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異世界で、一兆円とクエストと。家族計画、神の道  作者: レガ先
第六章 数で乗り切る世界攻略
71/79

第七十話「VS青龍」

六十九話が地味だったので七十話と同時に二話あげてます。

一度に読むと長いですけどね。

 結果から言おう。

 青龍相手に全滅しました。


 どうしてこうなった……



 ---



 出撃の号令をかけた次の日の朝八時頃、マリーとブロントが率いるうちの娘軍団は中央大陸東にあるほんのり青い山脈の麓に到着した。山頂までは到達したことがないが、これまでの二十年間ここらの山の登り口でずっと魔物狩りして鍛えていたのである。道中のザコはアンジェラの弱体魔法で適宜無力化しつつ排除していった。


 中央大陸外縁部は元々標高がとても高い土地だ。山の麓でも五千メートルあり、そこから更に登っていくことになる。目測では山の高さは頂上でプラス五千メートルほど。そんな高いところまで登れるのだろうかと不安になったのだが。


 平均勾配二十パーセント程度の坂道を上り続けて七時間ほど。山道は随分と広くて登りやすかったものの、それでも山の中腹あたりだろうか。その時点で青龍が出現した。


「我が名は青龍、東の封印を護りし守護者なり。神の座を目指すのであれば、我を討ち取ってみせよ」


 山頂までいかないうちにのっそりと出てきた自称青龍。一方的に宣戦布告してきて、なし崩しにそのまま戦闘へと突入した。山道を歩いていたら、突然曲がり角からひょっこり顔を覗かせてきたのである。


 その時点で、青龍の見た目が西洋の胴体の短いドラゴンではなく東洋の胴体の長い龍であることはすぐにわかった。最初の数分は正面の見える範囲だけで戦っていたのだが、それではせっかく四万人もいるのに効率が悪いだろうということで、身体の後ろの方も叩くことにした。


 しかしこの青龍、とんでもなくでかくて長かったのである。長いといったら普通どの程度の長さを想定するだろうか。五十メートル?百メートル?あるいは盛りに盛って一キロなどであろうか。

 しかし実際にはそれどころではなかった。軽く五キロ以上、山道をどこまでいってもどこまでいっても、おそらくは山頂まで続いているのではないかというぐらいに長かったのだ。


 そんなとんでもなく長い青龍の胴の太さは三メートル程度。どこまでもどこまでも続くその身体は、色は青く鱗もびっしりと生えていて、そして地面にべったりとくっついていた。

 どこまでもどこまでも続く身体が道を遮っていて、一度頭の側から左右どちらかに入ったら反対側へ抜けることは出来そうに無かった。


 娘達はそれぞれ胴に張り付いて攻撃していたものの、どうにもダメージの通りが悪いようだった。龍の鱗は硬く刃を弾く。キャラット達が頑張って表面の青い鱗を一枚ずつスファライで引っぺがしていたが、鱗の枚数が多すぎることに加えて鱗の下をついても全然動じないほどに青龍がタフだった。

 この青龍、HPによるバリアがとんでもなく多いのかもしれない。


 そんな青龍本体の攻撃は、胴の先っぽの頭と腕だけを使用して行われていた。左右の手の爪による引っ掻き攻撃と頭での噛みつき攻撃を多用していて、そこにたまにブレス攻撃が加わる。

 それらの攻撃をマリーとブロントの二人が正面で防ぎ続けていた。五十人ほどの補助をつけつつも他の娘達は青龍の身体の左右へどんどん回して奥へ進ませて、とにかく耐え続けていた。


 爪や牙など物理攻撃であればブロントが装備している物理盾オハンにより防ぐことが出来る。ただし盾で防いでも何割かのダメージはそのまま貫通してしまうのだが。一方でブレスの方は、青龍はブレスでなぎ払うのではなく相手の頭上から真下へと吹き下ろすようにブレスを吐いていた。こちらはマリーが魔法盾であるイージスによって防いでいた。


 オハンによって防いだ際の青龍の一撃のダメージは二万前後。ブレスをイージスで防いだ場合はノーダメージだった。ブロントの最大HPは素の状態で十万あり、そこにマリーのHPの五千万のうち十割をボーナスとして受けるので五千と十万あった。なので盾で受け止めた青龍の一撃が二万ダメージでも余裕を持って受け止められていたのだが。


