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異世界で、一兆円とクエストと。家族計画、神の道  作者: レガ先
第六章 数で乗り切る世界攻略
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第七十一話「VS白虎」

 東の青い山脈を守る四獣青龍を討伐したわけだが、改めてこの世界のおかしさを痛感させられた次第だった。


 何がおかしいか。まず東に青龍がいるというそれ自体は何もおかしくはなかった。ここまではお約束ということで理解出来る。しかしまずその青龍の身体が長すぎるのが一番おかしかった。普通長いとかいっても百メートルとかそこらへんだろう。全長が四キロメートル以上とか普通ありえんだろう。

 そしてそんな長すぎる身体を四万人の娘達で囲んでフルボッコしても討伐に四時間かかったわけで。しかもそれは弱体したうえでの話だったわけで。


 謎の応援システムにも参った。うちの家族の戦闘が、この世界の各地、決められた場所でだけとはいえ勝手に放映されているわけだからな。でもその代わりに、視聴者に応援されることにより謎のゲージが貯まって特殊な支援効果を発動可能らしいが。

 青龍を無事倒せたことも応援ゲージが貯まったおかげだ。二回支援効果を発動させて青龍の防御力を大幅に削ったことでようやく倒しきれたのだ。ちなみに支援効果三回目は発動出来なかった。


 応援ゲージは十二本が四色に色分けされている。それぞれ一本がこの世界にある各国に対応しているかと思われる。応援が足りていない国がひとつやふたつあるだけで、そこに足を引っ張られて応援ゲージが貯まらず支援効果も発動しなくなるのだ。これはまた厄介な仕組みを作ってくれたものだ。

 支援効果の発動には全ての応援ゲージが規定値まで達していることが条件であり、他のゲージの超過分を回して貰うということが出来なくなっている。実際に、おそらくユーロ国やニッポンポンやエルフの国アルフヘイムと思われるゲージは凄い勢いで伸びていた。ユーロ国はうちの家族が長年住んでいた地元だしジゼルの出身地でもある。愛姫もニッポンポンでは随分と人気であるらしいし、エルフの国は一応現国王様はブロントということになっているからな。国王様やそのお母様のコピー体が現場で戦っているのだから、そりゃ応援にも熱が入るだろうって話だ。


 でもそういう風に上がどれだけ伸びていてもどうしようもないらしい。下の方の応援が足りなければ応援ゲージによる支援効果は一切発動しない。なるほどな。まさかそんな俺の女の好みがここにきて大きく影響するような設計になっていたなどとは、なかなかいやらしい設定なのではなかろうか。


 好みじゃない種族を一切相手にしていなかった場合、応援ゲージのシステムによりとんでもないしっぺ返しに遭うわけだ。実際そうなりかけた。しかしそれでも、まだなんとかなると思う。俺の娘達にはドワーフ族や犬族、あとトルッコ国も参加していないものの、子供自体は息子達が頑張って作ったからな。ウサギ族の男子は頑張ってドワーフ族相手に子作りに励んでくれたし、ケモノ度が高すぎる犬族の女性も息子達は何故か結構抱けていたからな。ちょっとレベルが高すぎると思う。息子なのに尊敬しちゃう。


 まぁ、ともかくだ。


 なんというか、常識は捨てた方が良いということだ。鱗の下は柔らかいだとかそこらへんの基礎はしっかりそのままみたいだけれど、この世界が色々と根本的におかしいということは変わっていないということだ。なんというか、悪質な悪ふざけが多分に含まれている気がする。

 元々の俺の世界に存在していた事象を幾つか取り上げてわざと改変したような、そういう印象がする。ココは元々神のデザインした世界だと言っていたのだから、何らかの思想が表現されていることは明らかであり、そのあたりを読み取った方が良いはずだ。

 となれば、残りの四獣を討伐するのも油断がならないだろう。どんな事態が起こっても柔軟に対応しなくては。四獣だからといって四獣らしい存在を想定しては駄目だということだ。油断大敵。


