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異世界で、一兆円とクエストと。家族計画、神の道  作者: レガ先
第二章 夫婦で回ろう世界一周編
22/79

第二十一話「吸魂の瞳、その瞳は魂を吸い英雄を生む」

 900/10/2 16:32


 猫族の王城に着いた俺達三人は、いつものように俺の個人カードを入り口の兵士さんに提示して、それで女王の間へと通されることになった。

 入り口の兵士さんもやはりというかなんというか、猫族の女性だった。


 ちなみに今日も最近いつも通りというか、左右からリースとキャロットちゃんの二人に挟まれたままだったりする。


 猫族の男女比率は15:85という話であるが、ウサギ族の国ロップイヤーと同様にこの猫族の国アメショーの首都キャッツアイでも見かける猫族はほぼ全員女性である。

 きっと猫族の男性はどこか目に付かない場所のハーレムに囲われているに違いない。


 女王の間に通された俺が見た女王の姿は、随分とキリッとしていて格好良かった。容姿についてはルナを買った時に他にいた赤髪の子にやや似ているかもしれない。


 女王の髪は鮮やかな赤色をしており、耳も赤、瞳は緑色でとても目力が強い。髪型はとても長いポニーテール。

 それぞれ別の色に染色した革を組み合わせたようななかなか見た目の良い革鎧を身に纏っており、腰には随分と太目の剣を装備している。

 ウサギ族の女王のような優しい見た目の人物かと思いきや、麗しい武人といういでたちである。


 俺達が女王の間に通された時、女王は立った状態でこちらを見ていた。

 そんなカッコイイ女王様に対して俺はなんというか、左右から女の子二人に挟まれた状態なままなわけで、なんだかすみません。


 女王は最初随分と怖い顔をしていたのだが、まぁそんな俺達の様子を見てその表情を崩した。


「今度の神の使徒が随分と女にだらしないという話は聞いていたが、王の前にも普通にそのままやって来るとはな。今まで誰にも指摘されなかったのか?」


 なんだか呆れ顔で言われてしまった。既に怒ってはいないみたいだ。安心しても良いのかもしれない。なので普通に答えておくことにする。


「えぇ、今までも何故か大丈夫でした。不思議ですね」

「不思議というわけでもない。しっかりと意味を考えればそうでもないさ。スキンシップが苦手なエルフ族の姫が妊娠中であるにも関わらずそんなにもくっついている件もそうだし、嫉妬深いウサギ族の姫が文句も言わず左を譲っていることもそうだ。あの女王はお前になかなか良い娘をくれたようだな」

「そうだったんですか」


 ええっ!?ウサギ族って嫉妬深かったのかい!?キャラットちゃんからはそんな様子は感じないんだけどな。

 でもそうだな、俺の知ってるキャラットちゃんと同名キャラの出てくるゲームのウサギの女の子は、確かにすごく嫉妬深くて地雷扱いされていたね、うん。


 女王が玉座に改めて座ってから改めてこちらに聞いてくる。


「では早速本題に入ろうか、そなた達は今、どこまでの情報を理解しているのだ?」


 うん、まぁそういう質問になるよね。さてどこから説明しようか。とりあえず確認済のところから詰めていく。


「まず始めに、私が最初に娶った妻は黒髪に黒い瞳をしている猫族の娘でした。初めはクロという名前を名乗っていましたが、後に本当の名前がルナであることを私は知りました」

「ほう、それで?」

「ルナは犬族の国王の弟であるフェンリル元王子と貴方様の妹君との間に、中秋の名月の日に生まれた、黒髪の月の姫君であるということです」

「…ほう」


 そう、ここまでは合っているはずだ。問題はここからなのだ。

 リースは全ての黒猫が吸魔の瞳を持っていると俺に先ほど説明していた。しかし俺はMPを吸われたことが無い。


「そして本来、黒髪、黒い瞳の猫族の女性であるならば、全ての女性が目が合った相手のMPを吸い取る吸魔の瞳を持っているはずなのに、私はこれまでルナにMPを吸われたことがありません」

