第十九話「耳に出るタイプ」
朝起きて俺はUIの時計を確認する。
9/29 6:55
今日は少し普段よりも早いかもしれないな。さてどうしたものか。
パーティーメンバーリストには、上から順にヒロ=アーゼス、リース=アーゼス、キャラット=アーゼスと三人の名前が並んでいる。
そしてリースの状態表示欄にはいつものように、妊娠中を示すピンクのハートマークと愛の奇跡で性別を確定させたことを示す♂マークが点灯している。
妊娠中を示すハートマークを初めて見た時はとても驚いたが、俺の最初の子供を妊娠したその時、ルナはそのことをとても喜んでくれた。それまでずっと俺に抱かれるだけだったルナは突然活動を開始し、最初は下手くそ過ぎた料理の腕は今では一級品である。
何故あれほどまでの変化が起きたのだろうか。他の嫁達はただ妊娠して俺の体を受け付けなくなったり子供の為に自己防衛機能を働かせるだけだったのに、ルナのあの決意はどこから来ていたのだろうか?
ルナは「可愛い赤ちゃんを作りましょう」というクエストなども受けていたらしいが。今もまだ生まれていないのでそのクエストは進行中のはずである。そのことを俺に話して恥ずかしがっていたな、可愛いからその後なでなでしておいたような気がする。
クエストリストが表示されるべきあたりを見る。やはり今もクエストは発生していない。クエストを待たずにキャラットちゃんを嫁にした件はどう処理されているのだろうか。
システムメッセージのスメスさんは、俺の質問に少しは答えてくれると言っていた。ならば俺もスメスさん相手に情報収集をするべきか。
ちょっと聞いてみることにする。
>>Smes:スメスさんいるかい?
Smes:何か用かな?
うん、いるらしいがさて何を聞くかな。ある程度回数は限られているらしいからあまりムダには質問出来ないが。とはいっても一番重要なところは教えてくれないはずだろうし、気軽に攻めて良いかもしれないな。
>>Smes:そうだな。まずスメスさんの中の人ってどうなってるの?他の人も担当してたりするの?
Smes:私自身はヒロ様専属で担当しております。ヒロ様の担当は私一人のみです。他のさほど重要でない方々は、我々一名につき百人であるとか担当しております。
ふむ?つまり俺の担当のSmesさんは俺だけの担当なので比較的ヒマってことだな。そうかそうか。まぁ中の人がたくさんいるよりはマシだが。
>>Smes:この間俺のことをプレイヤーと言っていたよね。プレイヤーとは誰のことを指すの?
Smes:はい、それはこの世界に生きる全ての人々を指します。ヒロ様はある程度様々な面で厚遇されているVIPプレイヤーだというだけで、それ以外は他の方とさほど変わりません。どこが厚遇されているのかという情報についてはお話することは出来ませんが、初期資金の一兆円というのはその一つに過ぎないとだけお話しておきましょう。
初期資金の一兆円はその一つに過ぎない?そうだな、後は人を購入する権利だとかその他諸々なんだろう。教えられないらしいから他のことを聞かなくては。
彼は俺の協力者なのかどうかを遠回しに聞いてみることにする。頼るべき相手が常に俺を裏切る気しかないのならどうしようもないのだから。
>>Smes:スメスさんって、神様なの?それとも神様とは違うの?
Smes:我々はただ神の仕事の手伝いをしているだけであり、神とは別の存在です。神はとてもお忙しいのです。次に話し掛けてくるのは三年以上先になるのではないでしょうか。それでは今日はこれにて失礼致します。
そういってスメスさんとの通信は終わった。
なるほどね。確かに神はとても忙しそうで短気だった印象はするよ。だからこちらの世界の管理はスメスさん達にほぼ丸投げしてるんだろう。
しかし…しかし、その忙しすぎる神様が冒険初日に俺にわざわざ直接会話してきたよな。スシネさんには手を出すな、お前は可愛い猫娘でも買って楽しんでいろ、と。
忙しい神様がわざわざ俺に直接言葉を送ってまでそこにこだわったのは、そのことが相当重要だったってことなんじゃないのか?
