第五十九話「ルナの武器」
この間、息子達の子供、俺にとっての孫世代がコピー体の娘を除いて千と三十一人いるという話をしたのだが、ではそんなに子供がいたら住む場所はどうなっているのか?
実は、息子とその家族達用に新規に建造した街に住ませているのである。
どこからそんな資金が出てきたかって?
……現在、それはもうすごい勢いで借金中なのですよ。
おっかしいなー。一兆円あったはずなのになー。
なんで借金生活に突入しているのかなぁ……
以前一度確認したが、初期資金の一兆円のうち、四千億円は各国の姫達の購入と最初の屋敷の土地&家に使ってしまった。残りの金を、五千億円を教育事業に投資、三百億円を追加の土地購入に投資、他に三百億円を宝石事業に投資した。残額の四百億円は生活費その他諸々の余裕として残したわけだが。
それに加えて武器防具工場を二千億円借金してきて設立したという状態だし。
教育事業に投資した五千億円は、使い切ってこそいないはずだが塩漬け状態である。
いつ急な出費があるかもわからないしな。
教育事業で建造した施設は、ハーレム学園及び軍事用の男子校である。この二つはかなり離れた距離に建ててあって、それぞれ国道に対して垂直になるように縦に施設が並んでいる。
国道に近い側から、大学、高校、中学校、小学校、幼稚園&幼稚園の下位施設として設定した実質保育所、託児所の保育園という感じ。
東大陸北部の中央を貫く国道の、東側に施設がそれぞれ伸びている状態である。
北側で、首都パパリに近い方がハーレム学園。それよりもかなり南側で、どちらかというとニッポンポン国国境が近いのが軍事用の男子校となっている。
うちの屋敷はユーロ国の首都パパリから二時間の場所にあり、ハーレム学園もうちの屋敷の近くなのでパパリまで二時間の場所だ。
パパリからニッポンポンとの国境まで、時速五十キロのこの世界の変態馬車で十時間。男子校は国境まで一時間の場所に建っている。
つまり、ハーレム学園と軍事用男子校の間は馬車七時間分で三百五十キロ離れているのである。
この三百五十キロある区間を現在全力で開発中だ。借りた金で。
そう、借りた金で。
神の使徒特権というのは恐ろしいものだ。この世界の政府にあたる教会から、無利子でほぼ無制限にいくらでも金を借りることが出来る。
恐ろしい話であるが、それでも借りた金は借りた金である。
踏み倒すことは出来ないし、ある程度資金を回収する見込みがなければ貸しては貰えない。
現在大量に金を借りて事業を進められているのは、ある程度採算が取れる見込みがあるわけだな。
そのあたりの説得はフリマさんにお願いしたのだが、うまくいったみたいだ。
そんなわけで現在、ユーロ国とニッポンポン国間の元無人地帯に大規模の街を建造中だ。
街のレイアウトは、俺も多少は考えたのだがもっと上手な方がかっこよく仕事してくれた。
やはり俺はシムシティの達人にはなれないらしい。格の違いを見せつけられてしまった。
街の種類は大雑把に説明すると三つ。俺の子孫を主に住ませる区域と、俺の子孫以外を住ませる区域。
そしてそれらを上手に管理する為の行政区画となっている。学校等も含まれる。
街の中心部にあたる場所でも後の為に空き地が確保されている場所が多々ある。
地価が安いうちに全て差し押さえたので、後から土地確保に四苦八苦することはない。
国道の東側に街を広げる一方で、国道の西側にはそれを支える為の農場、牧場、商業地、工業地を整備中。
なんというか、大雑把には国道より東側が住宅地と行政施設、西側が人々の職場と遊び場なわけだな。
住宅地にも商業地の出張販売所は多少用意してあるものの、規模と商品の種類は制限している。
俺の屋敷や宝石工場、防具工場なども全て国道の西側、北部にある。
その一帯よりも南の方に、どんどん他の住民用の仕事場、遊び場が建造されていくわけだ。
このあたりは以前はどこまでも無人地帯だったのだけどな。今後は騒がしくなるだろう。
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この世界の政治経済は、なかなかスゴイ勢いで歪んでいる。
ほぼ完全な統制経済といっても良い。
この世界が開始した時点で、中央政府、世界政府の役目を果たす教会が存在し、各国家はその教会の下位機関、補助的な地方政府として存在していたらしい。
