表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界で、一兆円とクエストと。家族計画、神の道  作者: レガ先
第六章 数で乗り切る世界攻略
66/79

第六十五話「キリン」

 マリー達の中級の魔物の巣攻略は順調に進んでいる。俺もマリーの身体の中から現場を見て、それぞれの魔物について色々アドバイスするようにしていた。

 大体はどこかのゲームで見たような魔物である一方で、ゲームと違う部分も多い。特に最大の違いはどの魔物も攻撃魔法を一切使わないことと、範囲攻撃の被弾人数がどんなものでも一人のみということだった。攻撃の範囲や射程そのものは広いものの、そのうち一体にしか命中しなくなっているようだ。


 それに関してはこちらも同様のようで。愛姫の薙刀も、一振りでは複数を巻き込むことは出来なかった。先に当てた方にトドメを刺していれば次の相手にも攻撃判定は発生するみたいだが。


 中級の魔物の巣に入ってからというもの、敵が随分とタフになった。とはいっても常に巨獣ベヒんもスや真龍ウィルム、巨亀アダマンタスのような大物ばかりが出るわけではない。

 普通のモンスターとしての虎だとか目が大きく尻尾の長い猿だとか、二足歩行で頭突きをしてくるトカゲだとかそういう奴らもいた。比較的普通のワイバーンとかもいたかな。俺が思っている普通が世界にとっての普通かどうかはわからないが。


 ただ一つ目の中級の巣の魔物の共通項は、大体どれもが動物、生物だと言えることだった。ある程度そういった大雑把な傾向があるのかもしれないな。まだ気楽な方だったかと思う。


 中級の魔物の巣一つ目の攻略に要した期間は結局三十日だった。中級の魔物の巣のボスは、どこぞのネトゲの幻影のボス二体と巨大なキリンだった。伝説の獣の麒麟じゃなくて、動物園にいるような縞々模様のあるあっちのキリン。

 見た目がボスらしい方が一撃三百ダメージほどに対して、巨大なボスキリンが首を曲げて叩きつけてくる頭の一撃は千ダメージだった。たまにボスキリンが発狂してバーサクにより赤くなると一撃が二千ダメージに伸びていた。どういうことだ。


 見かけ倒しのカッコイイ中ボス二体をさっさと始末した後、凶悪なボスキリンを皆で囲んでフルボッコした。ボスキリンが咆哮をあげるとその都度何も無い空間からお供のキリンがうようよと出現したが、そちらはボスを囲みきれない娘達が各個撃破した。


 ボスキリンを倒すとその場に、キリンコーンとかいう名称の謎のカラーコーンがたくさんドロップしていた。もちろん柄がキリンのカラーコーン。ボスキリンは戦闘の最中に何度も鳴き声を挙げていたな。「ヴァン!」「ヴァーンヴァーン」とか叫んでいた。

 最後に地に倒れる際には「ヴァァァぁぁン……」とか言いながら崩れたっけ。つっこんだら負けだと思っている。倒れてからしばらく巨大なボスキリンの首がピクピク痙攣していた。つぶらな瞳がわりとホラーだった。


 ダンジョンボスが麒麟ではなくキリンだった件。笑えないギャグではあるが、何か理由があるのかもしれない。ボスキリンがお供のキリンを召喚したのも、麒麟がお供の四聖獣を呼ぶのと似ているのではなかろうか。今はまだなんとも言えないが。


 魔物の巣攻略後はさっさと撤収すると同時に、大事なチェックをする。


 魔物の巣を攻略後は、各大陸中央部にある国道が中央大陸へと向けて伸びる。その伸びる距離も最近は毎回計測していた。下級の魔物の巣を攻略した際は一回につき数十メーター程度伸びていたのだが……


 今回の中級の魔物の巣攻略によって、神の作った道、銀色の百メーター道路である国道は、今までとは比較にならないぐらいに伸びていた。巣の討伐の翌朝、俺はその報告を朝食の席でルナから聞いていた。


