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異世界で、一兆円とクエストと。家族計画、神の道  作者: レガ先
第二章 夫婦で回ろう世界一周編
10/79

第九話「エルフの王女」

 東大陸の姫君をコンプリートしてから数日が経過した。数日とはいっても具体的には二日過ぎただけだが。


 900/7/7 7:03


 クロちゃん宅で起きる。

 ここ2日は例の奴隷商人のザンギ氏が開発した賢者になれる薬を飲んだうえでクロちゃんと一緒に寝た。


 今日は七夕である。

 七夕といえば織り姫、彦星、天の川だろうか。

 前回の五月五日の端午の節句もそうだが、この世界にはそこらへんの日本の祭事が結構導入されているようだ。

 今日は愛姫の故郷のニッポンポンの方から竹が贈られてくるらしいよ。後は何故か食事としてそうめんを食べるらしい。

 俺はちょっとそんな風習は聞いたことが無いのだが、どこぞの県の風習にあるのか?ちなみに俺の出身県?いやそれはちょっと伏せさせていただくが。


 クロちゃんにそのあたりのことを聞いたところ、物知りなクロちゃんの割にそこらへんはよくわからなかった。

 この世界の夜空にも星はたくさん輝いているのだが、どうにも夜空の星に名前をつけるという習慣や発想があまり無いらしい。

 ふーむ、そこらへんどうなっているんだろうね。神様が考えるの面倒くさいから全て投げ出したのか?いやそんなまさか。


 この屋敷の敷地の中央あたりは、開けた広場になっている。芝生とかちゃんと整備されていて良い感じ。

 将来子供達が生まれたらここで遊ぶのだろうか。そんな日がいつくるのか、イマイチ実感は湧かないが。


 そういえば最近愛姫ちゃんがつわりを起こしている。なんでも妊娠4-6週から12-16週ぐらいまで続くらしい。

 クロちゃんも当然つわりを起こしているはずなのだが全然わからない。そこらへんも色々とずるいらしい。

 愛姫ちゃんが青ざめてまたブルブルしていた。ジゼルちゃんはつわりはまだだが「インチキですわ!」ってぼやいてた。


 今日は七夕なわけだが、やはり短冊に願いごとを書いて飾るらしい。何を書くのか妻達に聞いてみたが、聞くまでも無かった。

 皆願いは全て「元気な赤ちゃんが無事生まれますように」だった。この世界はそこらへん本当に徹底しているみたいだ。

 神様は何を考えてこのような世界を設計したのだろう。


 俺の願いはどうしようかな。

 こんな可愛い妻達に囲まれているのに変な願いを書くのは色々と憚られてしまう。

 いやしかしな、でもなー。

 どうしてもこう、アレなんだよ、書きたいことがあってだな。


 結局俺が書いた内容は、

「可愛いエルフの姫ちゃんとちゅっちゅしたい」だった。



 ---



 900/7/8 7:02

 今日もクロちゃん宅で起きる。大体起きる時間は7時あたりをキープしている。


 パーティリストを見れば、そこにはいつも通り俺とクロちゃんの名前。

 クロちゃんの名前の右の方には今日も変わらず妊娠中を示すハートマークのピンク色が光っている。


 Smes:新たなクエストが発行されました。クエストリストよりご確認ください。


 ログウィンドウにシステムメッセージのスメスさんの黄文字が躍った。こういう通知的内容に関しては一語一句いつも同じ内容でアナウンスしてくるのだろうか。たまに違ったりしないのかなと思って凝視しているのだが変化は無いように見える。とりあえず確認してみようか。



 クエスト:略奪愛

 目標:既に想い人がいる相手を強引に購入すること


 …オマエハナニヲイッテイルンダ。


 クエスト:略奪愛

 相思相愛な男女の仲を、女性を購入することによってズタズタに引き裂いてみてください。

 いつも全てが円満解決するだなどとは思わないことです。

 少しは人に憎まれることにも慣れましょう。

 世の中全てが綺麗事で済まされるなど甘い考えです。思い切って悪人になってみましょう。

 別に一般人でも構いませんがここはひとつ王族を狙ってみてください。

 王族は結婚式の準備とか時間がかかりますからね。相思相愛の間柄を引き裂くには狙い目ですよ。



 クエスト説明にはなかなか酷い内容が書かれていた。お前それマジで言っているのか。しかもなんか狙い目とか書かれてるしとんでもない話だ。


 そういえばこの間フリマ嬢が嫁に来たわけだが、愛姫ちゃんの時やジゼルちゃんの時と違って何の試練も発生しなかった。以前から話には出ていたが、魔物の巣を攻略したことによって、俺は各国の姫を無条件に購入する権利を得たらしい。だからこそ何の試練も無くフリマ嬢を購入することが可能だったのだ。

 この資格については、愛姫ちゃんの時もジゼルちゃんの時もお殿様や国王様が解説していた。


 つまり、今の俺が他国に赴けば相手の姫の合意無しに強引に購入してしまうことが現在は可能だということだ。なんという非道、鬼畜であろうか。

 いやしかし、ちょっとそういうのも憧れるな。俺の憧れる某主人公も鬼畜という名を持っていたからな。俺もちょっとはそこらへん、彼の行動を見習うべき時期なのかもしれない。