「…」

「これは何故なのでしょうか?ルナは吸魔の瞳ではない別の何かを持っているはずなのです。このことを聞く為にここに参った次第です」


 そう、こういうことであるはずなのだ。ルナは何の力を秘めているのか。


 月の姫君に何かしらの力があるらしいことは既に聞いている。では黒猫の月の姫君だとどうなるのだろうか?何かパワーアップでもするのだろうか。


 どうやらその予想は当たっていたようだ。


「吸魂の瞳、だ」

「キュウコンのヒトミ?」


 えーと、吸魔の瞳がMPを吸う瞳なんだろう?キュウコンって、吸魂?魂を吸い取る?いやそんなまさかねー。


「吸魂の瞳は、自らが今最も愛を通わせている対象者にのみ作用し、相手から魂を吸い取り自らの、そして宿している我が子の力へと変換する呪われた瞳だ。誰からでも吸えるというわけではないが、魂を吸い取る分その効果は吸魔の瞳の比にならないものだ」


 ふむ?

 最も愛を通わせている対象者から、魂を吸い取り力にする?


 ん?

 あっれー?


「あの、すみません、女王様」

「なんだ?」

「それってつまり、俺の魂がルナに吸い取られていたってことですか?」

「そういうことだ。お前とルナは深く愛し合っていたのだろう?それはもうすごい勢いで吸い取られていたはずだぞ」


 え?ええー?

 いや、そんな、吸い込まれそうな瞳だなーとはいつも思ってたんだけど何か吸われてるという自覚症状は俺には全く無かったんだけども…

 あれ?何?俺魂を吸い取られて死んじゃうの?


「すみません女王様。俺はそんな、魂をたくさん吸い取られたのなら死んでしまうのでしょうか?」


 うん、すごく重要な問題だと思うんだけど、そこのところ。

 何?死の宣告が秒読み状態なの?一体どういうことなの?


 きっと俺はすごく不安そうな顔をしていたのだろうな。もしかしたらブルブルと震えてしまっていたかもしれん。そんな俺に対して、女王はいきなり笑い出した。えっ?どういうことなの?コレかなりシリアスな場面だよね?


 何故か女王様は随分と大爆笑してからかなり時間を経てから俺に説明してくれた。


「いや、すまぬな。神はそのあたりのことをお前に教えなかったのか?なんとも酷い話だ。もしもお前に特殊な力が無ければとっくに吸い尽くされて死んでいるのだぞ?」


 おや、そうなの?特殊な力ってなんだ?スメスさんは一兆円はVIPプレイヤーの特典の一つに過ぎないとは言っていたが。


「神の使徒はな、魂の総量ともいうべき物を常人の一万倍程度用意されているのだよ。他の人間相手なら百人吸い殺せる程度に魂を吸い上げたとしても、神の使徒にとってはほんの少し吸い取られた程度に過ぎぬ。だからお前が死ぬようなことは起こらない。だからといって吸い放題であるそのことが問題なのだが」


 そう言ってから、女王は少し悲しそうになる。何がそんなに悲しいのだろうか。

 女王は表情通りの少し元気が無さそうに俺に聞いてくる。


「お前はルナの姿を初めて見た時に、まず何を感じたのだ?」

「えっと、それは…」

「感じたことを素直に答えてみるが良い」


 女王の声は、それがとても重要なことなのだという、真剣であるという意思が感じられた。

 なので仕方なく説明することにした。


「まず、背はかなり小さかったです。百五十センチぐらい」

「それで?」

「胸がその…それなのにすっごく大きくてですね」

「それで?」

「それなのに腰はキュっとしまっていて、それなのにヒップは一気に膨らんでいまして」

「…」

「あと更に、しっぽもなんだかとても良い感じでして」


 うん、そうだったのである。どう考えてもチートとしか思えないワガママボディだったのである。あまりにもあんまり過ぎたのである。これはちょっとすごいぞ!と思ってしまったのである。


「お前はそれを見て不自然だとは感じなかったのか?」

「いや、その、すごいなとは思いましたが」

「それが私の妹の、ルナ自身の母の魂を吸い取ったことにより得たものなのだよ」


 …


 ……


 ………はい?(´・ω・`)


 一体全体どういうことなの?


