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異世界で、一兆円とクエストと。家族計画、神の道  作者: レガ先
第二章 夫婦で回ろう世界一周編
16/79

第十五話「アンジェラちゃん」

 900/9/5 10:21


 ハイエルフの国アヴァロンの首都マーリンへと向かう馬車の中で、リースは随分と何か考えている様子だった。首都には丁度昼頃に到着する予定になっている。


 随分イライラしてそうだななどとリースのことを見ていたら、リースは共有インベントリの中を何かがさごそと探している様子だった。何を探しているのかと思いきや、飴玉を三つだして配ってくれた。頭を働かせる為に糖分が欲しかっただけなのかな?


「ねぇヒロ。さっきの手紙、共有インベントリにしまったのよね?」

「え?うん、そうだけど」

「そう。ちょっと気になることがあるからあの手紙私が預かっておいても良いかしら?」

「うん、いいよー」


 なんだそんなことか、それはもちろん良いのだが。


 そう返事をすると、何故かリースは少し安心したような顔をした。彼女の視線からは俺への愛だけでなくどこか優しさを感じることが多い。


 リースは色々と俺の代わりに考えてくれているらしい。彼女は俺の心を支えると言ってくれた。俺の代わりに何かを考えるのもきっと俺の為なんだろう。

 それが彼女の愛情ならば、俺は特に考えずにいた方が良いのだろう。考え過ぎるとハゲるわよとか言われたしな。それがリースが俺の為に誘導として言ってくれていることはわかってはいるのだが、実際前世でちょっとハゲるかどうか悩んでいたからな、うん、考えるのはやめておこうと判断した。


 そうだな、そのうち俺に教えて良いと判断した時には彼女の方から話してくれるはずだ。


「ねぇ、リース」

「なーに?」

「そのうち教えてくれるよね?」

「もちろんよ」


 そう言って彼女は優しく微笑んでくれる。うん、それならやはり任せておくことにしようか。



 ---



 900/9/5 12:00


 首都に戻ると、何故か王城以外の場所に連れていかれた。比較的大きめのレストラン的なもので、ハイエルフの国の国王であるアルサル王が待っていた。特にお忍びというわけでもないようだ。

 この世界には何しろPKが無いからな。毒とかも無いらしい。どこで何をしようが危険が無いのだから忍ぶ必要が無いってことだ。SPいらずだし。


 王様が隣に座る娘に色々と話し掛けている。


「別れる前に皆の顔を見ておきたくてな。ティニー、ヒロ殿の屋敷に移るのだろう?皆と仲良くするのだぞ」

「はい、パパ。ヒロ様の家族ならきっと大丈夫です」

「そうかそうか。この短期間で随分と打ち解けたようだな。最初だけとはいえお前は人見知りな所があったからな。うむ、爺共もしっかりとお前を最後まで送り届けてくれるから安心するが良い」


 爺共ってなんだ。まぁたぶんよくわからないけれど、何か話に出ていたはずの、ティニーを送ってくれる家臣達のことを指しているのだろう。いわゆる爺やとかそういうのだと思っておく。

 リースからは今後の予定についての話をしていた。


「アルサル王、私たちは次は隣のダークエルフの国を目指します。その後は内海貿易船に乗り、西大陸はそのまま通り過ぎ、ウサギ族の国ロップイヤーを目指そうかと」

「そうか、奴らに対する対策も既に考えてはあるのか?」

「ええ、もちろんです」


 奴らに対する対策?対策って何のことだろうか。あとウサギの国の国名がロップイヤーって、それただのウサギの種類の名前じゃないのか。手抜き臭が半端無いんだが。神様それで大丈夫なのか。


 国王を交えた四人での食事が終わり、アルサル王とティニーの二名と別れる。

「おにいちゃんまたねー」ってティニーが言ってた。お兄ちゃんじゃなくて夫なんだが気にしたら負けなのか。

 二人を見送ると、いつものようにリースが俺の左側に抱きついてきたので彼女の腰に手を回しておく。


「えーっと、この後はどうするのかな?」

「三時にダークエルフの国への連絡馬車に乗るわよ。今度は宿場街があるから寝台馬車ではないわ。それまでに必要なものを買い集めておくわよ」

「りょーかい」


 さて、まず最初にどこに行くのかと思いきや、何故か行った先の店はロープばかり売っている店だった。


 色々とロープが売っているものの、リースはなるべく太くてやわらかい白色のロープを選んでいるようだった。なんでも羊毛で編まれていて、縛られてもあまり問題無いものを選んでいるらしい。この世界ではPK禁止な関係で、攻撃とは見なされにくい拘束具としてこのようなやわらかロープが存在するのだとか。