 戦闘はそのままいつまでも続き、戦闘時間が四時間を超える長期戦になってしまった。その結果遂にマリーの絆神力ゲージが枯渇してしまい、HPブーストの加護を振りまけなくなってしまう。イージスやオハンなどの神具に関しては時間経過による回復量未満の消費なので使用し続けることが出来たが、HPの増加の加護がなくなってしまうことは非常に辛かった。


 絆神力ゲージが尽きた後も、ティターニアが必死にブロントを回復し続けることによって青龍の攻撃に耐え続けていたのだが、三十分ほど経過した頃に突然青龍がこれまでとは違う行動を取った。口のあたりに何か緑色の光球を集めたかと思うと、それをブロントに向かって発射したのである。ブロントはこれを盾で受けたが、緑色の光球はそのまま弾けて竜巻を巻き起こした。

 突然の竜巻に視界を遮られ何が起こったのか理解は出来なかったが、竜巻の後そこにブロントの姿はなく、光の粒子がキラキラと消えていくところだった。


 これはHPが零になった際の反応だ。二十四年間の修行期間の最中、うちの娘達がやられることは何度もあった。その際HPが零になると身体と所持品が全て光の粒子となり消えていくのである。そのまま復活場所へと転送されそちらで再構築されるのだ。


 青龍が放った謎の緑色の光球。着弾後に竜巻を巻き起こしたそれは、おそらくは――


『まさか、攻撃魔法だというのか?』


 俺はその時は、マリーの身体の中から現地の状況を見ていた。青龍の長さなどは帰還後に娘達から聞いたことである。ともかく今先ほどブロントを一撃で葬った一撃は、おそらくは攻撃魔法であるとしか思えなかった。青龍の属性はおそらくは風属性である。だから突風の、竜巻の攻撃魔法を用いたのは無いかと予測したのだ。


 ブロントを仕留めた後の青龍は、残されたマリーをその爪と牙によって何度も何度も攻撃してきた。敵の魔法攻撃を意識したがゆえに、盾をイージスからオハンに切り替えることは出来なかった。

 一撃のダメージはブルトガングによる物理防御の加護があっても八万程度あり、途方もない時間殴られ続けた末にマリーも遂にやられてしまった。

 一体何発殴られ続けたのかわからない。ティターニア達からの厚い回復魔法の支援もあったし、三秒に一発殴られるペースで一時間以上殴られ続けたのではなかろうか。回復していたティターニアが徐々に狙われるようになり、ティターニアは青龍が軽く一回殴りつけただけで一撃で光の雫になり飛び散ってしまった。

 青龍の一撃は平均十万ダメージ程度あり、最大HP八万程度の娘達では一撃も耐えることが出来なかったのだ。HPブーストの補助があればプラス五百万されることで五十発まで耐えられるのだが。


 青龍正面での戦いがそのようになっていた一方で、青龍の側面へと回っていた娘達はスムーズには進軍出来なかった。側面には一メートル間隔で娘達に青龍に張り付き常に殴り続けていた。キャラットと愛姫がそれぞれセットで一メートル余りの間隔で張り付いて鱗を剥がしつつ殴り続けていたし、リースは青龍の胴の上にジャンプして飛び乗って、上からひたすら突っついていた。

 娘たちは一兵種あたり平均七千人いるので青龍の左右にそれぞれ展開するとして四キロ弱程度必要になるのだが、奥に進むことを妨害する相手がいた。


 青龍の眷属とでも言うべきなのか。体高二メートル程度の二足走行する青色のワイバーンが、山道のあちらこちらから定期的に湧き出してきたらしい。どちらかというとこちらの見た目の方が俺の知っている青龍のイメージだろうか、ただし少し小さいみたいだが。

 俺は青龍正面の様子をマリーの中から見ていただけなのでそれ以外の場所については娘達からの伝聞になるわけだが、青龍の眷属は十メートルに一体程度の間隔で青龍の体の左右どちらにも出現し、出現地点周辺の娘達を襲っていたらしい。ジゼルが盾役として引き付けていたらしいが、随分とタフなうえに倒しても五分程度で再出現していたそうだ。

