリアの行動も問題ありと判断され。アスクレピアス家からも。ティフォリア家に謝罪があった。
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二〇五五年十一月十四日七時四十五分シャルム駅バス亭
「お兄ちゃん。サラさんが待っているよ」
「ほんとだ」
「サラお姉さん。おはようございます」
「おはようございます。行ってらっしゃい」
「行ってきます」
「ヒロさん。おはようございます」
「おはようございます。顎と右腕の調子はどうですか?」
「うん。まだプレートは入っているけど、昨日。ロボットさんに右腕は少しずつ。動かしてみてくださいと言われたので。今日からメディカルスーツを付けたままですけど。ならしていこうかなと」
「サラ。無理しない程度にしてください」
「はい。わかりました。それよりさっき。マリーちゃんに。サラお姉さんと言われて。すごく違和感あったけど。間違いではないものね」
「そうだね。僕はびっくりして何も言えなかったですけど」
「久しぶりの学校楽しみ」
「約一か月ぶりだからね」
「うん」
二人は電車に乗り。それぞれの大学に向かった。十二月に入り。二人はかねてから準備を進めていた。クレマ・ティモルの同窓会兼誕生日会を十日の土曜日に設定してホワイトペッパーに予約を入れた。
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二〇五五年十二月十日七時アガパンサス家
「サラさん。そろそろ仕事に行くけど?」
「行ってらっしゃい。できれば十四時には来られるようにお願いします」
「わかりました。ちゃんと誕生日プレゼント忘れずに持って行きます」
「お願いします」
「ところで今日はどうするの?」
「どうしようかな?ヒロ。今日は仕事ラストまで?」
「一応。シフト上は中抜けするからラストになっていたけど」
「とりあえず今日は帰ります」
「わかった。もし予定が変われば、メールするね。行ってきます」
「うん。またあとでね。行ってらっしゃい」
ヒロは、仕事に出かけた。サラは少しだけ荷物をかたづけて鞄に詰めて、今日のパーティーまで時間があるのでひと眠りすることにした。十二時になりマーガレットが迎えに来てくれた。一度お屋敷に戻り。荷物を下ろし、クレマを乗せオーシャンビッグショッピングセンターに向かった。サラはマーガレットが車を駐車場に止めると、先に五階にあるホワイトペッパーに向かい。店長のエレーナさんと今日の打ち合わせをした。
「エレーナさん。今日は予約を受けてくださいありがとうございました」
「いいえ。こちらこそ予約を頂きありがとうございます。サラさん。今日は何人ぐらいになりそう?」
「一応。十人の予定ですが。もう皆さん来られていますか?
「全員かどうかはわからないけどティモルを入れて六人来ているけど
「その人数でしたら。そろっているようですので料理のほうお願いします」
「分かりました」
エレーナと話している時。クレマとマーガレットが入店してきた。
「お母様。奥のテーブルに行ってもらえますか?」
「サラ。奥のテーブルに行けばいいのね」
「はい」
「お母様ってもしかしてクレマ?」
「!私の名前をご存じなの……」
クレマは少し驚いた顔をしてサラと話している女性を見た。
「もしかして。エレーナ?」
「そう。私の事。覚えてくれていたの」
エレーナは嬉しそうな顔をした。
「忘れることはないですよ。ということは。サラ。あなた何かしようとしているでしょう」
「お母様。ここは何も聞かずに奥のテーブルへお願いします。お叱りは帰ってから聞きますので」
「分かりました。奥のテーブルへ行きます」
クレマとマーガレットは奥のテーブルに行った瞬間。歓声が上がった。
「ところでサラさん失礼かと思うのだけど、以前よりふっくらしたというかまさかと思うけど」
「!………………」
サラは。教えてもいいのか悩んだが。今日の予約を受けてくれたエレーナに本当の事を伝える事にした。
「実は。今妊娠五か月なのです。すいませんが。エレーナさん妊娠の事は他言無用でお願いします。一応。学校を卒業するまでは公表しないことになっているので」
エレーナは。驚いた顔をした。
「えっ。もしかしてヒロ君との子供?お母さんも知っているの?」
「はい。十月に入籍もしています」
「そうなの。反対されなかった?」
「そうなのですよ。反対されるどころか喜んでくれて。私も彼も誰一人として怒られなかったので。不思議なのですよね」
「私にはわからない」
「普通はそうだと思います」
「店長。予約のお客様の料理が出来ました」
「はい。サラさん。妊娠の事教えてくれてありがとう。大学卒業するまで。口外しないので。安心してください」
「ありがとうございます」
エレーナは料理をテーブルに運んだ。サラも一緒について行き。マーガレットの向かいに座った。
「マーガレット。お母様怒っていません?」
「いいえ。奥様は皆さまの顔を見たら。大学時代の話を嬉しそうに話しておられます。私。あんなに楽しそうな奥様。初めて見ました」
「よかった」
「サラさん。ケーキはどのタイミングで出したらいい?」
「はい。彼が来た後でお願いします」
「分かりました」
十四時になったがヒロが来ないので。サラがそわそわしてきた。
「お嬢様。一度ヒロ様にメールをなされてはいかがですか?」
「!そうね。やきもきしてもしょうがないものね。そうします」
サラはヒロにメールを送った。すぐ返事があり。あと十分で店につきますとの事だった。十分後。ヒロが店に到着した。
「ヒロ君。久しぶりなんか男らしくなったね」
「エレーナさん。ご無沙汰しています」
「奥さん。そわそわしながらお待ちかねよ」
「!そうですか。すいません」
「ヒロ。遅いです」
「サラごめん。十四時まで仕事していたから。お詫びに晩御飯ごちそうするから」
「!えっ。仕事戻らなくていいの?」
「店長が。明日と交代しようということで」
「よし。夜景の見えるレストランでも連れて行ってもらおうかな?」
「わかりました」
「ヒロ。お前も来る予定だったのかい?」
「うん。顔出しと昼御飯だけの予定だったけど」
エレーナがバースデイケーキを二つ持ってきて、クレマとティモルの前に置いた。
「誕生日は違いますけど。お母様。ティモルお母様誕生日おめでとうございます。これは私達夫婦からのプレゼントです。お受け取り下さい」
「サラさん。ヒロありがとう」
「サラ。ヒロさんありがとう」
「何かしら。サラ。ここで開けてもいいですか?」
「いいですよ。喜んでもらえると嬉しいのですが」
クレマとティモルは、箱を開けてびっくりした、デザイン違いのラピスラズリのネックレスが入っていた。
「二人ともありがと」
「ほんとは。もっときれいなものを買いたかったのですが。私達には。少し手が出なくて買えなくてすいません」
「サラさん。気持ちだけで十分です」
「ありがとうございます」
クレマとティモルは、二人にお礼を言った。
「喜んでもらえてうれしいです。あと申し訳ないですが、ヒロの食事が済んだら二人でデートしますので、途中で抜けさせてもらいます」
ヒロの食事が終わったので二人は、ティモルとクレマ、同窓会に参加してくれた方に挨拶をして、マーガレットに後をお願いして、デートに出かけた。
「ヒロ。どこに行きますか?」
「ホラー映画でも見ますか」
「ヒロ。何か言いました?」
「学園物の映画でも見ませんか?」
「そうですね。とりあえず映画館に行って決めましょうか」
ヒロとサラはショッピングセンターの中にあるミニシアターに行って上映している映画を見て決めることにした。
「ヒロ。この映画知っているデブリモンスター」
「うん。知っているよ。宇宙ゴミからモンスターが出来て宇宙船を襲う映画」
「この映画は?」
「ラブラブ学園高校編?わからない。高校の恋愛ものですか?」
「おっしい。恋愛ものですけど。三人の女子高生があの手この手で憧れの男の子を落とす話」
「この映画見るの?」
「ヒロには刺激が強すぎて女の子への見る目が変わるとだめだからやめておく」
「ではこの映画はどう?シャディとウエンディ姉妹の高速鉄道殺人事件」
「面白そうですね。これにしましょうか?」
ヒロとサラは入場券を購入して上映までの時間をカフェに行って時間をつぶした。
「ところで。サラ。エレーナさんに僕たちの事話した?」
「どうして?」
サラは。少し困った顔をした。
「僕に。奥で奥さんがお待ちですよ。と言っていたので」
サラは。すまなそうな顔をして話した。
「ヒロと入籍して事と妊娠していることを話した」
ヒロは困惑した顔をした。
「ごめんなさい」
「話してしまったことは訂正できないし。エレーナさんを信頼できると思って。サラも話をしたと思っているのでよしとしましょうか」
「ヒロ。ありがとう。大事な事。勝手に話してごめんなさい」
「その話は。終わりにしましょう」
サラは。すまなそうな顔をしながら頷いた。それから二人は。映画の上映に合わせ。映画館に入った。映画が始まり。スリルあり。笑いありの二時間でヒロもサラもとても楽しい時間を過ごした。
映画を見終わり。シャルムの高台にあるレストランに向かう車の中で映画の話で盛り上がった。
「最後のどんでん返し驚いたね」
「まさか、探偵さんのお手伝いしてくれていた。アシスタントが犯人だなんて思わなかった。ヒロさんは犯人分かっていました?」
「この人かなというのはあったけど確信は持てなかった」
「ヒロさんでも犯人特定できなかったのだね」
「うん。わからなった。サラ。もうすぐレストランに着くよ」
「はい。シィーズカルナス久しぶりだな」
