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第八話「愛の奇跡」

5/25 句読点等テコ入れしました。

 朝起きてまずはUIの時間を確認する。

 900/5/29 7:02


 昨夜ジゼルちゃんとなし崩しではあるが結ばれた。

 出会ったのはいつだったかな。結構前だった気がするが。


 Smes:ジゼル嬢と出会い彼女を購入したのは五月六日、二十三日前ですよ。


 ログウィンドウにシステムメッセージの黄文字が躍る。

 あぁ、そうなの。というかスメスさん、そういうことも教えてくれるのか。

 便利だから今度からお願いしていいかな?


 Smes:どちかというとお断り。

 >>Smes:ですよねー。


 クエストリストの方を眺めてみる。そこには何も表示されていない。

「魔物の巣を攻略しよう」のクエストはついに消滅していた。

 別に俺自身が攻略したわけではないが、俺が出した金で、俺の妻である愛姫ちゃんが見事討伐を達成したことによりクエストは達成されたようだ。

 クエストの説明文にもそう書かれていたしな。


 隣で寝ていたジゼルちゃんも起きたようだ。朝の挨拶のキスをする。

 クロちゃんや愛姫ちゃんはまず起きたらUIを確認する習慣だったが、ジゼルちゃんはそれをせずに俺に話しかけてきた。


「おはよう、ヒロ」

「おはよう、ジゼル」

「ん…朝のキスというのもちょっと恥ずかしいですわね。ちょっとUIを確認しますから、待ってくださいまし」


 おや、俺に一声かけることを優先したのか。なかなか殊勝な心がけじゃないか。

 ジゼルちゃんもやはり呆けた顔になった。俺もUIの確認中はあんな顔になっているのだろうか。

 確認が終わったらしく、目が焦点を取り戻す。


「ん、今日は割と朝早いですのね。クエストも達成されていましたわ。目に見える報酬が無いにせよ、達成されると気持ちが良いですわね」

「ジゼルはどんなクエストを受けていたの?」


 愛姫ちゃんは俺と同じ魔物の巣攻略クエストだったんだよな。ジゼルちゃんも似たようなクエストを受けていたのだろうか?そんな軽い気持ちで聞いてみたのだが。


「なっ、なっ!?あ、あのねヒロ!どんなクエストを受けているかというのはこの世界における最大のプライバシーですわよ!わたくしから教えるならまだしも聞きだそうだなんて、許されないマナー違反ですわ!」

「そ、そうか、なんかごめん」

「もう!許してさしあげますから、もっと朝の挨拶のキスをする権利を差し上げますわ!」

「そ、そうか」


 よくはわからないが、ジゼルちゃんにいっぱいちゅっちゅしておいた。

 なんだかとても満足そうだった。

 しかし気になるな、どんなクエストを受けていたのだろうか。


 Smes:ジゼル嬢が受けていたクエストは「夫から真実の愛を得る」ですよ。だから色々と気になされていたのです。

 >>Smes:さすがスメスさんだ、そこに痺れる憧れるゥ!


 マナー違反過ぎるシステムメッセージだが、これはとても納得してしまった。そうかそうか、今までのことも全てそういうことだったわけだな。



 ---



 900/5/29 8:00

 ジゼルちゃんとベッドの上でそこそこ長時間イチャイチャした後、服を着替えてキャンプを見て回った。既に部隊の撤収準備はかなり済んでいるようだ。もうすぐ故郷へ向けて凱旋だろう。


 愛姫ちゃんやジゼルちゃんを蘇生させた、国道の切れ目、終点にあったテントを見つけた。あのテントもなかなか感慨深いな。

 それにしても、ただの道が高性能回復施設になっている世界というのは非常に不思議なものだ。もっとどこにでも伸びていれば安全だろうに。


 などと考えていたが少し違和感がする。はて、あのテント、国道の終端に建てられていたよな。

 テントの向こう側にだけ国道が伸びていて、こちらには伸びていなかったはずだが。

 なにしろ国道は横幅が百メートルもあるのだ。キャンプ地がほとんど国道に覆われてしまっていた。


「ん?んんん?」

「ヒロ、どうしましたの?」

「いや、なんかおかしいんだよ。前こんな所に道あったっけ?テントの位置ずらしたりとかしたの?」


 ジゼルちゃんも言われて気づいたようだ。しかしその割には驚いていないようだ。何故だ?