まぁ今はわからん。リースも言っているように情報が足りていないんだろう。
犬族と猫族の国を訪れたら分かるのだろうし俺が考えるだけきっとムダだ。
ウサギ族の女王いわく勝負は既に着いているみたいだしな。今更慌てても何の意味もないのだろう。
---
900/9/29 9:21
皆が朝起きた後朝食を取り、簡単に準備を済ませ、九時発犬族の国方面行きの連絡馬車に乗った。
ウサギ族の国の首都から次の犬族の国の首都までは、やはり前回と同様に合計二十時間分馬車に乗る必要がある。
馬車内ではリースと俺とキャラットちゃんで三人並んで座っている。馬車内の座席は中央通路から左右にそれぞれゆったりとした二席になっている。なので今は二人分の席に三人で詰めて座っているのでかなり密着気味。
リースは俺の左をキャラットちゃんに譲る気は全く無いらしい。なんで左なんだっけね。心臓の位置とかだっけ?
リースはキャラットちゃんに、俺とお揃いの結婚指輪のことを自慢していた。つまり俺を跨いで俺越しに会話している状態。
例の七連ダイヤのリングね。リングが七連ということではなく、小さなダイヤが綺麗に七つ並んでいるようなやつ。
「割と目立たないさりげないものだけど、意外と悪くないでしょ?コレ」
「わー、いいですねー。お揃いのリングとかステキですねー、わたしも欲しいかもー」
「ダメよ。あげないわよ。私とルナだけよ、そうでしょ?ヒロ」
「ん?うん」
否定する理由も無いので肯定しておく。そのまま二人の会話を聞いていたが、どうにも結婚指輪というのは一般人にはあまり用いられないが、一部の王族が縁起担ぎの為に用いることもあるらしい。…それも、子作りに関しての。
「んー、ちょっとそこらへん聞いても良いかな?キャラットちゃん」
「はい、もちろんですー。台座の素材がー、銀なら魔除けでー、金なら金運でー、プラチナなら魔力ですねー」
「ふむふむ」
「あとはー、付ける宝石で属性が付与されるかもです。ダイヤモンドなら光属性ですね。台座の力だけで良ければ宝石は無くてもいいみたいです」
「そうかそうか」
まぁつまり結局全ての事実が、ルナが子供をすごく欲しがってたというところに帰結するんだろう?既にルナは妊娠しているのだから、今更悩んだところでどうしようもないわけで。
そのことが何を意味するのかが問題で、それを知るために今は移動中と、そういうことだ。
---
900/9/29 23:23
連絡馬車で十四時間分を進み、途中で降りて宿を取る。夜間運行は宿場街が無い場合の寝台馬車のみの話なので、途中で時間を切るしかない。
明日は六時間馬車に乗って犬族の国の首都に着いた後は、すぐに王城に向かい国王に会うという予定である。
ルナはすぐに帰ってきたら心の準備が出来ていないかもしれないから、急ぎすぎず遅すぎず俺のペースで帰って来いなどと手紙に書いていたが、つまりそれも、色々と隠したいことだとか準備があるとかそういうことなんじゃないかな?
別に無視しても構わないのだろう?いいぞ、もっとやれ。
「はい、ヒロ。ルナからまた手紙が届いてるわよ」
「そうきたか」
宿の中で、リースがそう言ってまた椿の封蝋付きのルナからの手紙を渡してくれる。もう完全にルナも開き直ってるかと思われるので、こちらも開き直ってさっさとおうちに帰ってしまえば良いんじゃないかな?