 どうしても欲しい物があれば強引にでも奪い取るべきなのだ。それが可愛いエルフの姫ちゃんとかならば尚更だ。


 さて、そこらへんの話を朝ご飯を食べながらクロちゃんに話してみた。クロちゃんは物知りだし、正妻の余裕があるせいなのかなんでも相談に乗ってくれる。

 夫婦の間に隠し事は無しという方針らしいし、俺が受けたクエスト内容を隠す必要も無いだろう。


 ちなみにクロちゃんが現在受けているクエストは「可愛い赤ちゃんを作りましょう」のままなのだそうだ。妊娠した時点で達成ではなく、実際に生むことでクエストクリアになるらしい。

 さて、クロちゃんに説明したところこのようなセリフが出た。


「略奪愛、ですか?ヒロの愛は誰にも渡しませんよ」


 さすがのクロちゃんである。このようなセリフが平気で言えるのは大したものだ。いや今はそういう話では無いのだが。


「略奪愛の標的ですか。そうですね、確かに王族は格好の獲物と言えるかもしれません。婚約をして結婚することが決まっていても、実際に結婚式を挙げるまでに一月以上かかってしまうそうですよ。その間に色々とお知らせをして、色々な予定を合わせるのだそうです。私にはちょっとそのあたりのことは理解出来ません。好き同士ならすぐにでも素直に愛し合えば良いのに。ヒロと私みたいに出会ったその日でも深い愛は育めるはずですからね」


 うん、確かに俺とクロちゃんがいきなり最初からラブラブだったのは事実だが。


「それでクロちゃん、今結婚式の予定のある王族っているのかな?」

「それは…はい、います。いるんですよ、すぐそこに。このユーロ国と海を挟んだお隣さん、北大陸東部のアルフヘイムという国の第一王女様が、お隣のハイエルフの国の王子様と結婚されるご予定らしいです。今月初め頃に布告されていて、来月初め頃に結婚予定なのだとか」

「ふむふむ?」


 なんだろう。つまり介入するなら今がベストタイミングってことか?なんかこうやはりこの世界はご都合主義を感じるな。このクエストもそのエルフの姫ちゃんを強奪しろという意味で出されたのか?


「そのお姫様とその王子様ってどんな関係?」

「聞くところによればお二人は小さな頃から幼馴染みで許嫁だったらしいです。それはもう周囲が羨むほどの仲の良さで、しかし王族ですから結婚するまでは絶対に手を出してはいけないということで、結婚の日をそれはそれは待ち望んでいたみたいです。お二人の交流のおかげでエルフの国とハイエルフの国の仲は大分改善されてきているそうですよ」

「えーっと、それはその、なんというか、大丈夫なのかな、うん」


 なんだろう。とんでもない問題を引き起こしかねない気がするのだが?

 いいのか?本当にいいのか?


「クロちゃんはどう思う?」

「私ですか?」

「うん、クロちゃんはその二人の仲、引き裂いちゃっても良いと思う?」


 うん、クロちゃんは俺よりはまともな判断を下すだろうと思ってそう相談してみたわけだが。


「はい、やっちゃってください!私、エルフとか大嫌いですから!」



 ---



 この世界について振り返る。


 この世界には五つの大陸がある。中央の魔大陸は封印されていて実態がよくわからない。

 その周囲の四大陸は、東大陸には愛姫ちゃんやジゼルちゃんのような人族、南大陸にはクロちゃんのような獣族、北大陸にはエルフ族、西大陸にはドワーフ族が住んでいる。

 そして各種族は、左右で接する二種族とは比較的仲が良く、接しない一種族と仲が悪いとのこと。


 エルフ族と仲が悪いのは獣族である。よって猫族であるクロちゃんはエルフが嫌い。

 なるほど納得。この世界の構造としてはまったくもって正しい。

 クロちゃんの許可は下りた。ならば後はクエストに従ってエルフの姫様を強奪するのみである。


 一応情報収集したところによると、そのエルフの国のお姫様の名前はリースというらしい。リースか、なんかすごく聞き覚えがある名前なわけだが。

 なんかこう何故か根強い人気だよね。俺も結構見た目はかなり好きだが、別にあのコはエルフってわけじゃない気がする。


 そして、エルフの国のお姫様はリースちゃんのみらしい。よってリースちゃんを購入出来なかった場合、北大陸の姫のコンプリートが自動的に不可能になるってわけだ。

 別に姫をコンプリートする必要があるだなどとは聞いていないのだが、コンプリート出来るならしておきたいではないか。


 さっそく出立の準備をすることにした。とはいっても俺はそこらへんよく考えてないんだけどな。

 インベントリに色々入れて持ち運べるので、妻達にあれこれ入れて貰うことになった。

 ついでに、家族はインベントリを共有可能というインチキシステムというか例の不思議ポケットみたいなシステムがあるので、それを利用することも出来るらしい。


 北大陸に行くとなると、そんなにすぐには戻って来られなくなってしまう。

 なので、クロちゃんがたまに共有インベントリにお手紙を入れておくからそれを読んで、ということになった。

 お返しに俺からも返事を共有インベントリに入れておけばクロちゃんがそれを回収して読むということで話がついた。


 もっとも、家族であれば誰もが共有インベントリにアクセス出来てしまうので、家族の誰かであれば手紙の横取りとかも出来てしまうようだが…まぁそこらへんは仕方ないだろう。家族なのだから少しは話し合いで解決しろってことだ。


 そういえばこの世界電話はないのだろうか?