神のデザイン世界とはいうが、良くも悪くも神に支配された世界だと言えよう。
この世界の主要産業は、そのほぼ全てを教会および各国家が掌握している。一般人が自由に商業活動を行うことは出来ない。職からあぶれたらそれでほぼ終了であり、どうしようもない。
ファンタジー的な武器防具を作る職人も、その武器防具を売る小売店の商人も、日々の食料品を販売する店の主人も、レストランの従業員も、それらほぼ全てが教会の雇用した公務員か、各国家の雇用した地方公務員なのである。
ありとあらゆる職種がほぼ全て教会及び国の管理下にあり、雇用管理されているのだ。
現在この世界の労働人口の過半数は無職であるらしく、無職が基本みたいになってしまっている。では無職だと生きていけないのかというと、そうではない。
教会が世界を牛耳ってはいるが、その一方で人々に最低限の生活を保証しているのだ。毎日の食事は一応与えられるし、住居も与えられている。そして職業訓練も出来るし、職業訓練後には雇用登録をしておくことで仕事が見つかった際には大体登録順に紹介される。
働かなくても生きていけるのなら働かなくても良いのでは?と考える人も多いだろう。しかしそうもいかない。
教会の食事は、まずくはないがおいしくないとのこと。もちろんわざとだ。
金を払わずご飯を食べる人がおいしいものを毎日食べるなど許されるはずもない。だから教会により毎日作られ無料配布される食事は、わざと味を落としてあるらしい。
住居に関しても、酷すぎるというほどではないがかなり残念な状態のようだ。
そうやって、この状況を脱して自発的に働く道を模索するように仕向けているのだ。
しかしいくら本人に働く意志があったとしても、仕事がないのだからどうしようもない。仕事が足りていないのだ。既に十分な人数が働いているので、どうしても職からあぶれてしまう人々がいる。
またこの世界では若い人々が既に職にあぶれているせいで、一度職についても途中で容赦無くクビ切りされる人が大量にいるらしい。レストランの従業員などはその筆頭で、十五歳程度から遅くとも二十五歳程度まで働いたら大抵その時点でクビ切りされるらしい。なんという非情さであろうか。
クビ切り後にはすぐにその職場には十五歳の若い女の子が新規に雇用されるらしいが。
なんにせよ、このあたりに現代日本の常識は通用しないと思った方が良い。雇用されるのを待つしかなく世間には無職が溢れている。一度就職しても職種によって容赦無くクビ切りされる。ほぼ全員が公務員なのにだ。
ただし、退職金は結構な額出るらしいが。
この世界には、通常の職場が完全に枯渇している一方で、仕事がなくても無制限に仕事が得られる職場が存在している。
その職場は完全に出来高制というか、ほぼ全ての稼ぎが自分のものになる一方で保険も基本無しだ。
それがこの世界における、魔物討伐の実態だった。
元レストランの従業員だった女性などは、二十五歳前で職を失った後、夫となる男性を捜して夫婦で魔物ハンターになるケースが多いらしい。
その一部がちびちびと魔物狩りで生計を立てる一方で過半数が魔物に敗れ帰らぬ人になったり、残りの人はそのまま専業主婦になったりするみたいだ。
この世界でHPを確保する為には避妊なしの性行為を行うしかないのだから、魔物狩りを進める課程で必ず子供が出来てしまうからな。
妻の妊娠中にそのまま夫がソロで魔物狩りを続けていると、結構な割合で未亡人が発生するのだとか。
そういう未亡人さんは子供を教会の施設に預けた後にはまた魔物狩りで生計を立てようとするのだけれど、夫の後を追うかのように戦死するケースが多いらしい。
そうして両親のいない孤児が教会に発生するのだとか。珍しくない、この世界ではありふれたケースだとのこと。
そういった孤児がその後どうするかというと、親の後を追うようにこれまた魔物ハンターになるみたいだが。あるいは国に仕官して、兵士になったうえで魔物の巣に挑戦する者もいるのだそうだ。
そのように、半分神に仕組まれて人々は魔物に挑んでいく、そんな世界。
そこに救いがあるのかどうか、俺にはよくわからない。
この世界の攻略を進めた場合、一体何が起こるのだろうな?
人々の生活に変化は訪れるのだろうか?
