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異世界で、一兆円とクエストと。家族計画、神の道  作者: レガ先
第二章 夫婦で回ろう世界一周編
15/79

第十四話「ティニー」

 900/8/29 夜18時以降


 別室で待たされていた俺は、ようやく先ほど何故か流れで妻にしたティターニアちゃんの部屋に呼ばれた。部屋は広く食事を取れるスペースもあった。既に食事の用意がされており、俺とリースとティターニアちゃんの3人で食事をした。


 食事の間中も、食事の後も、俺は長時間放置プレイされていた。とはいってもそれほど困らなかった。

 リースとティターニアちゃんがずっとお喋りしているのを聞いていたからだ。


 今俺達は向かい合ったソファーの上で座っている。対面に二人が座っており、こちらに聞かせながら話している状態である。


「それでね、ティニー。ヒロは七夕の短冊に可愛いエルフの姫ちゃんとちゅっちゅしたいとか書いていたらしいわよ」

「うわー、本当に女の子大好きなんだー」

「本当よね、まぁヒロらしいとも言えるけど。ところでそのエルフって、ハイエルフも含まれるのかしらね?」

「うーん?」


 なんだか俺の色々そういう恥ずかしい過去とかまで暴露されてるんですかね?まぁ別にいいんですけども。そういう部分も知っていた方が親しみやすくはなるだろう。


 リースとこの国のロビン王子はずっと前から実質許嫁状態でずっと付き合っていたらしいが、その延長でティターニアちゃんはリースの妹分のような存在であるらしい。

 人見知りな性格ではあるものの、一度打ち解けてしまえばその後は問題無い模様。だからリースから俺のことを彼女に色々と教えて馴れ親しんで貰えば良いのではなかろうか。


「でも素直に尻に敷かれておくタイプみたいだから、扱いやすいわね。今だってあそこで黙って話を聞いているでしょう?」

「うん、静かだねー」

「声をかけられるまでじっと待つタイプなのね。試しに、お兄ちゃんって呼んであげると少しは喜ぶかもしれないわよ」

「そうなの?えーっと、おにい、ちゃん?」


 ティターニアちゃんがこちらをチラッと見てそんなことを言ってくる。関係の上では夫婦だったはずだよね?これ。

 ティターニアちゃんを購入した以上、一生離婚不可能な夫婦関係のはずなんだが?まぁ別にいいんですけど。


「うん、何かな?ティターニアちゃん」

「うーん、ティターニアちゃん、だって」


 む…何故か不満そうにされてしまった。何故だ。というか俺を無視してリースに対して言ったセリフだよね今の。


「そう、そこなのよ。よくそこにすぐに気づいたわね。偉いわよ、ティニー」

「えへへ、リースお姉ちゃん!」

「ヒロはね、常に女の子がいないとダメなぐらい寂しがりやのくせして、自分からは全然心を開かないのよね。生意気よね。もうちょっと自分から歩みよるべきなのよ」


 む…なんだろう。いきなり核心に迫られてしまった気がするのだが。


「まぁでもわからなくはないわね。ヒロってば本当は中年のおじさんだからねー。若い女の子に対して積極的になりきれないのよねー」

「そうなの?ちょっと可愛いかも」

「そうね。ちょっとは可愛いけれど、どちらかといえばうざいわよねー」


 ぐぬぬ、なんだかすごく酷い言い草である。


「ヒロ-、ちゃんと聞いてるんでしょう?ちょっとそのあたりどうなのよ。失礼だとは思わないの?」

「いや、しかしね、突然そんなこと言われてもさ」

「そもそもね、ヒロは最愛の人のことをクロちゃん、だなんて呼んでいる時点でおかしいのよ。一番好きとか言っていたくせに、おかしすぎるのよ。本当に酷いヤツだと思うわ」

「うんー、ひどいねー、クロちゃん可哀想ー」


 う、うぐぐ、どうしたものかな、言い返せないわけだが。どう反論したものかな。


「いや、ちょっと待ってよ。俺にだって言い分がある」

「何よ?言ってみなさいよ?」


 む…理由を言えと言われてしまった。


 今の発言は、実は何も根拠も無しに言ったわけではない。クロちゃんを金銭にて購入した際に、奴隷商人のザンギ氏が言っていた言葉があるのだ。その際のやりとりはこんなものだった。

