死に体を晒す
死体のように血の気は失せて、それでも歩き続ける。
氷のように冷たい体で歩みを止めぬ。
死んではいない体を抱え、しかしそれでも私は歩く。
ああ、熱い、熱い血を浴びたい。この体は冷たすぎる。とても寒い、寒くて敵わない。
心は未だ死んではいない、と、私は止まらず歩みを進める。
生者の熱を感じたくとも、死者にはならぬと胸に誓って。
しかし私はどこへ行くのだ。
死に損なった体を抱え、死んではいない心を胸に。
記憶をほとんど零してしまい、行き先さえも零した私は。
それでも私は足を踏み出す。進む事しか私にはない。
進む他に何があるのか。命の証が他にないのだ。
彷徨い歩き、ただ歩く。全てを忘れて尚、歩く。
ああ、まさしくこれが死に体を晒す。
死んではいなくも、生から遠く。心はあっても、もはや擦り切れ。
死んではおらず、生きてもいない。死に損なった、過去の残り香。
死んだが如き体を晒し、死に体晒し、それでも歩く
『死に損ない』 <放浪者>
死んでいそうで死んではいない、でもほとんど死んでいる、『死に損ない』の中では安全なもの。
行き先さえ忘れているのにただ「そこ」へと行こう、と歩き続けるも忘れているから辿り着けないし、辿り着く先もない。それゆえ<放浪者>と呼ばれる。
どんな状態でも「まだ死んではいない」という思いと「心は生者のままだ」という思いから『死に損ない』としての衝動(生者の血とかを浴びたい)を押さえ込むため下手なちょっかいを出さない限りは無害。
ただし死体が歩いているとしか思えない姿に関してはどうしようもなく、驚いて死ぬ人が出る事くらいはあるようだ。
完全にタイトルありきで背景も何も考えてないです。思いつくまま気の向くままにタイトルからの妄想です。