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さて、世界はそんな状態だ。
俺が街を作る事業に対してこの世界の統一政府である教会が無制限に金を貸してくれている理由は、それにより雇用と消費が増えるということを見越してくれているからだ。
そもそも学園事業にも、教会から多額の援助金が拠出されている。
もうなんというか、癒着でずぶずぶと言ってもおかしくないかもしれん。
各学校の校長先生とか園長先生とか、完全に天下りなおじいさんだったしな。
別に俺は構わないぞ。金だけ貰っていてそういうのを認めないというわけにもいかないし。
街を作る為に俺がしている借金は、半分は国の借金、世界の借金みたいな状態になっているわけだな。
たぶん特に問題ないのだろう。何しろ教会はこの世界の支配者層みたいだしな。
そもそもこの世界には通貨が一つしか存在しないうえに、その管理も教会の思うがままなのである。
本当に恐ろしいな。
でもそのおかげで、俺の一族がやりたい放題に子供を増やしても、住む場所もあるし生活費もなんとかなるわけだ。俺達はそのことに感謝しつつ、とにかく開発を進めるのみである。
借金を返すアテは、いくつかある。
一つめは、軍事用の男子校の生徒達である。彼らは卒業後、チーム単位で他の各国家に雇用して貰う。体裁としては各個人と国家間での契約なのだが、実質は売り手であるこちらと各国家との駆け引きだ。
契約金の半分程度をこちらが貰うことになっている。それまでずっと育ててきたわけだからね。
契約金が一人あたり二千万円。そのうち一千万円をこちらが受け取る。最初は一学年あたり百人で設計し育成していたので、百人チームの売却で十億ずつ毎年回収可能になる。とはいえそれでも回収額が足りていない感じがするが。
二つめは、開発した武器防具の販売である。先の各国に売却する軍事チームにはこちらが開発した武器防具を装備させて販売する。これにより売り上げが伸びる他、商品の宣伝としての役割も果たしているので、性能を現地で見てもらったうえで評価が高ければ更に武器防具を輸出して使って貰うという形だ。
これによりかなりの資金を回収出来るだろうと踏んでいる。
三つ目は、まったく話が変わるが宅地分譲及び商業施設のレンタル代だ。新たに大規模な土地開発、宅地開発、商業地や農地や牧場地、工業地帯など諸々を一気に開発しているわけだが。
それらはなにもタダで売却するのではなく一般人向けには全部金を取る。その際その全額を個人が支払うのではなく、ここにも教会からの補助金が大量に出るらしい。
住居の方は一応名目上は個人の財産となり、職場となる施設の方は教会が借り上げてその費用を負担し、教会が国家公務員として各住民を雇用するという形になるらしい。
なんというか、金を教会から借りてその金で開発し、その返済の内訳も教会の補助金が大半になるわけだな。
世界政府と二人三脚の土地開発になっているわけだ。教会の強権あってこその話だろう。
民衆からしてみれば、教会は人々の住居購入と新規雇用に補助金をたくさん出してくれる神様のような存在に見えるだろうな。実際には教会の自作自演で、家や職場を形成する諸々の資材はこの世界の人々が一生懸命集めたものだし、実際に建物を建設、土地開発したのもこの世界の住人達なのだが。
神様視点というのはとても恐ろしいな。建材の売り主や建設を担当する人々に対して支払った多額の報酬により、インフレが発生しても何もおかしくない気がするのだけどな。
実際には、それらの報酬のほとんどは銀行に貯金されてしまうらしい。そして、その銀行業もこの世界の管理者である教会の事業のひとつである。
これ以上考えると恐ろしいことになるのでやめておこう。
権力の集中や機能の集中は本当に恐ろしい。
神のデザイン世界というのは深く考えたら負けだとしか思えない。
人々は教会の意のままに働き、感謝し、金を出し入れしている。
教会を信頼し、教会が発行した通貨を信用している。
それにより上手く世界が回っていて皆が幸せに暮らしているのだから、何も問題が無いといえば無いのかもしれない。ただひたすらに不気味だというだけの話だ。
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時は瞬く間に流れてゆく。
マリーやブロントの大学生としての生活もあっという間に過ぎていった。うちの子供世代達は皆戦闘系だ。ハーレムのお嫁さん達は人によりけりで、戦場での衛生兵方面を選んだ人もいれば完全に戦闘とは無関係な道に進んだ人もいる。
息子は人によりけりで好みで武器を選んでいるが、妻や妻のコピー体には、全員に共通の武器を持たせている。
愛姫は薙刀。巴と名付けた薙刀は、刃の部分がかなり長めでなかなかカッコイイ。
ジゼルは突剣と軽盾。軽盾は将来的には軽盾ではなくかなりヤバイヤツに進化予定だが。突剣ミュルグレスの方は結構変わりもので、剣の中央部に相手の剣を受け止める部分と受け流す部分っぽいやつがついている。
リースは槍で、ティターニアは回復用の杖。
アンジェラちゃんは儀式杖で、キャラットちゃんは格闘武器だ。
マリーやブロントは片手剣+盾のナイトスタイル。
これまでに説明していなかったのはルナの武器だったはずだが。
ルナの武器は、本人に見せたら怒られました。これが会話ログ。
「あの、アナタ?」
「何かな、ルナ」
「これは私用の武器なのですよね?」
「うん」
「そうですか。ありがとうございます。使えません」
「うん、知ってる」
うん、知ってる。知っていて作った。
ルナの武器は弓である。名称はアルテミスの弓。
変形機構を有しており、ハープの形状からガチャガチャンと変形して綺麗な弓になる。
ルナの武器、アルテミスの弓。
名称としてはこれほどぴったりとくるものはないだろう。
問題はルナ本人が、胸がでかすぎて弓を引けないってことだ。
出会った時からデカイデカイとは思っていたが、身長百五十センチのルナの胸は、実はJカップ以上ある。
この爆乳では弓が引けるはずがない。弓以前に日常生活に影響が出る。
ルナ自身、自分の胸より前に両手を回すことが既にかなり厳しい。胸の下で両手を組むぐらい?