 ザンギさんの口調がやたら特徴的なので何故かしっかりと憶えていた。



『ザンギさん、この中央の子を買います』

『おおォ、お目が高いィ。その子はァ、ややロリィ過ぎてすぐに売れるかどうかァ、少々不安でしたのでェ』

『このコの名前、なんていうんでしょう?』

『そのコはァ、クロっていうのですがあまりにもあんまりな名前なのでェ、購入後好きな時に名前を変更する権利がありますゥ』

『ふーむ?』


『名前を変える権利?そういうのもあるのか』



 その後、実際にはクロちゃんの名前を変更していない。つまり、今のクロちゃんの名前は仮ネームなのである。

「クロ」という名前をそのまま正式ネームにしても良かったのだが、頭の隅っこで何かがひっかかっていた。確かにあまりにも安直で酷い名前だよな、という想いはあったのだがそれだけだったのだろうか?もっと別の名前を思いついたとかそういうのもあったかもしれない。


 と…この話をリースに伝えたのだが。


「ヒロ、貴方その話マジで言ってるの?」

「え?うん、本当のことだけども」

「私そんな話聞いたことないわよ。名前を変える権利?そんなのあるわけないじゃないの。貴方、クロちゃんの個人カード実際に良くみたことはあるの?」


 良くみたことがあるかどうか?…そうだな、一応カードそのものは見たことがある。結婚魔法の際に、確かにクロちゃんの顔写真が表示されていたな。体の大きなザンギさんの指がジャマで、それ以外の部分はほとんど見えなかったが。


 他の妻達の個人カードをまじまじと見せてもらったことは一度も無いかもしれないな。そう思いながら懐から俺自身の個人カードを取り出してみる。

 そこには俺自身の顔写真と、その隣にヒロ=アーゼスという名前。ついでに住所等が書かれていた。最初サーディン村だった気がするのだが、いつのまにか住所や本籍が買った屋敷の方に変更されているな。


 リースは何やら考えているようだったが、こちらを向いてこう続ける。


「うーん、なんだか怪しいけれども、UIに映る名前は確かにクロ=アーゼスなんでしょう?」

「え?うん。それはそうだけども。クロちゃんを買った直後や、今までずっとそうだったよ」

「そう?それなら私の考え過ぎかしらね。まぁヒロはあまり深く考えなくていいわ。貴方の頭で無理して考えようとすると、ハゲるわよ」

「ハゲないよっ!」

「それはそうとして、さっきの話の続きよ!貴方ね、ティターニアのことをティニーと呼べるように練習しなさいよ。まず呼び方の時点で心を開かないとダメよ?これも特訓よ」


 む…元の話に戻されてしまった。せっかく話題を逸らしたというのに随分と早いじゃないか。


「ティニーもそう思うでしょう?」

「うん、おにいちゃん。ちゃんとティニー、って呼んで欲しいの」


 むむむ、なんだかけしかけられてしまった。

 えーと…そうだな。ティターニアちゃん、じゃなくてティニーちゃん、ね。


「えーっと」

「ほら、早くしなさいよ」

「おにいちゃん、はやくー」


 急かされてしまっている。


「ティニー、ちゃん」

「ちゃん付けは余計よ。ティニーって呼びなさいよ」

「ちゃんはよけいー」


 ぐいぐいと押し込まれてしまう、どうしたものか、どうしたものかな。


「えーっと、それじゃあ…ティニー」

「ダメよ、まだちゃんと心が篭もってないわよ」

「うんー、心がこもってないー」

「えーっと、んーっと、ちょ、ちょっと待ってね」


 俺は少し心の切り替えに迷ってしまっていた。まさか心が篭もってないとか言われるのは想定外過ぎた。何故二人にはそこまでわかってしまうのだろう。


「おにいちゃん、こっち、見て?」

「ええっ?なんで?」

「こっち、見て?」


 ティニーちゃんがさっきまではリースの方を向いていたのに、俺の方に正面から向き直っていた。そんな彼女の瞳を、俺もじっと見つめ返す。


 ティニーちゃんは金髪碧眼で、髪は長くウェーブがかかっている。うん、こういうキャラも割と結構見かけた憶えがあるよな、人気キャラのひとつであろう。


 俺は彼女の瞳を見ながらなんとか頑張ろうとする。

 この子は、名前はティターニアだ。ティターニアちゃんと呼びたい気持ちもある。でもティニー、ちゃん、ではなくてティニー、ティニーだ、ティニーだと俺の心の中で思わなくてはいけないのか。