「吸魂の瞳は、本人にも発動を抑えられない厄介な代物なのだ。そしてそれは恋人同士だけではなく親子であっても発動してしまう。ルナにとって最も親しかった相手は母であり、彼女は愛する母の魂を吸い取ってしまったのだ。吸魂の瞳は今一番足りていないものを補うように作用する。本来黒髪の猫の娘は、そこまで大きくは胸もヒップも育たないものなのだよ」


 そうなのか。

 いや、もう、ちょっと色々待って欲しい。


 娘の呪いで母が命を落とす、ここまでは割とお約束な話であると思う。お約束な話ではあるのだが。

 母の命の対価に得たものがあのルナのワガママボディというそこのオチがすごく色々と酷い話に思えるのだけれどもどうなのよそこのところ!!!


 つまりルナは、本来はそこまでワガママボディに育つ予定では無かったのに、母親の魂を吸ってまで自分に足りてないワガママボディを手に入れて、その結果として俺の心をガッシリ鷲掴みにして、見事俺の第一の嫁になったのをいいことにその後は俺の魂をちゅーちゅーおいしく吸いまくっていたということになるのか。


 あまりにも話が酷すぎてワロタ。

 いやしかし確かにそれで大正解だったのだから、本当にしてやられたよ。

 この世界はまるで俺を罠にかける為に用意されているような印象さえするよ。

 本当に想定外過ぎたよ。


 と、話はまだ終わっていないはずだ。

 さっき女王は言った。なぜ吸いたい放題だと問題になるのだ?


「女王様、魂を吸い放題だと何が起こってしまうのですか?」


 そう、そこが問題なはずだよね?


 すると女王は、少し心を切り替えていたのか、しばらくしてから元のキリッとした顔になってからこう話してきた。


「伝説レベルの話で、確実には言えないのだがな」

「はい」

「まず黒髪の猫族の娘であるという条件と月の姫君であるという条件が重なることにより吸魂の瞳が生まれる。次にその吸魂の瞳により宿した子に力を与えることで、やがて生まれてくる我が子に英雄たる素質を与えるという噂話が、古来より語り継がれているのだよ」


 ふむ、なんだろうね。何かあるってことはよくわかったけど、可能性だけでそこまで恐れるほどヤバイのか?


「具体的にどんなものなんですか?それ」


 うん、そこが聞きたいわけだが。


「そうだな、神の使徒殿は各国を回って姫を集めていたのだろう?」

「ええと、俺の名前はヒロ=アーゼスなのですが」

「そうか、ではヒロ殿、既に各国の姫を集め幾人も子を宿させたのだろう?」

「えぇ、それはそうなのですけども」


 いや、なんでそんなこと聞いてくるかな?ちょっと恥ずかしいじゃないか。しかしどうにもマジメな話らしい。


「吸魂の瞳の力により生まれるというその伝説の存在は、神の使徒の一族を束ねるリーダー的存在になると言われているのだよ」


 …ん?なんだって?


「正式な名称は存在していないのだ。それは猫族の娘であるらしい。その娘は金色に輝く瞳を持ち、父である神の使徒とその魂を分け合い、神の使徒の一族を統べる存在になるという。比較的短い言葉にまとめるのならば、金の瞳の乙女、といったところだろうか」

「なんだってー!?」

「事実なのだから仕方ないだろう?ヒロ殿もそろそろ覚悟を決めておくが良い」


 そういって女王はこちらのことをハハッと笑ってきた。つまり女王はこう言っていることになる。


 生まれてくる子供は神の使徒の一族を束ねる。

 そしてそれは俺とルナの子供である。

 たくさん魂を吸って生まれてくるのでその力はそれはもう絶大なものだと予想される。


 つまり?


 俺はちょっと、俺の体の左で無言でくっついていたリースに向かって聞いてみた。


「ねぇ、リース?」

「…えっ?突然どうしたの?ヒロ」

「俺さ、主人公の座奪われちゃうの?」

「しゅじ…なんですって?」


 うん、ごめん、俺の言ってることがおかしいのはわかるんだけどさ。

 いやでも、聞きたかったからさ。


「主人公だよ、主人公。物語の中心人物っていう意味の言葉なんだけども」

「何言ってるのよヒロ。この世界に主人公なんていないわよ?皆が主人公で皆神からクエスト受けて頑張っているんだから、なんで貴方だけ特別扱いだと思ってるのよ?」


 デスヨネー。


 自分の娘に主役の座奪われるパパとかそれどこのゲームだよと思わずにはいられなかった。

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