第五十五話「地固め」
引っ越し後数日が経過した。
仕事というか性生活の方は、今まで抱いていなかったコピー体の娘達を抱くことにより充実してしまった。ジゼル二号と三号を姉妹で頂いたりとか。母親ほどには成長していないので心理的抵抗はかなりあったのだが、コピー体の娘達が皆お父さん大好き状態だったので罪の意識に囚われずに済んだ。
候補者の人数が多すぎた為、少し対象を絞ることにした。ジゼル二号十六歳、三号十五歳。既に手を出してしまったルナ二号十四歳とアンジェラ二号十六歳、キャラット二号十六歳の五人を選んだ。高校生優先で。行為の前にパーティリストをチェックしたところ、そのうち母親が中に入ってきていたのはルナ二号十四歳だけだった。毎晩必ず中に入ってきていた。
引っ越して来たのが夏の終わり頃だったので、すぐに夏休みが終了し秋になり学校が再開した。中学生の子や長女の子はサボるのはまずいということで、秋から日中は学校にマジメに通って貰うことになった。姉が代わりに勉強するから大丈夫だということで、高校一年生のジゼル三号十五歳だけが日中も家に残された。ただ一人俺への生け贄に捧げられた結果どうなったかは伏せておく。
コピー体の娘達はそのスキルを母親や他の姉妹と共有している。攻撃力に直結する戦闘スキルやHP量に直結する体力スキル、その他知識面に関連する高校の範囲以上の学問もスキルとして共有している。
なので抱けば抱くほどその妻と娘達全員のHPがどんどん増える。スキルを共有する一方でHPは共有せず個別らしい。ジゼル三号を生け贄に捧げることでジゼル達全員のHPが増えるわけだな。盾役になって貰う予定なので、わりと正解かもしれない。
学問を共有するというのはなかなか便利だ。上手く活用したら妻達はそれぞれの分野のスペシャリストにだってなれるということだ。なのでそこらへんについて、妻ごとの役割分担をリースに相談して、妻それぞれにも納得して貰うことにした。
ジゼルは盾役になることを初めは嫌がっていたものの、俺の説得によりなんとか納得して貰えた。ついでに俺の方から盾についての要望を出しておく。その構想を聞いてジゼルは嫌がっていたものの、長い時間かけて研究することを約束してくれた。
十分なMPを持って魔法を使えるのはエルフの姫達三人だけなので、そちらには魔法の研究をして貰うことにした。三人ともそれぞれ分野が違う。ティターニアには回復魔法と強化魔法、アンジェラちゃんには弱体魔法と強化魔法の分野をお願いしたのだが。
リースが俺の構想にさすがにケチをつけてきた。
「ねぇヒロ。貴方は私に槍を使わせたいのよね。その為に魔法が必要だと」
「うん、その通り」
「それでその構想が、槍を装備した状態で天高く舞い上がり、一気に空中から奇襲するってやつなのよね?」
「うん、合ってる」
「誰よそんな危険なことを考えたのは!ヒロの考えたことだとは思えないわ。人間が武器を持った状態で二メートル以上も跳躍出来るわけが無いじゃないの。それもまたヒロの世界のゲームネタなの?」
全くもって正論だと思った。一般人は二メートル以上も垂直方向にジャンプ出来るわけがない。槍を持った状態で十メートルとかジャンプして空中から強襲かけるとか一体どういう発想なんだろうな。棒高跳びはあれは、棒を地面に置いていくから高く飛べるんだ。武器と一緒に飛ぶのは無理な話だ。
でも強化魔法を利用したらそれが出来るはずだ。ついでに槍で落ちてきて突き刺す際に刃先に弱体魔法をかけておくことが出来れば、相当有効なんじゃなかろうか。
この技をルーンダイバーとでも呼ぶことにしよう。ジャンプというシンプルな名称だとたぶん怒られる。強化魔法により飛び上がった後、刃先に弱体魔法を篭めて突き刺すという一連の奥義なのだからルーンダイバーということにしておいても良いはずだ。たぶんきっとそう!