 俺は彼女の瞳を見ながら考える。彼女は青い瞳をしている。そういえばこの世界で最初にこのように視線を合わせた相手は誰だったか…


 …クロちゃんだったかもしれない。彼女は黒髪、黒い耳、耳の中はピンクだったが瞳も黒だった。吸い込まれてしまいそうな黒い綺麗な瞳だと感じたことを今でもよく憶えている。

 他の二人も可愛かったし、赤い髪の子の緑色の瞳は目力も強かったな。でも、クロちゃんの瞳の方が俺には魅力的に感じたのだった。


 …などと感傷に浸っている場合ではないか。今は目の前のこの可愛い少女のことだ。目を見て話すことは大事だ。クロちゃんがいつも俺に対してそうしてくれていたように…よし、おちつけ、おちつけ。ティニー、ティニー。あぁ、この子はティニーだな。


「ティニー」


 なんとか、その一言を絞りだす。


「おにいちゃん、もう一回言ってみて」

「ティニー」

「おにいちゃん、ティニーのこと、好き?」

「うん、ティニーのこと、好きだよ」

「えへへ。私もおにいちゃんのこと大好きになったよ」


 そういってティニーは俺に微笑んでくれた。うーん、幼女なのにクラッとくるじゃないか。可愛い、可愛い。

 そんな様子をリースはティニーの隣で見ていてくれた。多少疲れたような様子が見て取れたが、どうやら一安心?というような表情をしている気がする。


「もう、割と冷や冷やさせられたわよ。でも合格よ。ようやくこれで一歩前進ね」

「うん、なんだかすまない」

「いいのよ、私の夫なんだから。言ったでしょう?私が貴方の心を支えるって」

「あぁ…そうだったな」


 リースは初めて会った日に、俺に向かって確かにそう言ってくれた。


 その日、俺は少し泣いてしまった。リースに出会った日以来だったかもしれない。


 その後は、俺とティニーとリースの三人で川の字になって眠った。普通川の字といえば夫婦と子供の三人を指すが、この際細かいことは良いだろう。

 そういえばクロちゃんのお腹の子供は今どれぐらい育っているのかな。クロちゃんが妊娠したのは確か四月二十日だったか?それで出産予定日が来年に入ってすぐの一月十日ぐらいのはずだ。今はもう八月の末で満四ヶ月余りだろうか。猫族は女の子の割合が高いからきっとクロちゃん似の可愛い女の子が生まれるのだろうな。今から楽しみだ。


 そんなことを考えながら、俺の意識は落ちていった。



 ---



 900/8/30 7:52

 翌日の朝。元々昨日より、傷心のロビン王子に配慮しろということで既に城から出ることになっていた。俺達三人は馬車に乗り、とりあえずの住居に移り住むことになったのだが。


 900/8/30 11:00

 馬車は予定されていた仮の住まいに到着した。到着はしたのだが。


「ねぇ、リース。俺すごいデジャヴがしてるんだけど」

「デジャヴってどういう意味の言葉よ?でも何となくはわかるわ。私も同感よ」


 違う国のはずなのに、そこはまるでこの間までリースと過ごしていた愛の巣とほとんど同じ場所に見えた。


 さて、移ってきたはいいがどうしたらいいんだ?周辺に何も無いわけだが?遠くで牛がモォ~、とか鳴いているわけだが。そもそもコレはどこで食料を調達したら良いのだ。


「そんなの決まってるでしょ。クロちゃんにまたお願いするしかないじゃないの。今度は三人分、ただしティニーは小食だから一人分は少なめに、ってところね」

「マジでか」

「マジよ。私の方でお手紙書いて送っておくわよ」


 実際に手紙を送ったところ、なんとその日の昼ご飯から全て、すぐに送られてきた。すごいね、クロちゃん。どれだけパーフェクトなんだ。

 クロちゃんの料理は皆に好評で、ティニーも随分と驚いていた。

「おにいちゃんずるいねー。はじめのお嫁さんだったんでしょー?すごすぎるよー」などと言われてしまった。


 その日はその後リースと密着しながら魔法の練習を久しぶりにしてみた。最近は特に魔法スキルが伸びる機会もないので成長は打ち止めである。練習しても使い方がうまくなるだけで、スキルそのものはまったく上がらないらしい。