 クロちゃんに聞いてみたところ、教会などの特殊な施設のみ電話があるらしい。ふーむ、あるにはあるが限定されるのか。

 そういえば聞いたことがあるのだが、携帯電話が存在してしまうと色々と話の組み立てがややこしくなる傾向があるらしいから、神様が意図的に世界から排除したのかもしれないな。

 そこらへんちょっとずるくない?

 いやしかし、ずるさで言えば不思議ポケットの共有インベントリの方がよっぽどインチキかもしれないな。


 900/7/9

 次の日、俺はさっそく旅立つことにした。その日のうちにユーロ国の内海側の貿易港、ポルポルに到着する。

 なんだろうなポルポルって。まさかポルトガルが名称の元ネタになっているのだろうか。いやまぁ確かにユーロ国は西洋イメージだし、ポルトガルはヨーロッパでも有名な海洋国家という話もあるから間違ってはいないのだろうが。


 ちなみにそのポルポル土産はリスボンという名前のワインだった。ポルトガルの首都の名前をそのままとかちょっと色々とヤバイ気がする。船に乗る前に飲んでみたがなかなかおいしかったので、購入して共有インベントリにつっこんでおいた。クロちゃん達に向こうで回収して貰って楽しんで貰おう。


 内海貿易の船は客用としても利用されているらしくそれに乗り込む。荷下ろしの様子も見ていたが、獣大陸から運び込まれたであろうたくさんの革防具や、そして可愛い猫娘達がたくさんいた。

 あの子達はきっとこれからいつかのクロちゃんのようにお婿さん探しをするのだろうな。そんな婚活女子達の様子を眺めているうちに、船は出航した。



 ---



 900/7/14 11:14

 5日後の昼前ぐらいにエルフの国の内海貿易港に到着した。早いのか遅いのかはよくわからん。

 ちなみにこの港街の名称はドーバーらしい。ドーバーって確かイギリスじゃなかったか?

 何故エルフの国の港がドーバーなのかはよくわからん。気にしたら負けか。


 入国の際は一応個人カードを提示して身分証明をする。ちなみにこの世界、さほどパスポートとかの概念はないみたい。その代わり個人カードはしょっちゅう提示する。

 色々いい加減なのかもしれないな。個人カードが非常に高性能だからそれで全て大体なんとかなるってことなのだろうか。個人カードを提示する場面自体は多いので、それで判断するのだろうな。

 そもそもPKが禁止されているこの世界ではそんな極端な犯罪はほぼ起こらないはずだろうし、防犯意識とかも全体的に低そうである。


 神の使徒の名はこちらでも有効らしく、受付の人が驚いていた。

 移動手段をどうするか悩んだが、定期運行されている連絡馬車を利用することにした。大金を持っているからといって無制限に使って良いわけではないし、ある程度この世界の公共交通機関の利用に慣れておきたいという面もあった。


 連絡馬車はこの世界に来た際にも利用したことがある。あの時は外海側の漁村、サーディン村を十三時発の連絡馬車に乗ったのだったかな。

港について軽く昼食を取った後、内海貿易港ドーバーを十三時発首都方面行きの連絡馬車に乗った。内海側からも所要時間は六時間であるらしい。

見覚えのある六頭立ての巨大馬車に乗り、俺を乗せた連絡馬車はエルフの国アルフヘイムの首都ロンロンへと向けて出発した。


 それにしてもロンドンじゃなくロンロンなのか。何か深い理由でもあるのだろうか?

 到着したのはやはり大体約六時間後だった。十九時なので丁度良い夕食時だろう。


 食事してばかりな気もするが、エルフの国の首都で宿を取ってその宿で晩御飯を食べる。デカイ牛ステーキだった。あとは何か名物であるらしい、この首都の名前を冠した牛乳を飲んだ。

 その牛乳ビンには笑顔の王様っぽい人物のマークが入っていた。アルベロンマークといって現国王様をデフォルメしたものらしい。

 国王の名前にロンが付くこととこの首都がロンロンなことも何か繋がりがあるんだろうか。

 牛乳の名前?さっき説明したよね?何か問題でも?


