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命の卵は誰のもの?  作者: 雪井 蛍
2/6

二人の日常と異常

 ――「ねぇねぇ!ナツ!これっ!いいと思わない?!」

教室に入ってきた途端、リカはスクラップブックを広げた。

その派手なマニキュアの爪先には、崖と綺麗な青い海の写真。

「こっちもオススメなんだけど。」

別の写真は、西洋風の彫刻がされた橋の写真。

「・・・好きだよね!リカこういうの!」

旅行先の写真のようだが、違う。


・・・・・飛び降り。

リカの趣味は、飛び降りるのに良い場所を探すこと。

「・・・やっぱりナツはこういうの、キライ?」

「う~~~ん。やっぱり私は・・ちょっと・・。

ごめんね。私は臆病だから・・。」

飛び降りは怖い。

高所恐怖症とまではいかないけれど、胃が寒くなる。

刃物類の痛いのもイヤだ。

できれば、眠るように()きたい。

欲張りで我儘(わがまま)だ。


「そんなことないよ!私だって汚いのはイヤだし!!」

ブルブルとリカは大袈裟な身振りで首を振った。

「一生ものなんだから、もっとこだわらなくちゃ!!」

すごいなぁ・・。リカは前向きで。

私は、こんなふうに考えられない。

自殺に前向きもないだろうけど。


・・・たしかにリカも私も異常なのだろうけれど。

リカは自殺を結婚(ウェディング)のように自然なものと思っている。

それも異常なのだろうけれど、私は羨ましかった。

私は・・ただその異常さからの孤独に耐えられなかった。

本当に向き合う勇気がなかった。

だから。


仲間が欲しかった。

この孤独を分け合って、一緒に逝ってくれる人が。


それが、リカだった。

リカだったら、一人でも気にしないし、

仲間には苦労しない性格だと思うけれど。

リカも仲間を探していたのだと言う。

そうして、私たちは意気投合して。

自分たちの死に場所を探し始めた。



 それは禁忌の蜜の味。

皮肉にもそれは今までの怠惰(たいだ)虚無(きょむ)

死んだような甘ったるい日常より。

生きる実感に満たされた(きら)めくような日々だった。



 ――「ねぇ。ナツ。一緒に逝こうね。」

「うん。リカ。約束。」

こうして今日も、私たちは小指を絡めて指切りする。

閲覧・ブックマーク、ありがとうございます!!

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