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9-2


「何か気になる事でもあったのか?」


 フラムに声をかけられて、その姿を改めて振り返る。

 変化と言えば、と、まじまじと伺ってしまう。怪訝そうに片眉を吊り上げられて、思わず苦笑した。


「いや、変わるものは変わるもんだと思ってね」

「なんだそれ」

「気にしないでくれ」


 くすくすと一人で笑う姿が大層不思議なのだろう。フラムは鼻に皺を寄せていた。


 エイリオは話つもりがない事を示すように、先の彼女の姿を探した。彼女の足では農村まで遠いらしく、まだ半分も距離を行っていない。


「フラム、やはり私達も村の方に行こう」


 小さな背中が遠のいていく様子を凝視しながら、エイリオは切り出した。フラムは小さく肩を竦める。


「やけに肩入れしようとするじゃねえか」

「ちょっと、ね。自分も昔さ、傍から見たらああだったのかなって思ってね」

「そうか」


 だが、見送っていた筈の背中が、不意に消えた。見通しのいい丘陵地帯では、どのように身を縮めても、隠れるところなんてありえない。その為にこの塔が目立つのだ。むしろ目立つものがあってはならないのだ。


「え?」


 嫌な予感に、肌が粟だつ。


「消えたな」


 まるで出会い頭の世間話くらいに軽い調子で言うフラムに、エイリオは顔を顰めた。


「……彼女の言った事は本当かもしれない」


 ぽつと零せば、フラムはこちらを振り返った。


「何かほかに異変でも?」

「ここは確かに静かな場所だけど、放牧されている筈の牛の姿すらも、全く見受けられないなんておかしいんだ。少し、静かすぎる」

「なら、大当たりだな」


 エイリオの言葉に、フラムは首肯した。


「ここに、あいつがいる。さっきの子供も、記憶の残渣が見せた幻だろう。本物じゃない。なら、消えた理由がつく」

「記憶の残渣……。そう、なのかな。むしろあれは……」


 エイリオは言い淀むと、首を振って脳裏を過った考えを押しやった。今はここで考えていても仕方がなく、動かなければ何も見えてこないのだと、嫌でも理解したせいだ。


「いいさ。行けば解る事だよ」

「ああ、そうだな」

 

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