「あのねヒロ。ヒロが知らなかったのもムリはありませんが、この国道は魔物の巣を討伐すると伸びるのですわ」


 その後ジゼルちゃんから説明を受ける。魔物の巣を攻略というか討伐というかともかくクリアすると、国道が伸びるらしい。

 この国道は大陸中央部を縦に割るように伸びている。始点は例の外海側の魚が捕れる港街からで、終端が今いるこの場所になっている。

 もしもこのまま道が伸び続ければ、ついには大陸中央部と魔大陸を繋ぐ天の橋まで繋がるだろうという予測らしい。

 国道が天の橋まで繋がるとどうなるのか?それは不明である。

 この世界の四大陸全てにおいて、国道が天の橋にまで到達した地域はまだ存在しないらしい。


 なるほど、どうもそのあたりがこの世界の謎を解くカギになっている気がする。神様は俺に何をさせたいんだろうね。

 ゲームの最終目標ぐらい最初からしっかり示しておいてくれても良いんじゃないのか?ほら、某ゲームの1作目とかそうだったじゃないか。


 国道という名の神の道は、キレイな銀色に輝いていた。



 ---



 朝九時に出立し、屋敷へと向かった。皆一緒に帰るのかと思いきや、普通に待たずに帰って良いらしい。

 あぁ、そうだったんですか。

 愛姫ちゃんが色々な戦後処理をしていたそうで、愛姫ちゃんが解放されたのが九時だったのだ。


 俺専用馬車で屋敷へと帰る。キャンプ地からニッポンポンの首都まで三時間、首都から俺の屋敷までが十二時間である。

 馬は国道の回復効果のおかげでノンストップで走り続け、日付が変わる深夜0時に屋敷に到着する予定だ。


 15時間もトイレをガマンしたのかどうか?

 それがなんと、馬車の中にトイレが設置されていてなんとかなったのである。うん、ここらへんよくわからないね。衛生面とか大丈夫なんだろうか。

 気になって聞いてみたのだが、なんでも国道から供給される不思議パワーのおかげで清潔が保たれているらしい。国道上以外で使用するのは厳禁なのだそうだ。ちょっと想像したくないね。


 食事なども馬車内で済ませることになった。愛姫ちゃんが馬車内で食べるようにおにぎりなどお弁当を用意してくれていた。


 馬車内では愛姫ちゃんとジゼルちゃんの二人に挟まれて両手に花だった。とはいっても愛姫ちゃんは妊娠中な関係もあってあまりベタベタしてこなかった。

 一方ですっかり打ち解けたジゼルちゃんは結構な勢いでベタベタしてきていた。愛姫ちゃんは俺達がすっかり仲良くなったことを、普通に喜んでくれていた。あまり嫉妬深くないんだねそのあたり。

 ジゼルちゃんも随分そのあたりおだやかだし、ハーレムな割に修羅場は避けられそうなのかな、今後も。



 ---



 900/5/30 0:00


 予定通り夜の零時に屋敷に到着する。クロちゃんにも俺の帰還予想時刻が知らされていたらしい。

 屋敷に帰ると夜遅いにも関わらず、クロちゃんがお出迎えしてくれた。


 魔物の巣の攻略開始が五月の二十二日で、前日の二十一日時点で俺は屋敷を出発していたよって八、九日ぶりぐらいのクロちゃんとの再会になる。


「おかえりなさい!アナタ!」

「ただいま、クロちゃん」


 そういってクロちゃんがぎゅっと抱きついてくる、そしてキス。

 その後は両手をそれぞれ繋いで、いつもの愛情値チェックが始まる。


 と、突然クロちゃんがビクッと震えた。そしてゆっくりと俺の顔を見上げてくる。

 なんだ、何が起こった。クロちゃんの目がうるうるしている。

 泣きそうだ、というか泣き出した。


「うわあぁぁん!」


 クロちゃんが泣きながら走りだす。ただし俺の手を引いて。

 なんだ、一体何が起こった。今何が起こっている?今から何が起こる?