 魔法をバンバン使いまくる俺とリースの姿を見て、ティニーが随分と羨ましがっていた。

 いやしかしね、ティニーまで例の禁呪を将来使うようなことになる未来はちょっと想像しづらいのだが。

 あの夏の日々のリースはとても激しかったなーなどと思い返していたら、リースに怒られた後にキスされた。


 その日の夜はリースがお風呂でスッキリさせてくれた後に三人でまた川の字になって寝た。



 ---



 900/8/31 7:45

 次の日皆でクロちゃんの作ってくれた朝食を食べ終えた後、リースがこんなことを言い出した。


「ねぇ、ヒロ。前世の貴方ってそこそこ変態さんだったんでしょ?」

「え?うん。それはそうだけども、なんでそんな話になるの?」

「今後の為に大事なことなのよ。どうなの?そのあたり」


 なんでそこまで問い詰められるのか理由がよくわからないが、とりあえず素直に答えてみた。前世では、ギリギリなんとか幼女でいけないことも無かったけれど好みではないということを素直に伝えた。しかしそうするとリースはなんだか悩むような表情でこう続ける。


「そう、そっかー。うーん、変態さんではあるのだろうけど、変態度がどうにも足りていないってことね。困ったわねー、今後大丈夫なのかしら…」

「なんでそういう話になるのかよくわからない。リースも、ティニーには手を出すなみたいなこと言ってなかったっけ?」


 このハイエルフの国へと向かう前日、ホットミルクを二人で飲んだ後今後の予定を話していた時に、リースは確かそのようなことを言っていたはずだ。ハイエルフの国の姫にはアテがある、というよりも妹分として交流していたから知っていたわけで、その時ハイエルフの姫は俺には絶対にやらせないなどと確か言っていたはずだ。性的な意味で。


 それに加えて更に念を推すかのように、翌朝UIを見たら不思議なクエストが発行されていたんだよな。

 俺は少しUIで、以前受けたクエストを確認してみた。そういえばこのクエストの存在をほぼ忘れていた気がするな。



 クエスト:紳士

 目標:条件を満たした上で一定期間我慢すること


 詳細確認を、ポチッと。


 クエスト:紳士

 例え購入したからといって何も考えず見境なしに相手の女性を襲うというのは紳士の風上にもおけない行為だと言えるでしょう。熟す前の青い果実は強引にもぎ取るような真似はせず、愛でて育てて向こうからやってくるように仕向けるべきです。


 今回のクエストは、そんな紳士たる振る舞いを身につける為のものです。

 購入した女性とのスキンシップを適度に保ちつつ、そのうえで一切直接手を出すことはせずに我慢してください。適齢の女性相手に我慢を続けることは難しいでしょうが、未成熟の女性相手に我慢することぐらい紳士ならば当然可能であるはずです。イエスロリコン。イエスタッチ。本番、ダメ、ゼッタイ。


 達成状況 2日/7日



 おや?何やら達成状況とか出ているのか。このクエストは一体なんなのだろうか。


「リース、ちょっと今受けているクエストのことなんだけども」

「クエスト?ヒロ、貴方いつの間にそんなもの受けていたのよ。なんで私に相談しなかったの?」


 いや、だってさ、クエスト内容がクエスト内容だから説明するのが恥ずかしかったんだよ。察してくれよ。

 などと考えていたら、俺が説明した後に何故話さなかったのかがバレてしまった。言う前に察してくれたら嬉しいのだけど言った後に察して貰われたら逆に困ってしまうわけだが?


「なるほどね。言うのが恥ずかしくて隠していたのね。恥ずかしくてもクエストを受けた直後に説明しておくべきだったわね。バレる人数が増えて被害が拡大しただけでしょう?」

「はずかしいねー、おにいちゃん」


 リースとティニーの二人からそんなことを言われてしまった。ぐぬぬ、どうしてくれようか。


「でもねぇ、ヒロ。ヒロの今後のことを考えると、それじゃあダメなのよ」

「えっ?なんで?」


 いや、本当になんでなんだよ。おかしいだろ色々と。


「まぁちょっとそのアタリ言いづらいのよね。ヒロ、貴方の世界でドワーフっていうとどんなものを思い浮かべるかしら?」

「え?なんで突然そんな話になるの?」

「いいから早く答えなさいよ。どうせ知らないんでしょう?」


 何故こんなに責められているのかよくわからない。とりあえず俺は元いた世界でのドワーフのイメージに関して説明してみた。鍛冶が得意であるとか、鉱山で働いていそうだとか、小さいだとか、小さいけれどもどちらかというとおっさんのイメージであるとか、男しかいないイメージであるとか色々説明してみた。