 と、話は変わるが。


 青龍を倒した結果、それなりに青龍関連の素材を手に入れることは出来た。龍の素材を獲得して装備を作るだとか、伝説の四獣なのだからきっと良い素材になるのではないかという風に思いたいところではあるが……


 しかし実際のところ、そんなことは無かった。龍の鱗とか凄く強そうだけど、鱗は支援効果により吹き飛んだのでほとんど手に入らなかったのである。骨とか皮とか色々あるのでは?と思いたいところだが、そこらへんも期待薄だった。一応骨や皮なども素材として手に入りはしたのだが、オリハルコンやアダマンなどの元から利用していた金属製品の方が優秀だったのである。

 強い敵を倒したのだから強い装備が手に入る、ということは無かったのだ。元々防具の効果が比較的薄くて、盾ぐらいしか役に立たない世界だからな。で、盾といえば革盾よりも金属盾の方が優秀なわけで。結局革だとか鱗だとかに期待してもダメなわけだ。変なところでリアルな気がする。色々理不尽なことだらけなのに。


 この理不尽さに飲み込まれないように気をつけなくては。



 ---



 次の攻略目標を考えたものの、東西南北の順に回ることにした。となれば東の青龍の次は西の白虎である。


 白虎といえば白い虎だし、ホワイトタイガーはリアルに実在するな。とはいっても、この世界には地球にいる動物はあまり見かけないのだが。牛とか豚とか羊とか鶏はしっかりいてくれるんだけどね。猫族はいるのに猫はいないからな。でもきっと白虎はちゃんと白虎として出てくる気がする、それなりに。


 なので対策することにした。


 虎も一応は猫科なのだし、猫が好きな物がきっと有効なはずだ。大昔に猫族の国に立ち寄った際、土産物屋で猫が好みそうな品をたくさん買い込んだことを思い出す。あれはどうしたのだったかな。なんだかんだで全部ルナにあげた気がする。ルナに対して猫じゃらしを使ったところ、なんだかんだでにゃんにゃん言いながら相手をしてくれたような気がする。反応せずにスルーすることも可能だったぽいけれどちゃんと相手をしてくれたし、その後はベッドインして激しく過ごしたような気がするようなしないような……マリーの弟を仕込んでる頃の話だな、たぶん。


 有効かどうかはわからないものの、そういう品をたくさん購入して娘達のインベントリに入れておいた。猫じゃらしは大丈夫だけれど、マタタビはわりと強烈らしい。マリーや娘のルナ達はマタタビを自分で所持するのは回避していた。


 そんな準備をしてから、おそらくは白虎が待つと思われる西の白っぽい山脈に向かったのだが――


 西の山脈は、山道にはモンスターはいなかった。その代わりなのか、結構な数の穴があるようだ。穴はどれも三メートル程度の高さがあり、昼間なのに奥は暗くて見えない。明かり取りの為にブロントが試しにフラッシュを打ち込んでみようとしたのだが、入り口のところで掻き消されてしまった。どうにもフラッシュは使えないように制限されてしまっているらしい。


 さてどうしようかなと迷ったものの、思い切って囮を投入してみることにした。娘達の中では一番足が速いキャラットを穴の中に単身で突入させてみる。なんとなくどうなるか予想はつくものの、気にせずに突っ込ませた。

 その結果、穴の奥の方で小さな悲鳴がした後に周辺にいるキャラットの残機が一減った。どうやら一瞬で即死したらしい。HPブースト補助もかけてなかったからね。


 残機が減ったのを確認してマリーがすぐにHPブーストのフィールドを展開すると、穴の中から二つの影が飛び出してきた。白虎が二体、どちらもかなり体が大きい。

 すぐにブロントがフラッシュを使って盾役になり、もう一匹の方はジゼルが複数人で囲んで確保した。そのまま流れで戦闘に突入する。


 白虎の一撃は重く、盾無しでそのまま受ければ一撃で十万ダメージ程度あるらしかった。キャラットのHPは七万程度だったから普通に即死コースだ。HPブーストさえあればどうということはないけれども。