「えーっと、縛るの?俺が縛るの?」

「そうよ、縛るのよ。貴方が縛るのよ」

「縛るって、リースを?」

「そうね、練習台としては私相手に試してもらうわ」

「縛り方は自由?」

「ササッと出来て抜けられにくい形ならなんだっていいわよ」


 ふむ、実用性重視なようだ。まぁ俺も縛り方とか知らないしな。ちょっとロープ屋で売ってる縛り方の本も買って読んでおこう。リースが何も言わないってことはたぶん、この世界には性的な縛り方は無いのかもしれん。


 ロープ屋の後は土産物屋を見て回る。つい先日までいた住居周辺にはデジャヴを感じたが、土産物屋の商品は大分違うらしい。何かトゲトゲが着いたとんがった貝殻が置いてあるので、触ってみたらちょっと冷たかった。


「リース、何コレ?」

「それ?ひやひや貝殻よ」

「うん、すごい直接的な名前だね、確かにひやひやするけども」

「ちょっとした魔道具ね。涼しいでしょ?結構人気商品みたいよ。篭められた魔力分なくなったら消滅するみたい。触れる奴は商品サンプルね、だからそんな長時間触っちゃダメよ」


 確かハイエルフの国の首都の名前はマリーンだっけ?名前はセーフだが形がアウトだった。

 どこぞの氷魔法を使う例のアレが被ってるような貝殻である。五つほど買って共有インベントリに放り込んでおいた。大した意味は無いだろうがちょっとした地域土産としては十分そうである。


 後は他の店で随分たくさん、色々な色の毛糸玉を買った。この国は隣の畜産業との差別化の為か、羊毛系に力を入れているみたいだな。


「それにしても随分とたくさん買ったね」

「そうね。この国なら多少は安く手に入るのだから、今後の為にも皆の分買っておいた方が良いでしょう?どうせ皆暇しているのだろうし、暇つぶしには丁度良いわ」

「それってやっぱり生まれてくる子供用?」

「ええそうよ。ヒロの分を私だけが編むというわけにもいかないでしょう?それにたぶん私には毛糸編みはムリよ、クロちゃんにでも頼みなさい」


 うん。確かにリースには毛糸を編むよりは俺の相手をしていて欲しいな。


 そんなこんなでしばらく買い物をした後は、15時の連絡馬車に乗って西のダークエルフの国を目指す。やや遅めの寝台馬車では24時間かかっていたが連絡馬車では合計20時間必要らしい。2日に分けて進むことになった。



 ---



 900/9/5 23:52


 リースと二人で宿場街の一つに泊まる。4時間分ごとに宿が設定されているらしいので二区間分8時間を進んだ。今は宿屋の寝室でリース相手にマジメにロープの縛り方を勉強中。

 今のリースは例の緑色のレオタードを着ている。俺はまずは制止した状態でしっかり縛れるように頑張っている。リースはベッドに寝るのではなく床に立っており、そんな状態の相手を縛るのはなかなか難しい。


「縛れた?それじゃあ今から脱出してみせるわね」

「うん」


 そういってリースがやわらかロープからの脱出を試みている。練習開始頃は縄抜けされてばかりだったが、ここ数回は連続で抜けられずに済んでいる。

 立ち状態での脱出が不可能な時にはリースの体を抱えてベッドの方に移す。床を転がるのはなんだかんだでイヤだし、たまに痛いからな。

 他人から攻撃を受けても大丈夫なこの世界だが、武器使用無しの自滅は結構ノーカンな部分がある。つまりタンスの角に小指をぶつけたら痛い、とかは起こるってことだ。


「んっんっ…抜けられないわね。もういいわ、ほどいてちょうだい」

「うん、わかった」


 抜けられず、尚且つほどくときはほどきやすい縛り方をなんとか頑張り中。それにしても何故このような練習を今しているのだろうか。

せっかくいやらしいレオタードを着てくれているというのに、いやらしいことは何も練習しないわけで。俺だってちょっとは試しにリースをエロエロに縛り上げたりしてみたいわけで。