「やっぱりねぇ…どうせそんなところなんじゃないかと思ったわよ。小さいだとか鉱山で働いてるだとかは当たってるけれど、かなりの差があるわ。おそらくヒロの想像とはかなり異なっているはずよ」


 そうなのか?なんだろう。一体この世界におけるドワーフってどんな奴らなのだ?確か人族と仲が悪いんだよな?うーむ、全然想像がつかないぞ。

 俺が何故こんなことを言われるのか悩んでいたら、リースがこう切り出してきた。


「まぁわかったわ。カウントでは現在既に二日消化済なのよね?それじゃあ残り5日間を頑張って修行することにしましょう」

「修行?修行する必要あるの?今まで普通に二日間川の字に寝ていたし余裕で達成出来るんじゃないの?」


 まったくもって謎だったのだが、それに対してリースは予想外のセリフを返してきた。


「違うのよ。絶対に本番はさせないしそれをしたらクエスト達成出来なくなるからダメだとして、これからヒロには五日間、ティニー相手に興奮出来るように頑張って貰うのよ」



 ---



 900/8/31 9:00

 その日から謎の特訓が始まった。


 今俺は、俺自身が水着を装備した状態で、何故かビキニ水着を着ているティニーとお風呂の中でいちゃついてみている。まったくもって意味がわからないのだが、リースは俺に対してティニー相手に興奮してみせろなどという。


 リースは何故か俺の性的な意味での剣にブルトガングなどというカッコイイ名前をつけてきた。エクスカリバーとかラグナロクとかゲイボルグとかでないだけまだマシだとは思ったものの、何故そんな名前をつけるのか一応は聞き返してみた。


「それはね、私にとっても大切な旦那様のモノだもの。ダガーだとかそんな粗末な名前をつけたら、逆に私が悲しくなってしまうでしょう?」


 よく分からないが、そういうことらしい。


 さて、実際にこの修行を開始してすぐに判明したことがある。俺のブルトガングが一切戦闘状態にならないのである。何故だ。いくらなんでもおかしくないか?前世の俺なら少しは幼女相手に興奮出来ていたはずなのだが?


 最初は気のせいだとばかり考えていた。最初は付き合うティニーの方もちょっと怖そうにブルブル震えていたのだが、俺のブルトガングが実際には一切戦闘状態にならないことが一旦わかってしまうと、全然怖くなくなってしまったようだ。


「ねー、おにいちゃん。ティニーじゃ興奮しないの?どうして?」

「いや、その、頑張ってはいるんだけどね?割と一生懸命」


 ティニーちゃんはすっかり安心しているのか、俺に体を密着させてなんとか俺を興奮させてみせようと頑張っている。前世の俺ならばとっくにスタンバイ状態になっていてもおかしくないはずなのだが。


 しかし一向に俺のブルトガングは戦闘状態にはなってくれない。何故だ。俺は不能になってしまったのか?いやそんなまさか。何故だか凄く気分が落ち込んでいく。


「ティニー、それぐらいで一旦ストップ。それ以上やるとヒロが男としての自信を失ってしまいそうで逆に困るわ」


 浴槽の隣では、水着に着替えたリースがスタンバイしている。どうやら選手交代らしい。ティニーの代わりに水着を着たリースが浴槽に入ってくる。そのまま抱き合ってキスをする、すると。


 俺のブルトガングは一気に戦闘状態へ。さっきまでが嘘だったかのようである。不能になったわけじゃないことに何故か凄く安心した。しかしそこでリースが言った。


「ヒロ。この状態をキープしたままで、ティニーを触ってみなさい」

「え?うん」


 俺は浴槽を出て待機しているティニーの水着の上から胸を触ってみた。以前のティニーならばそんなことは絶対に出来なかったはずだが、今は普通に受け入れてくれている。本当にぺったんこである。俺はこのようなぺったんこ相手は好みではない。しかしそれでも前世なら少しぐらいは興奮出来ていたはずなのだが…