 後ろでビックリしている愛姫ちゃんとジゼルちゃんを置いてそのままクロちゃんに拉致される。

 クロちゃん宅にそのまま引き込まれ、何故か浴室に連れ込まれた。

 そのまま服を脱がされる。クロちゃんも全部脱ぐ。そうしてクロちゃんが宣言した。


「おしおきですよ、アナタ!」



 ---



 その後はクロちゃんに気持ちの良いおしおきをされた。むしろご奉仕とも言えた。

 でもクロちゃんは妊娠中なので本番行為は無しだった。

「トルッコ流です」などとクロちゃんが言っていた。

 トルッコ流ってなんだ?トルコ?トルコの風呂?

 ともかくそのご奉仕で随分とスッキリさせられてしまった。


 うん、最高だった。やはりクロちゃんは最高だ。

 行為のあとクロちゃんは良い仕事した!って感じで満足していた。

 どうやら俺のクロちゃんへの愛情値は再び元の水準まで戻ったらしい。

 その日は久しぶりにクロちゃんと同じベッドで寝た。賢者になれる薬を飲まずに済んだ。


 次の日の朝。クロちゃんの随分と気合いの入った朝ご飯を食べた後。

 900/5/30 9:17

 まずは愛姫ちゃんの家を訪ねた。愛姫ちゃんの家の方がジゼルちゃんの家よりも近いからであるという理由だが。


「旦那様、あの後一体何が起こったのじゃ?」


 うん、当然の質問だと思う。俺は昨日起こったことを愛姫ちゃんに説明してみた。

 すると愛姫ちゃんはかなり青ざめていた。なんだ?どういうことだ?


「いや、その、妊娠中の状態でそこまでするというのは、妾には到底想像出来ぬ。妾が同じことを今旦那様にしろと言われたら、絶対にムリじゃ。体が拒絶反応を起こしてしまって到底続けられぬ。すまぬ、すまぬ、だからお願いだから同じことを妾に頼もうなどとは考えないでおくれ」


 そういってガクガクブルブル震えていた。そこまで震えるほどとんでもないことをクロちゃんはしてくれたのか。クロちゃんから俺への愛の深さはとてつもなく深いらしい。やはりクロちゃんは正妻として大事にするべきだということだな。