「!サラ。この店来たことあるの?」
「!あっ。ごめんなさい。伝えていませんでした。シィーズカルナスレストラン。お母様のお気に入りの店で以前は月一回必ず来ていたの。でもどうゆうわけか三月に行ったのを最後に行かなくなりました」
「何かあったのですかね?」
「私にはわからないです。でも。せっかくここまで来たから入りましょうか?」
「そうだね」
ヒロとサラはシィーズカルナスレストランに入店した。
「いらっしゃいませ」
「二名ですけど席開いていますか?」
「!サラ様。お久しぶりです」
「ヴィクトリカさん。お久しぶりです」
「サラ様。以前のようにシャルローズと呼んでくださっても構いませんが」
「長い間。来ていないので名前で呼ぶのはどうかと思いまして」
「お気遣いいただきありがとうございます。隣におられるのは彼氏さんですか?」
「いいえ。主人のヒロ・アガパンサスです」
「!えっ。サラ様ご結婚されたのですか?」
ヴィクトリカは。すごく驚いた顔をした。
「はい。十月に入籍しました」
「そうなのですか。立ち話も申し訳ないのでお席にご案内します」
ヒロとサラは、シャルムの夜景が見える席に案内された。
「サラ様。いらっしゃいませ」
「エバートンさん。お久しぶりです。今日はアンガスビーフのステーキを頂きに来ました」
「サラ様。申し訳ありません。今。アンガスビーフを仕入れてないので」
「!えっ。どういう事ですか?」
「実は。三月にオーナーが変わってしまい。今。取り扱っているのはA五ランク以上の国産牛しか取り扱っていないのです」
「三月にオーナーが変わった?お母様が行かなくなった月と同じ?今のオーナーはどなたがされているのですか?」
「実はマレイドア家のキングスさんがオーナーです」
「!キングスがオーナー?」
「サラさん」
「エバートンさんごめんなさい。きっと私の責任です」
「サラ様の責任?どういうことですか?」
「…………」
「エバートンさんでしたかね。申し訳ないのですが。そのことについては触れないであげてください。サラ。大丈夫?」
「うん。エバートンさん。折を見てみてお話しします」
「わかりました」
「サラさん。料理どうしますか?」
「私は。サーロインステーキ二〇〇グラムでミディアム。パン。スープ。サラダでお願いします」
「僕はサーロインステーキ三〇〇グラムでミディアムウェルダン。パン。スープ。サラダでお願いします。」
「分かりました」
「ヒロ。私。お母様に電話してきます」
「はい」
サラが。クレマに電話をかけ終わり席に戻ってきた。
「クレマ様。何か言っていた」
「うん。交渉してみると言っていたけど、経営は誰にして貰うのって聞かれたからヒロって答えましたので」
「!………わかりました。決まりましたら。飲食店経営勉強します」
「ごめんね。仕事増やす形になるけど」
「いいよ。もともと。経営勉強をするつもりでいましたので」
「ありがとう。よろしくお願いします」
「はい」
「お待たせしました。サーロインステーキ二〇〇グラムミディアムとパン。スープ。サラダです」
「おいしそう」
こちらがサーロインステーキ三〇〇グラム。ミディアムウェルダンになります」
「ありがとう」
「ヒロ。ミディアムウェルダン?」
「ミディアムはちょっとって感じだから」
「そうなのですね。ヒロ。少し味見してもいいですか?」
「はい」
ヒロは、肉を切りサラに渡した。
「うんいい感じ。次。注文する時。私もミディアムウェルダンにしようかな」
二人は。さすがにいいお肉だねと言いながらおいしく頂いた。
「ヒロ。聞きそびれていたことがあって。今聞いてもいいですか?」
「僕が答えられることでしたら」
「マレイドア家の携帯電話の倉庫の事なのですけど」
「その件ですか?」
「はい。私達が倉庫にいることが何故わかったのかなと不思議で。あの日の事は。私も触れたくなくて。聞きそびれていたのですが?」
「A二〇一ですよ」
「ロボットさん?」
「そう。サラがスタンガンを当てられた時。メディカルスーツの回路が壊れて。A二〇一の緊急システムが作動して。特別警察と僕の所へ連絡が行き。その時に所在地も緊急メールで送られてきた。だから到着するまでの時間か速かった。だからお腹の子も助かった」
「そういう事だったのですね」
「ヒロ。駆けつけてくれてありがとう」
「そういえば。右顎のプレート。いつ外れる予定ですか?」
「出産が近いのでプレートは外さない方向で行くみたいです」
「そうですか?」
食後のデザートをお願いしようと思ったらシャルローズさんがドリンクを持ってきた。
「当店からのサービスです」
「!ありがとう」
「サラさん。このドリンク何ですか?」
「カルベネレモンサワー。一応普通のソフトドリンクです」
「カルベネレモンサワー。いつも飲んでいるの?」
「ここに来たらいつも注文していたの」
「そう。頂きます!おいしいね」
「おいしいでしょう。ここの特製ドリンクでエバートンさんが考案したの」
「うん。凄いに尽きる」
二人はデザートとドリンクを頂き。お礼を言ってお会計をすまし。ヒロの自宅に向かった。帰宅したら、ティモルにネックレスのお礼を言われた。
「二人ともありがとう」
「いいえ。いつもお世話になってばかりなので」
「ううん。すごくうれしかったし。記念になるし」
「喜んでもらえて光栄です」
「サラさん。予定日はいつになっているの?」
「一応。六月十四日です」
「来年のカレンダー。購入したので忘れないように書いておきます」
「ありがとうございます」
「お礼はいらないですよ。私が忘れない為のものだから。それよりお風呂入りますか」
「はい。入ります。ヒロさん。一緒に入りませんか?」
「はい。ご一緒させて頂きます」
ヒロとサラはお風呂に入った。
「ヒロさん。私の女性としての魅力ってないかな」
「どうしたの?急にそんなこと言いだして。僕は十分魅力だと思うけど」
「今までね。お付き合いしていた人。すぐ求めてくるけど。ヒロは求めてこないから。なぜかなって」
「その件については。僕自身もほかの人と変わらないよ」
「えっ。ほかの人と同じ」
「そうだよ。ほんとは僕も求めたいけど。でもくつろいでいる時に手を出すのもどうかと思って。それとサラさんの気持ちを大事にしたいから。ただそれだけ」
「ヒロさんの気持ちわかってほっとした。結婚したとはいえなかなか聞きにくくて。へんなこと聞いてごめんね」
「ううん。いいよ。一緒にいる時間が長くなると。不思議と相手の違う部分が見えてくるから。これからも出てきたら聞いてくれていいし。僕も聞くことがあると思うから」
「そうね。もとは他人だからわからないことがあっても当たり前だし。夫婦って一つ一つの積み重ねていくことで。お互いの事を理解しあえるかな?」
「そうだね。一つ一つ積み重ねて両親を超えられる夫婦になれればいいかなと思う」
「そうね。私も両親を超えられる夫婦になるよう努力しようかな?」
「うん。お互い頑張っていこうね」
「うん」
二人はお風呂から上がり部屋に戻って、どちらから誘うことなく。久しぶりに愛し合った。お腹の子に気を使いながら。翌日。ヒロはサラをお屋敷に送り。アルバイト先に向かった。サラは昨日の件で、確認を含めてクレマと話をした。
「お母様。マレイドア家からの慰謝料の中にシィーズカルナスの経営権の件。弁護士さん何か言っておられましたか?」
「サラには伝えていなかったけど。向こうの弁護士さんも十月の傷害の件だけと聞いていたらしくて。当家からサラが受けたキングスさんからからの嫌がらせ等を伝えたところ。本人確認をして。いろいろなことが出てきてマレイドア夫妻も落胆されていて。こちらのいいようにと言われたのですが。こちらの請求額がマレイドア家の慰謝料の予定額より低いので。これでは国民からの批判を受け。携帯会社への影響が出ると判断して(実際にキングスが逮捕されたとき株価が二割下がった)再考をすることになったの。その中にシィーズカルナスの経営権も入れてもらうようにお願いしました」
「ありがとうございます」
「サラ。でもどうしてシィーズカルナスの経営権を?」
「自分の中で。すごく責任を感じているから。以前のシィーズカルナスに戻したいと思っているので」
「一度離れてしまったお客様を戻すのは大変だと思うけど。あなた達ならできると思っていますので。もし経営権を譲渡してもらえたら頑張ってくださいね」
「はい。その時は頑張ります。ところでお母様。ヒロとの結婚すんなり許してくださった理由を聞きたいのですが?」
「あら。サラ結婚反対してほしかったのですか?」
「いえそうでなくて。あまりにもスムーズに行き過ぎているので不思議に思っているのです」
「まあそうですね。反対するにも妊娠してしまって以上仕方ないですし。どうせ反対しても子供は産むというと思いましたし。相手がヒロさんですしね」
「そうですかわかりました。ヒロさんにもそう伝えておきます」
「そうして頂けると助かります」
サラはあまり追及せずに話をしなかった。この事をヒロにメールを送り、何かあれば話をしてくれると思いますと一言付け加えた。
数日が過ぎ。クリスマスイブの日がやってきた。今年は土曜日がクリスマスイブなので、町中がにぎやかでクリスマス一色になっていた。ヒロとサラも映画を見てショピングを楽しんでいたら、マーガレットから電話が入った。
「お嬢様。大変です。旦那様が。旦那様が倒れられました」
「!えっ。お父様が」
サラは。驚いた顔をして。マーガレットの話を聞いた。
「今からセントウイル病院に搬送されます。詳しくはあとでお伝えします」
「私もヒロとすぐに病院に向かいます」
