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勇者達の旅行

 勇者達が北朝鮮に入国したのは、襲撃を受けた日の朝だった。


 勇者達を迎えたのは最高人民会議常任委員会委員長と、朝鮮労働党組織指導部 組織指導部第一副部長を始めとした面々だった。国家元首以外ならば間違いなく最高待遇の表れである。

「勇者一行と、安藤さんよく来てくれました。我が国は貴方方を最高待遇でお迎えいたします」


 ただ、数々の粛正を実行してきた、国家安全保衛部の人数が目立つが……

「最上の待遇に最高の警戒……いい感じです」

 一人呟き安藤は笑みを浮かべた。


 その後、平壌龍城にある第一書記の官邸に移動になった。

 ファン第一書記の執務室

「よく来てくれた、ディルだったかな。それとその一行。安藤もご苦労」

 ディル達を値踏みするように観察する黄第一書記。

「はい。偉大なる指導者に慰労いただき光栄です」

 ニコリと笑みを浮かべる安藤。

それに反して怒りの顔に変わるミリス。

「ねえ安藤、この人チョット偉そうじゃない?」

 ミリスの一言に一気に場の空気が緊迫したものへの変わる。

「お嬢さん今何と言ったのかね」

 黄の顔が引きつる。自分以外の命の価値など、無いに等しい彼にとっては、最後通告ともいえる質問だ。

「あんた偉そうねって言ったのよ。偉大なる指導者?言いにくいわね、大そう偉そうだし。今日からあなたはぶーちゃんって呼んであげるから」

 一瞬にして国家安全保衛部の兵士に取り囲まれる。

「殺せ」

 一言だけだった。次の瞬間には、執務室に銃声が響き渡る。

銃撃が終わった時、倒れているものはだれ一人いなかった。怪我一つもしていない。

「困りましたね。こちらの事務次官から注意点は伝えてあったはずだと思うのですが?」

 言い終わるなりさらに銃弾が降り注ぐ、黄は地下道へ逃れるため、側近と兵士に守られながら移動している。

 地下道への扉が閉まるのを確認し、廻りの兵士を見渡し安藤は言った。

「黄第一書記はこう言っていましたね。殺せ」

 部屋に残った兵士10名は、瞬きする間もなくキリアに斬殺された。

「さてさて、皆さん第一書記にお仕置きをしに行きましょうかね」

 地下道への隠し扉を難なく切り飛ばすキリア。

「なんか、久々に活躍して気がする。ただやはり壊したりないな」

 キリアは少し不満げであった。破壊神の血が騒いでいるのだろうか。

隠し扉の先に兵士を数名残していたようだが、扉を切り裂いた時に一緒に細切れになったようだった。

 地下通路を安藤たちが進んでいくと、各所に兵士が伏せ銃撃を行ってくる。

ここはエミリアが一人ずつ正確に頭部を射抜いていく。

ミリスがやりたがったが、地下道を吹き飛ばされるのは困る。下手をすると第一書記が死んでしまうので、安藤が丁重にお断りをした。


「おやおや、偉大なる指導者様は、こんなところに逃げてどうされたのです」

 巨体の黄は息を切らしながら、兵士の肩にもたれながら移動していた。

ニヤリとまた、寒気がするような笑みを浮かべる。

「エミリアさん。兵士は全員射殺、銃を抜こうとしたスーツの人間も射殺してください」

「は、はい安藤さん」

 エミリアは弓を構える。

「こ、殺せ」

 悲痛な叫び声の様な命令が飛ぶ。

同時に銃弾とエミリアの矢が交差していく。安藤たちの誰にも銃弾は届かない。

エミリアの矢は正確に兵士たちの頭部を射抜いていく。

 時間は十数秒もなかった。地下道に待機して、第一書記たちと合流した兵士達30人程は全員地下道の壁に磔にされていた。

「残り五人ですか」

 第一書記と朝鮮労働党組織指導部 組織指導部第一副部長とその部下たちが残っているが、皆地面にはいつくばっている。

「伝達が上手くいかなかったのでしょうかね、どうなんでしょう偉大なる指導者様」

「ま、間違っていなかった、正確だった」

 黄の目は恐怖に染められている。そこにある確実な死。

「それなら結構です。この国を富ませ、軍事力をつけていかねばならぬのでしょう?

