第3話
まりあは、血の痕が残る地下牢に入れられた。現代世界で生まれ育ったまりあは、牢屋に入れられる事も、血の痕を見る事も初めてだった。
今から自分の身に何が起こるのか、この血の痕を残した人の様になってしまうのか、恐怖で震えが止まらない。
何も音のしない地下牢に響く誰かの足音が聞こえ息を飲み込んだ。
カツン、カツン
良く音が響き地下牢全体に響く。
あの男がまりあと同じ年くらいの少女の腰に手を回しながらまりあの入っている牢屋の前で止まった。
男はまりあを見て眉をしかめ苛立ちを抑えきれないような顔をしていた。それに反して少女は嬉しくて仕方がないという顔をしながらまりあを見ていた。
「ちっ、可愛がってやってたのに!」
「ふふふ、デービッド様の言う事を聞かない人なんて困った人ですこと。反抗したくなるなら言う事を聞きたくなる様にしたら良いのですよ。早くしましょう。」
「そうだったな。おい!やれ。」
不吉な事を言う2人の後ろには鼠色のローブで身体を暗闇に隠しフードで顔の大半を覆った不気味な男がいた。手を伸ばし、まりあの入っている牢屋に近づいてくる。
「、なにを、するのですか…?」
不気味な男がまりあの細腕を力強く掴み呪いを唱える。すると、まりあが痛みを抑えきれず自分の太腿に爪を立て手を押さえつける。
「、っあーーーーーーー!!!」
地下牢にまりあの叫び声が響きわたる。叫び声をあげ意識朦朧としながら床に倒れ込む。スカートが捲れまりあが押さえていた太腿が露となる。そこには古代文字のような複雑な模様が浮かび上がっていた。
「ふふふ、いいきみよ。」
倒れ込み意識のないまりあを横目に笑みを浮かべながら3人は地下牢から出て行く。
***
男と一緒にいた少女は数週間前に屋敷にやって来たアイカ・アランドであった。自分が誘拐され売られた事を理解していないのか、自分は貴族の娘だからと使用人達に自分の仕事を代わりにするように命令したり好き勝手していた。
まりあが男から庇った事も何回もあった。しかし、理解が出来てないのかまりあを目の敵の様にするようになった。
「あんな男に好かれようと必死ですのね?ふふふ、あんな少し地位がある男の何がいいのか分からないけど…。」
男に目をつけられない様庇っても、まりあがあの男の事を好きだから近寄らないようにしていると勘違いしている様だった。
まりあは困った様に眉を下げる。何を言っても自分の良い様に解釈されてしまう。出来れば関わりたく無いと思ってしまう。しかし、この子も他の子供達と同じ誘拐されてしまった子。そう思うと見捨てる事は出来なかった。
それが、いけなかったのだろうか…
そんな事を思いながら、まりあの意識は途切れていく。