「約十キロメートルも伸びたのか」

「ええ、そうみたいです」

「確か、中央大陸までは元々百五十キロあったんだよな。それが残り百四十キロになったのか?」

「そうなりますね」


 今回、中級の魔物の巣一つ目を初攻略するのに三十日かかってそれで十キロ。低級の巣を攻略しても数十メートル程度だったのに比べれば大きな進歩ではあるが、まだまだ先は長かった。

 しかも一大陸を繋げればそれで済む話ではなく、四大陸全てを繋げなくてはならないのだから。


 とはいえ、与えられた期間を考えればまだまだ十分な余裕があった。百年中まだ六十年である。仮に一大陸の攻略に二年ずつかけようとも合計で八年にしかならない。一般人にとっては八年というのはとても長い期間だとは思うが、百年の時を持つ俺達一族ならば十分許容範囲内だろう。


 ならばこの調子でどんどん攻略を進めていこう。



 ---



 960/9/21 12:34


 その日、昼休憩の時間の昼食の席で、俺は妻達と少し相談していた。


「中級の巣三つ目、中級のうちで上位だとは想定していたが、きついな」

「ええ、きついです。一度引き返した方が良いかもしれません」

「なんだか変な生き物ばかりよね。綺麗だったりキモかったり難しいわ」


 俺の感想に対してルナとリースがそれぞれコメントした。確かにそんな感じだった。


 中級の魔物の巣二つ目は獣人だらけ。そこそこ知性がありそうな大体二足歩行の奴らばかりだった。オークにトロールに、トカゲ人、亀人、鳥人、それにラミア。巣のボスは各獣人のボス格みたいなやつが勢揃いしていたかな。なかなか壮観ではあったが細かく語るとキリが無い。

 攻略にかかった期間は七十五日ほど。それに対して国道の伸びは二十キロだった。三十日で十キロだった前回と比較すると、多少時間がかかってしまっている気がする。


 そうして現在は中級の巣三つ目なのだが。敵の堅さがヤバイ。中級の中ランクの巣よりも更に敵が二倍前後タフになっている気がする。被弾するダメージも五割増しぐらいだろうか。娘達のHPが五万あるおかげでなんとかなってはいるが、それでも敵の必殺の一撃を貰った際には平均で六百ダメージ前後出るあたり、この世界の一般人が絶対に入っちゃダメって世界になっている。

 この世界の住人は多くても百から五百程度しかHPが無いからな。一撃で六百ダメージの世界など、ザコに一発やられただけで肉体がまるごと粉々に吹き飛ぶのではなかろうか。


 それでもうちの娘達だからこそなんとかなっている。これも一生懸命六十年間、妻達と娘達を抱き続けた成果である。やり過ぎた感があったのだがそうでもなかったみたいだ。これだけ十分な安全マージンを取っていなければ、気楽には戦えなかっただろう。


 とはいえ、死なないからといって随分とやり辛いみたいだが。ジゼルがこう愚痴る。


「今の巣の魔物達は、見た目もそうですが攻撃がいやらしくて嫌いですわ」

「うん」

「熱い一撃に火傷付きの攻撃をする気持ち悪いエビっぽい生き物ですとか、HP吸収に加えてこちらのプロテクションまで吸ってくる頭の無いタコみたいなゲテモノですとか。いくらなんでもあんまりですわよ」

「うん、本当に酷いよね」

「娘達はキャンプに戻ったらいつも一生懸命お風呂に入っているみたいですわね」

「そうかそうか」


 現在三番目の中級魔物の巣にいるモンスター達なのだが。これは某十一の拡張コンテンツに出てくる謎の浮遊生物四種類が出現していた。色は皆大体灰色がベースで、青っぽかったり赤っぽかったり緑がかっていたりする。カブトガニっぽいやつやアメーバ+タコっぽいヤツのことをジゼルは言っているのだが、この世界にはカブトガニやアメーバを見かけないので、ジゼルは的確に表現する言葉を知らないのだと思われる。