「ふぅ、今日の練習はもう終わりにしておきましょう。そろそろ寝ないとね」

「ちなみに何の練習なの?コレ」

「ダークエルフの姫君の捕獲練習よ。詳しいことは明日教えてあげるわ。たくさん汗かいちゃったし、寝る前にお風呂に入りましょう。ヒロも一緒に入るわよね?」

「もちろんですとも!」


 いつかはレオタードを着けた状態のリースを是非とも抱きたいのだが、今はリースが既に妊娠中なのでムリである。次の子供を作る時には是非お願いしなければ。

 リースのレオタード姿に欲情してしまったことを正直に話したら、彼女は今日も胸ですっきりさせてくれた。

 尻に敷かれてはいるが尽くされていることが嬉しい。この旅にリースがいてくれて本当に心の底から助かっている。俺一人で各国を回るとか絶対にムリだっただろう。肉体的にも、精神的にも。



 ---



 900/9/6 8:23

 今日は9時発の連絡馬車に乗り、残り12時間分を進みダークエルフの国の首都へと到着予定だ。今は宿屋で朝食を取っている最中である。

 ハイエルフの国が牧羊に力を入れている関係で今日の食事は羊肉のステーキである。連絡馬車内では大した物が食べられないので朝から重め。


「ロープの練習の説明だけれど、エルフ全般が身体接触が苦手なことは知っているわよね?ダークエルフも身体接触が苦手だから、苦手なだけならまだ良いんだけど全力で逃げちゃうのよね。だから捕獲しなければいけないのよ」

「なんだかすごく意味がわからないね」

「えぇ本当にね。意味がわからないものに対応しなければならないのだから、イヤになっちゃうわね」


 リースの計画はこんなものだった。

 ダークエルフの女性はとても男性恐怖症なので、体面上は使徒の権利として姫の購入を受け入れざるを得ないものの、購入直後に全力で逃げ出してしまうことが予想されるらしい。

 よって結婚魔法が発動した直後にリースが即座に妨害魔法のバインドを実行し足を止め、俺がやわらかロープで即座に購入したダークエルフの姫を縛りあげ、内海貿易の船の出る港街まで運び込んで内海貿易の船に乗船し、逃げられない洋上で俺がそのダークエルフの姫を孕ませて仕留める、という流れになっているらしい。


 うん、まったくもって意味がわからない。非常に理解に苦しむ方法だがそれ以外に方法が無いのならば仕方ない。しかしなんでそんなことになっているのだ?


「男性恐怖症って、そんなに重症なの?」

「ええ、重症ね。男性恐怖症というよりも、ダークエルフの女は皆最初のうちはレズレズなのよ。だから男に抱かれたくないのよ。だからヒロが購入する権利を行使して実際に結婚したとしても、すぐに逃げ出しちゃうことが予想されるのよ」

「えーっと、そこまでイヤがっているのに俺が購入しないとダメなの?」


 うん…本当に意味がわからないよ。


「そもそも、結婚って拘束力無いの?」

「無くは無いわよ。購入されてしまえば他の人とは結婚出来なくなるし、一般の男性が他人の嫁相手に手を出そうなんてしたら必ず天罰が下るわよ。後は教会の施設でパートナーが世界のどこにいるのかをサーチすることも可能よ。どこまでも追跡は出来るけれどその度に逃げられるだけなのよ。レズレズなダークエルフ相手には全て無意味でしょう?同性愛は性行為とは見なされないから天罰が落とされないし、もう色々とどうしようもないのよ」


 なんだかもう無茶苦茶すぎる。どういうことなの。というかそんな世界でダークエルフの男性はどうやって生きろというのだ?そもそもどういう理由で結婚するのだ?嫌いなのに。


「ええっと、ダークエルフの男性はどうやって生活するの?そもそも何故結婚するのか意味がわからないよ」

「ダークエルフは何故か体面上は結婚するのよ。そして結婚した直後に女が逃げ出すのよ。そして男と女でどこまでも追いかけっこして、追いついて嫁を強引に孕ませることが出来れば男の勝ち。逃げ切って元のレズレズな生活を取り戻せたら女の勝ちね。一度孕ませてしまえばそれで観念して普通の夫婦になるのよ。つまりはそうやって男に試練を与えている形になるわけね。一度勝負が決まれば完全に男性上位な夫婦になる決まりらしいわよ」


 なんとも理解に苦しむ話だが、つまりどういうこと?


