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【glory of zero】  作者: 小鳥遊甘楽
第一章 金の懐中時計
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第3話 【目が覚めると】

ふと目が覚めた。

あれ、此処は・・・?なんて思いながら体に何か重みを感じる。

寝ながら見える範囲で胸部を見てみると――巨大な狼がいた。

慌てて声を出そうとしたが、そういえば同じ経験を以前どこかでしたことが――。

なんとなく戻ってきた記憶の中で、先程までの状況がぼんやりと思い返される。

そういえば、学校に侵入者が入ってきて――ロビーにいたら巨大な狼が現れて――

懐中時計を探しているようで――見せてみると狼は時計に触れて――光を放ち――自分達は気絶した。


といっても、なぜ発光なんかしたのだろう。

狼は、まぁ神のようなオーラ(デカいからそう見える)を放っているように思えても、

懐中時計はというとただのお古の普通品なわけで。

思い当たるのは『Ⅻ』に位置する文字盤の部分に青い宝石がくっついているということ。

それに狼は触れたから不思議な青い光を放ったのだろうか。

でも昔から、アレンは何度も青い宝石に触れていた。それでも変化はなかった。

獣だから―などの理由も根拠が無いし、何より獣が時計を求めること自体可笑しい。

そうなると原因はやはり狼だろう。いや狼にしかない。


今自分が横たわっている場所は学校の冷たい白いフロア。

今自分の体の上に乗っかっているのは例の巨大狼。

ようやく戻った記憶とまた忙しく働き始めた思考は次々と進展する訳のわからない

情報が詰まった未読メッセージを理解するのに大変だろうが、とにかく脳が追いつかない。

実に非現実的な事件だ。


気絶していた時間はそう長くはない。

侵入者という知らせが放送されてからも、この状況じゃまだ先生たちはこのロビーには来ていないようだし、この場に変わりもない。


上体を起こしてみると、鈍い痛みが全身を駆け回る。

そして起きてみるとずっしりと、狼が乗っかっているわけでもない重さと怠さ。鉛が入った様で。

気分も悪いし、気のせいか視界がうっすらぼやけているようで視力が落ちた感覚。

この気分の悪さが、頭をフル稼働させすぎて体に悪影響を及ぼしたというオチで終わればいいけれど。



――まぁ、そうであればこれから起こる事件達に巻き込まれずに済むのだが。




「・・・・・・ア・・・レン?・・・」


声がする方を見ると、エルナも目が覚めたのか体を起こした。

恐らくアレンと同じなのだろう、気絶後の全身の痛みと怠さに顔を歪ませる。

やはりエルナも光で気絶していたらしい。


「大丈夫か?エルナ」

「え、ええ・・・。それより・・・私たちが気絶したのって、やっぱりさっきの変な光のせい・・・よね?」

「ああ、だろうな・・・。それしか考えられないし。」


二人でアレンの横にぴったりくっついてクンクン言っている巨大狼に視線を移す。

エルナも緊張は溶けているらしく、その狼の様子を見て苦笑しながらため息をついた。


「この子、本当にどこかおかしいわね・・・・・・。普通の獣ではないみたいだし、

魔物でもなさそうだわ。ウルフとどこか似ているようだけどこんなに大きくない。

突然変異も考えられるけどこんな容姿のウルフなんかいないわ。

それに、目的はただ迷い込んだだけでなく、アレンの時計。しかもそれに触れて不思議な光を発した。

本当になんなのかしら・・・・・・。」


今までの経緯を全てまとめ、腕を組むエルナ。

アレンもそれに頷きうーんと唸った。

すると、アレンは自分の懐中時計がどうなったのか自分のポケットを探ったが、無い。

床に落ちてはいないかと辺りを見回すが、無い。

ふと狼を見てみると――なんと、いつのまにか首に懐中時計をぶら下げていた。

しっかり懐中時計のチェーンを首にかけている。


「あ、俺の時計・・・っ」


してやられた・・・とため息をつく。


遠くでぱたぱたと大人数の足音が聞こえる。


「・・・侵入者はどこなの!!」

「・・・この辺りしか心当たりがないな・・・」

「・・・・・・だ!!」

「・・・てください・・・!」


これはかなりヤバイ状況になった。

侵入者=この狼、で間違いないとは思うが、学校内にこんな巨大な獣がいると知られれば

即捕獲、もしくは退治される可能性もある。

流石に可哀想だ。多分この狼は人に害を加える危険はないらしいが・・・。


「アレン、どうするの!?たくさん来そうだけど・・・。」

「と、とにかく隠れよう!」

「どこに!!?」

「え、えー、えー・・・外だ!アウトドア!!」

「インドアのほうが安全だと思うけれど・・・」


そんなこんなで三人(『一匹』を含む)は急いで学校の裏口に向かった。

見つかっていないかを確認し、裏口のドアをして外に飛び出す。


それにしてもこんな巨大狼を連れて街に出るなどほぼ自殺行為に近い。

まぁ別にそれと言ってそこまでヤバイ状態にはならないのだが、注目を浴びること間違いなし。

でも今は学校生や先生たちに見つかるよりはマシだろう。


三人はとりあえず町に出ていくことにした。



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