第五十四話「お出かけ」
朝新居の寝室で目を覚ました俺は、UIの時計を確認する。
917/8/30 7:01
大体いつも通りの時間といったところだろうか。
UIを確認しながらだと視界がかなりぼやけてしまうのだが、昨日抱きしめたまま眠ったルナ二号が穏やかに寝息を立てているのが見える。まだ起きていないようだ。
昨夜は明らかに中身がルナだったが、今はルナではなくオートパイロット中なのだろうか、わからない。
コピー体とはいえ、これで三人目の娘に手を出してしまった。関係上は俺の最初の娘であるマリーの妹に当たるし、見た目は既に体つき以外母親のルナそっくりだ。そもそもマリーとルナが背丈や体つきや瞳の色以外そっくりなわけで、ルナ二号十四歳もマリーにわりと似ている。姉のマリーは十六歳だな。
これはマリーからまた不満の声があがるんじゃなかろうかなどと考えていたら、UI左下のログウィンドウにシステムメッセージの黄文字が躍った。
Smes:おはようございます。昨夜はお楽しみでしたね。
>>Smes:随分と懐かしい台詞だな、それ。
システムメッセージのスメスさんと俺は勝手に名付けているが、十七年前にルナを最初に抱いた日の翌朝に見た台詞と全く同じメッセージが流れていた。前回は爆乳巨尻のルナで、今回は年齢並の体つきのルナのコピー体だけどな。体つきはまったく似ていないが、耳としっぽと綺麗な黒髪は完全一致だ。試しにルナ二号の髪を撫でてやる。母親と同じさらさらで気持ち良い手触り。
その手触りを楽しみながら、ちょっとスメスさんに聞いてみる。
>>Smes:昨日のこの子の中身、明らかにオリジナルのルナ本人だったと思うのだけど、そこらへん区別する方法無いのかな?
Smes:近くに複数いる場合はそのうちどれかまでは区別出来ませんね。一体ならば区別が可能ですよ。コピー体の遠隔操作中は、パーティーリストの方の名称がLになりますから。
>>Smes:ふむ?
言われてパーティーリストの方を見る。今は近くに他の妻がいないので俺とルナ二号の情報のみらしい。
そこには俺の名前の下に、ルナ=アーゼス2 ×1+11 と表示されていた。
この子は一人目のコピー体であり二人目のルナでもある。なので番号が2ということか。この2の部分が、遠隔操作中はLに変化するということなのか?Lはたぶんリーダーを意味するLなのではなかろうか。
>>Smes:複数同時にいる場合に、別々に並べて表示することは出来ないのか?
Smes:ちょっと難しいですね。複数いる場合は最も優先度が高い一個体のみがリストに表示されるようになっています。各個体の詳しい情報は、チェックは不可能ではないのですがページ切り替えが大変なのであまりオススメ出来ません。
>>Smes:そうか。ところでこのパーティーリストの検出範囲って狭くて使いづらくないか?戦場とかどうするんだ?