「それで結局、ダークエルフの姫を買うことで俺に何の得があるの?」


 そう、そこが重要なのではなかろうか。


「一度仕留めてしまえば後は尻に敷かれずに済む嫁が得られるってことよ。それにダークエルフはヒロ好みの体の美人ばかりだからきっと姫も可愛いわよ。後はそれだけ獲得することが難しいダークエルフの嫁だから持っていれば皆に自慢出来るし、もしも将来ヒロの目的の為にダークエルフの姫が必要な場面が出てくる可能性があるのなら、今は意味がわからずともなんとしても仕留めておくべきよ」

「なるほど」


 うーむ…よくはわからないが、将来必要かもしれないから例え今は理解に苦しんでもやっておけってことだな。まぁせっかくだからやっておくか。東大陸の姫君コンプリート時はシステムメッセージのスメスさんが微妙に祝福していてくれたしな。北大陸の姫君もおとなしくコンプリートしとけってことなんだろうか。


 しかしだな。


「俺は別に嫁の尻に敷かれていても良いんだけどなー」

「ダメよ、絶対に」


 ん?なんだって?何故か即座にそう言い返されてしまった。何故だろうか。


「ええと、それはどうして?」

「ヒロを尻に敷いて良いのは私だけよ。他の子の尻には敷かれないように努力しなさい?」


 そう言ってリースがこちらに向かって微笑んでくれる。なるほどね。リースが俺を尻に敷いてくれるのもそれが彼女の愛情なんだよな。

 そうかそうか。それじゃあ今後もリースの尻に敷かれておく為に、その尻に敷かれずに済むとかいうダークエルフの姫ちゃんを捕獲しに参りましょうかね。


 俺はそんなリースに感謝しつつ、抱きしめてキスをした。

 うん、リースは可愛い。俺の為に現在妊娠しているにも関わらず全力で頑張ってくれている。そのことを思えば彼女の尻に敷かれていることぐらいどうということは無いではないか。



 ---



 900/9/6 15:23


 連絡馬車の中で長時間過ごすのは割と暇である。とはいえ常に隣にリースがいてくれるので一人でいるよりも相当マシなはずだ。15時前に出発前に買ってきたおにぎりなどで軽めの昼食を二人で楽しんだ後、リースは俺に体を寄せたまま眠ってしまった。

 リースが眠る前に、何故練習中レオタードを着ているのかについても聞いてみた。


 練習中リースが緑色のレオタードを着ている理由は、ダークエルフの姫も同じようなレオタードを着ているからなのだそうだ。ただしもちろん色は違う。褐色のダークエルフの肌に合わせているのか黒とか紫のレオタードを着ているのだそうだ。確か俺の色知識が正しければ、男性は赤色が好きで女性は紫色が好きなんだよ。

 だから男性の目を引きたいなら女性は赤色の服を着て、女性の目を引きたければ男性は紫色の服を着るとかそんな感じの話を聞いたことがあるような、ないような?

 ダークエルフはレズレズらしいので、女性同士で目を引く為に紫系のレオタードを着るのか?果たして合っているのだろうか。


 ダークエルフの首都には二十一時頃に到着予定となっている。そこで宿を取り再びやわらかロープでリース相手に縛る練習をした後は、次の日の九時頃にダークエルフの姫を購入、捕獲。11時発の連絡馬車に乗り6時間かけて内海貿易の港まで移動後十八時発の船に乗り、停泊中以外は逃げられない洋上でダークエルフの姫を孕ませて仕留める、という流れになっている。


 ダークエルフの女が逃げ出すのはとても有名な話らしく、ロープで縛り上げても特に何も問題は無いらしい。俺はてっきり誰でもやわらかロープで縛りつけられるのかとばかり思っていたが、どうやら家族間などある程度親しい間柄と見なされる関係でなければやわらかロープですら縛り付けることは不可能なのだそうだ。

 つまり、縛り付けて連行している時点でそれがちゃんと結婚した奥さんだということがわかるので、縛って持ち歩いても堂々としていていいらしいよ!ダークエルフの国の新婚夫婦の日常風景として風物詩になっているらしい。


 しかしなんでそんなことになっているんだろうな。夫婦間でローププレイを可能にしておく為の神様のちょっとした気遣いなのか?いやらしい、まったくもってけしからん。いいぞ、もっとやれ!