 愛姫ちゃんの家を出て、次にジゼルちゃんの家に向かった。ジゼルちゃんは少し不機嫌になっていた。


「ヒロ、昨夜あの後何が起こったのか、説明してくださりませんこと?」


 愛姫ちゃんに説明したのと同じ内容をジゼルちゃんにも説明した。ついでに愛姫ちゃんの感想についても説明しておいた。ジゼルちゃんは随分と悔しそうにしていた。


「うぅー、やっぱりクロ様はずるいですわ。わたくしよりも小さいというのに、胸とか、おしりとか…ましてや愛の深さまで一流だなんて。インチキですわ!」


 うん、それはまったくもってそう思う。話しながら自分の胸やおしりに手をあてて悩んでいるジゼルちゃんも可愛い。


「ええっと、私もその、トルッコ流に挑戦してみて良いのかしら?」

「やってみる?」

「う、うー、そうですわね、や、やめておきますわ!」


 自信が無かったらしい。ふてくされてしまった。とりあえず抱きしめてなでなでしておいた。


「負けてなんかないもん…」


 小さな声でそんなことを呟いていた。

 ジゼルちゃんはクエストクリアで俺の真実の愛を手に入れたということになっていたんだったな。

 俺自身にはちょっと判別がつかないがきっとそうなんだろう。


 その日からは食事の時間以外をジゼルちゃんと過ごすことにした。

 クロちゃんは愛情値が一定値まで回復したことで、警戒を全部解いてくれた。

 嘘がつけない代わりにこの寛容さは素晴らしいと思う。

 やはり今後もクロちゃんは正妻として君臨し続けるのだろうか。


 愛姫ちゃんの教訓を元に、ジゼルちゃんには一切妥協することなく全力でスキルアップを目指すことにした。

 ジゼルちゃんは体が小さいのに俺の責めを愛姫ちゃん以上に受け止めていた。

 あまりこういうことを人と比較するものではないんだろうけど随分とタフだ。ジゼルちゃんの意外な一面を見た気がする。

 スキルアップ値は0.5からどんどん下がっていき、0.2どころかたまに0.1が出る状態にまでなった。俺のスキルの方もかなりアップした。

 愛も随分とアップしていた。そういえば結局この愛がアップって何の意味があったんだろうな。



 ---



 900/6/17 10:21

 最近朝起きてUIの時計を見るとわりととんでもない時刻になっていることが多い。理由は言わずもがな。


 パーティリストの方を眺めてみる。

 ついに、ついにジゼルちゃんのステータス欄に妊娠中を示すハートマークが点灯していた。

 そうか、ついにやったか。喜んでいいものか悲しんでいいものか。明日からどうしよう。


 ジゼルちゃんはまだ寝ている。

 俺が触れば起きるのだろうけど今はそっとしておこう。

 昨日まで随分と頑張ったのだ。

 今のジゼルちゃんならば攻撃力は愛姫ちゃんに敵わないとはいえ、体力は愛姫ちゃんを軽く凌駕していることだろう。

 その体力を今後生かす機会があるかどうかは知らないが。


 と、そのタイミングでUIのログウィンドウに黄文字が躍った。行為中以外のシステムメッセージは随分と久しぶりな気がするな。

 今度はなんだろうか。


 Smes:新たなクエストが発行されました。クエストリストよりご確認ください。


 ちょっとビクッとしてしまった。前回の魔物の巣攻略クエストはあまりにもハード過ぎただろう。

 今回もあんなハードなクエストが発行されたらどうしよう。願わくばあのようなクエストはなるべく控えて欲しい。

 おそるおそるクエスト欄を確認してみる。



 クエスト:愛の奇跡

 目標:愛の奇跡を成功させること


 愛の奇跡?なんだそれは?

 しかし戦闘系では無いような気がする。詳細を確認してみる。


 クエスト:愛の奇跡

 禁呪、愛の奇跡を成功させてください

 世界のバランスを破壊しかねない秘術なのでTIPSには載っていません。自分で探しだしてください。

 ヒントとして、ステータスの愛のパラメータが高数値必要であることと妊娠可能なお嫁さんがいる必要があります。



 ふむ。


 そうか。


 >>Smes:クエストの発行タイミングがあまりにもおかしすぎると思うんだが?

 Smes:なんのことかな?