 眷属達の一撃は二万ダメージ程度だったとのこと。ブレスや魔法は使わず噛み付き攻撃のみだったようだ。ジゼルが盾で防ぐことで八千程度に抑えられていたみたい。


 マリーからのHPブーストフィールドによる補助が消えた後も娘達は戦線を維持しつつ青龍を叩き続けていたらしいが、マリーを一時間かけて遂に殴り倒した青龍がどんどん他の娘達を排除しにかかった。一人ずつ丁寧に殴られたらしい。青龍はその長すぎる身体を攻撃に使うことはなく、ブレスでなぎ払うことなども無く、身体の先っぽの部分だけで一発ずつ娘達を葬り続けた。三秒に一人ペースでやられ続けた結果、最後の一人がやられてしまうまでに一日半経過した。


 もうね、負け確定した時点でこっちも早くトドメ刺された方がマシなんじゃないかと思った。だって四万人だからね。三秒に一発ペースでも倒しきれないよね。最後の方、トドメ刺されるのを待ってる状態で娘達が空腹に苦しんでた。むしろ戦闘中だけれどそのまま食事や睡眠モードになった娘もいる模様。共有インベントリから簡易ベッドを取り出してぐっすり寝てる最中に青龍にトドメ刺された娘もいるとかいないとか。

 うちの娘は、人数が多すぎるからアレだけど一応どの娘も姫ちゃんなんですよ。ご飯だって食べたいし夜はぐっすり寝たいし二十四時間戦い続けるとか無理だってことだ。


 青龍本体はずっと休まずに戦い続けていたけれど、眷族である体高二メートル程度の青いワイバーン達は夜十時を過ぎると元の待機場所に戻って寝てしまったらしい。戦闘中だからといって疲れたら休むのがこの世界の基本だとでもいうのか。しかしそのせいで娘達も緊張感が無くなって、いつまで叩いても一向に倒せない青龍の胴を叩くことを休んでしまったようだ。鱗が堅すぎて全然ダメージ通ってなさそうだったからね。仕方ないといえば仕方ないことなのだが。


 まとめると、山を登り出したのが午前八時。青龍と戦闘開始したのが午後三時。マリーの絆神力ゲージが枯渇したのが午後七時で、その後ブロントが攻撃魔法で倒されたのが七時半でマリーも殴られ続けられてやられたのが八時半。その後どんどん娘達が一人ずつ仕留められていき、全滅したのが二日後の朝九時頃という結果だった。


 さすがにちょっと長丁場過ぎると思う。



 ---



 さて、そんな風に全滅させられた娘達だったわけだけれど、教会での復活システムにより無事に復活出来た。どこで復活したかというと、各地に散在する十二箇所の大聖堂ではなく、中央大陸中央にある今居住している宮殿の方に設置されている十二基の装置の方から復活していた。

 十二基の装置のうちそれぞれ担当が違うらしく、ルナばかりが蘇生されて出てくる装置やリースばかりが蘇生されて出てくる装置などがあった。


 どうやらこの装置、うちの一族だけを蘇生するらしい。ちなみにうちの一族は息子達の方の子孫も含まれているわけだが、その子孫の中にも魔物ハンターをしている子孫が含まれているのでそういった人々がやられた際にも同じ場所で復活していた。装置から皆それぞれに丸まった状態でシュポーンという擬態語で表現したくなる感じに射出されていた。ただし全員全裸で。


 復活してくる装置は、おそらくはどの種族かということだけで決定されているようだった。マリーはルナと同じ猫族用の蘇生装置から出てきたし、ブロントはリースと同じエルフ用の蘇生装置から出てきた。


 蘇生装置を観察した結果、わかったこととしては。どうやら即時復活ではなく順番待ちが発生するらしかった。平均して三分に一人ペースで、五つ並んだ管からそれぞれ娘達が蘇生されていたが、マリーの復活にはどうやら時間がかかるらしく管の一つから長時間誰も出て来なかった。結局マリーが蘇生されてきたのは死亡した約三十一時間後の深夜四時頃だった。


 またその他の娘達に関しても、人数の多い娘は七千人ほどいるので五ラインで三分ごとに一人蘇生されていても七十時間、約三日ほどかかっていた。さすがに全裸蘇生は皆恥ずかしいみたいで皆涙目になっていた。

 近い家族だけならまだしも、たまに遠戚の息子達の子孫の方の人も混ざるからね。たまに知らない異性も混ざるわけだから恥ずかしいよね。仕方ないと思う。


 青龍との戦いの後、色々とおかしな報告があがってきていた。何でも話を聞くところによると、青龍との戦いの様子が世界各地に映像として放映されていたらしいのである。時間がかかり過ぎなうえに負け戦だったというのに、なんということだ。