 俺も正直、そこらへんの俺の世界の生き物についての名称を広げるのもなんだかな、ということで控えている。マリーには伝えているんだけどね。

 そこらへんの生物はゲームの結構後期に実装されている奴らなのだが、技の嫌がらせ度が大幅にアップしている。だから盾役のジゼルがイヤがるのも無理は無かった。範囲攻撃でないだけまだマシなのだが、もしもアレがゲームのように範囲攻撃だったらストレスで死にそうだ。実際に、某十一は客に嫌がらせをしすぎた結果客が逃げた。


 現在六日間ほどアタックしているものの、そろそろ引き上げ時な気がしていた。


「敵がさ、タフだよね」

「そうですわね、小さいクセにとてつもない耐久力ですわ」

「小さくて浮いているから、ルナの弓矢も使い物にならないしなぁ」


 前列はジゼルが防衛ラインを張ってくれているのだが。全ての敵が浮遊タイプで小型なせいで、ルナの弓で射るわけにもいかない。一度やってみたところ敵の大軍が頭上を越えて後衛にまで殺到して大惨事になった。ギリギリ死者は出なかったけれど、一部の娘はHPが七割以上削られる事態に陥った。ドリルみたいに回転して突撃する角巻き貝みたいな魔物に合計二十発ほど突き刺されたらしい。全てHPによるバリアにより食い止められたとはいえ、あの時は結構危なかった。


 HPは十分にあると思う。しかし敵を倒す火力が足りていない。中級下位の魔物の巣は適度な時間で仕留められていたが、現在ひとつの広場を占拠するのに二倍程度の時間がかかってしまっている。


 こちらの火力は、魔物を倒すことにより上昇する戦闘スキルによって決定される。武器も重要と言えば重要ではあるのだが、武器はどちらかというと破損せずに長時間使える、硬い敵を叩けるという面が強い。純粋に火力を上げる為にはとにかく多くの魔物を倒すしかなかった。


 結局そんなわけで、西大陸の中級上位の巣の攻略は一旦諦めて延期することにした。


 マリー達は西大陸から南大陸へと移動することになる。長年かけて俺の一族専用の船を何隻も整備したのでマリー達はその船に乗り、南大陸中央部、犬族の国にある魔物の巣を目指す。



 ---



 960/10/22 23:31


 その日はリース2AAAちゃんの十四歳の誕生日で。夜は思いっきりお楽しみした。俺の血がどんどん濃くなっているはずだが、コピー体の娘であるがゆえに一世代目のリースと見た目は一緒なままだ。

 この娘の母親は既に十一人娘を生んでマリーの率いる軍に既に参加中。


 世代が進むほどに、コピー体の娘が生める子供の数は減っている。一世代目のオリジナルのリースは五十人も子供を生んでいたが、二世代目は二十一人、三世代目は十六人、四世代目は十一人が限界だった。五世代目にあたるこの娘はおそらく六人が限界だろうという予測。


 俺の右には今日初めてを経験したちっちゃいリースが寝ていて。そして左にはオリジナルのリースがいてこちらにくっついている。

 既に一人の身体では満足出来なくなっているので、オリジナルのリースにも相手をして貰っていた次第。十四歳の方には優しく優しく壊れ物を扱うようにしたが、オリジナルの方には大分激しくした。でも何度か同じように優しくしてみたら喜んでいた。


 リースと二人、対面で抱き合いながら夫婦の会話を楽しむ。


「ヒロは、本当にちっちゃい私が好きよね」


 そのセリフはこの間も聞いた気がする。


「うん、可愛い」

「おっきな私も好きよね」

「うん、おっきいのも可愛い」

「貴方はいつも可愛い可愛いって言うわね。もう慣れたけど」

「うんうん」


 答えながらおしりを撫でる。ちっちゃい娘に比べるととてもよく育っている。六年でこれだけ育つというのはなかなか感慨深い。大きいからといって乱暴にすると怒られるけども。