 そのまますぐに寝ようかとも考えたが、その前に軽く土産屋を回って適当に色々買い込んで共有インベントリに放り込んでおいた。可愛い妻達にもお土産買っておかないとね。お土産買った直後にワープで直接届くとか色々アレだとは思うが。しかしお金はあるのだからサービスしておかないとな、うん。


 何が良いかはわからないが、どうやらエルフの国には木彫り細工がいっぱい売っているみたいだった。なんだかそういうのも良いね、キライじゃない。



 翌日、900/7/15/8:57

 俺はエルフ国首都の王城に足を運んだ。城の入り口の兵士に個人カードを提示して取り次いでもらう。

 やがて俺は謁見の間へと足を進めた。


 エルフの王であろうその人物は、こちらを苦い顔で見つめてきている。歓迎はされていないであろうことがよくわかった。

 つまり、俺が何をしにきたのかを察しているということだろう。


「神の使徒、ヒロ=アーゼス殿だな」

「はい」

「儂がこのエルフの国アルフヘイム国王、アルベロンである。使徒殿の目的の予測はついておるが確認しておこう。何が目的でこの我が城へ参ったのか?」

「王女、リース嬢を購入する為に」


 ここらへんの目的はしっかりと伝えておくべきだろう。遠回しに言う必要はないだろうと判断した。俺の言葉を受けて国王は深くため息をついた。


「良い、もう覚悟は出来ておった。しかしヒロ殿、我々はこれでも少しは足掻いてみせた方なのだ。そなたには少しこちらの話も聞いていただこう」


 国王はこれまでのことについて語り始めた。


 神の使徒降臨の報は比較的早い段階でエルフの国にも伝わった。神の使徒は百年に一度この世界に神が派遣してくるらしい。

 伝説に残る使徒もいる一方で、大した活躍もせずそのまま消えていった者もいるのだとか。


「我々はまず今回の神の使徒がどのような人物なのかを探った。その結果、この世界にきて早々屋敷に引き篭もって猫族の娘とばかり戯れているらしい。それも数日ではなく半月以上篭もりっきりだという。儂らはこう考えた。今回の使徒はトルッコの王のように、獣族の娘とばかり戯れる大馬鹿者じゃろうとな」


 トルッコの王は正室以外を全てウサギ族の娘ばかりで固め、獣族とイチャイチャしてばかりの生活をしていたらしい。なるほど、フリマさんはそんな国からきたんだな。


「猫族の娘なぞ神の使徒が与えられた資金を用いれば何人だろうが買えるのだから、一人孕ませたところで次の娘を買うだろうとばかり考えておった」


 その油断から、俺の情報を集めることを一旦打ち切ってしまったらしい。情報を集める価値も無いと考えたということだ。


「しかしそれがあろうことか、まだ五月にも入らぬうちに突然隣国の愛姫を娶ったなどという話が飛び込んできた。儂は焦った。我が国の慣習として、祝い事の布告は月初の一日にのみしか出せぬのだ。情報が遅れたばかりに貴重なその機会を逃してしまった」


 エルフの国王は、やはり前からの予定通り娘のリース姫と隣国のハイエルフの王子との婚姻を考えていた。しかし公然の許嫁の関係でも正式な婚約はまだであった。

 よってまず正式な婚約の布告を行った後、別の月に結婚の予定の布告を出さなければならなかったらしい。


「五月の初めを逃してしまった以上、六月の初めに正式な婚約の発表をし、七月の初めに結婚の予定の発表を行う以外に無くなってしまった。儂らはそれでも、神の使徒が各国の姫を購入する資格を得るよりも早く娘達の結婚を終わらせることが出来るであろうと考えていた。しかし六月の一日に正式な婚約の発表をしてすぐに、五月末時点で神の使徒が魔物の巣攻略を完了させたという知らせが届いたのだ」


 少し思い出してみる。そういえばジゼルちゃんと初めて結ばれたのが五月の末だったかな?確かに王の情報は正確らしい。


「あまりにも早すぎる。使徒が降臨してから二ヶ月もせぬうちに魔物の巣を攻略してしまうなど前例がないことだ。どの使徒も大抵は一年以上、早くても半年程度はかかるだろうとされていたのだ。それを今度の使徒はなんとたったの二ヶ月で成し遂げたという。これは化け物が降臨したのだということを我々は悟らずにはいられなかった」


 なんかすごく褒められてしまった。いやー、なんだか照れるなー。俺がしたことなんて、エロ可愛くて強い巫女さんの愛姫ちゃんを激しく抱いたぐらいのことなのにね。


「我々はその後も使徒の動きを探ることにした。すると使徒は最近はユーロの姫との交流を密にしているとの情報が入ってきた。このまま他に目が向いていてくれればとは考えたが、使徒はユーロの姫の次はトルッコの姫を娶ったという。あまりにもペースが早い。このままでは次は我が娘に目が向くかも知れぬと、覚悟はしておった」


