表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

50/51

市場の大変動

「くそ、大打撃だ」

 総理執務室

 岸の怒りは凄まじかった。いや、怒りを向ける矛先が無い為に、余計に態度に出てしまった。

「総理、落ち着いてくれ。これは総理の責任ではない」

 日銀の黒峰総裁が岸を宥める。


 新ソ連を立ち上げたイワノフは、世界中から投資資金を集めるために、元CISの企業を次々にモスクワ証券取引所で上場させた。

そこは、さすがあの国という感じだが、本当に上場審査が行われているか、怪しい位のペースで上場している。

 しかし、大半が資源、エネルギー、食糧関連企業で、リリーの力を見たものからしたら先行きは至極明るく見える。ヘッジファンド、親ソ連の国々の政府系投資ファンド、個人が買いに殺到している。

 恐らく、機関投資家はバブルだと見立てたうえでの動きだろうが、一斉に資金が流入している為、株高は今のところ天井知らずだ。

 政策金利も過去最低に設定され、国内でも設備投資拡大に力を入れ始めている。

 機関は為替ヘッジを掛けて投資しているので、急激なルーブル高になっていない。そのため、更に輸出関連の先行きが明るいと個人の買いが増えるという。ソ連にとっては好循環が生まれている。


 逆に日本は、世界の投資マネーがソ連に逃げて行き、円高株安の一途を辿っている。

他の先進国も同じだが、日本の値動きは特にひどかった。

すでに、前政権から引き継いだ時迄とはいかないが、円も株も惨憺たるものになっている。

「今は我慢の時だよ総理、完全にバブルじゃないか、下手に手を出したら、はじけた時に火傷じゃすまない。

為替は、いざという時は協調介入することを、以前の会議で採択して有るが、株価はその流れに任せるしかないよ」

 岸にだってそんな事は分かっている。

しかし野党、マスコミが責任論を大合唱するが、かといって、今の自由党に手を上げる候補もいない。

当然だ、今の日本の政治家に、この荒波に飛び込んでいく、勇気がある者などいないのだ。

 実際、総裁選まで目前まで迫ってきているのに、候補者擁立の動きが鈍い。

中には、総裁の任期延長論を出している者もいる。

「勘弁してほしいよ」

 その言葉に、黒峰が反応する。

「市場もそうだが、総理どうするつもりなんだ」

 本来は立場上するべき質問ではない、しかし盟友の岸の事は気にはなる。

「もし担がれたら仕方ないだろうね、未来ある有力者を潰すわけにも、俺以上の老いぼれを、引っ張り出すわけにもいかん。

更にいえば、無能は絶対駄目だ。野党とマスコミは解散して信を問うべきと言っているが、これで野党に政権が渡れば東シナ海は滅茶苦茶になる」

 後半は、分かっていただけに黒峰も笑いをこらえていた。

「流石にね。今、政権交代だけは駄目だね。日本が世界地図から消える可能性を高めるだけだ」

「そういうことだ、取れる選択肢は少ないよ。ああ……。苦労をかけた妻とゆっくりするはずだったのにね」

 そういうと岸は、長年連れ添いいつも支えてくれる妻を思い出す。

政治家の妻として、母として岸とその家族を守ってきた妻。彼女に今までの分の我儘をかなえさせてあげたかった。 

 すまん。もう少しかかるかもしれん。心の中で妻に詫びる岸。

きっと岸の妻が聞いたら、政治家の妻になる決意をした時点で、そんな事覚悟していましたと。さらりと言ってのけるのだろうが。

「まあ、愛妻家の総理の家庭が円満でいられるよう。私も全力を尽くすよ」

 そう言うと、黒峰は立ち上がり退室しようとした。

「ありがとう黒峰」

 黒峰の背中に礼を言う岸、黒峰は軽く後ろ手に手を振った。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