 つまりあれだな。ローププレイはしてもいいけどやわらかロープじゃないとお嫁さんが痛くて可哀想だから、痛くならないように雰囲気だけをやわらかロープで楽しめってことなんだな。

 リースも俺にやわらかロープで縛り上げられてる間、ちょっと嬉しそうにしていたしな。


 ダークエルフの国からドワーフの国一つ目までが五日。港で六時間停留後再び出航し、次のドワーフの国の港に至るまでが十日。再び六時間後出航し、そこからウサギの国の港に至るまでが五日かかることになっている。合計二十日間の船旅になるだろうか。

 その間に拉致したダークエルフの姫を孕ませてしまえばいい。拉致とはいっても仮にも購入して既に夫婦になっているのだから何も問題は無いはずなんだがな。何故か逃げてしまうらしいのだからどうしようもない。


 クロちゃんから念を押されていた中秋の名月、9月の19日は洋上で迎えることになるだろう。そうだな、それも案外悪くないかもしれない。


 俺は隣で寝ているリースの姿を改めて見つめてみた。うん、相変わらず可愛い。この見た目であの性格なのだから、外見と中身が一致しない人も多いのではないだろうか。俺も最初出会った時はただ可愛いだけの姫ちゃんだとばかり思っていた。しかし実際には随分とその中身は違っていた。そして俺は今そのことに感謝している。


 彼女の左手の薬指には一緒に選んだダイヤの七連リングが填められている。そして俺の左手の薬指を見てみれば、そこには彼女とお揃いの指輪と、そしてその下にはクロちゃんと買ったプラチナリングが填められている。


 リースは俺に対して色々と悩むな、考えるなと言ってくれている。それがきっと俺の心を守る為に言ってくれていることぐらいわかっている。つまりそれは、クロちゃんには俺の知らない何かが隠されており、それを俺が知ってしまうことで俺の心が壊されてしまうことを避けようとしている、ということだろう。


 俺にとって今求められていることはなんだろうか。


 それはきっと、クロちゃんの隠された真実を知ってしまっても、それら全てを受け入れた上で彼女のことを信じる、その心構え、覚悟をしておくということだろう。

 俺がその覚悟を終えて、更にもう少し何かしらのきっかけが得られたならば、その時きっとリースは全てを教えてくれることだろう。


 うむ、しかし今すぐにはムリだ。今日は少しこのあたりの心の整理をするだけで精一杯だろう。

 少々魂が既に老いてしまっている俺にとっては、一日で一気に全て片付けて気持ちを切り替えるというのはなかなか難しいのではないかと感じてしまっている。


 今はもう寝てしまおうか。俺の隣で体をくっつけて寝ているリースの体の温かさを感じながら、俺も少し寝ることにした。



 ---



 900/9/6 23:21


 21時にダークエルフの国の首都に着き宿を取った後、リース相手に再びやわらかロープで縛る練習を長時間続けていた。

 リースがダークエルフの姫に対して実行する予定のバインドという妨害魔法は、足の動きを止めるものの上半身が動かせてしまうので結構な抵抗が予想されるらしい。

 抵抗する彼女をなんとか抑え付けてやや強引にロープで縛り上げていく。

 強引過ぎるとPK阻止効果が発動してしまい弾かれてしまうので、その調節が難しい。


「それにしても、妨害魔法って家族にかけられるの?」

「ある程度はね。子供のしつけ用かしらね?家族以外にはまったく効かないのよ。だから結婚魔法が発動した後にしかかけられないわよ」

「んー、結婚魔法の最中に逃げられる可能性とかは?」

「結婚魔法はかなり有効射程距離が短いのよ。それに相手が動きすぎていたらダメよ。ヒロが私を買う時に私が拘束されていたのも、私が暴れて結婚魔法が不発になるのを防ぐ意味があったのよ」

「なるほど…いや、なんかごめん。今はリースを手に入れられて嬉しいからなんと返せばいいものか」

「謝る必要は無いわ。私は今ヒロのものになっていることが嬉しいし、ヒロも私のものでしょう?」

「おっしゃる通りで」


 それにしても、長時間やわらかロープで縛る訓練をしている最中、リースの表情が随分と色っぽかったり、リースのあげる声が結構エロくてどうにも興奮してしまう。そこらへんは縛られている彼女もきっと同じだろう。俺に縛られることで、実用性重視で縛っているにしても少なからず興奮してくれていることは間違いない。