それにしてもこのタイミングで、どのような手紙が来たのだろうか。とりあえず読んでみることにする。
「愛するヒロへ。今日はちょっとしたご報告です。
先日こちらのヒロの家にティターニアちゃんが到着しました。ハイエルフの国のお姫様のティニーちゃんですよ。
この子がこの間話していた、よくわからない修行をしていた子なのですね。なんだかたくさんのお爺さん達に囲まれてやってきました。お爺さん達はティニーちゃんとお別れするのが辛いのか、それはそれはとても泣いていました。
本当はこちらにはもっと早く到着可能だったらしいですが、お爺さん達があちこち連れ回して一緒に遊び歩いていたそうです。呆れた話ではあるのでしょうが、私は少し羨ましかったです。私もリースさんのようにアナタと一緒に世界を旅をして回ってみたかったというのは、私のワガママなのでしょうか。
アナタもティニーちゃんのように、もっとゆっくりと旅をしてから帰ってきてくれても良いのですよ。けれど既にアナタは私の狙いに気づいてしまっているのでしょうね。ですから十二月とは言わずに出来るだけ早く帰ってきてくださいね。私はアナタが私の全てを受け入れた上で愛してくれることを信じています。
話を戻します。ティニーちゃんは住む場所として、正面の大きな建物に対して左側の、二個目の建物を選びました。左側の一個目の建物は大好きなリースお姉ちゃんに譲るのだそうです。私、リースさんに負けるつもりはありませんからね。彼女のことを絶対に許さないのは今も継続中です。
ティニーちゃんは私を見て最初クロちゃーん、と言いながら抱きついてきたのですが、私の名前が変わったことを教えるととても不思議そうな顔をしていました。どうしても納得出来ない様子だったので、実際に私の個人カードを見せてあげたらすんなりと納得して貰えました。これもアナタのおかげですね。それとは別のところでまた驚かれてしまいましたが。
ティニーちゃんは私の作った料理を食べていたことで、出会う前から私のことがとても好きになってしまったみたいです。私にはとても懐いてくれていますし、後はジゼルちゃんと仲良くしていることが多いです。ジゼルちゃんも妹分が出来たことに喜んでいるみたいですね。ティニーちゃんはジゼルちゃんのことをとても羨ましがってます。アナタもきっと今のジゼルちゃんの姿を見たらとても驚くはずですよ。
ヒロはこれから私の伯父さんと伯母さんに会う予定なのですよね。私が獣族の王族の一人として決して許されないことをしたことは私自身が一番良く理解しています。それでも今私は幸せです。愛するヒロの子供を生める、これ以上嬉しいことは何もありません。血の繋がった家族なのですから出来れば私達のことを祝福して欲しいなどと願ってしまうことも、私の我が儘なのでしょうか。
ヒロは帰ってきた時の約束を憶えていますか?
ヒロが帰ってきたら私と一緒においしいホットミルクを飲みましょう。
貴方の妻、ルナ=アーゼス」
ふむ。
なるほど。
「ねぇ、リース」
「なーに?」
「ここまで見事に開き直られるとはさすがの俺も想定外だったよ」
「ええ、本当にね。逆に潔いわね、怒る気も失せちゃうわよ」
ルナの手紙には結局、既に予想済だったことが繰り返し書かれているだけである。伯父さん、伯母さんというのは犬族の王と猫族の女王のことだろう。
ティニーに個人カードを見せて納得して貰ったのも、結局ルナの個人カードには最初からずっとルナ=アーゼスという名前が書かれていたというだけの話だ。ザンギさんが結婚魔法の為にカードを握っていた時は、俺は気づかなかったが名前のところはきっとわざと隠していたことだろう。
結局ルナに何があるのか、大事なことは今は何もわからないままだ。
ルナの伯父さんと伯母さんに直接聞いてみるしかないわけだ。ついでに俺からも祝ってくれるようにお願いしておくべきか?そんな余裕は果たしてあるのだろうか。
ちなみにジゼルちゃんには何があったんだろうね?
手紙を読んだ後は三人でそのまま寄り添って寝た。最近は段々と寒くなってきているので人肌の温もりが気持ち良い。だからといってリースとキャラットちゃんの二人に挟まれていたらちょっとは暑かったかもしれない。贅沢な悩みだった。
---
900/9/30 6:34-13:23あたり
朝七時初の連絡馬車に乗り、残り六時間分の区間を駆け抜ける。十三時には犬族の国の首都に着いたものの、さすがに腹ぺこなので少しご飯を食べてから王城へ向かうことにした。
ウサギ族の国から犬族の国に至るまで、ご飯が本当にパンと野菜しかなかったんですよ。
ヒャッハー!久しぶりの肉だー!