ルナは自身の胸が邪魔すぎて足下がまったく見えない。ちゃんとリードしてやらないとよくコケる。
ルナの胸はサイズはデカイが形は奇跡的に整っている。魔力による形状維持の成果らしいけどね。
弓に限らず、そもそもこの爆乳の身体で戦うことが無理なのではないかという気がしなくもない。
ルナが昔、修行したての頃に料理が下手だったのは当然だ。胸がでかすぎて作業の邪魔になるからだ。
今でも不思議なのだが、よくこの胸で料理が出来るものだ。手元がまともに見えないのではなかろうか。
というより、胸の上にまな板を載せて作業するのはどうかと思うのだが。顔と包丁の距離が近すぎる。いくらこの世界が料理中にケガしないからといって、見ていて怖い。
ルナが弓についての感想を続けた。
「なんでしょうねコレ。ハープの形状のまま奏でていたら良いのでしょうか」
「うん、ルナ本人にはそうして貰うしかないかな。コピー体のルナなら、この弓も使えるからさ」
「それはそうなのでしょうけど」
ルナの爆乳は、彼女が吸魂の瞳で母親の命を吸ったことに起因している。いくらなんでもそこまで爆乳になる必要はなかったと思うのだが。それで、その吸魂の瞳はルナ専用でありコピー体の娘達には遺伝していない。だからルナの娘は弓が引けなくなるほどの爆乳ではない。DからEカップ程度はあった気がしなくもないが。
しかしそれでも、コピールナならば弓はなんとか使えなくもない。母ルナは絶対無理だけどな。そんなわけでルナの武器はアルテミスの弓だ。カッコイイ。
俺から弓を受け取ったルナは、胸の上に何とか弓を横にして、必死に弾く練習をしていた。
ハープ形状のアルテミスの弓を奏でる練習の後、俺の部屋にルナを持ち帰ってからたっぷりと時間をかけてルナを抱いて、彼女の爆乳を楽しんだ。
性格面では色々と夫婦間で互いに言いたいことが山積みな気がするのだが、性生活は充実しているので気にしないことにしている。行為の後のルナはとても満足した様子だった。
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息子達の子孫、俺からしたら孫以下の世代は、ハーレム学園とは別の場所の学校に通うことになっている。
なのでそちらの方も何年も前から建設ラッシュになっていた。
この世界の家屋だが、一応やろうと思えば何階層にでも増やせるらしい。
エレベーターも設置しようと思えば設置可能だ。
だからといって土地が余っている状態で高階層の建造物というのは、どうにも風情にかける気がする。
そんなわけだから、基本的にどの建物も三階までという制限にしておいた。
小学校などは六学年あるわけだが、一階につき二学年いるわけだな。
一般の住居に関しても基本的にはこの方針で、玄関は一階のみ、中身が三階建てという構造にした。
集合住宅にするにしても、現代日本のような二階から入って二階部分のみが家というようなマンションは勘弁して欲しい。悲しくなるからな。
ちなみに都市部で教会の世話になっている人々などは、まさにそのような住居で生活しているらしいが。
極稀に現場視察をすることもあるが、基本的にはフリマさんの部下の人が、完成予想図と現在の状態をミニチュアで解説してくれた。
元々何も無かった無人の草原が、どんどん開発されていく様子が良くわかった。
最初から道、水道、物流等が全て計算された世界が構築されていく姿は、一つの芸術だと思える。
材料となる資材は、世界中から内海貿易船で集められているのだそうだ。木材は地元及び北大陸と南大陸から。石材は地元及び西大陸からも。
色々な資材をうちが買い集めるせいで、内海貿易船には南大陸の婚活女子達が乗り込むスペースが無くなってしまったらしい。一度たくさんの猫娘達が抗議に来たこともあった。マタタビで追い払った。にゃーにゃーうるさかった。
新たに作られる街には、東大陸の人族だけではなく世界中の人種が住む予定になっている。なので南大陸の彼女らも住む余地はあるだろう。
一応どのあたりに住みたいかというリサーチも済んでいるのだが、猫族達は北東部のかなり国道から遠めの場所に住む予定らしい。理由は川が近くに流れているからで、なおかつある程度海も近いから釣りをするのだそうだ。
猫が魚を好むのはどの世界でも共通ということなのだろうか。うちのルナやマリーは牛乳の方が好きだけどな。