 一体何故そんなことが起こったのかはわからないが、どうやら何かしらの映像装置が一部の施設に仕込まれているらしい。映像が流された場所は中央大陸にある十二箇所の大聖堂の一部の部屋と、この世界の十二国のそれぞれの首都教会にある中央ホールと、そしてこの中央大陸中央部にある今居住している宮殿内のいくつかの部屋だった。一体どこから映像が出力されているのかを調べたところ、特殊な紋様入りの水晶玉が各地で見つかったらしい。どの水晶玉も台座にしっかりと固定されていて取り外しは出来ないのだとか。

 元々何か変わった水晶玉があることが既に確認済だった場所も多いようだが、今回のように突然映像が流されるような出来事は記録には無いらしかった。


 戦闘中、俺と妻達はそれぞれ意識を現地に飛ばして現場を視察していたので、そういったことに全然気付かなかった次第。マリーが青龍にやられてしまった後に元の身体で目覚めたら、フリマさんや自宅待機組の娘達に何やら変なことが起こっていることを伝えられたという流れだった。


 その中でも特に変わったこととして、四階層の中央部、妻達の個室がある階層の中央の部屋にある謎の装置が反応して稼動しているということだった。実際に部屋の中に入ってみると、大きな水晶玉の方からは現地の状況が立体映像で映し出されていて、アーケードゲームの筐体っぽい方にも何やら表示されている様子だった。

 その装置の、画面と表現するしかないが、それを見た時正直かなり驚いた。驚くと同時に一体この装置が何なのか、ただちに突き止めなければならないと強く感じた次第。


 画面上部に表示されるYOU LOSEの文字。画面中央にデカデカと表示されている気持ちドヤ顔の青龍の姿。そしてその下にはひらがなでこう書かれていた。

「おうちへかえるんだな。おまえにもかぞくがいるだろう・・・」


 ついでにその下には何やら選択肢が出ていて「CONTINUE? はい YES」などと書かれていた。ついでに復活まで残り三十時間二十三分という表示も出ていて、その数値はマリーの蘇生にかかった時間と一致していた。


 青龍との戦いが世界各地で広範囲では無いものの一部地域で勝手に放映されていた件、及びマリー死亡後に敗北画面になっていた謎の装置。コレが一体なんなのか、突き止める必要があった。



 ---



 敗北したからといって諦めるわけにもいかず。青龍を倒せば何かが変わるという保証は無いが、この中央大陸に待ち受ける目標を何かしらこなさない限りはうちの一族は時間切れにより全滅してしまうのである。だから青龍に再挑戦することにした。


 一応下準備として前回上った道とは別の登山ルートを探しておいた。青龍の巨大過ぎる身体を効率よく叩く為には正面から回っていては時間がかかり過ぎるので、いくつかの場所から分担して取り囲んだ方が良いだろうと判断された為だ。


 ついでに、どうせ放映されてしまうのならということで戦闘開始の予想時間を世界各地に通達しておいた。青龍との戦闘を観戦したければ観戦しても良いよということで。負け戦とかはあまり他の人に見せたくないんだけどね。それも、潔くすぐにすっぱりと負けるならまだしも一時間なぶり続けられた挙句その後ひたすら殺されるのを長時間待つ流れになってしまったしな、前回は。ただし、どうやら映像の放映はマリーが負けた時点で終了していたらしいのだが。


 システムメッセージのスメス氏がいつぞや説明していたように、メインプレイヤーであるマリーが敗北した時点で負け確定という判断なのだろうか。戦力として突出しているのは確かなのだが、それ以外の娘達だって相当人数はいるし、決して戦力として劣っているわけではない。

 マリーやブロントの神具による戦闘力は大体百人分から多くても千人分程度だし、娘達の人数が四万人いるわけだから、娘達の戦力の合計の方がマリーとブロントの攻撃力よりも十倍以上強いんだけどな。


 青龍とのリベンジマッチのその日。俺はマリーの身体の中に現場の様子を見に行くのはやめて、四階中央の部屋でアーケード筐体っぽい装置の様子を眺めていた。今は何も表示されず真っ黒だけれど、青龍との戦闘が開始したら何かが表示されるはずだと考えてその時を待った。

 妻達は皆個室で寝て現地の娘達の身体の中に入って指揮を執っているのでこの場にはいない。その代わりと言ってはなんだけど自宅待機組の娘達を近くに侍らせておいた。相変わらず昔のように、何人かは特別に愛玩用に確保していたりもする。