「分かりました。病院でお待ちしております」
「ヒロ。お父様が倒れたらしいの…。それでね…。セントウイル病院に搬送されるそうです。一緒に行ってもらえますか」
「わかった。行こう」
ヒロとサラはマレイノアにあるセントウイル病院に向かった。
セントウイル病院。マレイノアにある最先端高度医療システム完備の病院。主に皇族の人たちの専門の病院になっていて、一般の人も受けられるが。国営の病院の紹介がないと診察してもらえない。それだけに当然一般の人が病院の中に立ち入ることもできない。ヒロとサラは病院に到着したが。サラは入館証を持っているが。ヒロはサラの夫とはいえ。入管証は個別発行になっているので。入ることは出来ない。入館証を持っているサラに手続きして貰い。仮の入館所を作ってもらいやっと入館できた。
「サラ。ここの病院、セキュリティー厳しいね」
「仕方ないと思う。利用している人が皇族、政界、会社の社長など、病気が外部に漏れたら大変な騒ぎになる人たちが受診。入院したりしているので」
「そうか。国王様もそうだよね」
「そう。お父様が倒れたことが外部に漏れたら大変だもの」
「お嬢様。お待ちしていました」
「マーガレット。お父様の容態は?」
「すいません。私にはわかりません。今。奥様が主治医とお話しされています。奥様が、サラ達が来たら病室に案内してと。言われていますので、病室に向かいます。お部屋はA棟二〇一号室です」
サラは足早に病室に向かった。ヒロも後を追うように病室に向かった。
サラが病室に入ると、フローレンスが椅子に座り、お父様のほうを見ていた。
フローレンスはドアが開く音に気づき、サラと目が合った。
「お姉様」
「フローレンス」
二人は抱き合った。サラに抱かれたときフローレンスは泣き出した。
「お姉様。お父様大丈夫ですかね?」
「大丈夫。心配いらないって」
サラも、もらい泣きしそうになりながらも、ぐっとこらえてフローレンスを安心させるように努めた。そこにヒロとマーガレットが来て。四人で国王のようすをみていた。どのくらいたっただろうか。しばらくしてクレマが主治医からの説明を受けて病室に戻ってきた。
「お母様。お父様の容態はどうなのですか?」
「サラ。フローレンス。ヒロさん。心配かけさせてごめんなさい。お父様は過労で倒れたので一週間ほど入院したら大丈夫だそうです」
「よかった」
サラ。フローレンスは素直に喜んだが。ヒロはクレマの明るい対応に違和感を覚えた。クレマがみんなでお茶でもしましょうかと言った。ヒロは。僕が国王様を見ていますので四人で行ってきてくださいと言った。クレマがヒロにお願いしますと言って、四人で病室を出て行った時。ヒロが国王に話しかけた。
「国王様。これでよろしかったでしょうか」
国王はびっくりして。ヒロの顔を見た。
ヒロは。神妙な顔をしていた。
「ヒロ君。君はわしが起きていることに気がついておったのかい」
「はい。クレマ様が過労と言われたと時。一瞬国王様が反応されたので」
「君は観察力がいいの。そうじゃ。ヒロ君には本当の事を話しておこうと思って。ただ私が生きている間は他言無用でお願いしたい約束してもらえるかな?」
「約束は必ず守ります」
「ありがとう。それでは話をするとしよう」
国王様は。自分の病気の事、サラとキングスとの婚約の件。病気の件を話してくれた。ヒロはこれだけの事を自分だけに話してくれたわけを聞いた。
「国王様。何故僕だけに。大事なことを教えてくださるのですか?」
「それは君に全幅の信頼を置いているからだよ」
「僕はそんなに信頼される価値のある人間でしょうか?」
「少なくとも私とクレマは君の事を信頼しているけど」
「そうですか。私自身期待を裏切らないよう努めます」
「私から君にお願いがあるのだが」
「何でしょうか?」
「私が亡くなった後。クレマが王女として私の跡を継ぐが。サラにはクレマにない行動力がある。クレマのサポートが出来るようにしてあげてほしいのとヒロ君にもクレマとサラのサポートをしてあげてほしい」
「国王様。クレマ様やサラのサポート全力でやらせて頂きますので。安心して頂ければと思います」
「よろしく頼む。君をサラの婿として迎えられたことを本当に良かったと思う。サラを大事にしてあげてくれ。」
「はい。サラに一緒になってよかったと思われるぐらい大事にします」
「国王様。意識が戻ったことを伝えてきてもよろしいですか?」
「ああ。よろしく頼む」
ヒロは。国王様の意識が戻ったことを。みんなに伝えに行った。国王様の意識が戻ったことを伝えると。四人とも喜んで病室に飛んできた。そして国王と話をして、サラとフローレンスは泣いて喜んだ。
ヒロは。サラを連れて家に帰り。ティモルの作ってくれていた夕食を頂き。その後。買っておいたクリスマスケーキを頂いた。
「ヒロさん」
「何?」
「お父様ほんとに過労で倒れたのかな?」
「どうしてそう思うの?」
「どうしてだかわからないけど。違うような気がするの」
「主治医の先生が。過労の診断出したのだから」
「そうなのよね。でもお母様が明るくふるまっておられたのが気になって」
「そう言われてみたら。確かに変に明るかったね」
「そうでしょう。お母様何か隠している?」
「うん。どうだろう。もし深刻な病気だったら。きちんと話してくれると思うけど」
「そうだよね」
「サラ。クリスマスプレゼント」
「えっ。お互いプレゼントなしって言っていたよね」
「そのつもりだったけど。見ていたらほしくなって。開けてごらん」
「わあ〜。赤ちゃんとおそろいのパジャマ。ありがとう」
「気に入ってもらえてよかった」
「私。何も用意していないから。今晩?」
「えっ。そんなつもりで買ったのではないから」
「今日は何もしなくていいの?」
「お父さんの事で病院に行ったりしているから疲れているだろう」
「うん。お風呂一緒に入ろう?」
「はい。わかりました」
ヒロは。片付けをしてサラと一緒にお風呂に入り。床に就いた。翌日はサラをセントウイル病院に送り届けてからアルバイトにむかった。それから数日が立ち、ヒロに国王から電話があった。
「ヒロ君。実は入院が長引きそうで説明を考えているのだが、検査入院でもいいと思うか」
「国王様どのくらい入院が延びる可能性がありますか」
「最大二週間ぐらいと言っておった」
「そうですか。最初は検査入院ということで後半は検査結果が思わしくなかったので薬剤投与するための入院ということにしてはどうでしょうか?」
「なかなかいい案だ。そういう事にしよう。ありがとう」
「国王様。無理だけはなさらないようにお願いします」
「分かっておる。せめて孫の顔を見るまでは頑張らないと」
「国王様………………」
「くれぐれもサラに悟られないように」
「はい。気を付けます」
ヒロは二十時に仕事が終わり。サラに電話をした。
「ヒロさん。どうかされましたか?」
「仕事が終わったから。電話してみた」
「ふう〜ん。怪しい何か企んでない?」
「そうだね。企んでいるとしたら、今お屋敷の前にいることぐらいかな?」
「!えっ。うそ。今お屋敷の前にいるの?」
「うん。嘘だと思うのであれば窓から外を覗いてごらん」
「ほんとだ。来るなら来ると言ってくれればいいのに」
「たまには。こうゆうのもいいかなと思いましって」
「よくありません」
「そうですか。ではお暇させて頂きます」
「ヒロの意地悪。今すぐ行くから待っていて」
サラは。クレマにヒロが迎えに来ていると告げて。着替えだけをもって外に出ていった。外ではヒロがサラを出てくるのを待っていて、出てきたら思いっきり抱きしめた。
「ヒロさん。苦しいです」
「ごめん」
「いきなり抱きしめられたからびっくりしたよ。何かあった?」
「ううん。ただ急にサラに会いたくなって」
「変ですね。今まで一度もなかったのに」
「うん。自分でもよくわからない。ただ無性にサラに会いたくなって気がついたらお屋敷の前で……」
「分かりました。あとはヒロに家に行ってからね」
「ごめんね。急に押し掛けて」
「何があったか知りませんけど。まあ。私に会いに来てくれたからよしとしておきます。ヒロさん。明日の予定はどうなっています?」
「明日は。十時から十八時がアルバイトでその後サラって言う女の子と家でのんびりする予定です。
「分かりました」
家に着くと。ヒロがサラを連れて帰ってきたので、ティモルがびっくりした。
「今日。サラさん来る予定だった?」
「いいえ。ヒロに強引に連れてこられました」
「ヒロ珍しいね。何かあったのかい?」
「母さんまでサラと同じことを言っている」
「それは仕方ないと思うよ。ほんと今日のヒロとっても変だもの」
「そんなに変?」
「とっても変。今までのヒロと違う人みたい」
「そんなに違う?」
「別人と思うぐらい違う」
「そうか。そんなに違うのか?」
「ところでサラさん。夕食は?」
「今日は夕食も頂いて。シャワーも浴びて。あとは寝るだけだったのですが?」
「ヒロがいきなり来て連れてきたわけね」
「はい。」
「ほんと。今までではありえないことをしているね」
「サラさん。ごめんね」
「いいですよ。ヒロが会いたいって言うのも珍しいけど。私はうれしいですから」
ヒロとサラは家の中へ入り、サラは直接、部屋へ行き。ヒロは夕食を頂いてから部屋に戻った。ティモルが部屋に戻る前に、サラさんに言えない事があるなら私が話に乗るからと言ってくれたが大丈夫と言った。ヒロは心の中で、母さんや父さんクレマ様も、三年も前から知っていて、伏せていたかもしれないのにと思うと少し気持ちが楽になった。部屋に戻るとサラがベッドに座って待っていた。
「ヒロ。私に何か言えない事でもある?」