他には、エルフ族は南西部、ドワーフ族は南東部、人族は北西部という予定になっているようだ。交点となるあたりは種族混合の共生地区が設定されている。
そんなミニチェア地図を眺めながら、ふと反対側、国道を挟んで西側の職場となる地区を眺めてみたら、牛の模型が並んでいた。
そこに書かれている文字を読み上げてみる。
「ロンロンファームユーロ国支部、家畜の楽園、か」
かなり名前がギリギリな気がするのだが大丈夫だろうか。場所はエルフの居住区画に大分近い。畜産に力を入れてるのが何故かエルフだからなこの世界。エルフには森の中で狩猟しているイメージがあるが、この世界では狩猟が南大陸の獣族系になるのでそのイメージは払拭されてしまったようだ。
ミニチュア地図を眺めている間も、リースは俺の傍にいた。なので犯人を特定してみる。
「リース、これなんだけど。この牧場は何故ここにあるんだ?」
「私が誘致したからよ」
「そうなのか。誰が許可を出したんだ」
「ルナに話したらすぐに許可が出たわよ」
「なるほど」
そうか。まぁ牛乳大好きだからわからなくもないが。それにしてもざっとみた感じとんでもない広さが牧場用地として確保されている気がする。なんだろう、国道の沿線三十キロ程度は他の建造物に場所を譲っているのだが、それよりも奥に、二百五十キロの正方形ぐらいの牧場用地が確保されているように見える。
計算すると六万二千五百平方キロメートルだろうか。北海道本島の面積は約七万八千平方キロメートルみたいだから、つまり北海道サイズの大草原が全て牧場用地らしい。頭がおかしい。
念の為リースに確認しておく。
「まさかこれだけの土地に、乳牛だけなんてことはないよな」
「え?えぇ、そうよ。大体一通りの家畜が揃う予定ね。羊さんとかもいるわよ」
「そうかそうか」
「あとは一部の魔物の家畜化も試みているはずよ。ほら、あのおっきくて丸いヤツ」
「あー、あれね」
それはアレだ。ドードーだ。ドードーにも色々いるからどれかというのも説明しづらいのだが、説明したらしたで大変だな。十四っぽいやつだと思って欲しい。ポケットみたいに頭が二つあるようなやつではない。
なんだかんだで鳥だから、おいしい鶏肉が取れそうである。
リースから話を聞くところによると、さすがに範囲が広いのでまだ全域は整備出来ていないらしい。大陸中央部にしか魔物は基本的にいないのだが、野生の動物はたくさんいるのだそうだ。
そのうち現地視察も必要なのだそうで、現地の視察にはマリーが行くことになった。牛の乳搾りとかも見学してくるらしい。
俺はいつも妻達の乳を搾っているのだが、などと考えていたら、後日ルナの乳を絞っている最中に軽く叩かれた。マリーが密かにバラしたらしい。
でもルナは自分の爆乳に自信を持っているので逆に喜んで揉ませてくれた。いつも通りでかかった。
マリーはなんというか、今はまだ子供が生めない身体なので自分だけ母乳が出ないことが悲しいらしい。
ブロントの子供を生まれてもそれはそれで困ってしまうのだが。この世界をクリアするまで子供はお預けである。
そんな感じで、日々は過ぎていった。
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924/3/31 20:45
夕食後の食卓のテーブルに、スシネさんの娘のアカリちゃん十六歳が資料を持ってきてくれた。
マリーは既に大学を終え、年齢がカウントされるのならば本来は二十三歳だ。既に母と同じく二十歳で止まっているけどな。
今席には、俺の対面にルナ。ルナの左、俺から向かって右にマリーが座っていて。反対側にアカリちゃんが座っている。
俺の右にはティターニアが座っていて、俺の左にはリース二号と愛姫二号がそれぞれ座っていた。母親の代理らしい。既に二人とも二十歳を過ぎていて母親とまったく外見は一致している。代理のわりには、中身に母親は入っていないみたいだけどな。
ついでに、俺の膝の上にはリース二号が生んだ最初の娘、リース2Aちゃん七歳が乗っていた。孫娘世代もお父さん大好きなことには変わりがないらしい。リース二号の小さな頃を思い出す。
例の資料がいつもの通り報告される。
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ルナ姫 南大陸出身、猫族
英雄マリー 金の瞳の乙女
男子11名 女子15+24名