ちなみに槍を突き刺した後は、着地の勢いを殺す為に槍の周りをぐるぐるっと回って貰ってから離脱して貰う予定。
そんな感じで、少しずつ今後の方針を固めていった。
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休日の午前中にはマリーに来て貰うことにした。用事は俺の中の武器イメージを受け取って貰い、それを具現化することにより武器サンプルを顕現して貰う為だが。
デカイ武器サンプルを試すより先に、ちょっと欲しかったアクセサリも試して貰った。三日月と猫のデザインの大きめの髪止めだったのだがちゃんと成功した。宝石工場のドワーフのお姉さん方にお願いして、何個か作って貰った。
「おとーさん、これ可愛いねー。月と猫のマークだし、私にもピッタリだと思う」
「うんうん、そうだろう」
「でもこれ、おとーさんの世界のエロゲーのヒロインさんのアクセサリーなんでしょ?ルナママやリースお姉ちゃんに怒られない?」
「怒られると思う。だから絶対に内緒な」
「うん、もちろんだよ、おとーさん」
髪留め用とか後ろでポニテまとめる用だとか胸元に着ける用だとか作っておいた。わりとありだと思う。可愛い、可愛い。とりあえずはマリーに着けてもらって、他の子が欲しがったらそちらにも着けてあげようかと思っている。
アクセサリーはさておき武器の方だが。これも一通り作って貰った。愛姫用の薙刀だとかティターニア用の杖だとか。他にも色々あるが今は伏せておく。
基本的に休日一日につき一武器のペースで進めて貰った。以前は五分で絆神力が枯渇していたが、最近は十分以上維持可能になってきている。そうやって維持している間に武器防具工場の職人さんに武器を見せて、図面を取り製作可能にして貰う。そんな日々を少しずつ重ねた。
まずは妻達の武器からだったのだが、次に息子達の武器も用意することにした。マリー達よりも一学年上に愛姫の息子の政宗くんがいるので、彼用の武器を優先させた。
マリーが俺から受け取ったイメージを元に、武器防具工場内でそのイメージを形作る。
「顕現せよ!魔を断つ蒼の刃、正宗!」
マリーのその声に応じるように、左手から不思議な形の刀が形成される。日本刀っぽいんだけど微妙に変な形をしている。なによりその刃は青く、峰は黒い。柄や握りは日本刀っぽいのだが明らかに異質な見た目だ。
絆神力により形成されたそれを、ニッポンポン出身の日本刀職人に見せる。本当は日本本刀らしいがややこしいので日本刀でいいだろう。図面担当者がすぐに計測を始めるが、他の担当者がその刀身を見ながらうんうん唸ってた。
「これはまた異質ですな。青い刀身ですか。果たしてこのような色の金属が入手出来るのかどうか」
担当者の疑問に対して、軽く言い返してやる。
「東大陸には無いんじゃないか?東大陸でもある程度の鉱物が取れるにせよ、鉱山の本場は西大陸のドワーフなんだろう?素直にそちらの知識を頼るべきなんじゃなかろうか」
「ううむ、なるほど」
元々この世界では西大陸と東大陸の仲が悪かったわけだが、最近はその関係もかなり改善されてきている。一般人にまでは無理だが、少なくとも俺の管轄下では皆仲良く働いて貰っているわけだが。
西大陸のドワーフの職人は、青い金属についてしっかりと知っていた。ドワーフ職人の一人が教えてくれる。見た目は幼い男の子といった感じだが、立派なヒゲを生やしている。とっちゃん坊やとかいう言葉を聞いたことがあるのだが、死語だろうか。
「これはアダマンじゃよ。割と稀少で十分な量が集まらんから、儂らが鈍器を作る際にはあまり用いられないやつじゃ。刃物の一振りぐらいならなんとかなるんじゃないかの」
「お、この世界にもあるんだな、アダマン」
「そうじゃな。逆に西大陸だと黒鉄が出なくてな。儂らは黒鉄の加工を楽しみにしておる」
なるほど、そういうことになっているのか。何にせよこれで製作の目処は立ったようである。
マリーには他にも色々と作って貰ったのだが、レプリカとして運用するものとして黒鉄で作れそうな剣のイメージも伝えた。ブロントに使わせる為のものだ。
また別の日にその剣を出して貰った際のマリーの感想はこのようなものだった。
「うわー何コレ。ちょっと禍々しいよおとーさん。これをブロントに使わせる気なの?」
マリーがそういう感想を出したソレは、黒い刀身のところどころが出っ張っている片手剣だった。例のアレだな。名称をそのままにするのもアレなので、ブロントソードということにしておいた。
「うーん、その名称、ブロントが怒らないの?彼、白色が好みみたいだよ?リースお姉ちゃんも白色好きだし、黒は似合わないんじゃないのかなぁ」
「大丈夫だマリー。ブロントならばきっと気に入るはずなんだよ、この剣は」
うん、大丈夫だろう。間違い無い。何故なら有名な台詞があるからな。
「どういうことなの?おとーさん」
「それはだな、マリー。白と黒。すなわち光と闇のイメージなんだ。ナイトの光とこの剣の闇。光と闇が両方備わり最強に見える。そういう理屈なんだよ」
「うーん、本当に?そんなことで納得して貰えるのかなぁ」
「大丈夫だ、問題無い」
うん、間違い無い!
