プロローグ
初心者なので、誤字脱字、矛盾などあると思いますが宜しくお願いします。
陽が沈み皆んなが寝静まった暗闇の中、メイド服を着た一人の女性が部屋の明かりも灯さず月を観ていた。
「、帰りたい…」
涙が頬を伝うのを気にせず月を観ながら静かに呟く。もう何度願ったかわからない、ただ一つの願い事だった。
***
専業主婦の母親と、サラリーマンの父親を持つ一般的な家庭で育った吉野まりあ。容姿端麗の両親の遺伝子を受け継ぎ、黒髪黒目の綺麗な顔立ちの女の子だった。
優しくにこにことした表情で見守ってくれていた母親と、何でも好きな事をやってみたらいい。と、包容力のある父親を持ち、近所の人とも仲が良く平凡な日常を楽しく過ごしていた。
あの男がまりあに興味を示すあの日まで――――
まりあはいつも通り友達の優香と学校から帰っていた。優香は皆んなから何でもしてあげたいと思わす様な妹系の女の子だった。優香もまりあも系統は違うが男女共に好かれていた。
「まりあちゃんは、可愛いんだから気をつけてかえってね。」
ほわほわ、にこにこしながら癒される笑みを浮かべながら2人の分かれ道に差し掛かった時、優香はまりあに声をかけた。
「もう、気をつけるのは優香の方!そんなほわほわした感じだとすぐに攫われちゃうんだから、気をつけてよ!」
優香はそんな注意を嬉しそうに受け止め、ほわほわと笑って2人は笑って別れた。
まりあは、優香と別れ自宅へと続く道へ進んでいく。夕方で陽が落ちてきて少し薄暗くなってくる時間帯であり早めに帰ろうとローファーを音を鳴らしながら道を急いだ。後数分で自宅が見えてくるという所で、まりあは違和感に気が付いた。1つだった足音がいつの間にか増えていたのだ。
ドクリと心臓が嫌な音を立てた。
サーと血の気が下がり手に汗がにじむ。
まさか――――
少し足を早める
「まってよ、まりあちゃん」
「っ、いや」
その声は聞き覚えのあるものであった。少し前に告白をしてきた父親と同じぐらいの年齢の男性だった。その時、気持ちに応えれないと返事をすると大人しそうだった男性が豹変し目を吊り上げ物凄い勢いで怒鳴り散らしてきた。
男性の急な豹変に身体が動かなくなった。男性に限らず怒鳴られる事は今まで無かったまりあは男性のされるがまま、手を鷲掴みされ路地裏に連れ込まれそうになった。その時は何とか逃げ切る事が出来た。
しかし、自宅に帰っても震えは止まらなかった。あのまま路地裏に連れ込まれてしまっていたら、そう思うと恐怖で涙が止まらない。
部屋に閉じこもっているまりあを心配してくれた両親にそんな出来事を伝える事は出来なかった。そんなことをされそうになった自分が恥ずかしい、怖い、言い出す勇気が持てなかった。
それ以来、学校が終わると出来るだけ早くに帰ってくるようにしており数ヶ月経っても男性は現れる事は無かった。もう現れないかもしれないと安心していた。
ーーーそれなのに、
道を走り抜け追いつかれない様に足を動かす。はやくはやく、少しでも遠くへいける様に。捕まらない様に。一生懸命に走っているのに自分がスローモーションで動いている様に感じた。周囲の音が消えて自分の心臓
おと
だけがやけにリアルに響いていた。
逃げる事しか考えていなかった。
気づくことが出来なかった。
多くの人の悲鳴に。
クラクションの音に。
目の前に迫る車に。
一瞬の強い衝撃と、表すことの出来ない痛み、私の世界が、きえて い っ た 。
***
目を覚ますととある貴族の屋敷にいた。あんな衝撃があって、あれほどの痛みを味わったはずなのに。何処にも傷一つ、ついていなかった。初めは夢でも見てるのかと思ったが痛みは感じる。どうして此処にいるのか分からないが何も持っていなかったまりあはその屋敷でメイドとして過ごすしか無かった。
メイドとして屋敷で過ごすうちにここのご主人様は善良な貴族では無い事を実感することとなった。