 王の話はそれで終わった。どうにも過大評価をされている気がしなくもないが、とにかく色々と想定外だったらしいことはよくわかった。

 よし、大体わかったからそろそろお姫様を出してもらおうか。



 ---



 エルフのお姫様が連れてこられた。リース姫という名前のはず。

 その名前は色々とヤバイんじゃないかと思うのだがどうなんだろう、セーフなのかアウトなのか。


 リースちゃんはお姫様だというのに後ろで両手を拘束された状態で連れてこられた。うん、これは相当抵抗するだろうということでこうなったのだろうか。

 めちゃくちゃ泣いてる。こっちを悔しそうな顔で睨んできている。


 リースちゃんを眺めてみる。長い金髪、青い瞳、服は緑系である。

 これはまぁなんというかその、描写したら色々とマズイことになるんじゃないのかね。体は全体的に細いのに胸は随分とボリュームがある。


 うん、俺の好みにバッチリ合致したんじゃないでしょうか。すごい顔で睨まれてるけどね。

 それもまた可愛い気がしなくもない。


「いや!助けて!お父様お願い、許して、私を売らないで!」

「すまぬ、リース。こればかりは儂にもなんともならぬのだ。使徒殿が望まれる以上、それが神の決めたルールなのだ」


 リースちゃんはまず父に対して助けを求めた。しかしこの件に関してはアルベロン王も既に前から伝えてあることだったはず。

 リースちゃんはこっちを睨んでこちらを責めてきた。


「この人でなし!鬼!私はロビンと結婚するってずっと昔から決めていたのに!どうして!?どうしてこんなことが平気で出来るの!」


 ロビンって誰だ。たぶん相手のハイエルフの王子様の名前かな?

 まぁいいや、覚えておく必要もないだろうたぶん。


 神官っぽい人がリースちゃんのインベントリに手をつっこんで、彼女の個人カードを抜き取る。よくわからないけどこういう神職の人はそういうことを出来る権限とかあるのかもしれないね。


 何の為にそんなことをするのかというと、例の結婚魔法を発動させる為だ。結婚する二人の個人カード二枚を重ね合わせて決まった魔法を発動させることで、リースちゃんの購入が完了する。

 金額についてだが、東大陸の姫達の金額に合わせて五百億のところを、迷惑料こみで倍額の千億にするということになった。

 半額はハイエルフの国へ向けての賠償金に充てるらしい。


 この世界に来た時神より授かった一兆円は、家や領地の購入に500億、東大陸の姫達の購入に1500億、そしてこのリースちゃんの購入で1000億で合計3000億以上使い込むことになる。

 ひとつもムダなものは無かったはずだと思うのだが、果たしてこの勢いで使って良いものなのだろうか。

 ちょっと色々金銭感覚が狂いそうで怖い。昨晩の食事は3000円弱だったはずだが、それでも高いはずだよなたぶん。

 まぁあれだけのステーキ食べたというわりには安いのかもしれないが。


 ともかく、俺も俺の個人カードを神官さんに手渡した。

 神官さんは俺とリースちゃんのカードを重ね合わせて、エルフ流の呪文を詠唱しはじめる。


「やだ!やめて!詠唱しないで!…お願い、お願いよ。詠唱が完了したら、私は、私は…」


 リースちゃんはついに心が折れそうなのか、声に覇気が無くなってきた。


 神官さんの魔法が容赦なく発動する。俺は早速UIの方を確認してみる。

 パーティーメンバーリストの表示に、俺の名前、そしてその下にリース=アーゼスという名前が出ていた。

 これで彼女はもう俺の物だ。もう誰が何をしようが解除されることはない。仮に夫婦の双方が離婚に合意していようとも、購入した場合は絶対に離婚出来ないのだ。


 リースちゃんは力尽きたのか床にペタリと座りこんで泣いていた。彼女の両手を後ろ手に拘束していた器具を王様自らが外してやっていた。器具を外された後も彼女はそのままじっとしていた。


「誰か!…リースを少し綺麗にしてやってくれ。このままにはしておけぬ」


 王様が部下にそう指示を出した。リースちゃんはメイドに連れられて部屋を出ていった。

 確かにあの泣き腫らした顔のままでというわけにもいかないだろうし、ナイス判断と言えなくもないか。


 王様はこちらに一言「娘を頼む」とだけ言い残して帰っていった。

 本当はそんなことを頼みたくはないのだろうけれど、こうなってしまった以上どうしようもなく義務として言ったのだろうと判断しておいた。



 ---



 900/7/15 11:57

 しばらく気持ちの整理に時間がかかるだろうということで、次にリースちゃんと会ったのは食事の席だった。

 夫婦になった以上、まずは食事ぐらい一緒に取るべきだということだ。


 伝令の騎士の人から国王からの指示を聞いた。とりあえず今日のうちはこの王城内で過ごしておけということになっているらしい。

 夕食後に国王とリース姫の二人で話をするということだが、その後は彼女の部屋で彼女に手を出していいとのことだった。もちろん性的な意味で。


 俺はこの北大陸においては活動拠点をまだ持っていないし、帰る場所も無い。だから泊めて貰える分にはその方が助かるかもしれないな。

 こちらの北大陸でまた家を買うという選択肢も無くはないが、さすがにそれはちょっと憚られる。あまり極端なムダ使いはしたくないし、俺が帰る家はクロちゃんが待つあの屋敷のみだろう。

 一時的な住まいを間借りするにしても、高額な別荘的モノは持たないことに決めた。


 リースちゃんが食事にやってくる。

 睨んではきていないが、なんとも無表情だった。わざと無表情を保っているのかもしれない。

 いやしかし、見た目は本当に可愛い。これだけ可愛い子を今夜にはいただけるのだから、非常に楽しみである。


 食事中はほぼ会話無しだったが、食事の後はこの城内にある庭園に一緒に行くことになった。

 それでようやくリースちゃんが少し喋った。


「この城の庭園は本当に良く出来ているの。だから離れるのは気が進まないわ」


 せっかく庭園に行くのだからということで、とりあえず彼女と手を繋いでみることにした。ぎゅっと手を握ってみたら彼女がちょっとオーバーリアクションなぐらいビクッと震えた。握った後も何故かかすかに震えている。息も少し荒い。

 なんだ?そこまで極端に嫌われているのか?