そんなことを考えていたら、マリーが俺の瞳をじっと見つめながら心の声で語りかけてくる。その最中も剣の計測を係の人がしていたが。
『ねぇねぇ、おとーさん』
『なんだい?マリー』
『おとーさんは、愛と性欲が両方備わり最強に見えるよ』
『そ、そうか』
『だから抱いて!』
『そのうちな、そのうち』
うん、そのうちね。今は耐えるのである。きっと最後の最後まで我慢したら良いことがありそうだし。
そんな感じで武器開発の日々は過ぎていった。
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武器防具を作る課程において、色々知ったことがある。
これまで、東大陸は刃物、西大陸は鈍器、南大陸は革防具、北大陸は鉄防具とだけ聞いていたわけだが、それ以外にも色々特色があるらしい。
まず東大陸は、愛姫の出身地のニッポンポンが日本刀や薙刀などそういう系統だった。その一方で繊維業が盛んで、絹や綿なども取れるそうな。畜産はやっていないので羊毛とかはダメらしい。
フリマさんの出身地であるトルッコは、曲刀や短剣などそっちがメインになっているらしい。なんとなくわからないでもないが、あまり好きじゃないなぁ。
ユーロは西洋系の文化なわけだが、防具製作はあまり無くて武器が槍系とか斧系とかそこらへんみたいだった。そして何より両手剣が無い。どうやらこの世界に両手剣は存在しないらしい。ロマンは溢れるが実用性は薄いかもしれないな、うん。片手剣も作るには作るのだが、どちらかというとエルフに好まれているのだそうだ。
北大陸のエルフ達は金属防具を作るのだが、これは東大陸から輸入した金属と西大陸から少量輸入した金属、そして北大陸で取れるミスリルを使って製作されるらしい。金属防具はなんだかんだで重いので、なるべく装備部位を抑えて更に重量軽減用の魔法をかけているのだとか。
後は北大陸は木工がある程度発達しているので、弓矢や木製杖もあるようだ。とはいえそこまでは発達しておらず微妙な状態らしい。原因は、弓の弦に当たる素材として動物繊維を使っていないことだ。エルフが革嫌いな為に、優秀な動物素材を使っていないので十分な威力が出ないということらしい。
植物繊維の弦を利用しているがそれでは威力が弱く、合成繊維を利用出来ないのならば動物素材を使った方が良いのでは?という話らしい。なのでここも、技術協力して貰うことにした。
西大陸のドワーフはアダマンなどの稀少金属や宝石がたくさん取れる一方で、鉄や黒鉄が入手しづらいらしい。まさか宝石でハンマーを作るわけにもいかないので、少量の鉄は鉱山採掘用のツルハシに回してしまい、北大陸から輸入した木材で棍棒作って戦っているそうです。さすがにそれは弱すぎるんじゃないかなたぶん。死にまくりでも仕方ないと思うわ。
西大陸のドワーフがそんな状態な一方で、南の獣大陸は素手格闘な人が多いらしい。遂に武器の利用を諦めてしまった感。南大陸東部に住む猫族はウサギ族や犬族ほど獣じゃないので、東大陸からの逆貿易で色々輸入して曲刀+革防具という状態をなんとか保っているのだとか。
南大陸は革素材の利用が活発で、素手格闘の危険を少しでも減らすために結構一生懸命防具を作るのだそうです。あとは骨素材もそこそこ利用するという話。
つまりこの世界には、改善点が色々と残されていたわけだ。
人族とドワーフ族、エルフ族と獣族の仲が悪い状態をやめさせて、素材を融通しあうだけで大分改善されることが判明した。内海貿易船は従来通りにしか物資を貿易してくれないので、俺個人所有の貿易船も造船することになった。なかなか気の長い話になりそうだ。元々期間は十分にあるのだから問題無いのだが。
なんとか西大陸とのコネは作ることに成功し、共有インベントリ経由での直接輸入を実現することが出来た。このおかげでかなり大幅な改善がされることになり、大きな進歩である。
ちなみにその西大陸とを結んでくれる共有インベントリ業者の正体は、特殊な素質持ちの人族の男性陣と、内海貿易船の買春行為により生まれた現地妻のドワーフお姉さんの夫婦達であった。まさかここでそういう繋がりが出てくるのは想定外。