Smes:現在はお任せ設定になっています。コンフィグでカスタマイズも可能ですが、お任せ設定のままにすることをオススメします。戦闘時はしっかりと検出範囲を拡大しますので。
>>Smes:ふむ。そうかありがとう。また何かあったら質問するよ。
Smes:はい、それではこれにて失礼致します。
何やら色々と説明されたが、どうにもそういうことらしい。何にせよ今俺の胸の上で寝てるルナ二号は、オートパイロットのルナ二号で母親のルナは中に入っていないようだ。
便宜上オートパイロットと呼称しているが、実際には中の人がいるような気はする。気はするのだが、記憶も感情もある娘を抱いたと考えるのは色々危ういので深く考えたら負けだと思う。
UIの確認を解除して、寝ているルナ二号の黒い猫耳を軽く撫でてみた。耳がぴくぴくと反応した後、「んぅ」と声をあげながらルナ二号が起きた。
そしてこちらの顔から微妙に視線を逸らして、こう告げてくる。
「おとーさん。その、おはよーございます」
ルナ二号は顔を真っ赤にしているように見える。母親のルナに操作されていたであろうことは間違いないのだが、その間の記憶はばっちりと残っているのだろうか。視線を逸らしているのは照れ隠しと、MPを吸わないように配慮しているということなのだろう。なかなか可愛い態度だ。
とはいえ現在俺のMPは吸われても全然減らないぐらい大量にある。アンジェラちゃんが開発した例の魔力っぽい薬をエルフの姫達を抱く際に何度も用いていたので、魔法スキルはこの長年の生活でバリバリ上昇しているのだ。
なのでルナ二号の顔をこちらに向けさせて視線を合わせる。吸魔の瞳でMPが吸い取られるが、全然気にならない程度でしかない。
「おはよう、ルナ。これからは俺の目を見て挨拶するように」
「は、はい、おとーさん。…えっとその、昨夜はその、私だけど私じゃなくて、うぅ」
ルナ二号が顔を真っ赤にして再び目線を逸らしてしまう。昨日のことというのはルナ本体に操作されていた件だろう。初めてだというのにほとんど痛がりもせず大喜びしてたからな。あれは本当におかしかった。娘の初体験を母親が奪うような状態になってしまったのかもしれない。わりと非道い話に思える。
恥じらうルナ二号の身体を撫でてやりながら、俺は告げてやった。
「わかってる。だからお父さんに任せておけ」
「は、はい、おとーさん」
そんなわけで、俺はルナ二号を朝からもう一度抱き直すことにした。昨夜はお母さんに操作されてしまっていたのだから、操作されていない状態で抱いてやろうという配慮だったのだが、やりすぎではあるかもしれない。
二回してから一緒にお風呂に入ってしっかりと身を清めた。
そしてそんな様子の一部始終をティターニアが近くのベッドの上から眺めていた。何も言わないがちょっとムスッとしていたし、お風呂にも一緒に入ってきた。ルナ二号を丁寧に洗ってやった後、ティターニアの身体もしっかり洗ってやると彼女の機嫌が直った。
そうしてから三人で朝食に向かった。来るのが遅いよーって皆に怒られてしまった。
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朝食後の食卓で、これまではリースの家で続けていた朝九時のティータイムをすることになった。今日の参加者は俺とリースとティターニアとルナ二号と、そして何故かやってきたマリーだった。
マリー来ちゃったよ。心の声じゃなく直接本人が来ちゃったよ。まだ夏休みで暇だしな。
「ねぇねぇ二号ちゃん。おとーさんに抱いてもらったんだよねー?どうだった?」
「えっと、んっと、すごかったよ。お母さんに主導権を奪われていたけれどいっぱいしちゃったよ、マリーお姉ちゃん」
「そうだよねぇ、すっごいよねぇ。ねぇねぇおとーさん。私は-?私の分はー?」
「いや、待て、色々おかしいだろう」
うん、本当に色々おかしい。というかマリーは俺の知覚を常時認識しているから全部知っているんだよね。昨夜四時間どんなプレイしてたか全部知っているわけだ。その上で俺に当てつけみたいに話してるわけだ。
今テーブルには、俺が中央の席、左にリースが座っていて右にティターニアが座っている。本来ルナが座っている俺の対面には現在マリーが座っていて、マリーの左にルナ二号がいるという状態。背丈と瞳の色は違うが似た見た目の姉妹だ。