 リースの方からキスしてくる。それを受けて返してやる。既に十分過ぎるほど抱いたので、更にするということはないと思うのだが。キスの後に再びこちらを見ながら、語りかけてくる。


「今日も、随分といっぱい出したわね」

「うん」

「もうこれ以上生めないのに」

「うん、それは本当に残念だ」

「もっと生んで欲しかった?」

「うん」


 リース本人には男の子を十人、女の子を四十人生んで貰ったわけだが。うちの妻達は子供をそれぞれ五十人生んでも、相変わらず歳は取らず肉体も魂も二十歳のままで、瑞々しかった。

 五十人までという制限が無ければ、まだまだ健康に生めるのではなかろうか。


 俺の答えに対して彼女はにっこり微笑んでくれる。いつもはわりと苦笑気味に返してくるのだが、今日はどうしたのだろうか。


「あのね、ヒロ。ヒロの担当のシステムメッセージの人がいるわよね?」

「ん?うん」

「その人が根回ししたみたいで、私の担当のシステムメッセージさんも少し話してくれるようになったのよ」

「へぇ」


 この世界の住人は皆それぞれUIを持っているわけだが。時計表示やマップ表示、クエスト表示にHPMPの表示、そしてスキルアップや戦闘の内容を通知するログウィンドウなどだ。それで色々と告知するシステムメッセージは担当が分かれていて、俺とマリーの二人だけは専属で一人ついている。他の人々はそれこそシステムメッセージ担当者一名あたり百人単位で担当しているようなのだが。


 だからリースの担当のシステムメッセージさんは担当人数が多いから一人に対して親密に接したりなどは基本しないわけだ。それをしてくれるようになったらしい。


「それでね、忙しい分少しずつしかお話はしてくれないのだけれど」

「うん」

「この世界にクリア報酬があるってこと、ヒロは知っているのよね?」

「ん?うん」


 この世界のクリア報酬は、ある。あるにはあるのだが、その話をリースにしたことがあっただろうか。何が問題になるかというと、娘のマリーはそのクリア報酬を使って自分の身体を浄化する予定で、浄化後に俺の嫁になる予定だからだ。

 そこらへんの話をリースにするのはなかなかマズイのではなかろうかと思って確か秘密にしていた気がする。


 さて、どこまで知っているのだろうか。

 対応に困っていたら彼女の方から話を続けてくる。


「ヒロは、どんなクリア報酬にするつもりなの?」

「んっと、ちょっとまだ考えてないかな」


 ひとまずはぐらかしておいた。とはいえ、考えていないのは半分事実のはずだ。マリーをこの手に取り戻すというのは、どうにもマリーの方のクリア報酬、願いということになるみたいだからな。俺のクリア報酬では無いのである。


 その答えを聞いてリースがきょとんとした表情になった。


「あら?意外ね。まさか忘れちゃったのかしら」

「ん、何を?」

「だって貴方、元の世界のお父さんには会いたくないの?」

「あー……」

「それと、私が一緒についていくって言ったことも忘れているんじゃないでしょうね?」

「ええっと、忘れてはいたけど、元からリースと離れる気は無いよ」


 うん、すっかり忘れていた。そういえばそんなことを話したこともあった気がする。忘れてはいたが、元からリースと離れるつもりはない。今夜もラブラブしてたしな。そんな彼女が、少しおなかを撫でながら続けてきた。


「あのねヒロ、孫の顔をお父さんに見せてあげたいって話だったわよね?」

「うん」

「孫はいっぱいいるけれど、けれど皆大きくなっちゃってるわよね?」

「ん?うん」

「それだと、いきなり大きな子を紹介されてもあまり孫って実感をお義父様とうさまに持って頂けない可能性があるわよね?」

「なるほど」


 なるほど確かに、父親に孫の顔を見せてやりたいというのが前世の俺の大きな目標だったのだが。マリーも既に大きいし、他の息子達も皆二十歳の身体で更にその下にたくさんの子供や孫がいる身なんだよな。

