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6-2


 *


「ルフロッテ?!」


 話を切り変えるように奥に向かおうとした姿が、突然足をもつれさせた。

 ニコライは倒れそうになった両肩を掴んで抱き留めた。その表情を覗き込むと、がくりと膝をついた姿は顔を真っ青にして、何かを呟くように微かに唇を震わせていた。


「おい、ルフロッテ!」


 ニコライが肩を揺すっても、力なく首をのけ反らせただけのエイリオの意識は既にない。血の気の引いた青白い喉が、やけに目に着いた。


「止せ」


 また揺さぶろうとした腕を引き留められて、ニコライは漸く我に返った。

 視線でソファを示されて、慌ててぐったりとした姿の肩に腕を回す。小柄とはいえ、易々と持ち上げられる程、今の彼は軽くない。


 そっと寝かせてから、呼気を伺った。規則正しいものの、やはり顔色は良くない。顔を横に向けて襟元を緩めた。


「毛布か何かはあるか」

「っ……持って来よう」


 フラムは自らの上着を脱いでエイリオにかけると、その表情を覗き込んだ。瞼の裏を伺い、喉元の脈を探る。


 すぐに戻って来たニコライに、毛布を足の下に入れるように指示して胸をなで下ろした。


「……大丈夫そうか?」


 フラムの様子に、居ても立っても居られないニコライは詰め寄る。


「ああ、安静にしておけば問題ない。多分、拒絶反応を起こしたんだろうしな」

「どういう事だよ」

「こいつの中で、何かがエイミーの琴線に触れたんだろう。手がかりがあるとしたら、そこだ」


 意を得たフラムは立ち上がると、先程エイリオが上司と共に向かった奥へと向かおうとした。


「何をするつもりだ?」

「こいつを預かる。その為に、あんたたちの上司とやらに少し、な」


 具体的な事を聞くのは、何故か憚れた。暗に、聞くなと背中が言っていたからかもしれない。


「……なあ、リドリーさんよ? 俺に何か、手伝える事はあるのか?」


 代わりに口を突いた言葉に、ニコライ自身も驚いた。

 フラムは微かに口元に笑みを浮かべた。


「忘れるな。こいつの悩みも、気持ちも、可能な限り」

「まあ、努力するよ」


 それは、人を笑った自分への嫌味なのだろうか。思わず苦笑してしまい、その視線から逃れるように、静かに横たわる姿へと目線を落とした。

 

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