「特にないけど」
「それならいいけど」
「サラ。一生大事にするからね」と言ってヒロはサラを軽く抱きしめた
「うん。ありがとう」と言った瞬間にヒロにサラは押し倒された。
「ヒロ。今日はダメ」
「…………」
「ごめんね。何かいつもと違うから。ほんとごめん」
「ううん。僕のほうこそごめんね」
サラはヒロの要求を断った。ヒロは自分で断られた理由を理解していたが。欲望が理性を上回り。ヒロはサラに襲い掛かった。サラは無抵抗で。ヒロのなすがままになっていたが。途中から泣き出してしまった。ヒロの理性が戻りサラの服の乱れをなおし。いつものように腕枕をして。床に就いた、サラに一言言った。
「サラ。道具として扱ってごめんね」
サラは。何も言わずに床に就いた。
二〇五五年十二月三十一日午前六時
ヒロはサラをお屋敷まで送った。サラは何も言わずに車を降り屋敷の中へ入っていった。ヒロはサラが屋敷の中に入るのを確認すると。アルバイト先に向かった。車の中で、反省しながら走っているとサラからメールがあり、店についてから確認すると(十八時三十分お屋敷でお待ちしております。昨日のペナルティは。後日。改めて行うとして。今日は昨日みたいなことのないようにお願いします。怒っている妻よりと打ってあった。 ヒロは。十八時三十分にお屋敷にお迎えに参ります。猛反省している夫よりと返信し。仕事にはいった。サラは返信を受け取るとニコッと笑って、病院にお父様を迎えに行く準備をした。サラはマーガレットとフローレンスと一緒に病院に行くと。クレマが主治医の人と話をしていた。クレマはサラ達に気づくと話をした。
「国王様の入院が延びました。病室に行ってあげてください」
「!お父様の入院が延びたのですか。今日、退院祝いしようと思っていたのに?」
「サラ。仕方がありませんので、今度ということで」
「はい。わかりました」
サラは。二人を連れて。国王様の病室に向かった。すると奥から国王様が歩いてきて、体を動かしたいので。リハビリ室に行く途中だと言ったので。三人も一緒に行くことにした。
「!お父様どうかされましたか」
「部屋にスマートフォン忘れてきた」
「私がとってきます」
「お嬢様。私が参ります」
「いいえ。マーガレットは、お父様と一緒にリハビリ室に」
「はい。わかりました」
サラは。病室に国王のスマートフォンを取りに行った。病室に入り。スマートフォンを取ろうとした瞬間スマートフォンをベッドの上に落してしまった。その時偶然にも着信記録が表示されてしまった。サラの顔がこわばった。そこに輪見覚えのある電話番号が表示されていた。確認すると。発信十五時五十一分。通話時間六分と表示された。その時。病室のドアが開く音がした。サラは慌てて再びスマートフォンをベッドの上に落してしまった。
「!あらサラ。何しているの?」
「お父様がスマートフォンを忘れたから取りに来たのですが。手を滑らせて。落してしまいました。」
「そう」
サラが。クレマにスマートフォンを渡し。クレマは国王様がどこにいったか。サラに聞いた。
「今。お父様はリハビリ室で運動しているはずですが」
「運動?大丈夫かしら?サラ一緒に行きましょうか?」
「はい。お母様」
サラは、クレマと一緒にリハビリ室に向かった。リハビリ室に入ったら、国王はリハビリの担当者の人と軽いストレッチをしていた。クレマが近寄り、(あまり無理をなされないように)と伝えた。国王様は十分程汗を流し、四人の元へ近寄り、今日、退院できなかったけど私はこの通り元気だから心配いらんぞと伝えた。クレマは病院に残り。サラ。マーガレット。フローレンスはお屋敷に戻った。十八時三十分にヒロが迎えに来た。サラは。車に乗り込むと険しい顔をして。ヒロに質問をした。
「ヒロ。昨日お父様と電話でやり取りした?」
「…………」
「なぜ黙っているの?私に言えないことですか?」
「…………」
「ヒロ。スマートフォンを見せてもらえますか?」
「…………」
「ヒロ。」
サラは一言も話してくれないヒロの対応に苦労していた。そうこうしているうちにヒロの自宅に到着した。ヒロの家に着くとティモルに話をした。
「ティモルさん聞いてください」
「ヒロ。昨日お父様と連絡を取っていたはずなのですが。その事に関してずっと黙ったままで。一言も話をしてくれないのですが。どうしたらいいと思いますか?」
「サラさん。その連絡を取っていたという情報はどこからの情報ですか?」
「それは?…………。見てしまったのです。たまたまお父様のスマートフォンをベッドに落した時、偶然。発信履歴が開いてそこにヒロの電話番号が表示されたので」
「そうですか」
三人の間に長い沈黙が起こった。しびれを切らしサラが切り出した。
「ティモルさんも沈黙ですか?もしかして。私だけ仲間外れですか?お父様もお母様もティモルさんもヒロも、もしかしてアキレアさんも私に隠していることがあるのですね。それはいったい何ですか?」
ティモルは。すっと立ち上がり。キッチンにスマートフォンを取りに行きその場でクレマに電話した。
「クレマ。国王様の話なのだけど」
「お母様?」
サラは。ティモルの電話の相手が。クレマなのには驚いた。
「ティモル。何かありました。もしかしてサラに責められています」
ティモルは。知っていたのかという顔をした。
「そうなの。でもよくわかりましたね」
「今日病室で。サラがグロッサムのスマートフォンを見ていた気がしていたので気になってはいたのですが。こちらから切り出すことが出来なかったので。ご迷惑かけてごめんなさい。ティモル。サラと変わってもらっていいですか?」
「!クレマ。直接電話で話すつもり?」
ヒロが立ち上がって」ティモルに話かけた。
「母さん。クレマ様と話していいですか?」
「クレマ。ヒロがあなたと話がしたいと言っているのだけれど?」
「わかりました。変わって頂けますか」
ティモルはスマートフォンをヒロに渡した。
「ヒロです。クレマ様。すいませんこんなことになってしまって」
「いいえ。私が。サラが主人のスマートフォンを見てしまった可能性があることを伝えておけば何かしらの対応が出来たかと思います。ごめんなさいね」
「いいえ。クレマ様。例の件ですが。僕からサラに。国王様の事を話してもいいですか?」
クレマは。一瞬驚いた。
「…………。ヒロさん。サラにとってもあなたにとってもすごくつらいお話になりますが大丈夫ですか?」
「はい。ゆっくり時間を掛けながら説明しますので」
「わかりました。ヒロさんお願いしときます」
「はい。サラに理解してもらえたら。クレマ様にメールを入れるように伝えます」
「わかりました。よろしくお願いしときます」
「はい。失礼します」
「クレマなんて言っていた?」
「僕に。サラの事はお任せしますと言っていただきました」
ティモルは心配そうな顔して一言言った。
「そう。大丈夫かい」
「大丈夫。一応夫婦だから」
「そうはいっても」
「母さん。僕たちの事は僕たちで。対応しますので」
「まあ。何か吹っ切れたみたいだし。任せるとしてもサラさん身重の身だから気を使っておやりよ」
「はい。わかりました」
「サラ。部屋で話をするから二階へ上がって待っていて」
「はい。わかりました」
サラは。二階の部屋に行って、ヒロが来るのを待った。ヒロは二人分の飲み物をもって二階に上がった。部屋に入ると飲み物をテーブルに置き、サラをベッドに座らせ、自分もその横に座った。そして静かに話し始めた。
「サラ。今から話すことは絶対に他言無用だからね」
「はい。わかりました」
「もう一つ。僕が。サラが辛そうだなと思ったら話をやめます。いいですか?」
「私がつらくなったら。そこからの話は聞けないのですか?」
「いいえ。そうでなく落ち着いたら続きを放します」
「はい。わかりました」
「では話をします。僕と国王様の会話ですが、入院が延びたので。みんなに説明をする言葉が思いつかず。僕に電話を掛けられました。僕は最初の検査入院であとは検査結果が悪かったので薬剤投与という形ではどうですかとの会話をしました。ほんとのところは。国王様はすい臓がんで闘病はもう四年になると言っていた。サラが高校三年生の時。調子が悪かったので病院に行ったら。すい臓がんと診断され、がん細胞が肺や脳にも転移していて、余命一年と宣告されていたが、最新の技術、薬を使い今まで持ちこたえている状況。でも最近。薬にも限界が来ているらしく、がんの進行が止められなくなっているらしいので、今回海外の最新の治療薬を試してみるとのことで入院が延びたそうです」
サラが体を震わせ始めたので話をやめて。軽く抱きしめた。サラもヒロに抱き着き。お父様と言って泣き出した。ヒロは。サラが泣き止むまで抱きしめた。ティモルが夕食を運んできてテーブルに置いた。今日はシーフードドリアを用意してくれていて。(熱いうちに頂いて)と言ったので。サラの涙をぬぐってあげ一緒に夕食を頂いた。サラが落ち着いたのでヒロが続きを話し始めた。
「次に。キングスの件。」
サラの顔がきつくなった。
「サラが高校三年の時。どこから話が漏れたのか。国王様の病気の事を理由にして。キングスがサラとの結婚を申し込んだが。サラにはトランシスがいたので断ったが。トランシスと別れたのを機に婚約者としてお認めになった。だけどサラは。キングスが嫌で。交際しなかったのだよね。」
「はい」
「昨年の二月にサラへの睡眠薬を飲まして強姦したことを受け。さすがにその時は国王様もたまらず婚約を解消させた。そして今年の八月に僕たちは知り合い。子供を授かり結婚した。自分たちで事を運んだように思えていたけどこうなる事は。両方の両親の予想の範囲内だったそうです」
