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【glory of zero】  作者: 小鳥遊甘楽
第一章 金の懐中時計
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第4話 【逃げ出した狼】

とりあえず街には出たものの、この狼を連れてどこに行けばいいのやら。


「アレン・・・どうするの?」


不安気にエルナが聞いてくるが、正直アレンにも分からない。

学校で先生たちや他の生徒たちにこの一件がバレずにすんだものの・・・。

アレンは腕を組み、暫し狼をじっと見つめる。

狼は黄金色の瞳を輝かせて街を見回していた。時々道行く者にジロジロ見られては

わふわふと挨拶をするかのように小さく吠えて。


学校裏の街は、第一住宅街。

他の区には第二があるものの、規模は此方の方が遥かに広い。

ビルディングなどは一切見当たらず、アパートメントや大きな邸が佇んでいる。

道は白のレンガ作りになっていて、街路樹も立ち並びレトロな雰囲気。

緑が多いためかエネルギーの働きが活発なのかリラックスができる場所で、

アレンとエルナはよく昼食時に学校を抜け、街路樹の傍のベンチでランチするのだとか。


そよそよと気持ちの良い風が頬を撫で、髪の毛を靡かせる。

アレンの美しい碧色の髪の毛は風の方向に従い、ふわりと揺れる。

ふさふさの毛を持つ狼はそれは凄いもので、少しの風でもライオンが猛スピードで

獲物を狙って爆走しているときのタテガミの有様のような激しい揺れ方をしていた。

が、狼は気にも止めず心地良いと言わんばかりに目を細め、体を風を当てていた。


「それにしてもこの狼・・・目的は時計だけだったのかな?しかも俺たち、気絶までして・・・。」

「・・・・・・それに獣だから話すこともできないじゃない?なす術がないわね・・・。」


二人で悩んでると、狼は一人で勝手に歩き始めた。


「あ、ちょ・・・っ!勝手に動くなって!」


というのはもう後の祭りで、狼はとうとう走り出してしまった。

思い切り走ってはいないが、トットッと駆けて行く程度。

―がかなり速い。急いで追いかけなければと二人も走り出す。

あまり人目につくと武器を持つ者や、通りすがりのパトロール騎士達に殺されかねない。


追いかけるものの二人と狼にはかなりの距離が空いてしまった。

このまま街路を進めば、恐らく・・・・・・鉱山?

アレンは続く街路を目で辿り、そして目線を上に向けると――大きな鉱山を見つけた。

まずい、あそこに入られては面倒なことになる。



と、その時。


――ズキン――


いきなり強烈な頭の痛みがアレンを襲う。

あまりの痛さに思わず立ち止まり、しゃがんでしまった。


「う・・・・・・っ・・・!!」


どうしようもないこの痛みは初めてで、どうしていいか分からない。

割れるようなガンガンする痛みは気絶しそうなくらいで。


「アレンっ!!!?大丈夫!?どうしたのっ!?」


後ろを走っていたエルナも立ち止まり、アレンに駆け寄って背中を摩る。

”大丈夫だから”と言おうにも痛すぎて声が出ない。

そして、まだ誰も気づきはしない。――小さく揺らぐ瞳が一瞬だけ黄金色に変わったということは。


すると突然痛みがすうっと引く。

冷や汗がツゥー、と額から流れ、頬を伝うのがわかった。

そして頭痛のあとは体の怠さが全身を襲う。

先程の気絶後のように気分も悪くなってきて、顔色が序々に真っ青になった。


「・・・やっと頭痛は・・・なくなった、けど・・・。」

「え、頭痛!?さっきの気絶が後引いてるんじゃ・・・?」

「分か、らない・・・・・・。」

「えぇ・・・。あ、ていうかあの狼もどこかに行っちゃったわよっ!!?」


まさにこれは仕打ち。追い打ち。不意打ち。こういうときにだけはツイていない。

アレンなんてクレトン銀行が主催のハッピーバッグ宝くじにも何回も当たった経験があるというのに。

(100円×6 クレトン銀行ポストカード×9)


「それにあの狼・・・俺の時計を首から下げたまま・・・。」


ああぁぁぁ・・・と脱力感が襲い、頭を抱える。

あの懐中時計は結構大事なものだったのに・・・と、まぁ、今更後悔しても仕方ないが。


するといきなりアレンの携帯・・・いや、連絡用端末が鳴り始めた。

上着の裏のポケットに手をつっこみ、端末を取り出してぽちっとボタンを押し、耳に翳す。


「はい、もしもし?」

『もしもしーじゃないっての!!今どこにいるの??侵入者の知らせの放送が入ったあと、

アレンとエルナさんが姿を消したーってなって、今はとにかく授業始まってるけど・・・。

てゆーかそもそも学校に遅刻して来てなかったんじゃないの!?』

「あ、え、リナレア?え・・・あ、いやぁ、学校にはぎりぎり遅刻はしてないって!!

でもちょっと今ヤバイ状況で・・・っ!」

『ヤバイ状況って何!!!??あ、ちょ・・・っ』


とにかくどうこう言われる前にブチ切り。

今の通り、リナレア、リナレア・マクスタインは17歳で、アレンとエルナの友達。

アレンとは幼少期からの旧友だったりもするわけだが。

彼女はとにかく元気っ娘&口うるさい性格で、年下ではあるが頼れる存在。

まぁ本当に口うるさいけれど。

学力のほうはついていけていないようだが(結構危険)実践に向いており、

軍隊からの誘いを受けているらしい。確かに行動もキビキビしていて、

容姿も赤毛の髪にミリタリー風のカーゴ色の上下を着ており腰には銃弾とゴツイ銃が下げられてある。

結構な勢いで彼女は多分女性に生まれるよりかは男性に生まれたほうが良い思える。


「・・・リナレアちゃんよね?今の。

学校は事は収まったっぽいけど・・・とにかくこっちが、ねぇ・・・。」

「うーん・・・。懐中時計はなぁ・・・。それにあの神狼みたいな狼はなにか秘密がありそうだし・・・。

また学校に忍び込んできたらそのときはオシマイじゃないか?」

「そうね・・・・・・。探しに行くにしても学校があ・・・っていうかアレン、普通は制服は家で着てくるものでしょう?なんであなたはいつも私服で来るのよ・・・。」

「いやぁ、時間が無いもので。」

「誰のせいよ。」

「俺のせいです。」

「『学校』なんだから制服を着なさい!!」

「はい・・・。」


エルナはいつもピシィーッと制服を着こなしている。

白いシャツに黒いリボンタイ、そして濃紺のブレザーには腰辺りに紅と茶の太いラインが入っており、

スカートは同じく紅と茶のラインが施されている。

男子制服はそれの男版でタイがネクタイになっているだけ。

私服のものもちらほら見られるが、着るのが規則となっている。

リナレアはいつも私服でただの規則破りだと見えるが、本人に聞くと何故か黙り込むので謎。

とにかくアレンはただ間に合わないため私服で来る、という理由で。


「・・・で、どうするの?」


エルナが口を開き、再び狼を思い出す。

アレンは暫し考えたあとに鉱山を見ていった。


「とにかく、一応鉱山方面に行ってみるか。」

「でも鉱山って今は工事や鉱物採取作業が行われていて、職人たちが集まっているんじゃないかしら。

一般人が立ち入りなんて・・・・・・。」

「まぁ行ってみなきゃ分からないだろう?それに、それだけ人がいるなら

狼の行方もわかるかもしれないし。」


エルナはうーん、とアレンをジト目で見たが、今は手段はそれしかない。

しぶしぶエルナも頷き、今度は鉱山を目指すことにした。


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