再現
「判明しているだけで、ロシアはスホーイの最新型24機、スラヴァ級ミサイル巡洋艦、ウダロイ級駆逐艦各二隻を5年以内に北朝鮮に売却する方針との事です。
現在更に経済、防衛関係強化のための協議が行われているとの事」
官邸にホワイトハウス経由で情報が入ってくる。
安藤達が北朝鮮に渡って一カ月半。
恐ろし手際の良さだった。そしてこちらの手の内は読まれている。
入手兵器も最新、それに準ずるものばかりだった。
「クソ安藤め!本気で第三次世界大戦でも始める気か!」
押谷防衛相は怒鳴り声を上げていた。
当然、豊富になったとはいえ、農作物の輸出のみで購入のめどが立つようなものではない。
北朝鮮は今、急激な早さで、鉱物資源を採掘している。
種類は金、レアメタルであるタングステン、モリブテン等だった。
クライドル曰く、土系の魔法でゴーレムを作り出す時の応用だそうだ。
元の世界にはレアメタルの概念がなかったが、こちらにはある。
現物を見せ、特性を理解できれば、鉄のゴーレムを作るようにレアメタルのゴーレムの完成。
完成後すぐに解呪すれば、レアメタルの塊の出来上がりである。
元々北朝鮮に資源が無いわけではない、技術と機械が旧式というだけだ。
まさか鉱物資源、特にレアメタルのようなものが、先進国の技術も遠く及ばない効率で、採掘可能になるとは想定外だった。
流石に北朝鮮産のウランはまだ量は出回ってない様である。
最悪、治癒魔法が効かない可能性があるようなものは、安藤が許可していないのだろう。
しかし、これらの売却益により今後採掘機材を揃えられる可能性は高い。
いや、安藤ならそうするだろう。
更にどうしようもない事に、他国よりも価格設定が低く、市場に出回る北朝鮮の資源、食糧は他の発展途上国には非常に魅力的だった。
北朝鮮は鎖国しているわけではない、買い手は腐るほどいるのだ。
ロシアに対しては、すでに経済制裁解除の打診が、非公式で行われ協議まで進められていた。
また資源開発の協力の再開など、ロシアが飛びつきたくなるような内容のはずだった。
完全に上をいかれた。世界はクリミア半島の編入は認めないのだから。
さらに、ロシアが以前から望んでいた、シベリアの資源開発。現在精力的に行っている、自給率増加の為の農業、酪農政策にリリーが力を貸すことになっている様だった。
これは北朝鮮にもかなりの利益をもたらす。シベリア開発も農地改良も、リリーの力が失われれば振出しに戻るのだ。これなら、ロシアは完全に北朝鮮に手を出さないという事になる。
しかも、これからの北朝鮮・ロシア間であれば、経済、物流の包囲網を敷いたとしても、二国間だけで殆ど融通できてしまう。
対ロシア政策は米国を始め、かなり手詰まりになってきていた。
しかも北朝鮮は、大きく変わりつつもあった。
人民への配給量の増加、処刑される人間の激減、強制収容所の待遇改善、及び多数の収容者の解放。示威行為の為の兵器の使用は、勇者達がデモンストレーションを行ったのを最後に、全くされなくなった。
威嚇のための声明文の放送もピタリと無くなっている。
今の北朝鮮は、日本の犯罪者である勇者達を匿っているのと、拉致問題以外で攻め手が無くなっている。
国連を通して警告を行っていた内容の殆ど全てが、潰されて行っている。
ロシアからの兵器購入も、それ自体で北朝鮮を責める材料にはなりえない。
防衛のための戦力を持つことを禁止することなどできないのだ。
その為最近では、手出しさえしなければ問題ない、という論調に変わりつつあった。
しかし、北朝鮮を取り巻くパワーバランスは着実に変わりつつる。
「第三次世界大戦ではなく、東西冷戦の再現でもねらっているのかね、安藤は」
そう呟いて、苦笑いするしかなかった。