「予想の範囲内ですか?」
「そう。僕たちが知り合ってサラのお屋敷に行っていた時には。すでに僕の情報はサラの御両親には十分なぐらい集まっていたのだ。だからお付き合いに反対するどころか。同じ部屋で生活していると言っても何も言わず。サノバラに行っても同じ部屋。僕達も不思議に思っていたけれど。僕も納得してしまった。」
「そうか。お父様やお母様が思う通りに事が進んだという事?」
「そうだね。思う通りに進んだというより。たまたま僕たちが思っていた通りに動いただけで予想もしてなかったこともあった」
「十月の事件ね」
あの時は。クレマ様サラの姿見て倒れたから。僕はびっくりした。でも後でお腹の子だめだと思っていて国王様に孫の顔が見せられないと思ったら倒れたらしくて」
「私が気を失っている時。そんなことがあったの」
「だから今。国王様が待ち望んでいることは。孫の顔を見る事。昨日言われた時。自分の中でサラにこの事を話せないもどかしさがあって暴走してしまった。昨日は本当にごめんね」
「うん。私もヒロと同じ状況だったら暴走していたと思う」
ヒロ。サラはヒロに抱きつき泣いた。
「ヒロ。私頑張る。頑張って元気な赤ちゃん産んでお父様に抱っこしてもらう」
「うん」
ヒロは話終えると、サラと一緒に一階に降り夕食の片づけをした。ちょうどティモルがお風呂から出てきたところだった。
「二人とも話は終わったみたいだね。サラさん大丈夫かい。目が真っ赤だよ」
「今は大丈夫ですが。さっきまでものすごく泣いていましたから」
「ヒロ。お風呂どうする?シャワーだけにする?」
「サラ一緒に入る?」
「…………はい。入ります」
「お二人さん。あとはよろしく」
「はい。わかりました」
二人は。新年あけてから一緒にお風呂に入り。おなかを撫でながら。頑張って育ってねと言ってあげた。お風呂を上がり部屋に戻ると。ベランダに立ち、空に向かってお祈りをし、床に就いた。
二〇五六年一月一日七時
ヒロとサラは着替えて。お屋敷に向かい、ティフォリア家全員に新年のあいさつをした。サラの家族がサノバラに行くので。見送りをした。サラは往復二十時間の長旅は大変度と判断され。ヒロ家でお留守番になっていた。見送った後。ヒロの家に戻り。ティモル、アキレア。マリーに新年のあいさつをして。朝食を頂いた。
「ティモルさん。今日はお仕事ですか?」
「そうだよ。看護婦していると年度替わりも、関係ないし患者さんを。ほっておけないからね」
「そうですよね。病院では患者さんが待っていますからね」
「サラさん。今日。お父さんの所行くの?」
「はい。そのつもりですけど」
「大丈夫?」
「自信はないですが、何とか平常心で会えるようにしたいとは思っています」
「ヒロ。しっかりと、フォローしてあげてください」
「はい。わかりました」
「ところでヒロ。今日はアルバイトないの?」
「今日は、トラデスさんがお店を休みにしました」
「そうなのですね。明日からはどうなっていますか?」
「明日と明後日。店は十一時から十八時で勤務は十時から十七時まで」
「う〜ん。明日と明後日。お店についていってもいいですか?」
「!お店についてくる?」
「ダメですか?」
「トラデスさんに聞いてみる」
ヒロは、トラデスにメールを送った。すぐ返事が返ってきた。
「いいよ」と返事が返ってきた。
「サラ。トラデスさん。来てもいいと言ってくれているよ」
「よかった。明日。一緒に行きますのでよろしくお願いします」
「わかりました。そのつもりでいておきます」
「ヒロ。サラさん。私仕事に行くから」
「はい。行ってらっしゃいませ」
「行ってらっしゃい」
ヒロとサラは。ティモルを見送ると朝食の片付けをして、部屋に戻り少しゆっくりしてから、セントウイル病院に向かった。サラは車の中で目を閉じて、平常心を保てるように集中していた。病院に着き、セキリティーチェックを受け入館した。国王様の病室の前についた時。サラは深呼吸してドアをノックした。中から返事があったので、ドアを開け病室の中に入っていった。
「お父様。おはようございます」
「おはよう。サラ。サノバラへは行かなかったのかい?」
「はい。お母様が、往復で二十時間車に乗っているのはつらいだろうという事で、
ヒロの家でお留守番するようにと言われました」
「そうか。でもヒロ君がいるから寂しくはないか」
「そうですね」
「国王様。新年を迎え。今年は子供もできますし一層の努力をしたいと思います」
「!ヒロ。何をかしこまっているの?おもしろい」
「そうじゃよ。ヒロ君そんなにかしこまらなくても」
「すいません。国王様に新年のあいさつをと思いまして」
「ヒロ君。今日はなんかへんじゃないか?」
「変ですかね。普通に話をしているつもりなのですが?」
「ヒロ。変ですよ。でもおもしろくていいですけど」
「サラ。おもしろいはないと思うけど?」
「二人とも仲が良くていいの。うらやましい限りじゃ。せっかくの休みだから二人でどこかに行ったらどうじゃ」
「お父様。気を使っていただきありがとうございます。お言葉甘えさせて頂きます。ヒロにどこか連れて行ってもらいます」
「!えっ。予定外だな。どうしよう」
「ヒロ。この後の予定たてなかったの?」
「ごめん。病院で時間を使うと思っていたので?」
「お父様。また明日きますので」
「サラ。別に毎日来なくてもよいぞ」
「大丈夫です。私がお父様とお会いしたいので」
「分かったでも無理はするではないぞ」
「はい。わかりました。ヒロ行きましょうか?」
「はい。国王様失礼します」
「二人とも楽しんでくるとよい」
「ありがとうございます」
ヒロとサラは病室を出て、車に戻り、シャルムの町向かって走った」
「ヒロ。ありがとうね」
「ううん。国王様と楽に話せた?」
「おかげさまで。いつあの言葉考えたの?」
「とっさに考えた」
「さすがね。とっさに言えるなんて」
「そんなに褒められることでもないけど」
「でもそのおかげで私は助かりました」
サラが泣き出してしまったのでヒロがびっくりした。
「サラ。どうしたの?」
「ごめんね。急に泣き出して。昨日のこと思い出して。ほんとごめんなさい。私。ヒロやティモルさんにひどいことを言ってしまってだけど。二人ともは反論せずに最善の方法を探してくれたでしょう。申し訳なくて。本来謝罪するべきだったと思っていたのですが。言い出せなくて。ほんとにごめんなさい。迷惑ばかりかけているし。大事にして貰っているのに」
「サラ。それは違うよ。母さんは母さんの考えがあって。行動している事だし。僕はサラをお嫁さんにもらうと決めた時から。逆風は当然覚悟の上だし。秘密にしないこともある。サラも一般人と結婚することで嫌な思いもしたし。これからもそのことはついて回ると思う。だから。サラを大事にするし。大事にしていかないといけないと思っている。だからサラは僕に対しては甘えてくれればいいし。言いたいことを言ってくれればいい。僕は受け止めて上げるから」
「ヒロ。私と知り合ったばっかりに大変な思いをして。これからも大変なのに。私と知り合わなければ。もっといい娘に出会えたかもしれないのに」
「サラ。今だから言うけど。最初付き合っていた時は。サラが付き合ってくれて。凄くうれしかったけど。正直心の底では。気に入らなくなったら。別れるのだろうなと思っていた。けど妊娠がわかって。子供を産みたいと家族の前で言ってくれた時。僕はすごく驚いた。まさか僕の子を産みたいと言ってくれるとは。思ってもみなかったから。その時。僕自身。この娘を大事にしないと、守らないと」いけないと思った。サラの言うように違う娘と出会って結婚したかもしれない。その逆で一生独身だったかもしれない。ただ僕はサラと出会ったのは運命であったと思っているし。それを大事にしていくことも。一つの選択であって正しかったかどうかは。この先。何年。何十年しないとわからないと思っている」
「私。神様に感謝しないと。ヒロと出会わせてくれてありがとうと」
「僕も感謝しないといけないな。サラ。話変わるけど。昼食どうする?飲食店ほとんど閉まっているからな?」
「どうしようかな。…………。ヒロハンバーガーでもいいですか?」
「いいよ。アスクレピアスに行きますか?」
「ヒロにお任せします」
「分かりました」
ヒロはシャルム駅ビルの駐車場に車を止め。サラと一緒にアスクレピアスハンバーガーに入った。店内はいっぱいで座る場所がないので、持って帰って自宅で食べることにした。ヒロは。マリーの分のハンバーガーも買っていくことにして、ハンバーガーのセットを三個とチキンナゲット五個入り二個とアップルパイ二個を購入し持って帰った。家に帰り。サラがマリーを呼んで三人で昼食を頂いた。
「サラお姉さん。あとで勉強見てもらいたいのですが?」
「いいですよ」
「よかった。学期末のテスト勉強しているのだけど。わからないところがあって」
「学期末テスト何日から?」
「八日から三日間」
「あら。期間は違うけど。スタートは。私と同じだったのね。ヒロはいつから」
「十日から十七日までの六日間」
「ヒロ。試験期間長いのね」
「そうだね。土日挟むし。試験科目十八あるから」
「えっ。ヒロの大学。試験科目十八もあるの?ヒロ試験勉強しなくても大丈夫なの?」
「も少し近づいたら、しようと思っている。サラは?」
「そうね。私の大学は十二科目だし、前日に三科目ずつ勉強しようかなと思っているの」
「前日詰め込み?」
「まさか。復習するだけ」
「では。僕と同じだね」
「いいな。二人とも余裕だね」
「授業を理解したうえで受けていれば難しくないと思うけど?」
