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魔王の休息

「美味い。美味いなシェイラよ。本当にこの世界は素晴らしいな」

 都内ホテル内のレストラン。貧血と空腹でがっつく魔王。

「魔王様、はしたないです。テーブルマナーを守ってください」

「す、すまない。しかし汝は、こういう時だけはまともな知識を引っ張り出してくるのだな」

「いえ、私は常に最適解を提示しているだけです。魔王様、因みにそこにある金属のボールにある水は、一気に飲むと良いらしいですよ」

 フィンガーボールの水を飲ませようとするシェイラ。

「汝は何の最適解を出そうとしているのだ。これは飲んではダメなやつではないか」

「チッ」

「あ、今、舌打ちしただろう、魔王に舌打ちしたただろ」

「幻聴にございます魔王さま。また口調が乱れておりますよ」

 和やかな夕食であった。


 彼らはチェックインするなり、部屋にも入らず食事に行っていた。

満腹になり。幸せな気分で、用意された部屋を開ける。

「な、なんだここは」

 ホテルはスイートルームが用意されていた。

「おお、おお、おお。まるで宮殿ではないか。こんなところに泊まっていいのか。シェイラよ、まるで王族になったような気分だぞ」

「魔王様、お忘れの様ですが、魔王様は魔族の王です」

「ああ、そうであったな。あまりの衝撃に少し忘れておった」

 部屋を物色し、水洗のトイレ、シャワーに感動し、ひとしきり部屋を堪能した頃、チャイムが鳴る。

「日本国が派遣してくれたメイドが到着したのか」

 魔王の胸は高鳴る。日本人の知識の中にあるメイド。

も、もちろん卑猥な気持ちなど断じてないぞ。何故か心の中で、自分を戒める。

 クライドルも大分間違った知識が入ってしまっているようである。

「ですから、魔王様には肉奴隷のシェイラがおりますのに」

 シェイラは少し拗ねたように言った。

「シェイラ、頼むからそれをメイドさんに言わないでくれよ。絶対にだぞ」

「それは、フリというやつですね。存じております」

「違う、フリではない。頼むから辞めてくれ」

 そう言いながら、客室の出口前に移動する。

「あー、あ。魔王クライドルである。何用か」

 精一杯の威厳を保とうとしているらしかったが、声が上ずっている。

「派遣されて参りました、本日より魔王陛下のお世話をさせて頂きます。北見沙織です」

「うむ。シェイラ扉を開けよ」

「はい、エロ魔王様」

 多分、向こうには聞こえていないと思う。魔王は無視する事にした。

「な、なんだと…」

 そこには25.6の美しい女性が立っていた。黒髪のロングを邪魔にならない様一つ結びにしている。

細身ではあるが、均整の取れたプロポーションだった。

 しかし、メイド服ではなかった。ダークグレーのパンツスタイルのスーツ姿だった。

「汝、本物のメイドではないな」

 魔王は盛大に勘違いしていたが、期待を裏切られたためか、少しむっとした表情になっている。


 何故?素性がバレた?記憶を覗く魔法を使えるとは聞いてはいたが。

北見は驚いて深々と頭を下げる。

「申し訳ございません魔王陛下、私は日本政府より派遣されました、内閣情報調査室の北見でございます。

陛下のお世話と護衛、及び秘書を務めるよう仰せつかっております。

決して、陛下に身分を隠そうとしたわけではございません。どうかお怒りをお沈め下さい」

 さらに深く頭を下げる北見。

「魔王様、エロ魔王様の期待するメイド服を着た職業メイドなど、日本にはおりませんよ」

 耳元で囁くシェイラ。

魔王は知識を再確認する。そうだ、あれは別物だった。

 まずい。かなり気まずい空気になった。今度はクライドルが慌てる。

「あ、北見とやら、面を上げるがよい。我としたことが、きたい…ではなく。勘違いをしていた。これからよろしく頼む」

 北見はゆっくりと顔を上げ、安心したように微笑んだ。

これはこれで良いかもしれん。クライドルはご満悦であった。

「これから、精一杯励みますので、何なりとお申し付けください」

 ここで、シェイラがずいっと。北見の目の前に近づく。

「しかし、北見様。先に申し上げておきますが、魔王様の肉奴隷は…」

 慌てて、シェイラの口を後ろから塞ぐクライドル。

「肉?何でございましょうか?ご要望がございましたらお申し付けください」

 すっと頭を下げる北見。

 やめてくれ。こんなバカ話に慇懃な態度を取らないでくれ。クライドルは羞恥心で一杯であった。

「いや、北見、何でもない。先程の肉料理が大変美味であった言う話だ」

「左様でございますか、気に入って頂けたのであれば、お申し付け頂けたら用意させますので」

 最後まで言わせてもらえず。シェイラは不満そうであった。

 危なかった。初対面でこんな事を聞かれればドン引きである。早くこいつを何とかしないと。改めてクライドルは決意した。







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