人物紹介④
☆シリウス・カンパネラ・フォン・ユーリス☆
王国の元第二王子、現第一王子。
ベテルギウス様と異なり、シリウス様は側妃の息子。
そういうわけでベテルギウス様が次期国王と期待されていたのは、正妃の息子で先に生まれたという単純であるが強力な理由があった。
だからといってもちろん、シリウス様が冷遇されていたわけではなかったが、王国としては、ベテルギウス様の身に何かあったときのスペア扱いだったことは否めない。
彼はそれでも卑屈になることなく、万が一のためにと努力を続けていた。ただ一つ、兄である第一王子ベテルギウスを羨むとしたら、クリスティーナとの婚約したことであった。
新興公爵家の娘であるクリスティーナのことは噂でしか知らなく、彼女の美貌に関しては耳にしたとき、「そんな大袈裟な」と話半分で聞いていた。しかし、兄とクリスティーナの婚約が決まり、彼女の姿を目にしたとき、本人はその感情が何か理解出来てないものの、クリスティーナに対して一目惚れに近い感情を抱いた。
その後、クリスティーナの詳細な情報を集めた結果、彼女は多種多様な才能を持ち、それに慢心しない努力家であることを知る。
以降シリウスは、それまで以上に勉学やコネ作りや、礼儀作法にいっそう取り組み、極力社交の場に顔を出すことで実践的な経験を積んでいくことになった。それもこれも、クリスティーナに対する憧れを原動力とした頑張りであった。
それはただ、兄から奪い取ってやろうという気持ではないし、もちろん何かしら成し遂げてやろうという野心でもなかった。ただただ、自分はクリスティーナと婚姻することはないけれど、彼女に相応しい人間になりたいという、クリスティーナ本人に知られれば多少引かれてしまうような感情であった。
シリウスは誰にでも別け隔てなく優しく誠実で、努力家で優秀な人物であるが、クリスティーナにこういった特殊な感情を抱いており、その分、彼女が兄から酷い扱いをされていることに心を痛めていた。
また彼は悪女に踊らされ、聞く耳も持たぬ兄に辟易していた。
かといって、自分が間に入って、仲を取り持つということも難しかった。シリウス様は兄とは違い、クリスティーナとの婚約は王族の命題であることをはっきり理解しており、クリスティーナと婚姻を結んだ者こそが次代の王となることもはっきりと理解していた。
だからこそシリウス様は、クリスティーナの肩を持つということは、彼女を味方に付け、兄と権力争いをすることと同義であることもわかっていた。
こういったわけで、彼は迂闊にクリスティーナのためにと表立って動くことが出来ずにひたすらに歯痒い思いを抱いていた。
それでも、陰ながらクリスティーナを助けようと、話の出来る身内や、学園内の平民の友人達にそれとなく声を掛けたりしていた。
その陰ながらの努力が実を結ぶことはなく、兄は大勢の前で婚約破棄を宣言したが、結果は読んでの通りであった。
作中で一番幸福になったのはシリウス様だろう。
クリスティーナも少しずつ愛情を育めばと言ってましたし、物語の後のお話では彼女とシリウス様は互いに愛し合って、めちゃくちゃ幸せになったことだろう。