 そんな白虎二体を相手に皆で囲んでフルボッコにした。四万人いる娘達のうちほんの数十人程度しか働けていない。そうして大体十五分程度の戦闘で、白虎二体を倒すことが出来た。


 ……薄々予想はしていたが。つまりこの二体は、見た目は確かに白い虎だし白虎と言えば白虎だし攻撃も白虎にふさわしいだけの威力があるけれど、しかしボス白虎では無いということだ。

 俺はそんな現地の様子を例のアーケード筐体っぽい装置で観察していた。白虎のHPは既に画面下部に表示されているのだが、今の二体を倒しても全く変動していない。


 仕方ないので、ノーマル白虎のことをトラと表現することにする。トラ二体を倒したのでその穴の中を調査することにした。誰を行かせるか迷ったものの、またキャラットを突っ込ませたら本格的に泣かれそうなのでマリーに行って貰った。HPは十分過ぎるほどあるし襲われても大丈夫だろうというのもある。


 そしたら、中を五分ほど探索しただけでマリーは穴から出てきた。両手で一匹の白虎の子供を抱えて。現場の様子を画面で確認していることはマリーにも伝わっているので、現地から心の声で語りかけてきた。


『おとーさん、穴の中にこんな子供がいたよ。特に襲ってはこないみたい』

『なるほど、今回はそういうテーマなんだな』

『そういうテーマって?』

『虎穴に入らずんば虎児を得ずってやつだ』


 有名なことわざではあるけれども、まさか実際にやらされるとは思ってもみなかったが。

 どうしたものかと少し悩んだものの、やってみなければわからないのでそのまま継続することにした。


 ちなみに親のトラは白虎の毛皮を素材として出していた。一方で爪や牙などは四大陸を回る際に魔物の巣に生息していた普通の虎と同じ物という扱いになっていた。たぶん、白虎の毛皮といっても他の素材と同様に、凄い素材ということはなくて色違いの虎の毛皮という扱いなのかもしれない。

 その他にも虎の骨が素材として残っていた。何に使うのかよくわからなかったが回収しておいた。持ち帰った後に調査したところ犬族に伝わる薬酒の素材であることが判明した。虎骨酒という名称なんだそうな。



 ---



 とても広い西の山脈にはそこら中に穴があった。仕方ないので穴の中を片っ端から調べることにしたが、全ての穴が最初に調べたものと同様の虎穴だった。調査済の穴の前には立て札を立てておく。この中央大陸の魔物は倒された場所でそのまま再出現する。いわゆるリポップというやつだが、それぞれの穴でトラ二頭を倒しても、その穴の中には再び時間経過によりトラ二頭が再出現するかと思われる。

 それが果たして倒されたトラなのか別のトラなのかまではわからない。倒されて素材を回収されたのに再び出現するのだから、おそらくは倒された物とは別の存在が同じ場所に出現するのだと思う。


 最初の穴以外のほぼ全ての穴を調査して回ったが、今までに調査した全ての穴にそれぞれトラ二匹と子供一匹が存在していた。子供の方は小さくてもしっかり白虎のように見えるのだが、こちらを攻撃しては来なかった。この分だったらペットにも出来るかもしれないな。生態がどうなってるかはわからんけども。


 それぞれの穴にいるトラ二頭はきっとお父さん役とお母さん役なのだろう。本当にお父さんやお母さんなのかもしれないが、だからといってどの巣にも全て一匹ずつ子供がいるというのも変な話だ。この世界によって強制的に設定されている生き物だと判断した方が良いのかもしれない。トラみたいな生物は一度に一匹じゃなく数匹まとめて生むことが多いだろうからな。