 俺はそのあたりをちょっとリースちゃんに聞いてみた。説明を拒否されるかとばかり思っていたが、意外な答えが返ってきた。


「エルフ族は、そんな獣族みたいに他の人とベタベタしないのよ。そんな気軽に相手の手を握るだなんて、恋人同士でもそうそう無いわよ」


 なんだって!そういう話になるのか!


 この世界では獣族とエルフ族の仲が悪いということはクロちゃんも言っていた。

 クロちゃんはエルフが大嫌いだと言っていたが、ふむ、それはつまりこのあたりのスキンシップに対する感覚の相違も影響しているのかもしれん。

 しかし男女が仲良くするのならばスキンシップを密にした方が仲良くなれるものだろう?そりゃキライな人もいるのかもしれないが、長く続けていればそのうち慣れるんじゃなかろうか。


 となれば方針は当然ひとつ。リースちゃんと積極的にスキンシップを取るべきだろう。


 庭園を回りつつ、彼女をぎゅっと抱きしめてみたりキスしてみたり積極的にスキンシップを取る。その度に彼女は顔を真っ赤にして少し震えていた。

 ふむふむ、なかなか可愛いじゃないか。

 しかし彼女はそういった肉体的なスキンシップに対して随分とウブな代わりに、精神的なスキンシップが密なタイプのようだった。


 キレイな芝生に座って、リースちゃんの体を後ろから抱きかかえながら話をすることにする。ボリュームたっぷりの金髪が気持ち良い。後ろから触る彼女の体も柔らかい。


「ねぇ、貴方の話を聞かせて?」

「どうして?」

「敵に対しての情報収集でもあるし、私みたいにエルフはまず心から相手と触れ合うのよ。貴方が私の夫を名乗るのならば、私に貴方の全てを語るべきだわ」


 うーむ。そうきたか。敵に対してのってちゃんと断ってるあたり、正々堂々騙し討ち抜きでっていう姿勢が感じられるじゃないか。ならば語ってやろうじゃないか。


 とその前に、彼女の細く尖ってる耳をちょっと触ってみた。触った途端にリースちゃんの体がビクンビクン震えていた。

 彼女の体は全体的に柔らかい。そして胸はボリュームがある。夜抱くのがとても楽しみだ。


 そのままでは話が進まないので、俺は色々と話してみた。


 俺はこの世界に来てからの全ての流れをリースちゃんに話した。

 彼女は随分と聞き上手だった。相手の話を聞くことに随分と慣れているようだ。

 サーディン村のシスターのスシネさんのこと。連絡馬車に乗った時道が銀色なことに驚いたこと。

 スシネさんにホテルで襲われそうになったが回避したこと。しかしその次の日にはクロちゃんに出会って彼女とそのホテルで結ばれたこと。

 その後従業員さん達と新居に移ったが従業員さんが後から割とダメダメだったこと。クロちゃんを妊娠させてその突然の行動の変化に驚いたこと。その後受けたクエストが突然魔物の巣討伐であったこと。その為に奔走した結果愛姫ちゃんやジゼルちゃんに出会ったこと。

 愛姫ちゃんと深く愛し合ったことで無事に魔物の巣を攻略出来たこと。その一方でジゼルちゃんと色々あって仲良くなり彼女とも深く愛し合ったこと。その後トルッコからフリマさんが来てトルッコ風呂を楽しんだことなど、大体のことを洗いざらい話した。


 それら全てを、リースちゃんは真剣に聞いてくれていた。彼女は全てを聞き流さず、時にはこちらに質問もしてきた。随分と聞き上手な気がする。うん、なかなか良い子なんじゃなかろうか。


「ヒロ、それで他には?まだあるでしょう?」

「他に?いや、全部言ったつもりだったのだけど」


 いつの間にか、彼女から俺への呼び方が名前呼びになっていた。大分親しくなれた気がする。

 しかし、俺はこの世界に来てからのことをほぼ全て話しきったはずなのだが。


「えーっと、神の使徒としての俺の全てを話したつもりだったのだけど」

「そうじゃないわ。まだ他にあるでしょう?」

「んー?なんだろう。何か忘れてるかな?」


 俺は彼女をずっと後ろから抱きかかえる形で話を続けていたのだが、彼女が急に俺の腕の中から抜け出した。彼女は俺の対面に座り、そしてこっちを見つめてくる。

 うん、可愛い。しかし随分と目は真剣だ。一体どうしたというのだ?まだ他に何かあったのか?