 絶対狙ってやってるよなコイツ。

 ジゼルちゃんが妊娠したその日に妊娠可能な嫁が必要なクエストを発行するとか、意地が悪いにも程があるだろう。


 スメスさんをもっと問い詰めてやろうかと思ったのだが、このタイミングでジゼルちゃんが起きたようだ。とりあえず朝の挨拶のキスをしておく。


「おはよう、ヒロ」

「おはよう、ジゼル」

「今日もその…あら?え、ちょっと待って、何かおかしいからUI確認させてね」


 そういえば最近はジゼルちゃんが起きてすぐから襲っていたのだった。しかし何かに気づいたようだ。なんかすごいね、この世界のそこらへんのシステム。


 UIを確認して、ジゼルちゃんも妊娠中マークがついたことに気づいたらしい。少しあわあわと慌てているようだ。そんな様子も可愛い。


 そして突然腕をクロスさせバッテンマークを作った。


「えっと、その、ヒロ?」

「うん、何かなジゼル」

「その、その、なんというか、ヒロのことは愛していますわ。けれど、そのですわね」

「うん」


 ジゼルちゃんは少し息を整えている。うん、なんだかこの状況がちょっと懐かしいな-、などと考えてしまった。


「お断りですわよ!」


 そう言い切ってから、ジゼルちゃんは嬉しそうにニッコリと笑った。



 ---



 その後はジゼルちゃん宅で一人でお風呂に入った後クロちゃん宅に戻った。

 二人で入ろうかと考えていたのだが、ジゼルちゃんいわくどうにも体が拒絶反応を起こしてしまい難しいらしい。

 その拒絶反応を抑え込んでトルッコ流をやりとげたクロちゃんはやはりとんでもないってことだ。


 とはいってもあの後クロちゃんはトルッコ流のご奉仕をしてくれない。

 やはり相当のムリがかかるらしい。残念だ。すごく残念だ。

 またして欲しいんだけどな、トルッコ流。

 それにしても明日からどうしよう。クエストもそうだがこの性欲をどうしてくれようか。

 また薬を飲むしか無いのだろうか。


 クロちゃん宅で朝食兼昼食を食べる。

 クロちゃんに愛の奇跡について聞いてみることにする。

 それにしてもクロちゃんって色々と物知りだよね。何か色々とチート臭がしなくもないが、便利なので今はその知識に甘えることにしよう。


「愛の奇跡ですか?知ってますよ。あれ?でもそれって獣族のみの秘術だとばかり思っていました」


 ほらね!やはりクロちゃんは一味違った。禁呪ですら普通に知っているとは凄すぎる。

 しかし何故獣族限定なのだろうか。何か理由があるに違いない。


「それはですね。獣族が抱える問題を解決する為の秘術だからなんです。ヒロは獣族の男女比については知っていますか?」

「うん、知ってる、知ってる」


 獣族というのは男女比がとんでもないことになっているらしい。前にTIPSで確認した。

 確か、ウサギ族が男女比10:90で、猫族が15:85だったか?

 ウサギ族や猫族の男性はハーレムウハウハでなんとも羨ましい限りだな。

 とはいっても俺の今の状態もハーレムか?手を出せないハーレムになってしまったが。


「愛の奇跡というのはですね。主に獣族の男性が獣族の女性を孕ませる際に、少しでも男の子が生まれる可能性を高める為に用いるものなんですよ。愛のパラメータの高い男女がお互いにどちらの性別が欲しいのかということを合意したうえで、普段の倍以上の気力を振り絞って行為に臨むことで、その望んだ性別の子供が生まれる可能性が高まるのだそうです」


 なんだかスゴイ話になってきたな。子供というのは神様からの送り物だろう?

 生まれてくる子供の性別に影響を与えるだなんて、それは確かに禁呪扱いされても何もおかしくはないだろう。


「女性側も気力を振り絞るの?」

「えっと、女性側も気力を振り絞った方が可能性は高まります。ですが合意さえしていれば一方の負担でも有効みたいです。気力を振り絞る側の愛のパラメータの数値だけを参照し、気力を振り絞らなければそちら側の数値は無効化されてしまうそうですよ」


 なるほど、合意さえ得られていれば俺さえ頑張れば愛の奇跡は成立するってことなのか。となれば愛のパラメータが高まっていない女性でも大丈夫ってことだな。


 しかしそれにしても、特定の性別の子供が欲しい人ってどれぐらいいるんだろうね?

 いや、いるといえばいるのだろうけども。もしも子供の性別が自由に選べるなら皆選んでしまうかもしれない。

 しかしなー、そんな都合の良い女性が向こうからやってくるとかそんなご都合展開普通は無いだろう?



 ---



 フラグだった。


「お初にお目にかかります、神の使徒ヒロ様。トルッコ国第十三王女、フリマと申します。ヒロ様の昨今のご活躍を聞き、またヒロ様にお願いしたき儀があり、この度まかりこしました。よろしくお願いいたします」


 次の日の昼前、900/6/18 11:21、クロちゃん宅にて。

 よくわからないけどたぶん中東風かもしれない褐色の美女が向こうから訪ねてきた。

 なんというご都合展開。いやさすがにコレは色々とおかしいとしか思えないのだが。


 それにしてもなんだって?第十三王女?いくらなんでもカウント多すぎないか?

 どれだけ娘がいるんだよって話だ。俺もいつかはそんな数の子供が出来たりするのだろうか。

 今のペースだと普通に有り得そうだなと思わなくもない。まだ一人も生まれてないけれども。


 クロちゃんは甲斐甲斐しくお茶を入れてくれたり色々としてた。

 もちろん既に挨拶は済ませてある。クロちゃんは今日も堂々と正妻宣言をしていた。

 今も割とニコニコ笑顔で応対してくれているのは正妻の余裕というやつなのだろうか。

 俺の微妙な表情を読み取ったのか、フリマ嬢が続ける。


「やはりヒロ様もおかしいと感じられましたか」

「え?」

「第十三王女という件について、です。この度のお願いも、そのことが関係していますから」


 フリマ嬢はトルッコの現在の状況について語ってくれた。

 なんでもフリマ嬢は第十三王女だが、トルッコ国にはそれでも一人も時代を担う王族に男子がいないらしい。

 フリマ嬢は末娘で、ついにそこで現在の王の精魂が尽き果ててしまったのだとか。


 しかしな、いくらなんでもその確率はおかしくないか?