 トラの攻撃は痛いが、HPブースト無しの状態でもジゼルが盾役になって堅実に戦えばマリー抜きでも倒すことは可能だった。しばしば何人か倒されてそのまま光の粒になって消えちゃうんだけどもね。死んだら死んだで宮殿にある装置で蘇生されるし、HPが零になった時点で光の粒になるので痛みを感じずに済む。だからどの娘も死を恐れずに頑張ってくれた。


 山道には敵がいないしトラは穴の中でじっと待つようなので、夜になったら山道でそのまま休ませることにした。キャンプセットはキャラットの共有インベントリの中にしまわれていて、それを皆で展開して夜を乗り切る流れになった。


 そのまま連日虎穴の探索を行わせたが、画面に表示されているボス白虎のHPが減ることは無かった。おそらく全ての穴を探索しただろうという状態になってもダメだった。


 結局五日間ほど西の山脈を探索したが白虎は倒せず。そして白虎の子供がいっぱい集まった。ホワイトタイガーの子供は可愛いですね。小さくてもしっかりと縞模様があって。ただ、数が多すぎるとありがたみは薄れるのだけれども。


 結局仕方なく、撤収することにした。拾った白虎の子供は巣に帰さずにそのままお持ち帰りする。どの子も大人しくて良い子だからね。問題無いだろうきっと。


 そうしてマリーをはじめとした娘達は無事?帰ってきたのだが――ただし六千人ほどHP零になって自宅に強制送還されているが――なんと白虎との戦闘状態が維持されたままだった。


 つまりどういうことだ。白虎が近くにいるということなのか。お持ち帰りした中に白虎が含まれていると判断せざるを得ない。


 さて今回、一応応援ゲージは溜めてはみたものの支援効果が表示されなかった。理由はよくわからない。まぁ青龍の無茶っぷりに比べたら今度の白虎は随分と楽に感じるし、支援効果無しで倒せそうではある。


 さて今回、白虎の子供を三千匹ほど連れ帰ってきた。やり過ぎた感はある。やりすぎた感はあるのだが、西の山脈にはそれだけ虎の穴だらけだったのである。一つの穴の二頭の親白虎を倒す際に平均二人ほど犠牲者が出ていた。

 この白虎の子供達はほとんどは売り払う予定になっている。何故か大人しいからきっと高く売れるだろう。ペットとしても売れるだろうし、毛皮や骨目的でも売れるかもしれない。


 親の白虎を倒して獲た素材についてはうちの家族の活動資金にそのまま充てられる予定だ。一方で白虎の子供に関しては娘達の個人的なお小遣いになることになっている。まぁなんというか、うちの一族は家族が多すぎるせいでお小遣いを十分な金額配る余裕も無いからな。チーム分けして広範囲に娘達を展開させて虎の巣を捜索させて、その結果得た虎の子は各チームで自由に処分ということにしておいたのだ。ただし、十分に安全の確認が取れるまでは売っては駄目という制限は付けたが。


 持って帰ってきた虎の子供の中にボス白虎が混じっているというのは、想定外か想定内かなかなか微妙なラインだ。一通り虎の穴を片っ端から捜索したし、その結果ボス白虎のHPが一切減らなかったわけだから十分有り得る話だった。ボスだというのに気付かずに持ち帰ってしまうような何かしら偽装があったのだろうか。もしも見分ける手段が無かったら困ったことになってしまう。全部の虎の子を皆殺しにするというのは勘弁して欲しいからな。


 そんなわけで。娘達が持ち帰った虎の子の中にボス白虎が混じっていないか、調査することにした。



 ---



 調査方法をどうするか、それがまず問題で。


 四万人以上の娘達の部屋は二階と三階にそれぞれある。三階には娘、孫娘世代までが住んでいて、それより下の世代の大半の娘達は二階に住んでいる。三階は娘達の個室は少なく食堂や調理場、浴場など生活スペースが多め。俺がいつも妻達と食事を取る部屋も三階の中央にある。