「まだあるでしょう?そう…あなたの、前世の話よ」



 ---



 まさかそう来るとは思わなかった。


 俺はさすがに答えるのを渋った。まず何故その質問をしたのかを聞いてみた。


「本当に一部の人しか知らないことだけれど、神の使徒というのはどこか別の世界で生きていた人が転生した存在だという話を聞いたわ。この世界のほとんどの人は皆、神の使徒を神が遣わした何も記憶の無い人間だと思っている。でもそうじゃない。神の使徒は何かしらの前世があるはずなの。そうじゃなければ使徒ごとに行動の差がこんなにも大きく出るはずがないわ」

「…どうしてそう思ったの?」

「ヒロは、貴方は、お父様も言っていたけれど、本当に規格外の前代未聞の使徒なのよ。そんな人が何の背景、バックボーンを持っていないはずがない。ヒロはどこかがおかしいんだわ。普通の人は貴方のような行動はしないものなのよ」

「ええっと、つまり、それは」


 そう、俺は知っているんだ。


 俺が神に選ばれた理由、神自身から告げられた俺が選ばれた理由、それは。


 キチガイだからだ。


「聞かせてくれる?」

「わかった」

「…うん」

「聞いてくれるのか」

「うん、本当の貴方のことを、私に教えて」


 俺は俺の前世の話をリースに伝えた。俺の生きていた世界のこともリースに伝えた。

 リースはそれを全て、真剣な眼差しで聞いてくれた。

 俺は泣いてしまった。前世でどれだけ無念があったのか、それを語ってしまった。結局それらの無念の反動が、この世界での俺の行動にも反映されているからだ。


 リースはそれらを全て聞いてくれた。そして泣いている俺を優しく抱きしめてくれた。しかし、その後に続けてきた彼女の言葉はこんなものだった。


「ありがとう、ヒロ。貴方のことが本当によくわかったわ。貴方は本当は優しい人なのね。神様になりたいだなんて、普通は誰もそんなこと考えないわよ」

「…うん」

「私が貴方を認めてあげる。私が貴方を支えるわ。私にはまだそんなに大きな力は無いかもしれないけれど、貴方の心を支えることは出来るはずよ。でもね、ヒロ」

「…うん?」

「だからといって貴方が私にしたことは許されないわ。貴方は私の心を踏みにじった。私のこれまでの大事な、大切な宝物を奪い去ったのよ。だから貴方は罰を受けるべきよ。罰を甘んじて受けなさい。そしたら私は貴方を許してあげるわ」

「そうか」


 うん。


 そうだよな。


 しかしまさか、こんなことになるだとは思っていなかった。俺はこのままリースに憎まれ続けながら抱くのかと思っていたが、そこらへんのことを全て吹き飛ばされてしまった。


「もう、そんなに泣いていたらせっかくの顔が台無しよ。せっかく神様からそのそこそこかっこいい体を貰ったのだから、もう少し大事にするべきよ。後でお風呂でも借りてキレイにしておきなさい」

「あぁ、そうだな」

「今夜は予定通り私の部屋に来なさい。女の体が大好きなのは本当によくわかったから、私を抱かせてあげるわ。でもソレが罰よ。楽しみにしてなさい」

「あぁ」


 何故それが罰になるのだろうか。


「それと…ひとつ確認しておくわ。貴方は私のことを今はどう思っているのか教えて頂戴」


 むぅ、どうにも手玉に取られてしまっている気がするが、素直に答えておくべきか。


「大好きだ」

「そう、私もヒロが好きよ。まだ大好きとまでは行かないけれどね」


 そう言ってリースは去っていった。

 俺は風呂を借りることにしよう、今はきっとひどい顔をしているだろうから。

 久しぶりに泣いてしまった。この世界に来てから今まで一度も泣いたことなんてなかったのにな。



 ---



 夕食はリースだけでなく国王アルベロンやその他の方を交えての食事になった。

 リースは既に笑顔になっていた。

 国王やその他の人は色々とリースの身を案じていたが、リースはもう大丈夫だということを皆にアピールしていた。むしろ俺の方があまり元気がないということで心配されてしまった。

 うん、彼女はすごいな。まさかこの短時間でこんな変化を起こすだなんて本当に大したお姫様だ。


 夕食の後、リースは王様と二人で話をする時間を取ることになっていた。うーむ、俺のことも話されてしまうのだろうか。

 程度によるよな。あまり深いところまで話されなければ俺もそこまでは気にしない。そして、おそらくリースならばそのあたりの線引きも出来るのではないだろうか。


 俺は、リースの寝室とは別室で待機するように言われた。色々と準備があるのだろうし、それ以外の理由も何かあるのだろう。


 900/7/15 22:12

 大分遅い時間になってようやく、俺はメイドさんから声をかけられた。そのままリースの寝室まで案内して貰う。寝室の中は彼女一人だけだった。


「来たわね、ヒロ」

「うん」

「まず最初に謝っておくわ。共有インベントリの中にクロちゃんからの手紙が入っていたわよ。悪いとは思ったけど読ませて貰ったわ。貴方も読みなさい」

「え?うん」


 俺はリースから手紙を受け取って目で読んでみる。



「愛しのヒロへ。忙しい中たくさんのお土産ありがとうございます。最初に届いていたワインはユーロ国では有名なものでしたが、愛姫さんやフリマさんは飲んだことが無かったそうなので二人がおいしく頂いていました。昨日届いた色々なお土産はすごく数が多かったですね。皆でどれを取るか選んでいました。ジゼルちゃんは木彫りの小鳥さんがお気に入りだそうです。私はエルフの木彫り細工は嫌いなのですが、木彫りの猫さんを頂いておきました。