愛姫 東大陸日本本国出身
男子7名 女子20+28名
ジゼル姫 東大陸ユーロ国出身
男子7名 女子21+36名
フリマ姫 東大陸トルッコ国出身
男子27名
リース姫 北大陸アルフヘイム国出身
男子7名 女子20+24名
ティターニア姫 北大陸アヴァロン国出身
男子8名 女子18+25名
アンジェラ姫 北大陸ダークエルフ国出身
男子7名 女子20+39名
キャラット姫 南大陸ロップイヤー国出身
男子13名 女子14+18名
男子87名 女子128+194名 英雄1名 計216+194名
王族の割合 100%
父親の毒牙にかけられた娘の人数51名
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その他の一族
ルナ姫
父2人孫330人
愛姫
父3人孫577人
ジゼル姫
父2人孫78人
フリマ姫
父8人孫1404人
リース姫
父3人孫681人
ティターニア姫
父1人孫156人
アンジェラ姫
父0人孫0人
キャラット姫
父4人孫663人
合計 孫3889名
総合計4299名
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この世界に来てから二十四年。
息子達にハーレムを作らせたことによる人数の加速が凄まじい。
四年前の孫の数は千と三十一名だったわけで、四年間で息子関連の孫が二千八百五十八人も増加している。
これはかなりすごいことになってきたぞ、という実感が湧いてきた。
アカリちゃん十六歳が解説してくれる。露骨に俺から目線を逸らしながら。
「ええと、そうですね。息子さん達の子供さんの数の伸びが凄いことはよくわかります。ですがヒロ様の外道っぷりも加速しています。妻と娘で五十九人も相手をなさっているのですから」
「うーん、一応は実質八人だけだよ」
「……まったく同じ見た目の女性達を相手にしていることは私もわかっています。けれどヒロ様は本当は気付いておられるのでしょう?」
「さて、何のことだか」
コピー体の娘達が実際にはオリジナルとは別の心を持った個人であることは知っているのだが、区別するなって既にリース二号に言われているからな。だから俺は敢えて区別しないようにしている。
リース二号と愛姫二号は、どちらも既に八人の子供を生んでいる。娘であり孫娘、血量七十五パーセントといったところか。
ちなみに血量っていうのは本来は競馬とかで使われる用語のことだ。
本来人間に適用されるわけがないのだが、近親相姦の危険度、深刻度を表現する為に用いられることがある。
自身を百として、自身と自身に無関係な人物との間の子供は五十パーセントとするらしい。なので娘を襲って子供を生ませると百と五十の中間の七十五パーセントという扱いになるのだそうだ。よくわからん。
とあるエロゲ会社の作品の呪われた血族の異常性を示す為に用いられる指標らしい。
うちの一族は呪われてるどうこう以前に、不老長寿だし何やら神様からチート能力を与えられているだけだし、母親のコピー体がどこまでも生まれるだけっぽいのだが。
幼女に手を出しているわけでもないしな。……十四歳は幼女じゃないよな、うん。
だから開き直ろうかと思う。リース2Aちゃんも俺に随分と懐いているのだが、この子もやはりそういうことになるのだろうか。膝の上に乗せているリース2Aちゃん七歳を可愛がっていると、アカリちゃん十六歳がやはりこちらから目を逸らしつつ続ける。
「はぁ。まぁ本人同士が納得しているのならいいのでしょうか。ヒロ様は別に幼すぎる子供に手を出しているというわけでもないですからね。妻八人以外に手を出していないといえば確かにそうなるのかもしれませんし。愛が深いことを美徳として褒め称えるべきなのでしょうか?私は認めたくはありませんが」
そういってため息をつくアカリちゃん。それに対して隣に座っているルナがくすくすと笑った。一方でマリーは少し残念そうな顔をしている。そうしてルナから話し始める。
「そうですね。ヒロは昔からいっぱい愛してくれていますから。魂だって好きなだけ吸わせてくれますし」
「うーん、皆ずるいよー。私一度もおとーさんに入れて貰ったことないのにー」
「マリー?貴方はお父さんの妻では無いでしょう?それにお母さんはそんなこと絶対に許しませんよ。妻は夫に操を立てるべきです。お母さん達は皆お父さんにしか抱かれたことはないのですよ?」