 四万人の娘達の個室を回って三千匹の白虎の子供それぞれの様子を俺が一人で確認して回る、というのはかなり無理がある話だ。一部屋三分ペースで回ったとしても一時間に二十部屋だから十時間で二百部屋しか回れない。そんなことでは全ての娘達の部屋を三分ずつ回るだけで二百日かかってしまうわけだ。


 実態を把握しきれていないが、まずどの娘の部屋に白虎の子供がいるのかを娘達それぞれに報告して貰うことにした。一階の大広間に全部の白虎の子供を一気に集めて貰って確認するという方法もあるが、もしもボス白虎に何かしら変な特殊能力があった場合、ボスの必殺技的なもので大惨事が起こるかもしれない。なので一カ所に集めるという方法は却下だった。

 白虎の子供達を自宅まで持ち帰ってくる際も、なんだかんだで場所はばらけていたからな。


 どの部屋に白虎の子供がいるのか確認したうえで娘達の部屋をひとつずつ回ることにした。俺一人で回るのはいくらなんでも大変なので、マリーにも別の部屋をそれぞれ回って貰うことにした。何かあればすぐに心の声で連絡が取り合えるからな。


 その結果、一部屋五分で六十部屋を五時間ほどかけて回った頃、何か変わったものが一匹いたらしいという話を聞くことが出来た。他の白虎の子供とは見た目が違うものが一匹だけ紛れ込んでいたらしい。戦闘に出ていた娘達四万人中、近くにいた千人程度だけが見かけたらしい。

 まぁなんというか、娘達の人数が多すぎるせいで全体にまで話が回らないわけだな。


 四万人いる娘達は、一応グループ分けがされている。学校で同じクラスだった娘達が四十人程度で小隊を作っていて、それを六つまとめて二百五十人で中隊、中隊を四つまとめて千人の大隊にしている。千人の大隊を五つ集めて五千人の連隊として、連隊を四つ集めて二万人の師団にしている。その師団が二つで四万人の軍団という形。陸軍の部隊の単位を参考にしたけれども、一応その通りに階級とかも割り振って管理しやすくしている。

 で、軍団長で階級大将がマリーで、師団長で階級中将なのがルナ二号を操作しているルナと、リース二号を操作しているリースになっている。そこらへんはまぁなんというか、正妻だからね、仕方ないね。


 一応師団長だからということで、二つの師団の気風とかは二人にそれぞれ任せてみた。その結果、見た目はちっちゃくて爆乳なルナお母さんの方は実際には教育ママだったのでビシッと厳しい師団になった。一方でリースの方は本人の見た目はすごくビシッとしていてカッコ良いけれども実際には甘やかしママだったのでとてもゆるい師団になった。


 今回白虎の子供に変なのが混じっていたのを見た人数が千人程度だったという話だったが、それはおそらく千人の大隊ひとつ分の人数になるわけだから、それだけの人数が知っているのならば何かしら報告があがっていてもおかしくない。

 連絡網はそれぞれ大隊長の中佐から連隊長の大佐へ、連隊長の大佐から師団長のルナとリースまであがってくるはずである。その報告が上がってきていないということはつまり、ゆるい空気のリース師団の方に含まれていたのではなかろうかと推測出来た。

 よって、リース師団に含まれる大隊長の部屋二十部屋を回ることにした。最初からこうしていれば良かったという気もしてきてやや複雑。大隊長までは全員オリジナルのリースが生んだ娘達らしい。まぁ確かに、その方がわかりやすいといえばわかりやすいのかもしれないな。


 マリーと一緒に回ったところ、十七部屋目のリース二十二号が変わった白虎の子供のことを知っていた。直接部屋を訪ねると娘達は皆とても驚く。まぁ確かに、娘達の人数が多すぎる関係もあって一対一の付き合いをまともにしたことも無いからな。特別に時間を取って愛でている娘以外は、種付けの期間中だけ呼び出されて連日抱かれるというだけの関係だからな。