俺の左に座っているリースは何か少し疲れたような眼差しでこちらを見ている。そんな目で見られても困ってしまうのだが。それでも左にいるリースと目を合わせた。それに気づいたリースが語り始める。
「まぁそうね。娘も抱くことがヒロの仕事なんだから仕方ないわよね。でも話を聞く限り、昨夜のルナ二号ちゃんの中身はルナ本人が入っていたということで良いのかしら?」
「うん、それは間違い無いかな。明らかにおかしかったし」
「そう。娘の初体験を強奪するだなんて非道い話ね。けれど今朝のルナは不自然なぐらいご機嫌だったわね。なんだか朝食も豪華だったし、そんなに気持ち良かったのかしら。ちょっと興味あるわね」
うん、実はそんな感じだった。
空き席にルナ二号を座らせて朝食を妻達と食べていたのだが、今朝のルナはとてもご機嫌だったし朝食も気合が入っていた。娘のルナ二号が母親のオリジナルルナを抗議の視線で見つめていたがスルーしてた。ルナ二号の対面に座っていたスシネさんの娘のアカリちゃん九歳が、そんな様子を見て「うわぁ…」っていう表情をしていた。
でもルナの作った朝食がいつも通りとてもおいしかったのでそこらへんは吹っ飛んだ。
それにしてもリースも興味があるのか。エロ嫁はルナだけじゃなかったってことだな。前からわかっていたことだけれども。
話しながら紅茶を飲む。今日もリースが淹れてくれたミルクティーだ。朝なのでデザートは無い。飲む合間に再びリースが話し掛けてくる。俺の注意がリースの方に向いていることに気づいたマリーは、ルナ二号とエロ話を楽しむ方向にシフトしたようだ。ティターニアはあまり興味が無さそうにのんびり紅茶を飲むことに集中しているが。
「それでヒロ。これからのこの家での過ごし方を考えましょうか。なるべく貴方の仕事の時間は確保してあげるから、安心しなさい」
「仕事、ね」
「何よ、別に嫌じゃないでしょ?放っておいたらそれこそ一日中女の身体を抱き続ける人でしょ、貴方は」
「うん、それはまぁ確かに」
神から賜ったこの肉体はこの世界に来た当初から相当絶倫だったが、長年のスキルアップにより更に磨きがかかってしまっているので、今は一日中可能な状態になってしまっていた。幼い子供達の目が気になるので今までフル発揮することは自重していたが。
そんなわけで、リースとの相談で俺の一日の行動が決定された。
妻達全員が集まる朝食後にはリースと朝のティータイム。それから昼までは彼女と一緒に何かしら活動する。昼食後三時まで俺の仕事をしてから、三時に午後のティータイムと中間報告。それからまた夕食まで仕事して、夕食後は俺の好きなようにしろとのこと。
朝食後から昼食まではずっとリースと一緒に過ごすということになるらしい。なるほど、それも悪くないな。これまで彼女は育児にかかりっきりで俺の相手をする時間がほとんど取れていなかったからな。これからは午前中はずっと一緒ってことか。
食卓の対面で話を聞いていたマリーもそのことにすぐに気づいたらしく抗議してきた。
「リースお姉ちゃんずるいよー。つまり午前中はおとーさんをほぼ独占するってことじゃない!」
「あら、別にいいじゃないマリーちゃん。これまでずっと育児で忙しくて一緒にいられなかったもの。それに今でもヒロにとっての一番は私みたいだし」
「うぅー、私がおとーさんのお嫁さんだったら必ず一番になってみせたのにー」
「今は諦めなさいな。マリーちゃんはいつでもお父さんと一緒というわけにはいかないでしょう?休日の半分ぐらいは帰ってきたら良いし、それぐらいならヒロの隣を譲ってあげるわよ」
「ほんと?リースお姉ちゃん」
「本当よ。だから私とも仲良くしてね、マリーちゃん」
「うん!」
前からだが、なんでも俺の左にくっつく権利は愛情値が高いお嫁さん優先らしい。よって愛情値一位のリースは常に俺の左にくっつく権利を持っている。ただリースが傍にいないというだけだと、屋内ならまだしも屋外だとティターニアが俺の左にすかさずくっついてくる。なので、マリーが俺の左にくっつく為にはリースに許可して貰わないと基本的に無理。
それにしても易々と場所を譲るとは、これが一位の余裕というやつなのだろうか。そんなことを考えていたら、マリーがその金色の瞳で俺の方を見つめながら心の声で語りかけてきた。