うん、確かにそれはそう思う。実際妻達は全員処女だったし、俺以外に抱かれたことは無い。もちろん今後も誰にも寝取らせる気はない。そもそも、この世界では人の嫁に手を出すと本来容赦無く天罰が落ちる。マリーは結婚の際に細工をしたから、色々やっても天罰が落ちずに済んでいるというだけだ。
それに、そうだな。他の理由としては……
「おかーさんはいいよねー。おとーさんと初めて同士だったんだものねー。今でもおとーさんに一人だけ相手をして貰っていることが多いものねー」
「えへへへ」
ルナがやんやん、って感じに照れてみせた。たまにこういう仕草をすることもある。色ボケな時のルナはわりと幼児退行している気がする。
というかルナ、娘に既に自慢していたのか。俺としてはわりと秘密にするべき事柄だったのだが。結婚約二十四年目の真実ってやつだな。
可愛らしく照れている爆乳な母親のルナに対して、娘のマリーがこう続ける。
「おかーさん、本当なら今頃四十三歳なのに身体が衰えないのはずるいよね。本当なら絶対にお肌の張りを保てないはずなのに」
「あのね、マリー。貴方ももう既に二十三歳でしょう。お母さんのことを言える歳ではなくなっていくのですよ?」
「うーん、わかってるー。わかってるけどー、子供が出来るまでは永遠の十七歳なんだよ、心はー」
黒猫の母娘二人はそんなことを話している。色々と酷いことを話している気がするのだが。誰かつっこめよと思っていたら、俺の左に座っていたリース二号がつっこんだ。
「あの、マリーお姉様。ブロントお兄様と結婚なされているのですからあまりそのようなことを開けっぴろげに愚痴らないで欲しいのですが」
そう、ブロントはリースの最初の子供で長男なのだから当然リース二号にとっては兄である。
「んー、でもね、リースちゃん。かなり昔からバレちゃってるからね。本人の前で口に出したことは一度も無いけれど」
「そうなのですか?」
「うん。いつも事あるごとにおとーさんのところに来てるし、お泊まりすることもたまにあるから。まだ本番はしたことないから許してくれているんじゃないかな-」
「本番って……十分過ぎることをしているという話を聞いたことがあるのですが」
「え?あれ?……ええ?他の子に見られたことないよね?このお屋敷で」
「お母様とティターニアお姉様に聞きました。ルナ二号ちゃんは証言を拒否していましたが、ティターニアさんに聞いたことを話すと白状しました」
「えええ!?リースお姉ちゃんとティターニアお姉ちゃん、ばらしちゃったの!?」
ティターニアはいつも俺と一緒にいるし、行為の最中もずっと観察している。しかしその具体的なプレイ内容に関してを外部に漏らすことはほぼ無い。
この屋敷内でマリーとお楽しみ中の際には、見ているのはティターニアだけだ。
母親のリースの話となると、この屋敷に来るよりも前の情報になるんじゃなかろうか。……直接見てる場面は無かったような気がするのだが。では何故知っているかというと、俺がリースにマリーと何をしたか説明したことがあるからだ。俺とリースでは夫婦間での隠し事は無しだからな。
しかしだからといって、その内容を娘に話されているとは想定外だったが。
ティターニアもおそらくは、母親のリースの話を既に知っているのなら、と諦めてリース二号に話したということなのだろう。ティターニアは姉貴分のリースには結構従順だからな。リース二号にも従う方針なのかもしれない。
こんな一連の話をしていて、リース二号の隣の愛姫はチラリと様子を見たら顔を真っ赤にしている。俺の右のティターニアはいつも通り。膝の上のリース2Aちゃんは少しそわそわしている様子。マリーはリース二号に対して抗議の目線。アカリちゃんはこちらから目線を逸らして疲れた顔をしている。
そしてルナは割と平然としていた。
「まぁそのあたりのことは、ヒロの魂の味でわかっていたのですが」
「魂の味でそういうことまでわかるのか」
「ええ、わかりますよ。アナタが律儀にマリーとはまだ本番をしていないこともわかっています。本当に身体が結ばれているのなら、もっとアナタの味にマリーの味が濃く混ざっているはずですからね、リースさんやティターニアさんのように」
「ティターニアはわかるけれど、リースの味もするのか?」
「えぇ、小粒ではありますが、彼女も一応はダイヤリングを身に着けていますから」