「お兄ちゃん。それが出来ればこんなに苦労はしません」
「あ〜あ。マリーちゃん怒らしちゃった。私。知らないからね」
「サラ。冷たいな」
「冷たいと言われても。私にはどうすることもできませんので」
「サラお姉さん。ひと段落ついたら試験勉強のお手伝いお願いします」
「はい。わかりました」
マリーは部屋に戻り、試験勉強を始めた。サラはヒロにマリーの勉強をおしぇに行くことを伝え。用事があればマリーの部屋まで呼びに来るよう伝えた。
「マリーちゃん来たよ」
「サラさんありがとう。大変な時期なのにすいません」
「いいのよ。気にしなくて」
「ではお言葉に甘えて。よろしくお願いします」
「はい。わかりました」
サラはマリーに勉強を教えた。マリーはイギリシア語と関数の勉強を熱心に教わった。試験勉強はティモルが帰ってくるまで行なった。ヒロは自分の部屋に戻り。明日の準備を始めた。ティモルが帰ってきて、夕食の準備をしていた。ヒロが一階の降り。ティモルの手伝いをした。
「おや。珍しいね。ヒロが手伝ってくれるなんて」
「サラの代わり」
「サラさん調子悪いの?」
「全然。元気だよ。今。マリーの試験勉強を見ている」
「そうですか。マリーは喜んでいるだろうね」
「喜んでいたよ」
「ヒロは教えないの?」
「また余計なこと言って。怒らせてしまったから」
「そう。自分で反省するようになったから。いい事じゃない」
「ほんと反省しないと」
「ヒロ。サラさんと知り合ってから。ものすごく変わったよね」
「変わった?自分では変わった気はしないけど」
「そうかい。後でサラさんにでも聞いてみたら」
「うん。来てみる」
階段を降りてくる音がして。サラが二階から降りてきた。
「サラさん。マリーの試験勉強に付き合ってあげてありがとう」
「いいえ。皆さんにはお世話になりっぱなしなので。少しでも恩返しになればと思っていますので」
「サラってホント頭下がるよ」
「ヒロ。そんなに謙遜しなくてもいいですよ」
「サラさん。ヒロからはそう見えるのよ」
「そうなのですか?」
「ところでサラ」
「何でしょうか?」
「僕って出会ったころと比べて変わった?」
「う〜ん。ノーコメントで」
「えっ。ノーコメント?」
「ティモルさん料理手伝います」
「よろしくお願いするね」
サラは。ティモルと夕食のビーフシチューを作った。ヒロはサラとティモルが料理を作っている間。部屋に戻り新学期から制作するボディスーツの新しい水素の供給機の制作を始めた。夕食が出来サラがヒロとマリーを呼びに来たので一階に降りて夕食を頂き。ヒロとサラはお風呂に入り部屋に戻り早めの床に就いた。
二〇五六年一月二日七時三十分
ヒロが起床すると。サラは起きて鏡の前で髪のセットをしていた。
「サラ。おはよう。今日はポニーテールにするの?」
「うん。今日はヒロの仕事場に行くし。久しぶりにくくってみようかなと思って。なんかへん?」
「変じゃないよ。僕はポニーテールのサラ。好きだから」
「うふふ。ヒロがポニーテールの事言ってくれるの。初めてだね」
「あれ。言ってなかったかな?」
「今日初めて聞きましたが。でもうれしいですよ」
「………………」
「ヒロ。朝食頂きに行きましょうか?」
「そうしようか?」
ヒロとサラは一階に下りて。朝食を頂いた。片付けをして。セントウイル病院に向かった。いつものように厳しいセキュテーチェックを受け、国王様の病室に向かった。
「お父様。おはようございます」
「サラか。来てくれてありがとう。今日はなんか普段とは違うみたいな感じじゃが?」
「多分。髪をくくっているせいだと思いますが?」
「そう言われてみれば。サラが髪を束ねているの。見たことなかったな」
「お父様から見て。どうですか似合っていると思いますか?」
「似合っているというか。何か雰囲気が違う感じがする」
「雰囲気が変わっています?」
「そうじゃ。大人の雰囲気が出ておる。クレマに似てきたかな?」
「!お母様に似てきました?」
「少しだけ。サラ。昨日に比べて元気だが。何かいいことでもあったのか?」
「いいことはないですけど。今からヒロの職場に行くので。楽しみはあります」
「ヒロ君の職場?」
「はい。お父様はあまりご存じないかと思いますが。ヒロは今。コンビニエンスストアでアルバイトをしていて。アルバイトチーフをしているのです。今日はそこでヒロの仕事ぶりを見ていようかなと思って一緒に行くことにしました。」
「ヒロ君。サラが行っても大丈夫なのか?」
「はい。店長の許可ももらっているので大丈夫です」
「そうか。それならいいが。サラ邪魔にならないように」
「はい。わかりました。お父様。時間がないのでまた明日きます。多分今日と同じぐらいの時間になると思いますので。行ってきます」
「行ってらっしゃい。気をつけて」
「はい。ヒロ行こう」
「うん。国王様お邪魔しました」
「ヒロ君。サラをよろしく頼む」
「はい。かしこまりました」
ヒロとサラは病院を出て、モントブレスコンビニエンスストアに向かった。店についたのが十時前で店長も来ていなかったので、ヒロは鍵を開け事務所に入り回転の準備をした。
「ヒロ。荷物どこに置いたらいい?」
「僕と同じでよければ一場左のロッカーに入れておいて」
「サラは。ヒロのロッカーを開け荷物の中に入れた」
「ヒロ。この眼鏡似合いますか?」
「似合っていますよ。(ものすごくかわいくなっている)」
「これで店に出ても。問題ないですかね」
「問題ないと思いますが?」
「!ヒロ。もしかして私が店に出る事。予想していました?」
「はい。ですから今日。僕のお古ですが。サラの分の制服も今日持ってきた鞄に入っているよ。よかったら来てみたら。でも掃除はいいとしても。営業中に店に出るのは店長の許可取ってからでいいですか?」
「はい。では着替えて掃除します」
「サラ。ほんと無理しないようにね?」
「はい」
サラは着替えて店の掃除を始めた。そこに店長が入ってきて。お互い挨拶をしたが。店長がキョトンと顔をして事務所に入ってきた。
「ヒロ。今。玄関掃除している女の子誰だったかな?」
「サラですよ」
「!サラさん。全然わかんなかった」
「多分。目の前で変装しているところ見ていなかったら。僕もわからないですよ」
「サラさん。店に出るつもり?」
「本人はそのつもりなのだけど。店長の判断に任せます」
「ん。どうしようかな。レジならいけるかな?」
「店長。使うつもりですか?」
「奥さんがレジに立つのだめ?」
「ダメではないですが」
「じゃ。決まりだな。ヒロ。掃除終わってからでいいので。レジの操作方法。教えてあげてください」
「はい。わかりました」
「店長。玄関の女性。どなたですか?私の名前を知っていたのですが?」
「ヒロ。シィーナもわからなかったみたいだよ」
「ヒロ君だれ?」
「シィーナさんもよくご存じの女性」
「私も知っている女性?えっ。もしかしてサラさん」
「そうですよ」
「私。まったくわからなかった」
「変装の達人と言ってあげてください」
「そういっても過言ではないくらい別人に見える」
ヒロは。開店前の事務処理が終わったので店に出て。開店準備を始めたそこに店長とシィーナも加わり。開店十五分前には準備作業が終わり。ヒロはサラを呼びレジの操作方法を教えた。サラの覚えの良さには全員が驚いた。十一時になり、開店を迎えた。お客さんが入ってきって、初めてレジ操作をしたが。しっかりと対応できた。十四時になり。サラは休憩を取り、昼食にサンドウィッチとプリンを頂いた。
その後も十八時の閉店まで、レジの業務を行った。
「サラ。仕事どうだった。楽しかった?」
「うん。楽しかった。人と接することはあるけど。商品の受け渡しをしながらお客様とお話しすることは。初めてだったので新鮮でした。時々面白いお客様がいて。名前。スリーサイズ。住んでいる場所。彼氏がいるかどうか。を聞かれたりした。一番面白かったのが。「アイドルになってこの国のスターになりませんかと言われた」
「サラさんそれって面白いことですか」
「シィーナさんは面白くないですか?」
「私だったらスカウトの声がかかったらびっくりしますけど」
「シィーナさん。それはサラの立場からだったら面白いと思いますよ」
「ヒロ君。それはどういう事?」
「サラは普段から。有名な人と交流が多く。国内外に名前は知られているし。国内に至っては顔も知られているので。今からもし芸能界に入ったら。王女様芸能界入りネットが騒がしくなるし。テレビに出演となれば。上層部の人が頭を下げないといけなくなるから」
「そうか。社長さんとは普通に話をしているからという事か?」
「そういうことになりますね」
「考えてみると。サラさんって私達が不通にお話しできる人ではないのですね」
「本来はそういうことになりますね」
「サラさん。私達みたいに一般人と話していて。違和感とかないのですか?」
「ん〜。そうですね。今はないです。むしろ一般の人と話している時が楽しいし。重役の人はすぐ忖度を考えて発言するから。むしろ疲れます」
「王女さんの仕事も大変なのですね」
「前は大変だったけど。今はヒロがあらかじめ下調べして忖度の真意をみてくれるから。楽になりました」
「へ〜。ヒロが下調べをね」
「サラ。そろそろ帰ろうか?」
「はい。皆さん。お疲れさまです。明日もよろしくお願いします」
「お疲れ。明日もよろしく」
「お疲れ様です。こちらこそ。よろしくお願いしします」
ヒロとサラは店を出て。家に向かった。サラは疲れたのか車の中で眠ってしまった。家に着いた頃には熟睡していたので。ヒロはサラを抱っこして二階に上がってベッドに寝かせた。車に荷物を取りに行き。部屋に置いてから、リビングに行って夕食を頂いた。