 真面目に訓練を続けようやく動いている相手でも確実に縛り上げられるようになった。縛っていたやわらかロープを解く。


「ん、上出来よ。これならきっと明日の本番も大丈夫ね」

「あの、リース…俺、その」

「私も同じよ。早く連れていってちょうだい」


 俺は彼女を脱がせてお風呂場に連れ込んでイチャイチャした。



 ---



 900/9/7 9:12


 ダークエルフの国の王城へ赴き入り口の兵士に個人カードを提示し、謁見の間へと進んだ。一度仕留めてしまえば男性上位の世界なので、国王はしっかりと男性だった。この王もきっと奥さんを一生懸命捕まえたんだろうな。


 リースを伴って場に赴いた俺は、あまり歓迎されなかった。本来夫婦の勝負は一対一であるからして、他の妻を連れてきて戦力にするのは反則臭い面があるのは否めない。

 しかしリースに話を聞いたところ実際には現在の王も二人目以降を捕獲する際は妻に手伝って貰っていたらしいから、特に問題は無いだろう。


「よくぞ来た、神の使徒よ。東大陸の姫君のみならずこの北大陸の姫君まで次々と妻に迎えている貴殿の噂は聞いておる。だがこの国の姫は一筋縄ではいかんぞ?我が国の結婚の作法は既に知っているのだろうな?」


 国王らしき人物が俺に話しかけてくる。他の国の王達は割と名前とか覚えたりもしたのだがこの国の王様については特に何も聞いていない。まぁ良いのだろうか。今から買う姫ちゃんの名前だけ覚えておくか。


「重々承知の上です」

「宜しい、ならば早速始めるとするか。アンジェラを連れてきてくれ」


 王がそう言うと世話役と思われる女性達が動いて部屋の外に出ていった。あれか、姫様が男嫌いだから皆女性で固めているのかな。

 城の入り口の兵士やこの部屋に通されるまでに城で見かけた他の兵士達が全て男性だった一方で、姫に関わる可能性があるだろう人々は全て女性で固められているらしかった。


 あれ、ところで今さっきアンジェラとか言ってた?言ってたよね?これはもうあれか。そういう繋がりなのか。


 それにしても確かに、リースの言っていた通りダークエルフの女性は皆俺好みの良い体つきをしているようだった。皆褐色肌だけどね。褐色肌もそこそこは好きだが、俺はリースみたいに白くて綺麗な肌の方が好きかな。

 ダークエルフの女性陣の髪に関しては金髪だったり紫だったりする。髪色はわりとバリエーションがあるのだろうか。


 と、そんなことを考えていたら、姫らしき人物が世話役らしき他の女性に連れられて部屋の中へと入ってくる。濃い紫色のレオタードを着ている。あれがダークエルフの王族としての正装なのだろうか。

 彼女は俺とリースの前に連れて来られた。改めてその姿を観察する。


 連れて来られたおそらくアンジェラ姫だと思われるその人物は、見た目はとても大人びていた。背丈は百七十センチ程度だろうか、女性としてはかなり高め。

 肌は褐色、髪の色は混じりけのない綺麗な白色をしている。髪は腰を超えておしりぐらいまでの長さがある感じ。

 そして濃い紫色のレオタードを着ている。レオタードに包まれたその肢体はとてもナイスバディで、胸はかなり大きいし腰もキュッと締まっている。そしておしりもやや大きいのではなかろうか。

 見た目に関してはかなりダークエルフの姫という外見としてかなり完成されているのではなかろうか。そう、見た目に関しては。むしろ見た目だけに関しては。


 態度がもう明らかにおかしかった。


 彼女は明らかにそわそわしている。そしてこちらの方をすごく興味がありそうな視線で見つめてきている。俺に対してではない、むしろ俺のことをなるべく目に入れないように明らかに避けている。よっぽど男が嫌いなんだろうが、では彼女はどこを見ているのか。


 俺の隣に立っているリースのことを見ているのだ。リースは今日はというか、今日もというか、例の緑色のなかなかいやらしいレオタードを着ている。そのリースのことを、アンジェラ姫と思われる人物がそれはもう食い入るような視線で見ている。リースが彼女と目を合わせると、それに気づいたのか慌てて目を逸らした後、その後もリースの方をチラッチラッと見ている。心なしか息遣いも荒い。褐色肌なのでわかりにくいが顔も赤くなっているのではないか?