 普通はそこまでカウントが進む前に男子が生まれるはずだろう?


「実はトルッコ国は、私の母、正妃である母上以外の側室が全てウサギ族なのです」


 以前子作り関連のTIPSで確認した内容の中に、人種汚染に関する記述があった。各人種の女性は、その人種の子供しか産まない。この世界にハーフは存在しない。

 ウサギ族の女性はトルッコ国で人気が高く猫族の女性はユーロ国での人気が高い。

 ウサギ族の男女比は10対90で猫族の男女比は15対85。


 それにしても正妃以外が全てウサギ族って、どれだけトルッコ国の男性はウサギ族好きなんだ。

 ウサギ族の女性はまだ見たことがないが、そんなに可愛いんだろうか。


「私の母は三人の子供を生みましたが、私含め全ての子供が娘でした。姉二人は既に他国へと嫁いでいきました」

「ふむふむ」

「私の姉二人に男子が生まれたらその際はトルッコ国の跡継ぎとして譲っていただくという話もありましたが、現在姉二人は併せて五人の子供を生んだものの全て女子なのです」


 なんとも女ばかりで姦しい家系みたいだな。

 必要に差し迫られていなければ男の子だろうが女の子だろうが悩む必要はないのだろうけど、ピンチな状況だとそうも言ってられないのだろう。


「ですから、ヒロ様にお願いしたきことはこのことなのです」

「なんでしょう?」

「私を妻にしていただき、愛の奇跡にて男児を授けて頂きたいのです」


 なるほどこういう流れだったのか。システムメッセージのスメスさんはこのあたり読んでいてあのタイミングでクエスト発行したってことなのか?

 もしもジゼルちゃんが妊娠する前だったならば、俺はジゼルちゃん相手に試してクエストをクリアしていたことだろう。


 Smes:それほどでもない。


 いつもの黄文字でスメスさんがドヤ顔していたが今回はスルーしておいた。相手したら負けだと思っている。



 ---



 そんなわけでフリマさんを購入した。向こうから訪ねてきたのだから今回はタダなんじゃないのかと思ったのだが、愛姫ちゃんやジゼルちゃんの時と同様に500億円取られてしまった。

 いくら神様から貰った金とはいえこんな使い方をしても良いものなのだろうか。

 元の世界の金銭感覚からすると、国家を運営する為に使うならまだしも女一人にそんな金かけることが許されるはずもないだろうに。

 もっとも、フリマさんの購入費の500億円はトルッコ国の人種汚染対策費用として使われるらしい。

 決して俺の払ったお金はムダにならずに、この世界の為に有効活用されていくようだ。

 あまり納得いかないんだけどね。色々とご都合主義が横行しているようにしか思えない。


 フリマさんはおそらく中東風の美女である。

 褐色肌でプロポーションも良い。愛姫には少し劣るぐらい。背は愛姫ちゃんの165センチ程度よりも低いのかな?

 正直俺にはよくわからん。トルコってそこまで中東ってほど中東でもない気がするのだが。

 そこらへんも色々と神様が都合良く設定してしまったのだろう。

 人族の国家は西洋風のユーロ、和風のニッポンポン、そして最後がこのトルッコでそれで全部である。


 ちなみに、今回もというかなんというか、中東風美女というのも俺はまた好みではない。

 俺の好みとなるとクロちゃんみたいな可愛い猫耳なのにバツギュンプロポーションのチートキャラだとか、こう色々な作品に出てくるような金髪碧眼の美少女エルフちゃんなんかが好みなのである。

 あとは愛姫ちゃんみたいな和風巫女さんも結構好きだ。

 ジゼルちゃんのような貧乳キャラも好みでは無かったが、彼女は内面が十分過ぎるほど可愛かったので今では深く愛している(とはいっても既に妊娠しているのでお断りされてしまったが)。