「ヒロ。よくサラさんを二階まで運んだね」
「起こすの。悪いかなと思って。二階まで運ぼうと思ったのだ」
「重かったろう」
「うん。すごく重くなっていたお腹に子供がいるとこんなに重くなるのだねと」
「そうだよ。子供の体重+羊水の重さがもともとの体重に乗るから。今だったら六キロ前後。重くなっているはずだから」
「へ〜。そんなに重くなるのだ」
「そうだよ。だからあんまり無理させたらだめだよ」
「はい。でも女性ってすごいよな。あっ。そろそろ起こさないといけないかな?」
ヒロは二階に上がり。サラを起こそうと思ったがあまりにも気持ちよさそうに寝ているので。起こすのをやめてお風呂に入りに一階に降りた。お風呂から上がり部屋に戻ると、キョトンとした顔をして座っていた。状況がよくわかっていないみたいだった。
「ヒロ。私。何故部屋で寝ているのかわからなくて」
「そうだね。サラは車に乗ってすぐ寝てしまって。家に着いた頃には熟睡していたから。そのまま部屋に運んで寝かせた」
「ごめんなさい。また迷惑かけてしまって」
「大丈夫。迷惑だと思っていないから。それより夕食頂いてきたらどうですか?」
「はい。頂いてきます」
サラは一階に降りて。夕食を頂きお風呂に入って二階に上がり床に就いた。
ヒロもサラが部屋に戻ってきたので床に就いた。
二〇五六年一月三日七時三十分
ヒロとサラは起きて。ヒロは仕事に行く準備。サラはお屋敷に戻る準備をして朝食を頂きに一階に降りた。リビングにはアキレアも座っていた。
「アキレアさん。ティモルさんおはようございます」
「おはようございます」
「おはよう」
「ティモルさん。昨日はお手伝いできなくてすいません」
「気にしなくていいよ。体調のいい時手伝ってくれたら」
「はい。ありがとうございます」
ヒロとサラは、朝食を頂いてから片付けをし。セントウイル病院に向かった。
ヒロとサラは、国王の病室に行き挨拶をして。サラがアルバイト先での出来事を二〜三話をして。モントブレスコンビニに向かった。ヒロは店のカギを開け、オープン準備に取り掛かった。サラは髪の毛をくくり。制服を着て掃除を始めた。掃除をしていたら店長。シィーナが順に入店してきた。昨日とは違い。二人ともしっかり挨拶をかわした。十一時のオープン前に、新人のシャルルとボルトナックが入ってきてキョトンとした顔をしながら挨拶をして入店してきた。サラが挨拶をするとびっくりしたのか。事務所に入っていった。オープンの時間になり、今日もサラはレジを担当に仕事をこなした。休憩はシィーナと同じになりいろいろと話をした。
閉店の時間が近づき、店長がサラを呼んで、二日分の日当を渡した」
「モントブレスさん。これは何でしょうか?」
「サラさんの二日分の日当」
「!そんなつもりでお手伝いしていたのではないので」
床に就いた。
「俺からの気持ち。よくやっていたと思うし。売り上げも前年の一、五倍だったから感謝しているよ。サラさん効果もあったかも」
「そんなどうしましょうか?」
「サラ。もらっておいたら。店長の気持ちだから」
「分かりました。モントブレスさん。ありがたく頂きます」
「よかった。受け取ってもらえなかったら。ヒロに渡そうかなと思っていたけど」
「店長。サラが受け取らないものを僕は受け取りませんよ」
「二人揃って。お金には欲がないのだな?」
「そうではなく。納得したものでないお金は二人とももらわないので」
「どっかの強欲爺に。聞かせてやりたいよ」
ヒロとサラは仕事を終わらせ。帰宅の途についた。ヒロはサラをお屋敷まで送ってから自宅に帰った。帰ってすぐサラから」電話が来た。
「サラ。何かあった?」
「今日。私の留守の時。ビアンカ・ギルバートって言う女性記者の人が訪ねてきたらしのだけど、ヒロ知っている?」
「ビアンカ・ギルバート?あっ。思い出した。サクティスジャーナルの新人記者」
「ヒロ。お会いしたことあるの?」
「去年。サラが調子悪くなって駅で待っていた日に取材に来た人」
「あの日の取材の人。でも何の用だろう?それによく私のお屋敷を知っていたのかな」
「それはすぐわかるさ。取材の時ギルバートさんの補佐をしていたのがモーリスさんだから」
「!えっ。取材の補佐でモーリスさん来ていたのですか?」
「だから。サラのお屋敷を知っていてもおかしくはないよ」
「そうですね。又。今度来ますとのことでしたので一度お話してもよさそうですね」
「もし必要でしたら僕も同席しますので」
「分かりました。その時はよろしくお願いします」
「はい。では明日いつもの時間に駅で待っていますので」
「はい。早いですけど。おやすみなさい」
「おやすみ」
ヒロとサラは電話を切り。サラは夕食をとってから。ヒロは通職をとりお風呂に入ってから。明日から授業の準備を始めた。準備が終わったら ヒロとサラは電話を切り、サラは夕食をとってから、ヒロは通職をとりお風呂に入ってから、明日から授業の準備を始めた。準備が終わったら床に就いた。
それから二日。サラからメールがあり〈ギルバートさんとお会いすることになったのですが、ヒロの都合の良い日を教えてください〉と送信が来ていたので。〈九日の火曜日と十四日の日曜日の十八時三十分以降でしたらあいています〉と送信した。
サラから〈はい。再度連絡します〉と返事が返ってきた。
翌日。ヒロはいつものようにシャルム駅で待っているとサラとギルバートさんが一緒にマーガレットさんの車から降りてきた。
「サラおはよう」
「おはようございます」
「ヒロさんお久しぶりです」
「ギルバートさん。何故サラと一緒にいるのですか?」
「ごめんなさい驚かしてしまって。実は原稿の締め切りが十日なので、朝と夕方の通学時間で少しでも。お二人の事を聞いといて。原稿を書く時間をとれるようにしようと思い無理を言って。通学に同行させてもらいながら話を聞くという事をお願いして了承してもらいました」
「ヒロ。相談なしでごめんなさい。ギルバートさんに協力してあげてください」
「サラが大丈夫だったら。僕の事は気にしないでください」
ヒロとサラは。取材を受けながら大学まで通った。帰りも時間を合わせ。待ち合わせをして取材を受けながら帰宅した。翌日。朝ヒロはサラとギルバートさんに。今日アルバイトお休み貰いましたのでゆっくりお話ししましょうかと伝えた。
「ヒロさん。ありがとうございます」
「ギルバートさん。よかったですね」
「はい」
「今日。シィーズカルナスレストランに十八時よろしいですか?」
「シィーズカルナスレストランですか?」
「はい。そうですけど、どうかされましたか?」
「いいえ。何でもありません。〈編集長予算くれるかな〉十八時にシィーズカルナスレストランでと言う事でよろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
ヒロとサラはギルバートさんと別れて大学に向かった。金曜日はサラの授業が終わるのが早いので、一旦お屋敷に帰り、ヒロが迎えに来るまでテスト勉強をしていた。ヒロは授業が終わると、自宅まで一度帰ってから、車でサラを迎えに行き、シィーズカルナスレストランに向かった。レストランに着くとギルバートさんがドアの外で待っていた。
「ギルバートさん。中でお待ちいただければよろしかったですのに」
「あっ。はい」
「中に入りましょう」
「はい」
「いらっしゃいませ」パントリーから声がした。
「!サラお嬢様。いらっしゃいませ」
「シャルローズさん。奥の個室開いています?」
「はい。開いております。ご案内します」
「ギルバートさん夕食はまだですか?」
「はい。」
「シャルローズさん。ロースステーキ二百グラムを三人分ハーフコースでお願いします。焼き加減はミディアムウェルダンで」
「はい。かしこまりました」
シャルローズは、個室に三人を案内して厨房にオーダーを通した、
「シャルローズさん」
「はい」
「食後に時間がとれそうでしたら、エバートンさんとお話がしたいのでと伝えといていただけますか?」
「はい。わかりました」
「ごゆっくりどうぞ」
「ありがとう」
「ギルバートさん。お話ししましょうか?」
「はい。先日は出生から高校卒業までの事をお聞きしていますので。大学には一年からの事をお願いします」
「分かりました」
サラは大学に入学してからヒロと知り合うまでの二年半の事を話した。ヒロと出会った頃の話に入ろうとした時。食事が来たので話を中断して食事を頂いた。
ギルバートさんが、肉を一口食べた瞬間、びっくりした顔をして。二人に話しかけた。
「すいませんお二人にお聞きしたいのですが?このお肉って?」
「ロースステーキですが」
「サラ。ギルバートさんの質問がその事ではないです」
「えっ。違いました」
「あっはい。」
「僕が説明するね。このお肉は、国産のÅ五ランクの肩ロースのお肉で、焼き方は、ちょうどミディアムとウェルダンの中間」
「すいません。こんなにおいしい肉を食べたことがなかったので」
「いいですよ。僕も先日始めて頂いて驚きましたから」
「ここのシェフの腕がいいから。おいしく仕上がります」
三人は、食事を終えてコーヒーを飲みながら。話の続きを始めた、途中デザートで苺のミルフィーユが出てきて、サラとギルバートが目を輝かせた。そして店が落ち着いてきたので。エバートンがサラの元に来た。
「お嬢様。お話があると聞いてきましたが」
「はい。この店の経営権の事ですが」
「この店の経営権でございますか?」
「はいそうです。今手続き中ですが。来月から私とヒロがこの店のオーナーになりますので、引き続きこの店のシェフとしてやって頂けないかと思いまして」