 私はヒロのことが心配です。ヒロはいつも口には出しませんがきっと寂しがりやさんです。私がついていないとどこかで寂しくて泣いてしまっているのではないかと考えてしまいます。

 いつでも帰ってきていいんですよ。ヒロの居場所は私が守ります。でもムリにすぐに帰ってくることはないです。貴方が貴方のやるべきことを済ませてからでも、あるいは心が折れそうになって辛い時でも、好きな時に帰ってきてください。


 ヒロはきっとお返事が苦手だろうからムリに返事は出さなくてもいいです。でもその代わりに安否がわかるように何かしらお土産を入れてくれると助かります。何か必要なものがあったら言ってくださいね。こちらで頑張って用意します。


 あなたの妻、クロより」





 …なんだ?


 なんだこれは、本当にクロちゃんがコレを書いたのか?

 クロちゃんはいつもあんな和やかな感じなのに、まさかこんなに見透かされていたのか?


 俺が手紙を読み終えたのを確認すると、リースが目で合図してくる。俺はリースに目を移して、手紙を共有インベントリ内に戻した。


「愛されているのね」

「あぁ、そうみたいだ」


 クロちゃんに愛されていることはわかっていたのだが、まさかこんな深くまで心を見られているのは気づいていなかった。


「猫族はエルフ族よりもそのあたりの感情の機微がわからないものだと思っていたのだけど、意外だわ、よくわかってるじゃない。貴方は間違いなく寂しがりやよ。常に他の人と肌が触れていないとダメなぐらいに心が脆いんだわ。でも大丈夫、今日からは私がそばにいるから」

「う、うん」

「それにしても、お土産屋で色々買い込むだなんて意外としっかりしてるじゃない。もっと色々抜け落ちてるとばかり思っていたわ。とはいってもちょっとした思いつきだったんでしょう?」

「う、うん。何故そこまでわかるんだ」


 俺が正直に答えると、リースは軽く笑った。


「うふふ、やっぱりね。そういうことを思いつきじゃなく狙ってやれるようになればもっとモテるわよ。まぁすぐには難しいでしょうけど」


 リースは何やら楽しそうだ。うーむ、何故だ。


「とはいっても、そのお土産を買った代金はあなたのお金じゃないわ。確かに貴方の物ではあるのだけれど、貴方の力とは言えないわよ」

「…うん」

「いつか貴方自身の力で人を喜ばせられるようになりなさい。とはいっても、それも既に少しはやっているんでしょうけど」


 そう言いながらリースがベッドの方に移った。


「…うん?」

「うん?じゃないわよ。貴方の力というのは、今のところは結局貴方の愛情よ。貴方の愛で私を幸せにしてみせなさい?ただし、罰は受けてもらいますからね」

「そ、そうか」


 よくわからない。罰って結局なんなんだ。


「私のこと、好きなんでしょう?」

「うん」

「心と体、それぞれどれぐらい好きなの?」

「どっちも大好きだ!」


 そんな流れで、いたすことになったわけだが。



 ---



 行為は、普段通りのはずだった。リースは当然処女であり初めての体で俺を受け止めてくれている。

 固さはあるものの俺の行為は受け入れてくれている。しかし何かが違った。


 何が違うのか?…それはなんと、スメスさんが黄文字で垂れ流す例のシステムメッセージだったのだ。


 Smes:リースの体力スキルが0.5アップ!

 Smes:リースの体力スキルが0.5アップ!

 Smes:リースの性交スキルが0.5アップ!

 Smes:リースの体力スキルが0.5アップ!

 Smes:リースの性交スキルが0.5アップ!


 そう、いつもはただ流れるだけでウザイと思うログなのだが今日はいつもと様子が違う。

 何故だ?どこがいつもと違うのか?

 何かがおかしいことはわかるのだがそこに気づけなかった。


 そして直にフィニッシュとなるわけだが。


 Smes:ヒロとリースの絆値が0.5アップ!

 Smes:リースの精力スキルが0.5アップ!

 Smes:ヒロとリースの絆値が0.5アップ!

 Smes:リースの愛がアップ!

 Smes:リースの愛がアップ!


 問題はこの後だった。


 Smes:ヒロの魔法スキルが0.3アップ!

 Smes:リースの魔法スキルが0.3アップ!

 Smes:ヒロの魔法スキルが0.3アップ!

 Smes:リースの魔法スキルが0.3アップ!


 なんだ、一体何が起きた。俺の体から、いつもとは違う何か別の物が流出していた。

 肉体的なものではなく精神的な力がどんどん流出していく、吸い取られる。


 止まらない。

 何か別なものがどんどん吸い取られる。

 これは一体なんなのだ?


「まさか本当に成功するとは思っていなかったわ。おやすみなさい、ヒロ」


 そんなリースの声を最後に聞いた覚えがするが、俺はそのまま気を失った。

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