 すると俺のブルトガングに突然変化が起きた。リースと密着して興奮しているはずにも関わらず、戦闘状態が強制解除されてしまったのだ。


「え?…あれ?どういうこと?」

「それじゃあ、ティニーの胸に今のせた手を離してみなさい」


 リースに言われる通りにティニーの胸の上から手を外す。すると一気に俺のブルトガングは完全な戦闘状態に。バッキバキだ。


「え?え?なんで?どういうこと?」

「そのまま何度か繰り返してみなさい。つまりはそういうことなのよ。事実を受け入れなさい」


 その後何度か繰り返してみたのだが、ティニーの体の胸に限らず、腕だろうが手だろうが肩だろうがどこだろうがティニーに触れることによって、俺のブルトガングの戦闘状態が強制解除されるということが判明した。

 一体全体、これはどういうことなんだ。いくらなんでもおかしいだろう。スイッチのオンオフが激しすぎる。

 そんな俺の様子を見たティニーがこう言った。


「あのね、おにいちゃん。私ね、私相手におにいちゃんが興奮して襲いかかってくるのはちょっとイヤなんだけどね」

「うん」


 ちょっとしかイヤじゃないのか、というのはこの際横においておく。


「女として見られていないだとか、一切興奮してもらえないだとか、そういうのはもっときずつくの」


 そういうティニーはとてもしょんぼりしていた。どうしてこんなことになったんだ?



 ---



「はぁ、本当にマズイことになったわね。ヒロぐらいの変態さんならもしかして制限を突破出来るかも、と期待していたのだけども」


 皆お風呂から出て体を拭いて着替えた後、リースがそんな風に話を切り出した。どういうことなのだろうか。確かに俺もあの状況が異常過ぎることぐらいはわかる。どういうことだ?


「人族の男性はね、自分が幼女だと判断してしまう相手と触れてしまうと、いわゆる戦闘状態が強制解除されてしまうのよ。そしてそのことがドワーフと仲を悪くする原因にもなってしまっているのよ」

「な、なんだってー?」


 つまりそれは、人族の男性はその種族特性により自動的にロリコンがほぼ零人になってしまうってことだ。

 変態に思われなくて済むという点では男性側にとって都合は良いかもしれないが、一切相手にされない女性の気持ちを傷つけてしまうだろう。今回のティニーのように。


「まぁそれでも極稀に、何故か制限突破を達成出来る変態さんもいるらしいんだけどね。ともかく、ヒロの今の変態度じゃその制限の壁を突破出来ていないってことなのよ。そしてそんな状態じゃドワーフの大陸に連れていくわけにはいかないわ。とんでもなく恨まれてしまうし、出来ないのではどうしようもないでしょう?」

「うーむ」


 リースはそれから色々と説明してくれた。ドワーフは、俺が元々思っていたような小さいおじさんとかの見た目ではなく、人族の男の子、女の子のような見た目であるらしい。成人男性、成人女性がそのような見た目なのである。では見た目通りに性欲も少ないのかと思いきや、ドワーフ族の男女は人族並の性欲を普通に持ち合わせているらしい。


「戦闘状態に入れるかどうかというのは、相手の見た目によって変わってしまうのよ。今のティニー相手に戦闘状態になれないということは、ドワーフ相手に戦闘状態を維持するだなんて絶対にムリね」


 うーむ、そんなにドワーフ族の成人女性って幼女っぽい外見なのか。それなのに性欲は人族の女性並だって?本当にとんでもない話だ。


「外見はさておき中身は成人女性なのだから、子供を生むことが可能な女性相手に欲情出来ないことは深く相手を傷つけてしまうわ。ティニーはまだ子供を生むことが出来ない体だからまだ傷つかない方なのよ」

「そうなの?ティニー」

「えっと、うん、そうかも」


 そうなのか。ティニーを深く傷つけなかったことだけは神に感謝しておこうか。いやしかしこんな謎設定を作った神様の責任でもあるわけだが。


「それでも、修行は続けておきなさい。仮にもしも修行中に制限突破に成功したからといってそのままティニーを襲っちゃダメよ?あとは、水着無しでも平気なら水着無しでやってみなさい。どうせダメなんだろうけど、やらないよりはマシだわ」