これから、忙しくなるのですから。偉大なる指導者様」

「こ、殺さないでくれるのか」

 生き残った5人は少し、安堵の表情を浮かべる。

「もちろんですよ、これから黄第一書記には真の指導者になって頂かなくてはなりません。

ただ、我々のお願いを聞いて頂く事が有る位です。

今から国も富みますから、黄第一書記はもちろんですが、それ以外の皆様にも今まで以上の恩恵があると思いますよ」

 黄は安堵の表情と今まで以上の恩恵を言う言葉に、欲望の炎を目に浮かべた。

黄以外の4人も顔を見合わせニヤリとした。

「屑共にもしっかり役に立ってもらわないと。」

 聞こえぬよう呟いき、五人に笑みを返した。


 そこに横やりを入れる者がいた。

「あ!いい事、さっきも言ったけど。貴方はこれからぶーちゃんって呼ぶから」

 びしっと指を刺し宣言するミリス。

第一書記の顔がピクリとひきつったが、もはや文句は出てこない。

もう、安藤たちへは完全に心が折れている。

「大丈夫ですよ。対外的な場では、絶対に言わせないようにしますので」

 安藤はいつも通りの笑みを浮かべた。


 もちろん安藤は、第一書記がどういう態度で出るかも、ミリスが何というかも想定内だった。

むしろ、こうなる事を狙っていた。

 今のところ、全て安藤の予定通りだった。




「ではー、リリーの大聖魔法をご覧くださーい。」

 黄との非公開の地位協定を結んだ後、安藤の提案により、各地の土地改良がおこなわれることになった。

北朝鮮は雨量が足りず干ばつに成る事が多い、またそれを補うだけの技術もダムもない。

しかし、リリーの魔法によって、肥沃な大地に置換され、干上がった川に水が流れ出し、大地に自然の水路が走る。

 北朝鮮首脳陣は、初めてリリーの大魔法を見た時は夢かと思うほどだった。いや夢のような話なのである。

 打ち合わせ通り黄と握手をして笑顔を向けあう二人。

廻りの人民たちが咽び泣きながら集まってくる。これも台本通りなのだが、人民の涙はいつもの演技ではなく本物だった。

神が降り立った。人民はそう確信した。

 黄はキノコ栽培にも力を入れたいと言ってきた。リリーは快諾してあげた。

言ってきたというより、お願いしてきたという態度だった。調教はほぼ完了である。

 北朝鮮の食糧自給率は3カ月で激変するだろう。そして、半年で食料に関しては最低限だが輸入に頼らなくて済む国になる。

安藤はタイムテーブルを考えご機嫌である。

リリーの力を目の当たりにした、黄以外の幹部たちは安藤にすり寄り始めていた。


 勇者と安藤には先代の住まいが一時的に貸与されることになった。

取り決めの中には、建設が頓挫している北朝鮮最大のホテルが勇者達の邸宅として改造されることになっていた。

 黄は少し渋ったが、安藤の北朝鮮の経済の復活の狼煙となりますし、あのホテルでの収益のなんて笑って済ませられる恵が、今から手に入るのですよという、言葉に乗せられていた。


「こっちはのプールや遊ぶところは日本と違って全部室内なのね」

 ミリスは少し残念そうだった。

「で、てもエミリアは、い、嫌いじゃないよ」

「そうですねー、あんまり日に当たり過ぎるとお肌が荒れますからねー」

 そういって浮き輪でぷかぷか浮かんでいた。

「この国のトップは、常に世界から命を狙われているのですよ」

 プールだが安藤はスーツ姿のままである。

「そうなんだ、ぶーちゃんは態度デカいから、皆に嫌われてんじゃないの?」

「まあ、そんなところですよ。でも、明日にはそれも過去の話になるでしょう。」

「そうよね!明日は私、その後はディルが力を見せてあげるんですもの。当然よね!」

 ミリスが一番、態度がデカそうではあった。


 ぷかぷかとプールを漂う三人、彼女たちの水着はスク水であった。

「そして、ミリスちゃん、エミリアちゃん、リリーたんは、自分が守るであります」

 そう、あの男である。

安藤は落としやすそうな檜山に声をかけていた。

安藤は慎重に、ゆっくり落とすつもりであったが

「幼女の命は、地球よりも重い。」という謎の格言を吐き、安藤たちについてきた。

 後に彼は言った。

「仮に世界を敵に回しても、幼女だけは自分が守ると。」

比喩ではなく本当に世界を敵に回していたが、檜山は戦う覚悟である。

「ひやまさーん、いつもありがとうございますー。」

 リリーが檜山に手を振る。実は安藤の指示である。

一日一回で良いので、これをしてあげる様にと。檜山はなんとも低燃費な男であった。

リリーたんとのハネムーンで、何かあっては一大事である。

 今日も檜山は姦視(監視)に勤しむのであった。

彼こそ真のデイドリーマーであり、紳士であった。


 ディルとキリアはプールサイドのチェアでジュースを飲んでいる。

20才過ぎで大人びている感じのキリアと、少年らしさを感じる15歳のディル。

 おねショタかな? まあ、女騎士のキリアさんは、勇者よりあいつらの方が絶対お似合いのはずだ。

あいつらが誰なのかは、よりによって檜山にしか分からない事である。

 それに自分にはリリーたんがいるので関係ない。

でも、ミリスちゃんやエミリアちゃんが迫ってきた時は許してほしい。

心の中でリリーに謝る檜山は、真の専業空想家であり、真の紳士でもあった。


 幼女が3人、若い成人女性1人がいるプールサイドに、戦闘服の檜山と今はスーツ姿の安藤もいる。

日本ならばいつ通報されてもおかしくない風景が、そこにはあった。

 








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