 ともかくそれはもう完全に恋する乙女?としか言えない様子だった。ただしその好意は俺には一切向けられていないようだが。リースより事前にダークエルフの女性はレズビアンであるという話は聞いているが、このお姫様は相当の重症なのではなかろうか?


 そんな様子を見て、俺はこの人物に対しての俺の呼び方を考えた。

 見た目だけで言えばとても大人びている。しかし態度がもう完全に違う。こういうのはギャップ萌えとでもいうのだろうか、しかしともかく俺の中での彼女の名称が決まった。


 これはアンジェラちゃんだ。リースに恋する乙女、アンジェラちゃんである。


「アンジェラの代金は他の各国の姫と同じ五百億円ということにしておこう。仮に使徒殿がアンジェラに逃げ出されても一切返金はせぬ。もしもアンジェラを見事捕まえてみせれば我が国もその後は使徒殿に協力することを約束しよう。宜しいかな?」

「はい、もちろんですとも!」


 もちろんですとも!


 早速結婚魔法の詠唱へと段取りが進んだ。リースと事前に計画していた流れでは、魔法の発動直後に即座に逃げ出すであろうダークエルフの姫に対して足の動きを止める妨害魔法のバインドを実行しその間にやわらかロープで縛り上げるという流れになっている。しかし現在のアンジェラちゃんの態度を見る限り、何か別のことが起こるのではないかという予感はした。


 俺の個人カードとアンジェラちゃんの個人カードが重ね合わせられ、結婚魔法の詠唱が進んでいる。やがてカードが光に包まれ、それとほぼ同時にUIのパーティーメンバーリストに新たな名前が追加される、その瞬間、


 アンジェラちゃんが動いた。逃げるのではなくこちらに向かって突進してくる。俺にではない、俺の隣のリースに向かって。

 リースは魔法を唱えようとしていたがそのままアンジェラちゃんに押し倒される。


「バイン…んんー!?」

「~!」


 妨害魔法バインドを唱えようとしていたリースだが、そのままアンジェラちゃんにキスされて押し倒されてしまう。二、三秒だけジタバタしていたがすぐにやるべきことに気づいたのか、リースは両手と両足をアンジェラちゃんの後ろに回し、彼女を拘束した。


 これはいわゆるアレである。女の子の夜の必殺技、いわゆるだいしゅきホールドである。リースが禁呪を使ったことによる天罰により俺の子供が欲しくて欲しくて仕方なかった時のあの日々において、ほぼ常に毎日俺は彼女からこの必殺技を受けていたことを思い出す。


 さて、リースからだいしゅきホールドを受けたアンジェラちゃんだが、それでリースが自分を受け入れてくれたと勘違いしたのか、すっかり体から力が抜けて幸せそうな笑顔でリースとのキスを楽しんでいるようである。俺はそれで無抵抗になっているアンジェラちゃんの体をやわらかロープで縛り上げていった。無抵抗なのでとても作業がやりやすかった。手足を完全に拘束しお持ち帰りしやすいようにしておいた。そうしてからリースとアンジェラちゃんを引きはがした。


「えへ、えへへ、えへへへ、リースちゃーん」


 引きはがすとアンジェラちゃんがそんなことを言っていた。とても幸せだったみたいだな、うん。

 その光景の一部始終を見ていた王様がこう言った。


「まったく、ダークエルフの女は結婚後すぐに全力で逃げるという決まりだというのに…アンジェラの女狂いには本当に呆れ果てる。だがまだ終わりではないぞ、使徒殿。娘をしっかりと教育してやってくれ」

「はい、承りました」


 性的な意味で教育するってことですね。いいですとも!