 そんな流れで、今後もこの修行を続けることになった。


 900/9/4 22:00

 あれからずっとお互いに裸でティニーとほぼ一日中ぬるま湯に浸かりながら抱き合ったりイチャイチャする生活を続けていたのだが…


「おにいちゃんのいじわる」

「本当にごめん、ティニー」


 結局俺のブルトガングがティニー相手に戦闘状態になることは一度もなかった。

 男としての自信を失いそうになった時は水着を着たリースと交代して貰っていたのだが、いつもすぐに戦闘状態に復帰していた為不能になったというわけではなかった。それにしても反応しないことへの気分の落ち込み方がやばかった。なんだったんだあれ。



 ---



 900/9/5 8:21

 今日も3人でクロちゃんから届いた朝食を食べている。クロちゃんの作ってくれるゴハンは今日もとてもおいしかった。俺がこんなバカげた修行生活を送っていただけだというのに皆のゴハンを作って黙々と送ってきてくれるクロちゃんは本当に聖母様か何かなのではなかろうか。


 俺の受けていた「紳士」とかいう謎クエストは、結局失敗することなく終わってしまった。むしろクエストをわざと失敗する寸前まで頑張っていたのに失敗することが出来なかった。

 もしも俺が戦闘状態に突入出来ていた場合は、ティニーとはいたしたのだろうか?そこらへんはわからないが。


「結局ダメだったわね。まぁ仕方ないわよこればかりは。別に私自身の気持ちとしてはヒロが幼女相手に興奮出来なくても何も困らないのよね。だって私相手にはすぐに元気になってくれるわけだし」

「リースお姉ちゃんだけ、ずるい」

「ティニーももう少し成長したら大丈夫よ。もう2-3年ぐらいしたら大丈夫なんじゃないかしら」

「ぶー」


 二人は食事の合間合間にそんなことを話している。それを横で聞いている俺に一体どうしろというのか。別にどうしろってわけでもないのだろうから黙って横で聞いているが。


「それで今後の予定なんだけれど、まずティニーとは首都に戻ったら別れるわ。ティニーには私たちとは別に、逆貿易船でユーロ国にあるヒロの屋敷に向かって貰うつもりよ」

「え?そうなの?」

「そうよ。ティニーみたいに小さな子をあまり旅で連れ回すものじゃないわ。ちゃんと信頼出来る家臣達が送り届けてくれるから問題ないわ」

「ところで、逆貿易船って何?」

「あら、ヒロは逆貿易のことを知らなかったの?それじゃあ説明してあげるわね」


 そういってリースから逆貿易のことについて聞くことになった。

 この世界の貿易の中心は内海貿易である。これは中央大陸(魔大陸とも呼ばれる)を囲む東西南北の大陸と中央大陸の間の細い海の、世界に対して反時計回りに流れる海流を貿易船で航海するもので、強い潮の流れのおかげで一方通行ではあるものの航海としては安定した速度で移動出来るというものだ。さほど大きな帆も必要とせず航海可能であるという話。


 それに対して逆貿易というのは、各大陸の海峡の流れの無い海を、木のオールで頑張って漕いで進み渡りきるというものらしい。いわゆるガレー船というやつだろうか。ともかくそんなわざわざ木のオールを漕いで渡ることが大変過ぎるので、人件費分コストが増してしまうらしい。しかし、エルフの国からユーロ国に行きたいのならわざわざ内海貿易でぐるっと回るよりは早く着くそうだ。安全性は特に問題無いとのこと。


「まぁそんなわけだからティニーと首都に戻ってから別れるわよ。それから次はダークエルフの国に向かうわ。今度はそうね、ヒロが手の出せる適齢のお姫様がいるはずよ。とはいっても色々問題ありなのだけども」

「そうなの?」


 ダークエルフか。なんとなくエロいイメージがするのだけれども、この世界のエルフは何故かスキンシップが苦手みたいだし、ダークエルフも例外ではないのだろうか?