 特にそうだな。どこまで血が濃くなるのかを限界まで試した娘もいるな。名前の横の番号表示が凄いことになったリース2AAAAZちゃん十歳とか。リース本人から見ると、孫の、その孫の、更に孫にあたる。昆孫っていうらしいよ。ちょっと聞いたことがない文字だな、六世代目だ。それでも俺にとっては娘でもあるのだけれども。ここまで俺の血が濃くなってもコピー体であることに変わりは無いらしく、見た目は他の娘達同様にオリジナルのリースそっくりだった。


 世代が進むほどにコピー体の娘達が生める子供の数は減少傾向で、二世代前が生める子供の人数の限界は六人だったし一世代前、この娘の母親の生めたのはこの娘だけ、たった一人きりだった。一人しか生めないがゆえに、一人目なのにアルファベッドがAではなく最後の一人を示すZになっていた。六人生めたこの娘の祖母の時は、それぞれABCXYZになっていたのだが。


 終点、行き止まりに達したこの娘は子供を一人も生めない身体になっているのかもしれないな。そんな可哀想な存在を生み出した俺が悪いというのはその通りではあるが、おそらくこの世界をクリアしたらなんとかなるだろうと信じておく。


 話が逸れてしまった。


 ともかく、自宅待機のちっちゃいのからおっきいのまでいる娘達に囲まれつつ、青龍との戦闘開始を待った。現地のマリーと心の声で連絡を取り合って待ち続けたところ、前回の遭遇地点とほぼ同じ場所で再び青龍は姿を現したようだ。

 そしてそれと同時に、宮殿にあった装置の方にも青龍の姿が映し出された。


「我が名は青龍、東の封印を護りし守護者なり。神の座を目指すのであれば、我を討ち取ってみせよ」


 前回と全く同じ台詞を喋ったのではなかろうか。画面の方には青龍の姿と音声だけでなく台詞が文字で表示されていた。次に画面が切り替わる。いつも普段確認しているようなUIが画面に展開された。中央上部にはマリーのステータスと絆神力ゲージが表示され、画面左にはパーティーメンバーの名前リストが表示された。HPゲージというよりは残り人数が表示されているな。一番上がジゼル=アーゼス×7000になっている。どうやら並び順は何か変わった決まりがあるらしい。俺の好感度順で無いことだけは確かだった。


 中央上部にはマリーのステータス、左側には縦に娘達の残り人数が表示されていて、そして画面下部には極太極長で青龍の残りHPが表示されていた。ボスの残りHP公開しちゃうのかよ。前回結局どれだけ削れたのかとか、確認したかったのに。


 そしてそれとは別に右の方に、何やら十二個ぐらい豆粒のようなものが表示されていた。幅が一ドットぐらいの線で、合計十二あるらしい。よく見ると色分けされていた。赤、青、緑、黄色の四色がそれぞれ三つずつあるようだが。


 青龍との戦闘開始後も、その画面を観察していた。画面の中ではマリーが青龍と一生懸命戦っている。とはいっても基本的には、ブロントが正面で一生懸命青龍の攻撃をガードし続けて、マリーがその後ろから攻撃してくる青龍の手や顔をカウンターっぽく斬り続けているといった様子だ。時折それに加えてイージスを投擲してダメージを稼いでいるが、たまに放ってくるブレス攻撃はイージスでしか防げないので常時発射するというわけにもいかない。一度盾を発射してしまうと手元に再出現させるまで無防備になってしまうからな。三秒程度で戻せるとはいえ、完全に隙が無いというわけでもない。


 そんな地味な戦闘の様子を眺めつつふと視線を右に移すと、先ほどは一ドットの厚みだったものが横に伸びてきていた。どうやらこれは何かのゲージだったらしい。ゲージが貯まってなくて一ドットだったからわからなかっただけで。


 各ゲージの伸びにはばらつきがあった。それぞれ三本ずつ同じ色のゲージがあるが、同色のゲージでも三本それぞれ伸びる速度が違うらしい。一体このゲージはなんなのだろうか。


 そう考えていたら、突然ゲージが全体的にぐいっと伸びた。一体何が起こったのかと思いきや、画面の中央の方ではマリーが青龍のブレスをイージスで受け止めて耐えているところだった。龍のブレスというのはこの世界の一般人が受ければ盾で受けようが何しようがほぼ即死みたいだが、イージスで受け止めれば零ダメージである。その様子に反応するかのように、画面右側のゲージが伸びているようだ。

