出会い
2話目です!
目の前に、一本の刀が刺さっていた。
一片の傷も汚れもない。自分の姿が反射して映るほどにその刀身は美しく綺麗だった。
無意識に刀に手が伸びる。
「答えよ」
突然、少女の声が聞こえて手が止まった。
「お主は、何の為にその刃を手に取る」
視線を上げるとそこには一人、少女が立っていた。
黒い瞳で見つめる少女はまるで侍を彷彿させる身なりをしているのだが、なぜ女なのにこんな格好をしているのか疑問が湧いていた。
「…歳を重ねても何も答えられない、か」
「お前は…誰なんだ」
少女は少し驚いた顔をして溜め息を吐いた。
「忘れられるというのは悲しいものだな。まぁ、確かにあの時お主は赤子だったのだが」
赤子?
「もう一度私がお主に名を明かす時はその刃を手にする理由を見つけた時だけだ。理由もなしに刃を取れば『最強』は遠のいていくばかりだぞ」
最強という言葉に思い当たることがあって思いつめた顔をしていると少女は再び溜め息を吐いた。
「なんにせよ早く見つけることだな。でなければそこに転がる屍が現実となろうぞ」
そう言うと少女は背を向けて歩き出した。
「ま、待て!まだ話は終わってなーー」
立ち去る彼女を呼び止めようとしたが左手に妙な違和感が伝わってきて叫ぶことができなかった。
「なんだ…これ」
ドロっとした 赤い液体のようなものがみるみる地面に広がっていく。
恐る恐る刀に目を向けると、刺さっていたのは地面ではなく一体の屍だった。
彼女の言葉が頭をよぎる。
転がる屍の顔を見て血の気が一気に引き、顔が青ざめた。
それは、自分の屍だった。