力が欲しいか少年と儂のミスで爺さん
ああ、あの爺さんまたやってる。ご苦労なことで。
「すまんのう。お前さんは死んでしまった。儂のミスでな。申し訳ない。」
「え、どういうことですか?」
「じゃから、儂のミスで死んでしまったのじゃ」
「それでは、異世界頑張ってな」
「やれやれ、やっと終わった。爺さんも暇人だな」
俺には何が楽しいのかさっぱりわからん。
「お前こそいつも不遇な子に力与えているのじゃろう?お互い様じゃ」
俺のは仕事だ。
「俺はあんたみたいに有名じゃねぇから必死なんだよ。異世界送りの爺さんなんて皆知ってるよ」
人の苦労も知らないでよく言う。
「まあ、異世界送りにしているのは儂だけではないがの」
ああ、あの女神みたいなやつだろう。
「それでもだよ。俺のこと知ってるやつなんて経験者ぐらいだぜ?」
経験者もぜんぜんいないよ。
「そう怒るな。儂も最初はそんなもんじゃった」
怪しいもんだ。
「んなことより爺さんはあんなことして楽しいのか?あんなやつに頭下げて。あんたのミスじゃねぇんだろ?」
何がしたいんだか。
「まあミスではないが儂のせいじゃ、謝っといていいじゃろ。それに反応も皆違って面白いぞ。そういうのはお前もあるじゃろ」
そうだけど。
「まあわからんでもないが、俺は与えてる立場なのに謝りたくはねぇな」
ニートだぜ?たまにニートじゃないときもあるが。
「そんなこと気にならんがのう」
やっぱよくわかんねぇわこの爺さん。まあ爺さんは楽しそうだしいいか。
「んなことよりニート来てるぜ」
トラックにひかれたか。これまたテンプレっぽいやつだな。
「よし、異世界に送ってやろう」
「見学していいか?」
「構わんよ」
「は、この白い空間。優しそうなおじいちゃん。これは、夢にまで見た」
ほらみろ、オタクだ。
「すまんのう。お前さんは死んでしまった。儂のミスでな。申し訳ない。」
いつも通りだな。
「ということは、転生ですか?異世界ですよね?異世界転生ですよね!?」
うぜぇ。
「そうじゃ、お前さんには異世界に行ってもらう」
こんなんでもいいのか。
「異世界転生キターーー」
うぜぇ。
「まあ落ち着け」
その通りだ。
「もういいですか?異世界行っていいですか?すぐ行きたいです」
こいつ馬鹿だ。
「もういいのか?まあいいが、そこの扉から行ける」
行かせるんだ。
「わかりました。ありがとうございました」
こいつ馬鹿だ。
「それでは、異世界頑張ってな」
見捨てたよこの爺さん。
「おいおい、あいつチートどころか説明すら聞かずに逝ったぞ。いいのか?」
大丈夫か?
「まあなんとかするじゃろ。知識はありそうじゃったし」
いやラノベの知識だけだろ。
「どうなるか見てみようぜ」
大丈夫かな。
「うむ、魔力なしで捨てられとる」
大丈夫じゃねぇ。
「ん?俺の仕事じゃね?」
やった。
「そうじゃのう。見ているとするか」
よし久しぶりの仕事だ。
「力が欲しいか?」
「ああああああぁぁぁぁぁぁ」
ふざけんな。あのクソ中途半端なオタクめ。
「まあそう怒るでない」
うるせぇ。俺はそんなにマイナーか?
「これがキレずにいられるか!なんであんなオタク丸出しのやつに『え、なにこのイベント?』とか言われなくちゃいけないんだよ!」