『おとーさん、おとーさん』
『ん?なんだマリー、この近距離で』
『あのねあのね。デートしようよおとーさん。一昨日約束したよね。まだ夏休みだからー、お願いっ』
『えーっと、うん、わかった』
マリーから目線を外して隣に座るリースを見る。若干不思議そうな顔をしている。俺とマリーが何かしら意志疎通したことに気付いたのだろうか。
「リース。具体的にどうするかはまた明日考えることにして、今日はちょっと出かけてみないか?」
「あら、それは何人でかしら?ティターニアはどこにでもくっついてくるでしょうから置いていけないわよ」
「んー、俺とリースとマリーとティターニアの四人でかな。マリーの為に服を見てやりたくてさ」
うん、マリーはほとんど服持ってないんだよね。今も女子高生の夏服着てるし。一方リースとティターニアの二人は涼しそうな白色の洋服を着ている。ルナ二号はルナが買い与えたっぽい白いワンピースを着ている。俺が昔ルナを嫁にした時の服と似ているが、胸回りが違い過ぎるので新品かと思われる。自分のコピー体に昔の自分とほぼ同じ格好をさせているということなのだろうか。
マリーはなんというか、約百七十センチのおっきい女の子なので判断に困るということなのかもしれない。制服が似合うことは事実なのだが。
俺の提案を聞いたリースは、すんなり了承してくれた。
「いいわよ、それじゃあ早速出発しましょうか。パパリの街まで馬車で二時間程度かかるでしょうし、着いたら昼食にしましょ。マリーちゃんもティターニアもそれでいいかしら?」
「はい、お姉様。早速準備してきますね」
「うん、ありがとうリースお姉ちゃん」
「マリーちゃんは私の部屋に来たらいいわ。お姉ちゃんがおめかししてあげる」
ティターニアが早速とばかりに部屋を出ていって、マリーが席を立ってこちらに回ってきた。対面にルナ二号だけ残される形になる。
「ルナ二号ちゃんは、悪いけどお留守番ね。ごめんなさいね。その代わり帰ってきたらすぐに相手をするようにヒロに言い含めておくから」
「は、はい。行ってらっしゃい、おとーさん、リースさん、マリーお姉ちゃん」
「あとは、ヒロはいつも通りティターニアにお世話して貰いなさい。せっかくの外出なんだから」
「ん?うん」
うん、実はそうなっている。長年ずっと一緒にくっついて過ごした関係で、俺の世話がいつの間にか自然とティターニアの役目になっていた。ずっと続けているうちに大分馴染んだらしく周囲からの評判も悪くない。
そんなわけで俺は一旦ティターニアの部屋に行って外出用に着替えさせて貰った。服のセンスに自信があるわけでもないので、お嫁さん任せな方が気楽だったりする。悪目立ちしない、なるべく涼しい格好にしてもらった。
皆の準備が終わった後、用意されていた馬車に四人で乗り込んで街へ繰り出した。
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ユーロ国の首都パパリへと向かう馬車の中で、俺とリースとマリーとティターニアの四人で話をしていたわけだが。
街で買い物をするにあたり俺が全員分の支払いをするのかと思いきや、マリーや妻達は皆ルナが定めた規定額のお小遣いを貰っているらしく、そのお小遣いで色々買うから俺が払わなくても大丈夫らしい。
正直初耳だったのだがいつの間にかそうなっていたようだ。もちろんそのお小遣いは俺の財布というかこの世界に来た時から所持していた一兆円の残りや宝石事業や学園事業の利益などから出ているらしいが。
問題はその金額だった。
「えーっとマリー、もう一度聞くけれど、一体いくらお小遣いを貰っているんだって?」
「十六万円だよ、おとーさん」
「なんだろう、父さん耳が遠くなったのかな。一年かな?それは」
「毎月だよ、おとーさん」
この世界は確か日本と同じ金銭感覚だったはずなのだが。携帯電話が存在しない世界で、電話代を自分で払うわけでもないのに月々十六万円も貰う女子高生がどこにいるというんだ。
などと考えていたのだが。リースから詳しく教えて貰った。