この世界を攻略する為の下準備は着実に進んでいる。
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マリー達が通うハーレム学園から離れた場所には、軍事用の男子校が建っている。ハーレム学園と男子校では内容が大分異なっている。
ハーレム学園では高校からは結婚が解禁されていて、結婚によって完全に囲い込んだお嫁さん達と俺の息子達とが昼も夜もそりゃあもう凄い勢いでイチャイチャしている。俺が稼いだスキルを息子達も共有しているので、俺同様になかなか絶倫らしい。スキルゼロの処女のお嫁さん達を相手にする関係で、全然スキルアップしないみたいだけどね。
それでも、妊娠するまでも二回抱けば新規のお嫁さん達もそこそこ安全になるHPを得られる見込みである。なので高校三年生の段階から、外に出て魔物討伐の経験をさせることにした。息子達の本職は子作りだが、せっかく俺や息子達でのスキル共有があるので少しは戦って貰った方が良い。
高校三年の時点で魔物との戦闘を経験して、それで大学で何を学ぶのかを息子達のハーレムのお嫁さん達に選んで貰うというそういうしかけにしておいた。
まぁ女性陣に戦って貰う気はサラサラ無いのだが。HPの伸びに限度があるし、衛生兵をこなすのが限界だろう。
不老長寿の力があれば、時間任せでいくらでもなんとかなるのだが。
しかし実のところ、不老長寿の力が及ぶ範囲には限度があったのだ。
以前システムメッセージのスメスさんに聞いたところ、一世代目の男子だけが特別扱いだという話を聞いた。女子については全員妻達のコピー体として機能するわけで何世代だろうが全員不老長寿になるのだが、男子についてはそうではなかった。
リースの息子のブロントや愛姫の息子の正宗くんなど一世代目の息子達は皆二十歳で止まるが、その妻やその子供達の年齢は一切止まらないのである。
これはなかなか怖い話だ。十六歳の時点で生まれた子供が、二十年後には父は三十六歳なのに身体は二十歳のままで、子供達も二十歳になる。更に二十年後には二十歳と四十歳だ。まだ残り八十年以上あるので、最初の子供達はみんなよぼよぼな老人になったり中には普通に寿命が来る者も出るかもしれないな。
最初に囲い込んだ妻達に関しては、ほぼ全滅だろう。
なので息子達には、妻達が四十歳程度になる前の時点で別離することになっている。その頃には子供も大きくなっているだろうし、故郷に帰させるのである。そうやって現地へ大量に子供を送り込み、そちらで次の一族を増やして貰うのである。
後は、息子達同士で互いの娘を融通して、次世代のハーレムも形成して貰うつもりだ。おじさんと姪の関係になるが、近親相姦突破能力があるのでなんとかなる。別に無理する必要もないので、気に入らなければどこかから新規のお嫁さんを探してくるのでも構わないが。
そうやって一族を一気に増やすと、その分の絆神力を稼ぐことが出来る。マリーは現在武器を一本十分程度維持するだけだが、将来的には一本ならば常時維持可能になるかもしれない。ゲージは十二時間で全回復するぐらいだからな。
しかし武器を維持する以外にも消費するかもしれないし、維持する武器が一本だけではなくなるかもしれない。なので絆神力は可能な限り大量に確保しておくべきだ。足りなくなってから確保することは不可能だし、感情論でなんとかなるような類の力ではない。
絆神力稼ぎの為のハーレム学園はそんな感じ。
では男子校の方はどうなっているかという話になるのだが。
男子校の方は、中学校時点からそれはもう酷い有様になっていた。
以前にも説明したが、この世界の魔物に対抗する為には豊富なHPが必要で、HPを増やす為には避妊無しの性行為を行うしか無い。なのでそうさせたのだ。この世界には娼婦さんが基本的に存在せず未亡人の扱いも悪かったのだが、比較的若くて綺麗な未亡人さんをたくさん集めて、男子校に投入した。
そうして大人のお姉さん相手に、男子校の生徒達はそれはもうハッスルし続けたのである。昔からずっと、幼稚園でも小学校でも中学校でも先生を大人のお姉さんにして、そういう欲望を膨らませ続けた結果だ。初めはどうなることかと思いきや、若い男の子達とやりたい放題出来るということで意外とすんなり人が集まってしまった。