 改めて考えると酷い話にも思えるが、特に苦情は出ていないようだ。衣食住は保証されているし、学校で同クラスで育った他の同期の娘達と触れ合う機会も多いので孤独というわけでもない。皆同じコピー体で母娘の容姿の差が無いものの、関係上は娘や孫娘がたくさんいるのでその様子を見に行くこともあるらしい。

 それより何より、身体がいつまでも若いままなので有り余る時間を使って何かしらの趣味に時間を使っている娘も多い。大分充実している方なのではなかろうか。父親兼夫の愛が足りなくても問題無いようだ。


 俺とマリーが二人で三階にあるリース二十二号の部屋を訪ねた時、彼女は趣味の陶芸を楽しんでいる最中だった。趣味とは言ってもそれなりに出来は良くて、実際にこの宮殿内でも使われているらしいのだけども。

 作業が一区切り付いたところで止めて貰って用件を伝えて、他とは違う白虎の子供を彼女のグループ内で確かに捕獲していたという話を聞いた後は、その白虎の子供を今世話している娘の部屋まで案内して貰った。



 ---



 案内された先は小隊長クラスの娘のいる部屋で。そんなには広くない部屋の中に三十人ほどの娘達がひしめいていて随分と狭くなっていた。どの娘も一風変わった白虎の子供の様子を見る為にやってきたらしい。部屋が狭いので同じ小隊以外の娘達は追い出されたらしいが。


 さて問題の白虎の子供とやらは……最初ソイツは娘達に囲まれて随分と素直に可愛がられている様子だったが、俺の姿を見るや否や一気に表情を変えて全身で威嚇してきた。娘達は突然の変わりようにビックリしていたが、すぐに「怒った姿も可愛い-!」などと言っている。まぁ確かに、その通りだとは思うけれども。


 変わり種の白虎の子供とやらは、それは、虎の子供ではなく子猫にしか見えなかった。


 そう、虎ではなく猫だった。体長十センチ前後ぐらいのとってもミニマムな真っ白な子猫だった。手足もすごく短い子猫が、俺の方を全力で威嚇しているのである。なんかこれ、ネタ画像か何かで見たことがあるような気がするな。


 そう、ネタ画像か何かで見た気がする。ちっちゃくて白い子猫がフシーッ!と威嚇している画像に、何故か「白虎」とか書かれているんですよ。だから俺はこの子猫をボス白虎として断定した。どう考えてもこの子猫が怪しい。そもそも――


 ――そもそもこの世界には、猫族はいても猫はいないのだから。


「すまないが、ソイツを父さんに渡してくれないか?色々と理由があってだな。返せそうにはないから今のうちに謝っておく、ごめんな」


 一応そう一言断っておいてからマリーにそのミニマム子猫を持って貰った。手乗りサイズの小さな白い子猫なので、両手ですっぽりと包み込める程度のサイズしかない。そうやって拉致してから四階の中央の部屋に向かった。


 四階の中央の部屋には、ボス白虎のHPを表示してくれる例のアーケードゲームの筐体のような装置がある。装置を壊されても困るからあまり極端には近づけたくないが、だからといって確認しながらでないと色々と危うい。ばたばたと小走りになりながらも装置のある部屋まで駆け込んで、マリーと一緒に一息ついた。


「おとーさん、これが白虎なの?どうしてそう思ったの?」


 特に疑問は挟まずに協力してくれたマリーがそう質問してきた。あまり背丈は変わらないはずなのに何故か上目遣いでそう聞いてくる。わざとやっているのだろうか、それはさておき。


