ハゲタカ狩り
総理大臣執務室
財務大臣 小川 修二
財務省事務次官 河野 道彦
日本銀行総裁 黒峰 勇作
「黒峰さん。やっぱり、震災の時と同じで、円の買い仕掛け来てるんだね」
「今のところ、急激な円高が進んで、先物は大きく下がっています」
「サーキットブレーカー発動はどうなんだ」
「政府介入でそれをやると、まずいよ、岸総理。去年の中国みたいになってしまう。多分そんなものじゃすまない。政府介入で売買できないと分かれば大パニックだ」
「河野君、今、米国債の残高150兆位あったよな」
「はい、総理。仰る通りですが…」
「総理、まさか米国債に手を付けられるのですか、危険過ぎます。下手すると、政権が飛びますよ」
小川財務相が声を上げる。
「今は国難だ、政権を守っても国が残らないなら意味がない。それに、今回の件、米国は安保適応の事例ではないと言ってきている」
岸以外の全員が息を飲んだ。
「そんな馬鹿な、この事態に米軍が使えないのなら、何のための安保条約ですか。日本の駐屯地問題の世論だって、一気に傾く可能性がありますよ」
小川財務相が声を荒げる。
「いや、本当だ。向こうもこちらが出した資料に、恐らくNSAが衛星の画像も入手をしていただろう。あの大魔法というやつかね、あれだって、こちらが持っているより正確に捉えて分析中のはずだ。
海兵隊なんかを出す気は絶対にないはずだよ。
かといって、こちらの要請を飲むとしたら、当然米国は被害を最小限にするよう考える。戦闘機、艦隊からのミサイル攻撃がメインになるだろうな。
日本国土への米国のミサイル攻撃。目的は勇者達、侵略者の殺害。恐らく民間人は死なないだろうさ。
しかし、結果としてどちらが方が、今後の日米の安全保障、駐屯地問題に利するかは私だって分からん。
一応根回しはしてはいるが、駐屯地問題に難癖つけたい奴らは、日本内外含め山ほどいるんだ。
やって最悪の結果を招く位なら、彼らは動かんよ」
小川財務相は肩を落とした。
「黒峰さん。日銀が今、行けそうなのは50兆位か」
「そうですね。もう少しは行けるかもしれません。急ぎ確認させます」
「頼んだ」
「まずは日銀の50兆で円売りを目一杯行う、後は順次、米国債を売却して日銀に補てんし当てていく。
特に米国債売却に関しては、全て私が責任を持つ。小川財務相協力してほしい」
「い、いつまでそれをやり続けるつもりですか、総理」
「ハゲタカを狩り尽すまでだ。そうだろう総理」
「その通りだ、日本の維持、経済大国としての意地で、もう一度心胆寒からしめてやらねばな」