 孫として紹介するには不適切だろう。父に孫の顔を見せる、そんな日が果たして本当にやって来るのかどうかなかなか疑問ではあるのだが。


「だからそのことをね、私の方のシステムメッセージさんに相談してみたのよ。そしたら、出産可能な子供の人数の五十人制限を突破するクリア報酬があるんですって」

「え、本当に?」

「うん、だからね。この世界をクリアしたらもう一度貴方と私で子供を作って、その子をお義父様に見せにいきましょう?どうかしら」


 そう聞いてくる彼女は、顔を赤らめて照れている様子だった。俺は口で返事をする代わりに、もう一度彼女を情熱的に抱いた。


 この世界のクリア後のことも、少しは考えておこうかな。



 ---



 960/11/23 13:12


 その日は新嘗祭で。マリー達は先日南大陸の中級下位の魔物の巣の攻略を終えていて、今は休息期間ということになっていた。今回も攻略にかかった期間は約三十日、国道が伸びた距離も約十キロと、西大陸と同じ。前回の巣は獣やドラゴン、亀などが中心であったが、今回の下位の巣は虫系と植物系のモンスターばかりだった。南大陸だから熱帯風ということなのだろうか。


 昔はルナが一人で一生懸命全員分のご飯を作っていたが、今はコピールナ達が中心となって皆の料理を作っている。料理スキルは母親とコピー体の娘達で共有可能だからな。コピーリースや他の娘達も皆結構料理が出来るので手伝っている。家でも一週間に一日か二日ぐらいはリースが作ってくれているしな。


 現在娘は何人いるのだったか。四万人以上だったか。

 四万人のうち三万五千人以上が曾孫、玄孫世代で、小さい娘や子供を最大数生み終わっていない子が多数。だから戦場にはまだ千人程度しか回していない。そもそも魔物の巣はそんな無茶に広いわけではないから、千人も展開したらいっぱいいっぱいだ。


 うちの屋敷の近くに住んでいる娘達の数が多いのでお祭り騒ぎの規模はうちの方がデカイ。妻達は皆今日は一日忙しいらしく、俺は放置プレイということになった。そんなわけで、暇な俺はマリーの様子を見に行くことにした。


 マリーも今日は一日お休みだったようで。俺が訪れたところ、仮説住宅の中のベッドの上でぼけーっとしているところだった。俺の来訪に気づいた彼女が心の声で挨拶してくる。


『おとーさん、いらっしゃい』

『うん。ヒマだったから来たよ』

『そっか。私もヒマだったんだー。今日は他の娘が皆張り切っているからねー』


 今日は新嘗祭で、おいしいご飯を食べる日ということになっている。昼食もそこそこ豪華なのだが夕食がとにかく豪華になるというそんな感じ。だから皆で一日かけておいしい食事会が出来るように準備しているらしい。

 マリー達は現在南大陸にいるわけだが、身近なコピー体の娘達だけではなく、南大陸のウサギ族、犬族、猫族の皆さんも交えて大規模な食事会になるみたいだ。で、その為に皆忙しそうにしている、と。


 ではマリーは何故ヒマそうにしているのか。


『私はスキル共有出来る子がいないから、どうしても他の娘達よりも料理スキルが低くなっちゃう』

『うん』

『これでも人並みには料理出来るはずなんだけどね。他の娘が皆インチキだから、どうしても叶わないよ』

『うん』

『……おとーさんには言い辛いんだけど、ブロントだけかな、私の手料理をいつも食べているのは』

『そっか』


 他の娘達が皆スキル共有によりインチキなスキル上昇速度を発揮するのに対して、マリーはスキル共有可能な相手がいない。全てゼロから自身の力で育て上げたスキルだけだ。長い時間が与えられているとはいえ、スキル共有可能な他の娘達と比較するとどうしても限界がある。