「マリー、お前にはこれが何に見える?」

「ええと、確か、猫だよね?」


 マリーには俺の持つ知識のイメージをことごとく譲渡済なので、俺の世界にいた猫の知識も映像で知っているようだ。


「そう、猫だ。猫族と同じ名前を持つ、父さんの世界に住んでいる猫だ。この世界にはいないはずだよな?」

「あ、そっか。全然気付かなかった」

「……まぁ、なんだ。他の娘達はきっと、凄く変わった可愛い白虎の子供だと思っていたのかもしれないな。この世界には猫がいないのだから。でもこれは明らかに猫だ、子猫だ。つまりこの世界にとっての特異点であるコイツが、間違いなくボス白虎だと思う、だから」


 俺はそう言って装置の方を指差して、続ける。


「だから、コイツを攻撃して白虎のHPゲージが減ったら容疑は真っ黒だし、そのまま倒すことにする」

「倒すって、この子猫を?」

「そうだ、その子猫を倒す。大丈夫だ、俺がやるから」

「ええと、本当に?」

「本当に。だから、俺用にブルトガングを出してくれないか?」

「うーん、わかったぁ……」


 多少納得がいかない様子だったが、マリーは俺用にブルトガングを出してくれた。俺の手に直接出てくるわけじゃなくて、マリーがその手に出した物を受け取る形になる。そうして受け取ったブルトガングを白い子猫のお腹にそっと突き立てることにした。子猫の体はマリーに固定して貰った。


 もしも冤罪だったらどうしようかと考えながらゆっくりゆっくり刃を近づけていくと、剣が刺さるより前の空中で剣が弾かれた。HPによるバリアが働いている証拠だ。それを確認してから少しずつ剣に力を篭めて推し進めようとするが、堅いバリアに阻まれて一向に剣が進みそうになかった。


 一分ほどそれを続けてから、装置のディスプレイに表示される白虎のHPバーを確認する。やはり白虎との戦闘状態は継続中らしく画面には白虎のHPが表示されていた。そしてそのHPゲージが1ドットだけ、わずかだけど減っていたのである。



 ---



 その後はなんというか大変だった。


 相当力を入れて突かないとダメそうだということで、マリーに子猫な白虎の体を床にうつぶせに固定してもらって、その白虎の背中へと俺が全力で体重を乗せて突き続けるという形を取った。この小さな体のどこにそんな耐久力があるのか信じられないほどにHPが大量にあるようで、体重を乗せてブルトガングを突き立て続けてもなかなかHPが減らない。


 そうやってブルトガングを子猫白虎の体に突き立てているわけだが、白虎は特に反撃して来なかった。どうやら本体には子猫の見た目同様の子猫並の戦闘力しかないようだ。マリーに体を床に押さえつけられながら、ミーミーと子猫が悲鳴をあげている。押さえつけているマリーの方は、涙目になっているというか実際にぽろぽろ泣いている。まぁ見た目ではとても酷いことをやっているからな、気持ちはわからないでもないのだが。


「おとーさん、これ非道すぎるよ、あんまりだよ」

「そうは言われてもな、マリー。コイツが白虎本体であることは間違いなく事実なんだ。俺達の目的上四獣は全部倒さなくてはいけないのだろうし、やるしかないんだ」

「それは、わかるんだけど……ごめんね、ごめんね、良い子だから大人しくこのままやられてね」


 マリーが体を固定している理由は、まぁなんというか。俺がブルトガングで攻撃し続けているわけだけれども、HPを削りきるまでは子猫の体には剣は刺さらず、剣を押しつけていても固定出来ないのだ。何か拘束具のようなもので固定しようにも、こんな小さな子猫を拘束して固定するような道具は全く思い当たらなかった。

 複数人で攻撃してHPの削り速度を加速出来たならばそうしたいところではあるが、子猫白虎の体が小さすぎてまともに攻撃出来そうにないし、ブルトガングは絆神力で出している分他の武器よりも圧倒的に威力があるから多少増えたところで誤差にしかならない。


 ちなみにこの絆神力で顕現させる武器については、扱えるのはマリーとブロントと父親の俺だけであるらしい。妻や娘達に渡しても、受け取った時点で武器が消滅してしまい扱えないようだった。使用には何かしらの制約があるらしいな。