「ちょっとヒロ、さすがにがっつきすぎよ。ちょっとは自重しなさいよ」
「うー、わたしお野菜がいいのにー。ニンジンしかないなんてー」
キャラットちゃんは犬族の国のレストランのメニューにサラダがほぼ無いことをそれはもう悲しんでいた。ウサギなのにニンジンが嫌いなのか。別に嫌いってわけじゃないらしいがキャベツとかレタスとかそっちの方が好きであるらしかった。
900/9/30 14:26
犬族の国の首都の王城を訪れる。いつも通り受付の兵士に俺の個人カードを提示すると、やがて王の間へと通される。ちなみに今もリースとキャラットちゃんに挟まれてたりする。このままの状態で問題無いらしいからこの国はなんとも恐ろしい。
城門や王城の至る所に、ルナが封蝋に使っているものと同じ、赤い椿の紋章が見受けられた。
通された先にいたその王の姿は、俺がかつてどこかで見たような記憶がある姿だった。俺は犬族の王がどんな姿なのか、全く一切調べずにこの場にやってきたわけだが。
王は玉座には座らず、立ち上がったままこちらを見下ろしている。その姿は背丈二メートルにも達しているであろう巨大な狼男だった。
その姿はなんとも迫力があり、毛の生えている顔からはその表情を窺い知ることは難しい。何も知らない者であればその見た目に騙されて萎縮してしまうはずなのだが。
…耳が随分としょんぼりとしているのである。
そう、冒険当初にスシネさんに連れられて訪れたホテル、そして次の日にルナに連れられて再び訪れルナと結ばれたホテルのフロントにいた、あの耳に感情が出る狼さんとそっくりさんだったのである。
俺は冗談でリースに対して言ってみたことはあるが、まさか本当に最初から全て仕組まれていただけだったなんてな。
---
巨大な狼の王のその顔からはその表情を読み取ることは出来ない。しかしその耳が相変わらず、元気が無さそうにしょんぼりとしているのである。耳は目ほどに物を言うとかそんな言葉があるとかないとか。
狼の王様が俺に対して語りかけてくる。狼の唸り声のようなやや恐ろしい声であるが、良く聞き取れば元気が無いこともわかるかもしれない。何よりその耳の様子では、元気な様子を装うのも無理な話である。
「噂の神の使徒、ヒロ=アーゼス殿だな。儂がこの犬族の国の王、バーナードだ。儂の姿を見ても何も驚かぬばかりか、既にそなたは儂の耳のことに気づいてしまっているのだろう?」
うん…それはそうなんだけどね。
なんで王様の名前がバーナードなのかそこに凄くツッコミたい。全力でツッコミたい。それ犬の種類の名前だよね?人名にも使われることも多いけれど絶対に犬の種類の名前として今出てきてるよね?
狼なのに。狼なのに犬の種類の名前。コレはヒドイ。
割とマジメな場面であるはずなのに俺にどうしろと言うんだ。何故こんなところにギャグを入れる必要があったのかと神様を恨みたい。
つまりアレだ。他のキャラクターに名前を取られてしまっているんだ、この王様は。
しかしそこはなんとか横に置いておこう。全力で横に置いておこう。突っ込んだら負けだと思っている。何故ならこの世界の住人は皆マジレスばかりするからだ。もしもこの王様に名前の件をつっこんだら「弟に名前を取られた」だなどと正直に暴露しかねない。
狼の名前と言ったらもうアレしかないだろうに。
つまりこの王様の弟、ルナの父、ホテルのフロントに立っていたあの狼さんが、
この国王の弟、元フェンリル王子、現フェンリル公とかそこらへんだろうってことだ。王子の名を聞いたことはないが、間違いない、絶対にだ。
「ヒロ殿。そなたは今どこまで知っているのだ?既にウサギの国からの連絡は受けている」
「そうですね、私の最初の妻であるルナが、バーナード王の弟の娘である、王にとっては姪に当たる人物と同一人物であるということは既に察しがついています。しかしそのことにどのような意味があるのかが、私にはまだわかっていません」
俺は正直なところを話しておく。そう、関係性は予測出来ても、そこに何の意味があるのかがまったくわからないのだ。
俺の言葉を受けてから、王は玉座にどっしりと座り込んだ。表情は窺い知れないが、なんとも疲れ果てた表情ということなんじゃなかろうか。
「では、儂の姿に驚かなかった理由は?」
「既に王と同じ姿の人物を、私が旅を始めた最初の頃に、既に見ていたからです」
まったくもって本当に酷い話である。