 マリーは中学校の頃からフェンリル公の家でブロントと同居し始めたが、その期間中はルナの家までご飯を食べに来ていた。その後高校時代には学生寮で生活するようになったものの、食事は寮の方で出してくれるし、ブロントもハーレムのお嫁さんをマリー以外に三十六人も確保したのでマリーだけが食事を作るわけでは無かったみたいだ。

 料理スキルはどんどん作らない限りはあまり伸びないみたいだしな。だから他の娘が中心に作ってしまう環境下ではあまり伸びなかったと。


 大学卒業後、俺の息子達はハーレムのお嫁さんがそれぞれ三十歳になるまでは子供を作り続け、そうしてからブロント以外の他の息子達はハーレムの組み換えを行った。息子達の基本の役割は、俺の代わりに様々な種族の子供を作り続けることだったからな。

 一方でブロントはハーレムの組み換えを行わなかった。マリーと共に前線で戦うという別の役割があった為だ。


 だからといって、対応が他と変わるわけでもない。ブロントの元ハーレムのお嫁さん達は、小さい子がそこそこ育った時点でそれぞれの実家の方に帰っていった。それぞれの地元で子育てをして、現地で自立させていくのである。そうやって世界中に俺の子孫を行き渡らせて定着させるという目的があった。

 何の為にそんなことをする必要があるのか、正直俺にもよくわからん。よくはわからないのだが、おそらくは必要なことだろうと判断してそうしたのだ。


 実際そうしたことによって、この世界の隅々にまで俺の血が混じった人々が行き渡ったようだ。俺の実感は無いものの、マリー達が行く先々で人々の歓待を受けられているらしい。魔物の巣近辺に大規模なキャンプを設営する際にも、現地住民の協力が得られているみたいだしな。


 少し話が逸れてしまった。つまりどういうことかというと、ブロントのハーレムは既に解散済だってことだ。だから今のブロントにとって身近にいる相手、すぐに手を出せる相手はマリー唯一人。昔のように一対一の関係に戻ってからは、マリーがずっとブロントの為に毎日手料理を作っていた。俺もなんだかんだで、そこらへんの事情は知っていた。


 まぁ逆に、知っているからこそやり辛くはあるのだが。


『ふぅ……』

『おとーさん、また不機嫌になってる』

『うん、仕方ないだろ』

『うん、わかるよおとーさん。なんだかんだで今でもブロントに嫉妬してくれているんだよね。今度東大陸に帰った時には、またお父さんにも手料理作ってあげるから我慢してね』

『うん』


 うん、確かに。マリーの手料理は極めて普通なので普段は作らせて貰えないわけだが。それでも俺が食えないというのは不満だったので何度か俺の分だけ作って貰ったことがある。ちなみにそれはいつも三時に食べていた。この身体は食いすぎても特に問題が無いらしいので大丈夫。


 しかしそれにしても。


『おとーさんは、私一人を取られてるってだけでブロントに嫉妬してるよね』

『うん』

『逆にブロントは、いつもおとーさんに嫉妬してるんだよ。知ってるよね?』

『うん、知ってる』

『男の人って皆そうなのかな?欲しい物は全部独り占めしないと気が済まないのかな』

『どうだろうな、人によるんじゃないか?』

『でもねー、いくらなんでもおとーさんはやりすぎだよねー』

『むぅ』


 ヒマなので気分転換に来たら、逆に愚痴られる展開になってしまった。

 マリーの言ってる件は少し考えればそりゃそうだよな、ってなる話である。


 息子のブロントの立場からすると。

 まず、正妻のマリーの本当に一番好きな相手が父親である。精神的に最初から寝取られているようなものだ。次に、自分の母親の好きな相手も父親である。これは夫婦なんだから当然だと思うのだが。


 ここに加えて、自分の妹達が全員父親に喰われているという状態まで追加されるわけだ。しかもそれぞれ子供を二十一人生んでいて。そんな妹達が、戦場でわりと身近に毎日いるのである。