一応は通常の授業もあるのだが、HP確保や戦闘関連の教育を優先させた。それらの配慮により高校一年の時点でDTが絶滅した。わりと羨ましい。
ちなみにこの世界に性病は無いそうです。
高校まではHP確保をメインにして、大学は無しというか魔物の巣近辺で実際に魔物を倒して戦闘スキルを磨かせる予定になっている。そうして十分な軍隊として育ったら、魔物の巣の攻略が進んでいない他大陸に丸ごと行かせるというそういう予定になっている。
現在魔物の巣の攻略が全然進んでいない西大陸に集中して送り込めば相当攻略が進むだろうな、などと考えていた。
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さて。
百年を乗り切る策。特に前半戦とも言える五十年、六十年程度を乗り切る策は俺の中で既に出来上がっている。そして周りもそれに従って動いてくれている。問題は無い。何も問題は無いはずだ。
しかし、俺は焦っていた。
早くこの世界をクリアしたい。なんとしても、どんな手段を用いてでも、早くなんとかしたかった。そしてその為に、前世の常識では考えられないような体制も準備した。そしてそれらの進行管理は俺よりも優秀な人達に任せているわけで、俺が出来ることはほとんど何も残ってはいない。
俺がすべきことは、種馬としての役割をこれからもずっとひたすら続けるという、それだけだ。
わかってはいるのだが、遅々として進まぬ時の流れに俺は焦ってしまっていた。原因はわかっている。マリーのことだ。
まだ彼女を、俺の最初の娘を寝取られてから一年と少ししか経過していない。それなのに、俺の心はズタズタになっていた。
良い妻達に恵まれているし、最近は可愛い娘達にまで手を出しているというのに、それなのにマリーただ一人を寝取られたというだけで、こんなにも深い傷を負うとは予想もしていなかった。
もしもマリーが俺にとっての一番の存在であったならば、俺の心は駄目になっていたかもしれない。
そんな俺を、俺にとっての一番であるリースが一生懸命癒してくれた。午前中はずっと一緒であったし、しばらくしてからは彼女を抱ける期間にもなっていたから。
彼女には、俺が焦っていることも全てお見通しの様子だった。
「ヒロは、私に会った頃の初心に戻るべきね。色々たくさんあったこともわかるわよ。けれど初心を思い出してね。そうしたらこれから先もきっと大丈夫だから」
リースにそう言われて、俺が彼女と出会った頃のことを思い返した。
強引に結婚前のリースを購入して全てを奪った俺に対して、彼女は俺を理解しようという努力をしてくれた。離婚不可能で後戻りが出来ないという事情があったにせよ、それをきっかけに、俺は胸の内を全部吐露したのだ。
彼女は全てを真剣に聞いて泣いている俺を優しく抱きしめてくれたが、後日少しそのあたりのことを話してくれた。ブロントが生まれる少し前の頃だっただろうか。
「まさか、あの時本当に貴方の全てを話すだなんて思ってもみなかったわ。はっきり言って大馬鹿者よ。もし貴方の全てを知った上で、私が貴方のことを嫌ってしまったらどうするつもりだったの?」
俺は正直に「何も考えて無かった」と話した。そしたら「わかってる」と笑顔で返されてしまった。ほぼ全てを受け入れて貰ったうえで愛されることは、とても深い喜びだった。
だからリースは、今でも俺にとっての一番だ。
「初心か、確かに忘れそうになっていたよ」
「うん、思い出した?」
「君が俺の心を支えると言ってくれて、本当に嬉しかった。今だってこんなに支えられている」
「そうね。けれどヒロが今でも私を一番に愛してくれているから、私も貴方を支えていられるのよ」
そう言って彼女に抱きつかれた。寝室のベッドの上で、互いに服を着た状態での話だが。
二、三人目の子供が生まれた時点で、リースはずっと愛情値トップを独走状態になった。ルナが必死に首位奪還を目指そうとしたものの順位は一切ひっくり返らなかった。ティターニアがずっとくっついていても全く変動しなかった。随分長期間忙しく子育てをしてたというのに、本当に凄いことだと思う。