「そうよ。まぁ私がちゃんと対策を施してあげるからヒロは気にしなくても良いわ。それよりも、クロちゃんからお手紙が届いているわよ。後で一緒に読みましょう?」

「え?いつのまに?」

「今朝、さっき届いたばかりよ」


 食事の後片付けをした後、俺達三人はクロちゃんからの手紙を読むことにした。



「愛しのヒロへ。なんだかよくわからない修行をしていたことをリースさんから聞きました。結局ダメだったみたいですが落ち込まないでください。私はむしろアナタがロリコンじゃなかったことにほっとしています。私にとってはアナタが私を相手にすることが出来ればそれで十分です。ですからムリはしないでください。


 リースさんとのお話で今更ながら知ったことなのですが、私の年齢のことをヒロは知らなかったのですね。いつでも聞いてくれて良かったんですよ?私は今十九歳です。意外でしたか?リースさんよりも年上ですしジゼルちゃんも私を結構頼ってくることが多いんですよ。これでも結構お姉さんなのです。確かに背は小さいかもしれないですが胸もおしりも一人前だと私自身誇っています。アナタももっと素直に私に甘えてください。なんといっても私はヒロの正妻なんですからね。


 リースさんから、今日の朝ご飯までが必要でこれからはまた忙しくなるので大丈夫だという連絡を受けています。ですが前にも言いましたが欲しい時にはいつでも気軽に言ってくださいね。最近は随分と料理が上達したはずです。おいしかったですか?たっぷり愛情篭めて作りました。


 話は変わりますが今月の祭事についてです。九月九日は菊の節句ですがそちらはさほど重要ではありません。妊娠中ですからお酒は控えています、菊の節句に菊酒を飲むわけにはいきませんからね。

 今月、九月の十九日は中秋の名月です。この日は皆でお祝いする予定です。ヒロも世界のどこかで必ず夜空に浮かぶ満月を見上げてお祝いしてくださいね。しなかったら怒りますからね、絶対に憶えておいてください。


 最近少しだけおなかが大きくなってきた気がします。きっと可愛い赤ちゃんを産んでみせますからね。最初の子は女の子がいいですね。きっと可愛い女の子を生んでみせますからね。ヒロも応援してください。


 赤ちゃんが生まれたら是非私のお父さんにも見せてあげたいです。ヒロもそれぐらいは許してくれますよね?

 私のお父さんもヒロに会いたがっていましたよ。いつかはヒロにも紹介しますからね。ヒロにはわからないでしょうが既にヒロは私のお父さんに会ったことがあります。誰なのか予想してみてください。でも教えてあげませんよ、今はまだその時ではありません。


 それと私の新しい名前のことなのですが、一度しっかりと考えてみてください。ヒロはもしかして忘れていましたか?今更だなんて考えずに私にステキな名前をくださいね。生まれてくる赤ちゃんの名前は生まれた後に考えてください。


 赤ちゃんが生まれるよりも早く帰ってきてくださいね。具体的には遅くとも十二月の中旬か下旬までには帰ってきてください。もしも赤ちゃんが早く生まれてしまったら大変です。予定では一月十日あたりのはずですが予定通りにはいかないかもしれません。


 愛するアナタへ あなたの妻、クロより」



 今度の手紙は、今までに読んだクロちゃんからの手紙よりも随分と長かった。正直俺は混乱してしまった。

 なんだろうか。俺はクロちゃんのことを何でも知っているようで実は何も知らなかったのかもしれない。クロちゃんのお父さん?一体誰のことだろうか。


「ちょっとヒロ!これ…」


 リースの顔が何故か青ざめているように見える…何故だ?クロちゃんが年上だったから動揺しているというわけでもないだろう?いや俺にとってはものすごくビックリしたけどね、クロちゃん十九歳だったのか。

 確かに俺にとってはなんとも怪奇極まりない内容であるがリースにとって何か関係があるのか?

 ティニーはよくわからないのか何か不思議そうな顔をしていた。俺もきっと同じような顔をしているのだろうな。


「どうしたの?リース」

「…今はいいわ。もう外に馬車が待っているでしょう、行くわよ」

「え?あぁ、わかった」


 手紙を共有インベントリに片付けて外に出ると、確かにそこには既に迎えの馬車が待っていた。早速三人でその馬車に乗り込み、ハイエルフ国の首都マーリンへの帰路を辿る。

 この馬車についても、クロちゃんからの連絡でユーロのパパリ首都教会、アヴァロンのマーリン首都教会と連絡を送ったことにより迎えに来たものらしい。


 一旦首都へと戻る馬車の中、リースは何やら一生懸命何かを考えているようだった。それは果たして次に行くダークエルフの国のことであるのか、それともクロちゃんの手紙のことであったのか。


 色々とニブい俺でも、何かしらの予感を感じずにはいられなかった。

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