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捨てら令嬢

女神の顔も三度まで?いやいや、その前に腹立ちましたから我慢しません!

作者: 渡里あずま

 ……女神のミスによる、理不尽な死。

 その責任を取る為に、女神は命を落とした少女を己の管理する、別の世界へと転生させることにした。更に一つ、少女の望みを叶えることにした。

 そんな女神に、少女はこう言ったのである。


「味噌と醤油のなる木がほしいですっ」

「え? わざわざ新種の植物を作るより、豆があるから作れますよ?」

「だって、作るのに時間も手間もかかるじゃないですか!? わたしは! 楽して、おいしいものを食べたいんですっ」

「……新種の植物を作るなら、その代償が必要ですよ?」

「大丈夫です! 味噌と醤油があればっ」

「そうですか? それなら……」


 味噌と醤油があるのだから、豆を無くそう。

 女神の提案に、豆があまり好きではなかった少女はあっさりと頷いたが――異世界の人々は、慌てふためいた。この異世界では、豆が主食の一つだったからである。


「ふざけるなっ」

「確かに、この調味料はおいしいけど……調味料で、お腹は膨れないわよ!」

「えっ!?」


 少女の住んでいた世界でのココナッツとココナッツウォーターのように、果実が味噌で果汁が醤油の木を少女は売り出していた。

 けれど、この異世界には等価交換ということわりがある。それ故、そのタイミングで今まで見たことのない調味料の実を売り出した少女のせいだと気づき、怒鳴りつけて何とか豆を取り戻そうとした。


「こうなるって、教えてくれないなんてひどい! クーリングオフしますっ」

「だから、代償が必要だと……無くす前に、豆でいいか聞きましたし……」

「人間には、知る権利があるんです!」


 教会で訴えた少女に、降臨した女神はやれやれと思った。

 ……女神としてはせっかく作る為の豆もあり、それこそ知識がほしいならそれを加護として与えるつもりでいた。

 しかし異世界の少女は、楽をして利益だけを得ようとし。更にこの世界の人々も、等価交換について知っているくせに異世界の調味料も、更に豆も両方手に入れようとしているのを知って、女神はすっかり呆れ果てていた。


「解りました。豆は元に、戻します……ただ、代償は必要ですから。目に見えない、小さいものなら大丈夫でしょう?」


 こうして女神は、豆を異世界に取り戻し――代わりに代償として、この世界にあった『菌』を無くした。

 少女にも、この異世界に住む者達にも『菌』の知識はなかった。

 しかし『菌』が無くなったことで土が枯れ、野菜が育ちにくくなり、パンやワインが作れなくなって――ゆるやかに、けれど確実に世界は朽ち果てていったのである。


 ……その後、味噌と醤油のなる木はこの世界に根付いたが。

 世界を朽ちさせた、異世界の少女がどうなったかを知る者はいない。

同じ世界観(百五十年後の世界)で連載始めました。


『捨てら令嬢。はずれギフト『キノコ』を理由に家族から追放されましたが、菌の力とおばあちゃん力で快適生活始めます』です。この短編については、3話にチラっとだけ出ます。

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