 よくよく見ると右側から左へと伸びるゲージの先に、細くて白い縦一本線が引かれていた。十二本のゲージに跨がるように、そこが目標値であるかのようにまっすぐにラインが引かれている。ほとんどのゲージは既にそのラインを突破している様子だが、伸びの悪い何本かが到達していなかった。


 そんな伸びの悪いゲージもなんとかゆるゆると伸びて全部が白いラインに達すると、突然画面の中央部、マリーと青龍が戦っているその様子に被さるように、何か窓が出てきた。

「応援ゲージが貯まりました!支援効果を選んでください」

 などと書いてあって、その下にいくつもの選択肢が並んでいた。


 なんだこれは。一体これはなんなのだ?よくはわからないが選べば良いらしい。項目を見てみる。青龍の物理攻撃力低下、青龍の魔法攻撃力低下、青龍の防御力低下、特殊一:青龍の鱗を剥がす、などがあった。

 ここはこれだろうということで鱗を剥がす、を選んでおいた。装置についているジョイスティックとボタンで項目を選んで決定したのだが。


 するとこれまで青龍を覆っていた硬い鱗が一気に消失した。一体何が起きたというのか、突然の変化だった。昨日キャラットが一生懸命一枚ずつ剥がしてたけれど枚数が多すぎて焼け石に水だった大量の鱗が全部消え失せた。そして青白い蛇のような身が露わになった。ドラゴンを鱗全部剥がして裸にするとか、わりと酷いと思う。


 画面の中の青龍もかなりギョッとした表情をしている。魔物だけどちゃんと表情とかあるんだね。まぁ良いんじゃないでしょうか。このまま押し切りましょう。


 画面の下の方に表示されている青龍の巨大なHPゲージが、少しずつではあるがガリガリと削れている様子だった。画面右の方のゲージは先ほどの白い線までの長さが消されていて、次の目標値と思われる縦の白線が設定されていた。確かこれは応援ゲージとか画面に出ていたよな。応援ゲージ。これは誰かの応援によって貯まっているものなのか?


 改めてゲージを確かめてみる。赤いゲージ三本のうち一本の伸びが悪く、黄色のゲージ三本のうち一本の伸びが悪く、そして緑色のゲージ三本が全て伸びが悪いようだ。コレが一体なんなのか少し考えてみる。


 赤、青、緑、黄色か。光の三原色と色の三原色を足したものだよな。昔コントローラーのボタンの色がそんな配置だったわけだが……ちょっと待って欲しい。まさかこれはその通りなのか?


 仮にこれが応援によるゲージだとしよう。自然と応援したくなる相手とはなんだろうか。地元の選手とかが頑張って戦っていたら自然と応援したくはならないだろうか。そうすると、では地元の選手が参加していない場合あまり応援したくならないのではなかろうか。


 うちの娘達は、フリマさんの娘達は人数が少ないし戦闘に出していないから不参加だ。赤のゲージのうち一本伸びがやや悪いのはこれはフリマさんの出身国であるトルッコ国の分なのではなかろうか。

 次に、黄色のゲージのうち極端に伸びが悪いのが一つあるが、これはもしかして犬族分ではなかろうか。南に住んでいるから黄色、そしてうちの妻には犬族が含まれておらず犬族が戦っていないから応援に熱が入らないわけだ。そうすると、実に納得がいく。


 緑色の三本のゲージは、これは西大陸に住むドワーフ三種族を指しているのではなかろうか。俺が見た目幼女であるドワーフを抱けなかった為にうちの軍隊にはドワーフが一人も含まれていないからな。息子達には頑張ってドワーフ族の子孫も作って貰ったわけだが、それでもやはり応援に熱が入らないということには変わりがないということか。


 うーむ……これはまたなんというか、不思議な謎システムが判明してしまった感じがする。応援システムか。詳細はまだ判明していないものの概要は理解出来た。かなり重要であることは間違い無い。青龍の鱗を解除しただけで、かなりの違いが出たのだから。


 二時間ほど経過して青龍のHPを四割ほど削った時点で、応援ゲージが再び白線のラインまで貯まってくれた。特殊弱体があるかと期待したものの存在せず、残りの項目三つだけが表示されていた。マリーのHPブーストの持続時間が四時間程度だしここは青龍の防御力低下を選ぶ。すると青龍のHPゲージの減りがそれなりに早くなった。これならなんとか間に合うかもしれない。