 縛っている間中ずっとアンジェラちゃんと抱き合っていたリースはとても疲れている様子だ。顔を唾液まみれにされたのか、共有インベントリから取り出したタオルで顔を拭いている。


「リース、おつかれ」

「ヒロもね。それにしてもびっくりしたわ…まぁ何事もなく成功しただけマシだったのかしらね」

「確かに」


 何事かはあった気がするのだが気にしないことにした。そうして俺達は綺麗に白のやわらかロープで縛りあげたアンジェラちゃんを抱え上げてダークエルフの王城をあとにしたのだった。



 ---



 900/9/7 18:00


 俺達三人は現在、ドワーフの国を目指す船の上にいる。18時丁度に出発する船の甲板の上で落ちる夕陽を眺めていた。どうにも今日の日没時間も18時丁度であったらしい。日が落ちるに従ってだいぶしっかりと月の姿が目視出来るようになる。今夜は三日月のようだ。


 陸から十分に距離が離れたことを確認してから俺はアンジェラちゃんを縛り上げていたロープをほどいてやる。縛っている間も、アンジェラちゃんはリースにべったりくっついていた。そうしている限りでは特に暴れることもなかった。リースは俺にくっつきそのリースにアンジェラちゃんがくっつく形で、ここまで運び込んできた。


 ここまで来るまでに確認したことだが、どうやらアンジェラちゃんは結構人見知りでコミュ障らしい。俺も人のことは言えないがね。その人見知りな部分を乗り越えてしまうぐらい大の女好きみたいだが。うん、割と俺に似ている可能性があって色々と怖いわけだが?


 ロープを解いてやった後も、アンジェラちゃんはリースの左にくっついて随分とおとなしくしている。今はそれほど興奮しているというわけでも無さそうだ。くっついても拒否られないことで安心したのかもしれない。リースは本当に優しいなー。


「ねぇリース。俺もしかしたらアンジェラちゃんって結構俺に似てるのではとか考えてたんだけど」

「あら、私もよ。くっついてる限りでは随分とおとなしいわね。まるでペットみたいね」

「それって、俺のこともペットみたいだってこと?」

「ある意味そうかもしれないわね。だからといってそこまで卑屈になられても困るわよ。もし犬の真似とかしたら逆に怒るわよ」

「うん、しないよ、しない」


 船はゆっくりと進んでいた。俺が以前船に乗ったのはユーロ国の港ポルポルからエルフの国の港ドーバーまでだったかな。あの時は一人で実はとても寂しかったが、今度の船旅は現在三名である。とはいっても俺の心の中では一人はオマケなんだが。関係上は結婚した奥さんなのにね。


「今日は三日月なのね。予定ではこのまま船の上で中秋の名月を迎えることになるけれど、ヒロは気づいてた?」

「うん、気づいてた。…ごめんな、リース。俺、リースに考えるなって言われていたけども、馬車の中とかで暇だったから、ちょっとだけ色々考えちゃった」

「そう…別にそんなことで謝らなくてもいいわよ。でも私にはしっかりと相談してね。時間はたっぷりとあるのだから」

「うん、わかった」


 リースはそう言って俺に微笑んでくれる。彼女は本当に優しいな。俺が気づいたところから彼女に少しずつでも相談していこうか。んー、いやしかし今すぐはちょっとな。


 俺が少し悩んでいたらリースの方から話題を変えてきた。


「それでヒロ、全然話は変わるのだけど」

「なんだい?リース」

「貴方、船での食事はどうするつもりだったの?前にエルフの国まで来た時はどうしたの?」

「あー、それは」


 一応船でも食事は出して貰えるのだが、全体的に保存食を使用したものばかりだった。クロちゃんが毎日作ってくれた美味しい料理に慣れてしまっていた俺には、ちと辛かったかもしれない。そのことを正直にリースに話す。


「そう、そうなのよね。船で出る食事ってあまりおいしいものじゃないのよ。だから今回もクロちゃんに頼みましょう?早速手紙を出しておくわね」

「マジでか。いや、まぁ、クロちゃんもそれでいいらしいからいいのかな、それで」

「そうよ。素直に頼っておけばいいのよ。彼女もきっとその方が喜ぶわ。貴方もクロちゃんの美味しい料理食べたいでしょう?」

「うん、それはもちろん」


 外は陽が沈んだことにより段々と暗くなってきていた。俺達三人は船室へと戻ることにする。


 そうか。またクロちゃんにご飯を頼む手紙を出すのか。ところで手紙といえば、リースはどこにクロちゃんからの手紙を持っているんだろうな?共有インベントリから出して個人で保管しているということだったが、どこに保管しているのかは俺にはよくわからなかった。


 考えたら負けか。ハゲるかもしれんしな。俺は考えないことにしてリース達を連れて船室へと戻った。

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