「お嬢様とヒロ様がオーナーですか?」
「はい。そうですが。不安がありますか?」
「いいえ。急に言われて心の準備が出来なくてすいません」
「エバートンさん。別に無理に今返事をしていただかなくても、条件を聞いてくださってからでも構いませんので」
「条件ですか?」
「はい。お話しましょうか?」
「はい。お聞きしてもよろしいですか?」
「すいません。私席を外したほうがよろしいですか?」
「!ギルバートさん。記事にはしないのですか?」
「サラ様。記事にしてもよろしいのですか?」
「別に構いませんが」
「はい。では一緒にお話を伺います」
「ヒロ。説明お願いします」
「はい。エバートンさんは、今まで雇われた形で働いていたと思いますが。来月からはこの店のオーナーシェフとしてお願いします。売り上げの八十パーセントをエバートンさんが管理をして二十パセントを僕たちが管理する。ただし建物に関する事案。税。改修費用は僕達で負担します。売り上げ予算はこちらからは立てません。あと一定以上の利益が上がれば、その分還元してボーナスとして支給します。いかがでしょうか?」
「はい。いい条件だと思いますが、家賃とか寮費とかはどうなりますか?」
「先ほど申し上げように建物に関しての事案。この店の二階。三階は寮ですが。それも建物の事案に含まれますのでご心配はいりません。あとエバートンさんは独身だとお伺いしております。もし結婚されて部屋を改築してほしいとの要望があればお受けいたしますので」
「そこまでしてくださるのですか?」
「はい。私はこの店が好きですし。エバートンさんの料理おいしいですから」
「一応。ここに契約書を置いておきますので」
「はい!十年の継続契約ですか?」
「!どうかされましたか?」
「これでほんとによろしいのですか?」
「私は。ヒロが考えてくれた案。とてもいいと思いますが」
「これでは。サラ様達の利益がありませんが?」
「すいません。僕もサラもこの店で利益を上げようと思っていませんので」
「エバートンさん。お料理お願いします」
シャルローズさんがエバートンさんを呼びに来たが。半泣きになっているエバートンを見てびっくりしたが。何か書類みたいなのをもって出てきたので、あえて声をかけなかった。ギルバートも話の内容があまりにも、エバートンにいい条件過ぎているので二人に少し質問した。
「すいません。どうしてお二人はエバートンさんにこの店を任せようと」
「僕から説明しようかな?」
「実は。この店。今のオーナーはキングス・マレイドア」
「!キングス・マレイドア」
「多分。お分かりだと思うのでキングスさんの話はしません。昨年の三月に前オーナーからこの建物と店の経営権を買収して。自分の店にしてティフォリア家の御用達のこの店に来店させないようにしていたのです。先月。この店に来た時。サラがこの事を知った時。自分の責任だと思い。心を痛め賠償の中に個々の建物とシィーズカルナスレストランの経営権を入れてもらい。承諾を得て、先日。来月から経営権をかわる手続きをしたので書類を持ってきたのです。本当は明日持ってきて話をする予定だったのですが。ギルバートさんの事があって今日になっただけです」
「そうだったのですか?」
「そう。エバートンさんにこの一年つらい思いをさせたお詫びです」
「お二人とも心がきれいで。包容力があり。経営力もあります。良いお話を聞かしていただきありがとうございます」
ギルバートさんは二日間。文句ひとつ言わず取材を受けてくれた事に対した感謝の意を述べた。
「サラ様。ヒロ様。取材をお受けして頂きありがとございます。後日原稿が出来ましたら、確認をもらいに来ますのでよろしくお願いします。ありがとうございました。これすいません。食事代です。少なければ後日お持ちしますので」
ギルバートは白い封筒をサラに渡したが、今日はいいですと言って返されたが、取材も受けて頂き、食事代まで出してもらっては悪いと思いですと言ってサラに渡した。サラが困っていると、ヒロが、〈半分でも受け取ってあげたら〉と言ったのでサラは封筒を開け半分だけ受け取り、半分をギルバートに返した。ギルバートも半物ずつになったことで。強気に出られなくなり。お礼を言って封筒を受け取りお取材のお礼を言って。店を出て行った。
サラのメールの音が鳴った。サラはラインのやり取りをしながら二人と話をした。
「サラ様。実は私。シャルローズとお付き合いしていまして。来月から同棲生活を始めるつもりでいました」
「お二人とも。おめでとうございます。シャルローズさんよかったですね」
「はい。一緒に住まないかと言われたときは少し不安でしたが。今は一緒に住みたいという気持ちが大きくなって」
「その気持ちわかります」
「それで、先ほど話をして、二人でこの店を切り盛りしようかという事で話がまとまったので、報告に来ました」
「ヒロ。私達でお祝いしないと」
「そうだね。今月の売り上げもサラの保証の対象になったので、三階の二部屋を一部屋に改修して彼らに住んでもらいますか?」
「ヒロ。とてもいい案ですね。そうしましょう。改修費不足したら私達で補いますので」
「えっ。そんないいのですか?」
「エバートンさん。私達に甘えてもらっていいですよ」
「ありがとうございます」
「サラ様。一つ聞いてもいいですか」
「契約書の最後に、茶葉はシャロウイン茶葉店を。できれば取引先にしてほしいと書いてありましたが?」
「その茶葉店。ヒロの実家でお母さんの弟さんが経営しているの」
「でも無理には取引先にしなくてもいいですので」
「わかりました。取引先にします。これからサインします」
「ごめんなさい。私そろそろヒロの家に行かないと。ヒロ行きましょうか?」
「サラ。ラインの相手。マリー?」
「そうです」
「エバートンさん。契約書。明日取りに来ますので。じっくり考えてからサインしてください。あと。何か不満があるようでしたらおっしゃってください」
「分かりました」
「すいません。お会計お願いします」
「ヒロ様。お代は…………」
「申し訳ないのですが。お会計受け取ってくれないとサラが帰らないと言い出すので。お願いします」
「はい。わかりました」
ヒロとサラはお会計をすまして。ヒロの自宅に向かった。家に着くと、マリーがサラを自分の部屋に連れて行った。
ヒロはサラのお荷物を部屋に持って行き、くつろいだ。
サラが二十二時になり部屋に戻ってきた。
「サラ。お疲れ様。ごめんね。マリーの家庭教師をさせているみたいで」
「えっ。家庭教師?ヒロ考えすぎ。私。マリーちゃんに勉強も教えているけど雑談も多いよ。たまにはヒロをネタに話が盛り上がるけど」
「サラ。僕をネタにするのはいいけど。脱線しすぎないようにね」
「はい。わかりました。さてと。お風呂に入りますか?ヒロは入りました?」
「まだだよ」
「では一緒に入りますか?」
「サラがよければ」
「では、お風呂に入りますか?」
ヒロとサラは一階に降りお風呂に入った。
「サラ」
「何でしょうか?」
「お腹少し。目立つようになってきたけど大丈夫?」
「うん。そうですね。正直言って結構お腹が張っていてちょっとつらい時がある」
「サラを見ていたら、ほんと女性の人すごいなと思う。僕だったら耐えられないかもしれない。
「そうかな?私は。つわりの時。すごくつらかったけど。周りの人がいろいろしてくれたので。すごく助かったし。自分一人では耐えられなかったかもしれない。今もそうつらい時もあるけど。ヒロやマーガットはつらそうな時。背中やお腹をさすってくれるでしょう。すごく助かっています。それとみんなが出産に向けていろいろな事をしてくれているので頑張れると思っています」
「そうだね。もし僕が寝ている時。つらかったら起こしてくれていいので」
「はい。ありがとう」
サラは。嬉しそうにほほ笑み。お腹をさすりながら。元気な子を産まないと思っていた。二人はお風呂から上がると。部屋に戻りシィーズカルナスレストランの件で話をした。
「ヒロ。今月の売り上げで。来月の人件費。材料費まかなえるかな?」
「多分。大丈夫だとは思うけど。問題は二階の改修費かな?」
「マクレイガさんの会社。リフォームも手掛けているから見積りとって貰ってもいいかな」
「分かった。ヒロ。明日は仕事十二時だったよね」
「そうだけど」
「サツキに連絡とって。明日の十時にシィーズカルナスレストランに来てもらえるか聞いてみる」
サラはサツキに電話をした。
「サラ。どうかしました?あなたから連絡くれるなんて」
サツキは。驚いていた。
「ごめんね。早急にやってもらいたいことがあって」
「早急にやってもらいたいこと?」
「そう。トランシスにリフォームの見積もりをお願いしようと思って」
「分かった。そういう事ね。それでどこのリフォーム?」
「シィーズカルナスレストランの寮のリフォーム」
「シィーズカルナスレストランの寮のリフォーム?」
「サツキ。まだマレイドア家の物件だけど、来月から私の名義になるから」
「!えっ」
サツキは。再度驚いた。
「それでね。できることなら急だけど明日の十時にシィーズカルナスレストランに来てもらえれば助かるのですが。伝えてもらえますでしょうか?」
「ちょっと待って。今。彼。横にいるから聞いてみる」
「えっ。隣にいるのですか?」
今度は。サラが驚いた。
「サラ。彼。大丈夫だって」
「では。宜しくお願い致します。」
「はい。私もついていきますのでよろしくお願いします」
「分かりました」
サラは。サツキと電話を切り。ヒロに話が済んだ事を伝えた。ヒロは明日の準備にノートパソコンを鞄に詰め。サラと一緒に床に就いた。
葛藤編に続く