 夕食後に部屋を回ってこの子猫白虎を受け取ってきたわけだが、いつものように夕食後に娘達の相手をせずに(それがいつもの日常になってしまっていることがそもそもどうかという話もあるが)別のことをやり出したので、妻達には訝しがられていた。

 四階中央の部屋でマリーと一緒に子猫白虎に攻撃しはじめたわけだが、四階には妻達の個室が並んでいるし、それに加えてUIのマップに四階中央の部屋に俺とマリーがいるのもバッチリと表示されてしまっているらしく。そんな四階中央の部屋から、ミーミーと子猫白虎が悲しそうに鳴く声が聞こえてくるものだから、妻達が皆様子を見に来てしまった。


 ボス白虎が持ち帰ってきた白虎の子供に混じっているという件は、実は妻達には相談していなくて。四階中央の部屋の扉を開けたらそこで俺とマリーが二人で可愛い子猫に全力で剣を突き立てているのだから、さすがに皆ビックリしていた。見られたからにはちゃんと理由も説明したんだけどね。けれどそれでも痛烈に批判された。


「それがアナタの世界の猫なんですか。確かに私達のような耳やしっぽを持っているのですね。そんな可愛い生き物が虐められている姿は、見るに忍びないです」


 ルナはそんなことを言っていた。まぁ確かに、体をガッチリ固定されている子猫に体重を思いっきり乗せて真上から剣を突き立てている状態だからな。この四階中央の部屋には妻達以外は誰も来ないので、そのこともありココで一生懸命トドメを刺そうとしているのだが。


 これは予想の話になるのだけども、おそらくは戦闘能力が皆無ということは無いはずだろう。先ほどからずっとミーミー鳴いているのは、助けを呼ぶなり何らかの能力があるのではなかろうか。例えば、周囲にいる親白虎や子供白虎に干渉してパワーアップさせる力だとか。

 他の白虎の子供達は皆二階にいるし、今ここは四階の中央だから大分距離が離れている。だから仮にそんな能力があったとしても力を発揮することは無いだろう。実験して確かめればわかることなのだろうけれど、実験した結果大惨事になったらとても困ったことになる。体の方は負けてもまた復活するかもしれないが、もしもこの宮殿内で暴れられて装置を破壊されでもしたらその被害はちょっと計り知れない。

 死ねば復活するとして、その復活する為の装置が破壊されたらどうなってしまうんだ?復活出来なくなってしまいそうだから、絶対にそんなことをしてはいけない。


 後は他に考えられることとして、可愛さ=強さという説はどうだろうか。この子猫白虎は見た目が可愛い。見た目が可愛いことに加えて戦闘能力が無い。そのような徹底したカモフラージュによって、このように倒されることを全力で回避しているのではなかろうか。

 小さな子猫を全力で攻撃し続けられるような人物はなかなか少ないのではなかろうか。良心が痛むとか、周囲の視線が痛いとかそういう意味で。つまり、この可愛さがこの世界の白虎の最大の武器なのではなかろうか。


 つまりそれを無視して攻撃し続ければ俺の勝ちなわけだな。


 結局そのまま、俺は三時間ほど子猫白虎の背中にブルトガングの切っ先を体重を大きく乗せて突き立て続けていた。ついに子猫白虎のHPが零になり、刺さらずに止まっていた切っ先が子猫の背中に突き刺さった。子猫の返り血がマリーの顔に飛んで、彼女が大泣きしてしまった。うん、とてもイヤな事件だったね。仕方ないね。


 四階中央の部屋の例の装置の画面には、勝利画面が表示されていた。「な、なにをするきさまらー!」と、子猫白虎ではない普通の白虎の画像の下に文字が表示されていた。

 なんとも言えない気分になりつつも今は勝利を喜ぶことにして、俺は自室でマリーと一緒にお風呂に入ってから寝た。

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