「えっとね、ヒロ。今は妻全員にそれぞれルナから毎月五十万円ずつ分け与えられていて、その中から子供達にお小遣いをあげているのよ。高校生になったら息子達は一気にハーレムの女の子達の相手をしなくちゃいけなくなるし、一体いくら渡せば良いのか難しいわね。今はブロントには月々八万円ずつ渡してるわよ。ヒロは昔いくらぐらい貰っていたの?」
「俺か。五千円だったかな」
ちなみに携帯電話があまり普及していない時代の話である。三十代中年の高校時代だとそういうものなのだ。
「一般家庭でそれなら十分貰ってる方なんじゃないかしら。王族だとたくさん貰うものなのよ。特に長男や長女なら、万単位で貰うのが当たり前になってるわ」
「そうなのか。マリーが貰っている金額はどうなんだ?」
「猫族の王族の姫君で長女で英雄なんだから、まだ少ない方なんじゃないかしら。でもマリーちゃん、今までほとんど買い物したことが無いのよね?」
「うん。私ほとんど家から出たこと無かったから。他の子達は休日に皆で街まで買いに行ってたみたい」
リースの問いにそう答えるマリーの格好はやはり夏服である。別に制服の着用義務は無いのだが、気に入っているらしく好んで着てくれている。というか俺の好みだから着てくれている気がする。
夏服が水に濡れて下着が透けるのがいいよな、などとマリーの身体の中で考えたことがあったのだが、その思考をばっちり読まれてしまったらしい。
それからだろうか、マリーは一年中夏服を着てくれている。寒い季節は下だけオーバーニーソックスを履いて耐えてくれている。父親の性癖の為にそこまでする娘とは一体。
別にそこまで制服フェチというわけでは無いのだが。色んな格好をしてくれるのもそれはそれで楽しい。ちなみにリースやティターニアは、普段爽やかさや可愛さを強調するような比較的露出度の低い洋服を着ている。寒い季節には暖かそうなもこもこ萌え萌えな服装をしている。それはそれで俺のツボを抑えている。
そんなわけで、今日はそこらへんの俺好みの服装をリースからマリーに伝授してくれとお願いしておいた。夏服だけだとバリエーションにかけるのは事実だ。プール以外で水着を着て貰うわけにもいかないし。体操服も、学校内ならまだしも家庭で着られても対応に困る。
「そんなわけだから、今日はマリーちゃんは私と一緒に色々見て回りましょう。ヒロ好みの色んな衣装を揃えてあげるわよ」
「本当に?ありがと、リースお姉ちゃん!」
「ティターニアは、ヒロの服を見てあげなさい。その人自分で服買い足したりとかしないだろうし」
「任せてください、お姉様」
そんな感じで、大体二手に分かれることになった。はぐれるのは困るので、UI右上の周辺マップにお互いに表示される範囲内で別行動ということに。もちろん全員一緒に回ることもあるが。
買ったものの収納には共有インベントリを使うのだが、最近その共有インベントリにも変化があったらしい。それについてもリースが教えてくれた。
「共有インベントリに変化って、なんだそれは?」
「えっと、夫婦間の共有インベントリと、親子間の共有インベントリの二つになったみたいね。親子の場合は男の子用と女の子用で分かれているわ。個人専用の枠は相変わらず無いみたいだけれど」
「それって、俺にもあるの?」
とリースに聞いたところ、マリーが教えてくれた。
「おとーさんは、私と二人の専用の共有インベントリの枠があるよ」
「そうなのか?」
「うん。私はおとーさんと私の共有インベントリと、ルナママや妹たちとの共有インベントリがあるよ。あと一応ブロントと他のハーレムのお嫁さん達のも」
「そうかそうか」
ブロントとそのお嫁さん達の夫婦間共有インベントリもあるようだ。一体何が入っているのだろうか。勝手に他の人の物を持ち出すと凄く怒られそうではある。
「今日の買い物はおとーさんとの共有枠に入れるね。覗いてもいいよ?」
「覗かないから、大丈夫だ」
「覗いてもいいよ?」
「知らない方が楽しみなこともある」
俺がそう言うとマリーは少し残念そうな顔をした。なんだろう、父親の俺に娘の買った服だとか下着だとかをチェックしろというのか。それは如何なものなのか。前世で何故か一時期姉の下着も洗濯後干したりしてたから結構残念なことになった。
姉はさておき、人の下着をあまり洗濯したり干したりするものじゃないな。わりとガッカリするからね。自分が把握していない下着を見たり脱がせるからこそ、そこにロマンがあると思うんだ。あと、着ている本人が可愛いことが大事だと思う。リアル姉を可愛いと思ったことなど無い。仲悪かったし。