昔のことを思い出しながら、二人で話を続ける。
「ねぇヒロ。禁呪の話をしていた時のやりとりを覚えてる?」
「うん、覚えてる」
「私を孕ませたかったのでしょう?どうかしら、もう二十人も貴方の子供を生んだわよ。今の貴方は幸せなのかしら?」
「うん、とっても幸せだ。こんなにたくさん生んでくれてありがとう、リース」
「そう。私もとっても幸せよ。残り三十人もお願いね、ヒロ」
そういって微笑んでくれる彼女を抱き寄せてキスをする。今までに何度キスをしたかわからない。けれど飽きることはない。
唇を離した後も、そのまま抱きしめたままの状態を楽しむ。リースの身体は柔らかくて良い匂いがする。そして何より、温かい。
「やっぱり、人肌の温もりは良いなぁ」
「それは私も同感よ。貴方の匂いも大分好きになったし。ヒロも私の匂いは好きなのでしょう?」
「うん、大好き」
そのままのんびりと抱きしめ合って過ごす。こういう幸せ気分だとどうにも眠くなりそうだ。昼間だというのに。リースも少し眠そうな表情をしているが、眠気を抑えながら俺に対して話し掛けてくる。
「ヒロのお父さんは孫がいなかったのよね。それでヒロはなんとかして子供が欲しかったのでしょう?」
「うん、その通り」
「お父さんに孫の顔を見せるよりも先に、貴方に孫が生まれるわね。むしろ本当は既に孫が生まれているんじゃないの?政宗くんが高校二年生なのだから」
うん、実はそうらしい。愛姫がそのあたりのことを話しているのを聞いた覚えがある。愛姫は今でも可愛いお嫁さんなのに既におばあちゃんになってしまったらしい。俺もおじいちゃんになっていたわけだが。
それにしても孫か。俺も顔を見に行くべきなのだろうか。そんなことを考えていたらリースに話し掛けられる。身長差もあるのでやや上目遣いにこちらを見てくる。
「ねぇヒロ。孫の顔を見てみたい?」
「ん?うん。ちょっと興味が湧いてきたかな」
「行かせないわよ」
「え?」
話題を振ってきたのがリースだと言うのに、ダメらしい。何故だろうか。
「孫の初顔見せを他の子に取られたくないのよ。愛姫には悪いけれど、ブロントの子供が生まれるまで我慢しなさい。それが貴方と私の初孫になるの。ちゃんと祝ってあげてね、おじいちゃんとして」
「うーん、まだおじいちゃんって歳でも無いんだけどなぁ。リースだって、こんなに若くて綺麗なのにおばあちゃん扱いは嫌じゃないか?」
リースの身体は身も心も二十歳のまま固定されている。だからいつまでも若々しいままだ。それに仮に歳を取っていたとしてもまだ三十五歳なのである。前世の俺よりはたぶん年上になってしまっているが。
俺の台詞に対してニコニコ笑顔で答えてくれる。
「そうね。おばあちゃんって呼ばれるよりもお姉ちゃんって呼んで貰おうかしら。マリーちゃんみたいに」
「うん、それがいいかもね」
「けれどヒロは特別におじいちゃんって呼んで貰うと良いわよ」
「う、うん」
俺はお兄ちゃんにはならないらしい。まぁいいけども。ティターニアがお兄様って呼んでくれるしな。夫だけどお兄様。既にティターニアには十八人も俺の子供を生ませたけれどお兄様。だがそれが良い。
くっついたままだといよいよ眠くなってきた。そんな最中、リースの手から温かいものが伝わってくる。
恋人を癒す回復魔法、昔彼女に教えて貰った愛の治癒だった。俺もリースの背中に回している手から、彼女に愛の治癒をかけ返してやる。
この魔法はじんわり温かいだけでなく、愛情を直接相手に流し込むことで心まで癒されるらしい。最近はMP量が随分と増えたし、こうやって密着しているとMP消費量よりもMP回復量が上回る。二人で愛情を流し合ってのんびり良い気分になる。
これはもう睡眠不可避コースっぽい。
「おやすみ、リース」
「おやすみ、ヒロ」
そのまま二人で愛の治癒を発動しっぱなしにしたまま、眠りについた。
昼食時に愛姫が起こしに来るまでそのままだった。
そろそろ一気に年代飛ばしても良いのでしょうか。そうしなければ物語が進みませんので。