 青龍はHPが二割ほど削られた時点から攻撃魔法を使うようになっていた。前回は絆神力ゲージが切れて終わり際にようやく使ったぐらいだったのに、今回は大分早くから使っていた。青龍が魔法を使う構えをした時点でマリーとブロントが位置を交代して、青龍の魔法はマリーが受けるようにした。イージスで受け止める限りでは、全て零ダメージになる様子だった。さすがは魔法防御用の盾だと思う。その代わり物理攻撃に対してはあまり役に立たないのだが。


 青龍のHPが五割を切ると、今度は青龍が攻撃魔法をマリーとブロント以外の、他の娘達を狙って使うようになった。後ろからブロントに回復魔法をかけていたティターニアに青龍の攻撃魔法が直撃して竜巻が発生する。しかしティターニアは耐えた。マリーのHPブーストフィールドは相当強力だからな。元のHPの八万に対してプラス五百万するのだから。


 被弾したティターニアに確認したところ、青龍の攻撃魔法のダメージは八十万だったようだ。ティターニアは後衛で回復役なので、如何にも回復役らしい白くて可愛らしいドレスを着ている。見た目優先ではあるものの結構な魔法防御効果がありブレスなどのダメージを二割カット出来る。カットされた結果がそれなので、素のダメージは百万だったようだ。

 なんとも恐ろしい話だ。この世界の下級の魔物だと、昔出会ったトロールの一撃は四十ダメージ程度でそれでも十分な脅威だったというのに。それが今は百万とかいくらなんでも数値が飛びすぎだ。万の値を消した方が良いんじゃないかとまで思えてくるじゃないか。


 俺は正直子供を作りすぎた気がしていたのだが、全然そんなことは無かったようだ。大量に子作りしていなければマリーのHPがここまで伸びることも無かったし、HPブースト魔法の効果もそこまで高くはなかったはずなんだ。

 一族全員から一パーセントずつのHPとMPを自分の最大HPMPに加算するというのがマリーの英雄としての特性だし、HPブーストフィールドは更にその一割だけを近くの娘達に加算するものだしな。素のHPが少なかったり子供の数が少なければ効果の薄い役立たずな能力だったはずなのだ。


 この青龍の攻撃力はなんというか、おそらくは大体このぐらいなら英雄本人には大ダメージ、取り巻きは即死するというぐらいで設定されたものなのではなかろうか。

 実際には子供を作りすぎたせいで取り巻きである一般兵ぐらいの存在である娘一人でも耐えてしまったわけだが。


 青龍はその後も娘達を狙って定期的に無差別に攻撃魔法を使おうとしていたが、マリーが攻撃魔法の構えを見てイージスを射出するようになった。以前ベヒんもスのサンダーボルトを構え中にイージスを当てて中断させたことがあったが、攻撃魔法も準備中にイージスを発射して命中させてやれば妨害出来るようだ。

 何度も攻撃魔法を妨害されて青龍は涙目になっていそうだった。さすがにそこまでは表情を読み取れなかったが。


 結局四時間弱が経過したぐらいで、マリーの絆神力ゲージが枯渇する直前に、遂に青龍のHPが切れた。HPが切れた青龍は即消滅するということは無かったが、それまで攻撃していた娘達の攻撃がHPによるバリアに弾かれずに肉まで刺さるようになった。それまでずっと青龍の長すぎる胴を叩き続けていた娘達は、一気に青龍の解体ショーに取りかかった。


 十数分と保たずにあっという間に青龍はバラバラに引き裂かれた。マリーと一緒に映っている画面の中の青龍は何も言わず倒れ伏したが、何故か画面の方には青龍のセリフが文字で表示されていた。実際には喋ってないのに、本来はこのセリフを喋る予定でした、みたいに表示されていた。


「見事だ……我が守護せし東の封印は破られた。以後は気が向いたらまた来るが良い。繰り返し相手をしてやろう」


 なんだこの台詞、青龍復活しちゃうのかよ。しかし復活しても東の封印は破られたままになるってことなのか?なんだか納得がいかないけれども、目標は確かに達成されたらしい。


 俺達は、青龍に勝ったのだ。……俺自身は、自宅でアーケードゲームの筐体っぽい装置を眺めていただけなんだけどね。

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