街に着いてから普通のレストランで軽く食事を済ませる。イタリアン料理だった。イタ飯という表現はもう死語だろうか。あまり時間をかけると街を見て回る時間が減るので簡単なもので済ませた。
昼食の後は予定通り服を見て回る。ティターニアは俺の方の世話を頑張ってくれていた。
「お兄様は、こちらの服が似合います」
「そうなのか、こっちはダメなの?」
「ダメです、似合いません」
「そうかそうか」
俺は俺自身のセンスがどうにも信用ならないので全部任せることにする。長年ずっと一緒にくっついていた関係で、ティターニアはそこらへん全部把握してしまったらしい。
俺に服を着せ替えさせてから、彼女は軽く抱きついてきてその心地を確かめている。どうにも、抱きついた際の心地の良さも重視しているらしい。謎だ。喜ぶべきことなのだろうが。
何店かそうやって店を回っていたら、マリーの服装がコロコロその度に変わっていた。リースが着ているような爽やかな夏服もあったし、露出度高めな肩口の出ている服やミニスカな格好なこともあった。
のだが何故か最終的にメイド服になっていた。さすがにこれには俺もマリーにつっこみを入れた。
「なんでメイド服なんだ」
「おとーさんが、猫耳メイドは正義って心の中で呟いていたことがあるから」
「まぁ黒髪だしな。正義だと思う」
マリーの格好は、膝下ぐらいまでの長さのメイド服になっていた。極端に長いわけでもないので動きやすいかと思われる。スカート部の上部にはしっぽを通す為のしっぽ穴が開いているがスカートの後ろは割れていない。
マリーがくるくるーっと回転すると、良い感じにスカートが広がった。十分な長さがあるのでパンツが見えたりはしない。良い長さだと思う。
その様子に満足していると、リースにこう言われた。
「ヒロって、エロなくせに露骨なのは嫌いなのよね。ワガママじゃない?」
「いや、そうでもないと思うよ。バランスが大事だと思う」
「あらそう。私としてもそれぐらいが助かるから問題無いのだけれど」
なんというか、普段からエロイ格好をされると困ってしまう。緩急が大事だと思うんだ。
服を一通り見た後は、下着を買いに行った。さすがに三人が女性用下着を見ている間は俺は遠慮しておいたのだが。その後俺の男性用下着を選ぶ際に三人で審議開始するのはどうなんだ。さすがにそのパターンは想定していなかった。
そうやって服を見終わった後、買うわけではないのだがちょっとだけ宝石屋をチェックした。昔ルナと一緒に結婚指輪のプラチナリングを買った店だったが、既に店ごと買い上げて俺の宝石事業で作られた商品を販売している。店舗の規模もかなり拡張しておいた。
店内は随分と賑わっている。ユーロ国は昔見た時から人族の男性と猫族女性の夫婦が多かったが、この宝石店では特にその組み合わせの夫婦がたくさんいる。ちらほらと人族同士のカップルや夫婦の姿も見える。多少周りを眺めていたら、店主がすぐに気付いて呼び止められた。そのまま別室に呼ばれたのでティターニアと二人で出向く。
宝石店の店主に軽く話を聞くことにする。
「売れ行きは好調みたいだな。やはり誕生石関連がよく売れているのだろうか」
「ええ、それはもう。猫族の女性がやはり宝石好きですから、その夫婦の方がお揃いの誕生石をお求めにいらっしゃるようです。それに釣られる形で人族のカップルや夫婦の方も来られますね」
「そうかそうか。今日は軽く様子を見に来ただけだからすぐに帰るよ。何かあればまた工場の方に伝えてくれ」
「はい。実は最近高額宝石にも目が向けられているようで、ピンクダイヤモンドについて質問される方も多いのですが」
「あー…さすがにコレは激レアだから、結構難しいんじゃないかな」
そういってチラリとティターニアが今もずっと身に着けている左手薬指の大粒のピンクダイヤモンドのリングを見る。相変わらず綺麗なピンク色だ。元の世界だと一体いくらぐらいするのだろうか。億の領域に達しそうな気がする。
俺が見ていることに気付いたティターニアがニッコリと笑顔になる。このピンクダイヤモンドが原因でティターニアの魂が俺色に染まって混ざった結果俺と常時くっつくことになったわけだが、それはそれでアリだった。