 コピー体なんだから家族としての関係性なんて意味が無いと言えなくもないが、実際には心を個別に持っていて確かに妹なわけだ。実妹、異母妹が周りにいっぱいいて、それらが皆父親のお手つきでいっぱい子供を生んでいるというそんな職場。なんというかメンタル面が色々やられてもおかしくないな、今更な話だが。

 そんな異常な環境で、常にいてくれる身近な存在が一応は妻であるマリーぐらいなわけだから、そりゃ仲良くはするよなあちらからしたら。


 そんなことを考えていたら、マリーの方から話題を変えてきた。


『あのね、おとーさん』

『うん、どうした』

『今日はね、南大陸に住んでいるブロントの家族達も食事会に来るみたいなの。確か今は皆五十八歳ぐらいなのかなぁ。ブロントの息子さんや娘さん達だけじゃなくて、孫や曾孫の子達もいっぱいくるみたい。だから今日はいっぱい食事を作って用意してるんだよ』

『そうか』

『うん、そうなの』


 マリーが言わんとすることは何となくわかる。一緒に幼稚園から育ってきた他のハーレムメンバー達はもうすぐ還暦にさしかかろうとしているわけだ。父親の俺は本来既に肉体年齢八十歳のはずだし、娘であるマリーも正常な身体ならば既に五十九歳に達しているだろう。

 それなのに肉体は二十歳のまま維持されており、魂も二十歳のまま老成するということが無い。そして、それだけならまだしも……


『おとーさん』

『うん』

『やっぱり、寂しいよ』

『……うん』

『周りの子は皆、子供達や孫達に囲まれて幸せそうにしているんだよね。皆の中で私だけが、子供も孫も一人もいないの。ブロントはずっと傍にいてくれるしおとーさんともこうやっていつでも話せるけれど、でもやっぱり寂しいよ。他の子達と比較しちゃうよ』

『うん』

『私も、早く赤ちゃん欲しいな』

『うん』


 現代ではどこの家庭も子供が少ないから比較して悲嘆にくれることも少ないだろうが、この世界ではどこも子沢山で騒がしい。子沢山で騒がしい家庭と比較してしまったら、子供がいないことに対する悲哀も否応が無しに深まってしまうだろう。


 マリーが子供を生めるようになる条件は、この世界のクリアか、または父親の俺と相思相愛になって俺からの愛情値一位になることだった。ステータス欄での表示順は子供を生まない限り表示上限にひっかかって順位が下がるだろうが、おそらく限界にひっかからなかった場合の数値を参照するとかそういった救済措置はたぶんあったかと思われる。マリーを俺の嫁にしなかったことにより、この世界のクリア以外に方法が無くなってしまったが。


『あのね、おとーさん』

『うん?』

『ブロントもね、この世界をクリアしたら私が子供を生めるようになるって、知っているみたい』

『そうなのか?』

『うん、だからね。彼は、私が彼の子供を生める身体になる日までって一生懸命頑張って戦ってくれているの。それなのに私はあの人を裏切ろうとしているの。酷い女だよね、私』

『それは……いや、それはなんというか、元々仕組んだ俺が一番悪いのだけれど』

『そうだよ、本当におとーさんが一番酷いよ。あんまりだよ』


 否定せずに逆に肯定されてしまった、なんてこった。しかし本当にその通りだ。俺がマリーを最初から嫁にしていれば、マリーも普通に子供を生めていたわけだしな。この世界の攻略に支障が出た危険性は非常に高いが。


『ごめんなさい』


 とりあえず謝っておいた。


『もう、おとーさんってば。謝っても過ぎた時間はもう戻ってこないんだよー?』

『うん』

『だから、おとーさんにはおしおきが必要だと思います。私のワガママを聞くべきです』

『ふむ』


 何故こんな流れになってしまったのか。たまたま暇だったから遊びに来ただけだったはずなのに。


『この前リースお姉ちゃんと話してたよね』


 マリーがリースお姉ちゃんと呼ぶのはオリジナルのリースだけだ。コピー体のリース達は全てマリーよりも年下なので。


『うん、リースと話していたうちの何の話だろう』

『この世界のクリア後の話だよー』

『……あぁ』

『あれって、元々は何時頃話したことなの?』

『マリーが生まれた少し後ぐらいだったかな』

『そっかー。そうなんだね』


 マリーが何か考えるような仕草をしている。仮説住宅の中で一人ベッドに座りながらうんうん考えているというのは傍から見たら孤独に見えるかもしれない。実際には身体の中に俺が来ているわけだが。