どうにもそういうことらしい。吸魂の瞳は相当高性能なチェッカーのようだ。そんなことを話すルナの表情は大分柔らかい。
「一時期はどうなることかと思いましたが、なんだかんだで今でも二位がキープ出来ているので文句はありません」
「そうなのか?ルナ」
「えぇ。アナタは律儀な人ですからね。初めての相手である私を今でも大事にしてくれていますから」
「むぅ……」
そうやってルナからにっこりと笑顔を贈られてしまった。確かにその通りなので否定出来ない。
正直なところルナのこの押せ押せなところは客観的に見て結構問題人物なのでは?と思うことも多いのだが。
でも爆乳だし、俺にとっては初めて同士だったし、なんだかんだで猫娘が大好きなので捨てきれないという面がある。特に初めて同士だったのがでかすぎた。ルナはそのことをとても喜んでくれていたしな。
それに、性格の好みはさておきお嫁さんとしての仕事はおそらく完璧にこなしてくれていると思う。
そんな夫婦のイチャイチャの流れになりそうなところを、アカリちゃんに遮られた。
「夫婦仲が良いことはとてもよくわかりました。娘さんとの仲が良いこともわかります。けれどヒロ様は息子様達との仲は悪いでしょう?」
「それはまぁ、そうかもしれないが」
「ですから、私はやはりヒロ様のような旦那様はイヤですね。まぁその、愛の深さに関しては確かに見習って欲しいですが。私はまだ十六歳なのですが、早く夫を探すべきなのでしょうか?」
そんなことを言って悩むアカリちゃん。
まぁなんつうか、この世界は一応十五歳で成人扱いにはなるし結婚も認められているんだけどな。なのでそういう考えも特におかしくはない。それにうちの娘達が皆十四歳時点で子供を生んでいるからそれに流されやすくもなるかもしれない。
でもなぁ、俺なりの考えは伝えておくことにしよう。
「んー、一応、女性は二十五歳までに結婚すればなんだかんだでなんとかなると思うよ、俺は」
「そうですか?ヒロ様に言われても説得力は無いですが」
「いや、そうはいうけどね。フリマさんなんかは二十四歳だったけれど十分若々しいだろう?それにそうだなぁ、君のお母さんが君を生んだ時には、既に三十歳を超えていただろうに」
「それはそうなのですが。ヒロ様もご存知でしょうが、三十歳を超えて子供を生むことは人族では危険視されているのですよ?」
「まぁそうだけども。とりあえず二十五歳までに結婚すれば十分さ」
うん、二十五歳までに結婚すれば普通は十分だろう。
三十歳以上は駄目だとかそういう問題よりも、生まれる子供の先天異常リスクが高くなりすぎるのだ。
この世界でもそのあたりの事情は同じらしく、人族の女性は三十歳前までになんとか生む、どんなに遅くても三十五歳までというのが鉄則になっているのだそうだ。
ちなみに他種族では人族と比較してかなり余裕があるらしい。エルフは四十歳まで、猫族は五十歳まで、ウサギ族は六十歳までまず大丈夫なのだそうだ。ドワーフ族の女性は元々見た目幼女なわけだが、記録によると七十歳でも健康な子供を生めるらしい。恐ろしい話だな。一方でドワーフ族の自然死の寿命は平均八十歳なんだってさ。健康な子供を生んだ後十年で死ぬとかどういう設計なんだ。謎だ。
ちなみにうちの妻達の不老長寿はそこらへんのリスクにまで影響して、いつまでも二十歳でピチピチで安全に子供が生めるのだそうだ。さすがチート能力だと思う。俺の方も安全で大丈夫らしい。
今回の話はこれで終わりらしく、アカリちゃんが資料をまとめて立ち上がった。
「それでは皆様、お疲れ様でした。私は一度お母様に報告に戻りますね。明日からも改めてよろしくお願いします」
「うん、こちらこそよろしく」
「それでは失礼致します」
そんな流れで今夜のまとめは終わり、部屋に下がることになった。
その日の夜はリース二号と愛姫二号の相手をしているところにマリーまで乱入してきた。バレてしまっているのならもう気にしないということなのだろうか。二人が潰れた後に何度もごっくん、されてしまった。
マリーと本番をする日はいつ来るのだろうかなどと考えながら、彼女と抱き合ってぐっすりと眠った。背の高い俺の最初の娘の身体はやわらかくて温かかった。
今回、ラスト部分をやや丁寧に書いたところ少々長くなってしまいました。ひさしぶりにそこそこエロい話になっているのではないでしょうか。




