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回顧録1 ミナ
終業の時間とともに、片付けを終わらせて逃げるように帰る。
ほとんどの人は時間内には無駄なおしゃべりをして、平然と残業する。
そして、そんな人たちの方が上からの評価も高く、職場のコミュニケーションもうまくやれてると思う。
だけど、そんなことはどうでもいい。
所謂、私などそのくらいのもの。人に好かれることなど最初から期待などしてない。
母と二人暮らし。父のことは話もしなかったけど、親戚の集まりで親が経営している町工場の息子で、暴力を振るってたそう。
「ミナの顔はお父さん似だよ」と酔った母親から聞いたことある。
それが何を意味するのか、幼いながら理解していた。自分がいると周りが不幸になる。
そうだ、小学校の頃からだ。終わりのチャイムがなったら、逃げるように帰っていた。
誰も声かけてくれない。それを知るのが恐いから。
ひたすら、時間が過ぎるのを待っていた。
独りでいることが、自分を守る一番の方法だった。