ルナとしっぽりと楽しんだ次の日に、システムメッセージのスメスさんは「昨夜はお楽しみでしたね。」などと煽ってきた。そこに更に覆い被せるようにあの狼さんが「おはようございます。昨夜はお楽しみ頂けましたか?」などと攻めてきたのである。
思い返せばあまりにも不自然な話ではないか。あの狼さんが何故あんなにも大喜びしていたかというと、自分の可愛い娘が神の使徒である夫の第一の妻となり、それはもう凄まじい熱愛ぶりで一緒に仲良くくっついていたのだから、そのことを喜んでいたというだけだったのだ。
狼さんは色々と理由を並べ立てていたが、それらはほぼ全て大嘘だったのかもしれない。もしかしたらある程度は真実だったのかもしれないが。
俺の言葉を受けてバーナード王はなんとも豪快なため息をついた。
「儂の弟の名前はフェンリルといってな。まぁ昔から兄である儂の言うことを聞かん奴だったよ。獣族の王族として守るべき最大の事柄を己の感情だけで破り、ルナが生まれたその日のうちに、妻と子と一緒に即座に夜逃げしたのだよ。それはもう鮮やかな手際で、我々には手を打つ暇すら無かったのだ」
そう言ってバーナード王は自分の頭をかいている。その手はとても大きく見事な肉球がついていた。カードがいかにも握りにくそうな例のおっきな手である。
「バーナード王、何故そのようなことになったのですか?何故ルナの家族達は逃げる必要があったのですか?」
そう、そこが問題なはずなのだ。俺はそこが聞きたかったのだが、バーナード王は下の方を向きながらうーん、と考えるように頭を左右に振っていた。どうやらこの国では聞き出すことは出来ないらしい。
「儂もな、教えてやりたいのはやまやまではあるのだが、このことは猫族の女王からキツく口止めされているのだ。よってワシが全てを伝えるわけにはいかぬのだよ」
「そうですか」
「ヒロ殿にはわからぬかも知れぬ。だがそちらのエルフの姫ならばわかるはずのことだ。…早く行くが良い、ワシがこれ以上話すわけにはいかぬ」
そう言って王様は去っていこうとする。
…何かこうナニかを忘れている気がするのだが?
と、王様が下がろうとしているところに、犬族のメイドさんが王様のところに駆け寄ってきていたのが見えた。
犬族の女性のメイドさんだ。
まぁその姿を見てね、俺はこう、何を忘れていたかに気づいたよ。そして、忘れたままにしておくことにしたよ。
俺はちょっとあのレベルのケモナーにはなれそうにもないなと思いながら犬族の王城を去ることにした。その間俺は左右からずっとリースとキャラットちゃんに挟まれていた。嫁は足りてるんだから、うん、完全にケモノな犬族の女性なんて俺には必要ないんじゃないかな?たぶん。
---
900/9/30 22:22
犬族の国の首都から十七時発の猫族の国行きの連絡馬車に乗り、四時間分進んだところで降りて宿を取った。中途半端な時間にはなってしまったが、何も進まないよりはマシだろうと判断した。
こちらの宿でも、犬族の国の影響を受けているのかしっかりと肉を頂けた。一方キャラットちゃんはまた涙目でニンジンかじってた。
「ひどいよー、ひどいよー」と言いながらそれでもかじってたのだからちょっとはおいしかったのかもしれない。ごめんねキャラットちゃん。
そんな遅めの夕食を取ってから客室に入ったわけですが。
「ちょっとヒロ!どういうことなのよ!もう全部ヒロが悪いってことじゃないの!」
と、俺の愛しのリースちゃんがそれはもうとっても怒っていました。バーナード王ちょっと酷いと思うの。「エルフの姫ならばわかるはず」とか最後に捨て台詞で爆弾置いてくとかどういうことなのよ。激おこぷんぷん丸になってるじゃないのよ。
俺はもうリースに対して全力で平謝り。許して貰うまで三十分ぐらいずっと説教される羽目になってしまった。
つまり結局そういうことだ。俺がリースにまだ伝えていない、何か伝え忘れている見落としている点さえリースに伝えていれば、既にリースの知識から答えが導き出せていたらしいのである。
素直に謝り続けたことでようやくリースが許してくれた。
「はぁ。もういいわよ。猫族の国に着きさえすればわかることなんだから。それにしてもヒロと私は一体どこを見落としたというのかしら…」
うん、まったくもって俺にはわけがわからないよ。
俺が怒られている間中、キャラットちゃんはまたベッドの上をゴロゴロと転がり続けていた。なんだか悔しかったので、その日寝る前にしっぽのついてるおしりのあたりをさわさわとなでてやった。
次は猫族の国か。そこで答えが出るらしいが結局何が問題だったのだ?