 と、あまり他と比較するのは良くないな。比較した後から言っても説得力は無いが。


 フリマさんはジゼルちゃんの隣、中央正面の大きな建物から右へ五軒目の家に住むことになった。

 この屋敷を買う時に雇ったメイドさん二十名のうち、これで八名までが働いている状態になった。(右へ二軒目、クロちゃんと愛姫ちゃんの間の家は空いている)

 今までずっとさぼっていたメイドさんも、給料を貰っている以上働かざるを得ないだろう。

 ちなみにどのような基準で選ばれているのか聞いてみたら、メイドさん同士でクジ引きしているそうですよ。

 ハズレクジ二本を引いたらそのメイドさんが働きに出るということだ。お前らそれでいいのか。


 フリマさんは俺がフリマさんに対して十分な興味を持てていないことに気づいたらしく、仲良くなる為の企画としてちょっとしたことを提案してきた。


「ヒロ様は既にご存知でしょうか?我がトルッコに伝わる男女が仲良くする為の奥義とも言われているのですが」


 そういったフリマさんにしてもらったのが、例のトルッコ流であった。

 例のアレである。泡がなんだとか絶対に言ってはならない。

 おおぉ!久しぶりにきた!

 俺が経験アリだったことをフリマさんは随分と残念そうにしていた。

 クロちゃん宅で食事をしている際にクロちゃんにそのことを話すと、クロちゃんがドヤ顔をしていた。

 クロちゃん大勝利であるか。ドヤ顔なクロちゃんも可愛いのでなでなでしておいた。


 さて、当然フリマさんとも致すことになるわけだが。

 愛の奇跡とやらを発動させてフリマさんとまぐわった次の日の朝、俺は随分とゲッソリしていた。


「クロちゃんは倍以上とか言っていたけれど…倍って、二倍どころか五倍前後な気がするのだが」


 なんだろう。一気に普段の五倍前後、魂を根こそぎゴッソリ持っていかれるかのような気分だった。

 コレは絶対にヤバイ。寿命が縮みそうな気がする。

 獣族の男性はコレを使うというのか。獣族の男性は女性の比率が高くてハーレムなんだろうけど、相当絶倫なんだろうな。

 クロちゃんが獣族のみの秘術だと思っていた理由がよくわかった。確かにこれは人族の一般男性が普通にやると死んでしまうかもしれん。

 俺のこの体は大分絶倫だからなんとかなってるけども。


 ゲッソリしているそんな俺を、フリマさんはトルッコ流で奮い立たせてくれた。

 うん、トルッコ流は素晴らしいな。フリマさんにはトルッコ流を愛姫ちゃんやジゼルちゃんにも指導して貰うことにしよう。


 そんな日々が半月あまり続き、

 900/7/5 7:04

 ついにフリマさんの状態表示欄に妊娠中を示すハートマークが点灯していた。ハートマークの横に性別を示す♂のマークも見える。

 どうやら愛の奇跡が成功した場合、生まれてくる子供の性別も表示されるようだった。


 Smes:東大陸の姫君コンプリート、おめでとうございます。


 スメスさんが黄文字でそんなお祝いのメッセージを出してくる。妻にした時点でコンプリートではなく孕ませた時点でコンプリートなんだな。

 何故こんな孕ませ人生みたいなことになっているのだろう。俺はこんなどこでも孕ませまくるハーレムものをあまり見たことはないような。


 とはいっても一つぐらいはあるかもしれないな。俺はあの作品が大好きだ。

 主人公の娘も可愛いし、娘に対する主人公の親バカっぷりもとても素晴らしいと思う。

 俺もいつかクロちゃんに女の子が生まれた時には、あんな親バカっぷりを発揮するのだろうか。


 Smes:タイトル名を出したら負けだと思っている。

 >>Smes:はげどう


 わかる人にはわかるだろうからそれでいいのだ。

 俺も彼のような強い主人公になれると良いな。

 とはいっても俺の武器はジゼルちゃんに貰ったメイスだけどな。

 今後果たしてメイスマンで英雄になれるのかどうか不安になりながらも、今日という1日は始まっていく。

タイトル名が愛ばかりになってしまっているのだがどうしたものかなと考え中

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