善処するとだけ店主に言い残して宝石店を去ることにする。その後も色々と店を回る。アクセサリー屋を出た後に、メイド服のマリーの後ろから出ている艶のある黒しっぽに、赤いリボンがついていた。そういうのもあるのか。
「マリー、それ。リボン可愛いけれども、一人でつけられるのか?」
「うーん、今は無理かなー。服を着る前ならいけるかな。さっきはリースお姉ちゃんに着けてもらったの」
「しっぽにまでアクセサリーを着けるだなんてちょっと洒落てるわよね。私も耳に何かつけようかしら?」
「あー、ピアスは無しな。痛そうだから」
「はいはい」
それにしてもアクセサリーか。ちょっとひっかかるな。
出てきたばかりのアクセサリーショップにちょっと引き返して軽く欲しい物があるかチェックしてみた。しかし見当たらなかった。俺が取った不審な行動に対してリースが聞いてくる。
「どうしたの?ヒロ」
「いやー、その。髪留めみたいなもので俺の知ってるものが無いかと思ったんだけど、さすがに無かった」
「ふーん。どんな髪留めなのかしら?」
「三日月と猫の形の、銀かプラチナ製の髪留めかな。割と可愛い」
「聞いた感じ実用性が皆無にしか思えないわよ、それ」
「いや、可愛いは正義だから」
とりあえず無かったのでその場は諦めることにした。
その後も色々回ったのだが、そうして最後に、買う気は無いのだが武器防具の店を冷やかすことにした。昔ルナを購入した帰りに、買う意味が無いからやめとけと言われたので結局まだ行ったことがない。
実際中を覗いてみると確かにやや残念な印象がした。なんか凄く普通。武器はシンプル過ぎる刃物類だらけだった。防具の方は革防具が多めで金属防具も多少置いてあるといった感じ。
そういうのを眺めながら、ややこっそりといった風にリースが話し掛けてくる。
「ヒロは、最近武器防具工場を建設したのよね?今どうなっているのかしら?」
「あー、うん。今はまだ本格始動していないかな。色んな職人さんを集めて試作品は作って貰っているけれども」
「私にくれたバルキリーフォークも作ってるの?」
「あれはリースとリースの娘達専用かな。量産化の目処はまだ立ってないよ」
うん、そんな感じ。妻達には一人一武器で持たせようと考えている。そしてそれぞれの武器候補も考えてある。そのうち量産するつもりではあるが、今はやや難しい。よくわかんないけどレアっぽい金属で作って貰ったので今は稀少なのだ。たぶんオリハルコンとかそのあたり。
そういえばリース用に作ったバルキリーフォークだが、わりとうろ覚えで作ったので形に自信が無い。あれは果たしてバルキリーフォークだったのだろうか。リースに使わせるからなんとなくイメージ優先でそう名前を付けたのだが、もしかしたら竜の髭かもしれない。名前が気に入らなかったのでバルキリーフォークということにしておいた。
俺がそんなことを考えていたら、マリーから心の声で通信が。
『おとーさん、おとーさん』
『なんだい?マリー』
『アクセサリーのこともそうだけど、私におとーさんのイメージを伝えてくれたらそれを参考に出来るよ。私頑張って左手から出すよ。そしたらきっと開発がはかどるよ』
『なるほど、そうきたか』
『だから、その時はごっくんさせてね』
『う、うん』
何やらそういうことになった。でも確かにその方が開発は捗りそうである。
武器防具屋を冷やかした後は皆で家に帰った。帰る前に一旦武器防具工場を軽く視察して挨拶しておいた。今はまだ準備段階だが、人族とエルフ族とドワーフ族と獣族、この世界に住む全種族の職人さんを揃えて研究を進めて貰っている。
ドワーフ族は男性の鍛冶職人さんが多いのだが、わざわざ嫌っている人族の住む東大陸に来てくれているのは、宝石工場に勤めている見た目幼女の宝石お姉さん達の関係者が多いからとのこと。
武器防具工場の様子を見た後は、家に帰って予定通りルナ二号の相手をした。
何故かマリーがルナ二号の分のメイド服まで買ってきていて、猫耳姉妹メイドのご奉仕によりごっくん、された。
昔の王族の方で、美術品等買い漁った結果一年にドゥカート金貨一万二千枚、日本円にして十二億円ぐらい使い込む方もいたという記録が残っているそうですよ。一月に一億円ですね。王族の金銭感覚を一般人感覚で考えない方が良さそうです。