『あのね、おとーさん。私からの要望はね』

『うん』

『もしも、おとーさんのおとーさん、おじいちゃんに会いに行くのなら、私を一番として紹介して欲しいの』

『……ふむ』

『孫だよー、って紹介されたらそれはそれで困っちゃうから、正妻だよーって紹介して欲しいんだー』

『それはまた、なんというか』

『それとね、リースお姉ちゃんよりも先におとーさんの赤ちゃんが欲しいの。男の子がいいなー』

『ああ、うん、わかったわかった』


 それまでずっと我慢してきた分この世界のクリア後に優遇して欲しいと、そういう話で良いのだろうか。マリーは頑張ってくれているしな。それぐらいは問題無い気がする。

 俺の返答に対して、マリーはこう問い詰めてきた。


『いいの?おとーさん』

『うん、いいよ』

『最終確認だよ?この世界のクリア後は、おとーさんの一番にしてね?』

『うん、いいよ』

『そっかそっか。……えへへー』


 俺の返答は満足に値するものだったらしい。


『よし!それじゃあ、言質げんちを取ったところで、おとーさんに相談です』


 言質って、おい。


『言質って、なんだか人聞きが悪いなぁ』

『でも、大事なことだよ』

『うん、それで?』

『あのね、ブロントがいくらなんでも可哀想だと思うの。いくらなんでも今のままじゃあんまりだよ。おとーさんと私のせいだよね?これって』

『うん、まぁ主に俺のせいだけど』

『そうだよね。私悪くないよね。主におとーさんが悪いよね』

『……はい』

『それでね、あまりにも可哀想だから、私ももう少しぐらいは、彼のことを愛してあげた方が良いかなって思って』


 まぁ、それはそうなんだけどな。かなり妬けるけど。少しぐらいは愛されないとあまりにも報われない感じはする。そもそも、四十年以上夫婦をやっているのにまともに愛されていないという状態が異常過ぎる。いくらなんでもあんまりではなかろうか。


『そうか』

『嫉妬しちゃった?』

『うん、かなり』

『えへへ、ありがとうおとーさん。それじゃあおとーさんにもっと嫉妬して貰えるように、今までよりは仲良くするようにするね』

『うん』


 結局結論はこのあたりだったらしい。俺のことがあるから今までずっと遠慮していたわけだ。長い期間付き合っているから、少しぐらいは報いても良いかな、ってことなんだろう。


 結論も出たみたいだし帰ろうかな、と考えたのだが。


『ねぇ、おとーさん』

『なんだ?』

『娘に手を出しちゃうおとーさんは、私に手を出して貰えないと困るから好きなんだけど』

『うん』

『娘の娘にどんどん手を出して血を濃くしていくのはいくらなんでもやりすぎだよ。この世界のクリア後は自重してね?』

『……はい』


 何やら釘を刺されてしまった。ちなみにこれは数日前にリース2AAAちゃんを孕ませた件を指していた。どこまで突き進めるのか楽しみにしていることは俺の胸の内にしまっておこう。


 そんな感じで日々は過ぎていく。その日の夜の新嘗祭を祝う食事会は参加者数万人規模でとんでもないことになっていた。

良いタイトルが思い浮かびませんでした。その結果冒頭部分から引っ張ってきた次第。


前回は多数の感想ありがとうございます。そろそろ新生十四が近いのでそれまでに完結目指して加速しないとダメですね。残り一ヶ月でなんとかしたいところです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