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田舎町の騎士伝説

作者: 穀物 紙太郎
掲載日:2012/09/17

槍を持った老人が田舎町にやって来た

老人の身体は枯れた木のようによぼよぼで歯も所々抜け落ちて林檎一つ噛めそうにない 鎧兜は錆と傷が目立ちボロボロで民家にある鍋やフライパンの方が頑丈の様に思える 槍も矛先が錆び付き一突きで壊れてしまいそうな状態である なんともみすぼらしい風貌で、道行く人に後ろ指ささふれていた 老人は騎士に志願しに来たという それを聞いてた町人は大笑い 呑んだくれの男は口に含んだエールを吹き出して 馬屋の主人は馬の尻をバシバシ叩き笑いまくって 町の子供達は皆、笑い転げた

軍の手配師も笑いを堪えながら「あなたの様な棒切れ老人に一体何が出来るのか?」と意地の悪い質問を投げ掛けた 老人はこう答えた

「騎士になりに来たのだ 戦う事に以外に何があるのだ?」町人たちはまたも大笑い 「戦うって?あなたが? 立っているのもやっとなのに?」手配師はとうとう笑って、騎士にはなれないと老人に伝えた 老人はしょんぼりしてもと来た道へ戻り帰ってしまった


それから二週間がたったころ、田舎町に敵の軍隊が進軍していると知らせが入った、町人は我先にと道に行列を作り逃げ出していた その行列に逆らって


あの老人がやって来た



またもや老人は騎士になりに来たのだと言った 町人達はボケた老人だと呆れ返った そこで、一人の町人が「騎士ならば敵の軍隊を追い返して見せろそしたら、一人前の騎士だと認めてやる」と言った流石にあの老人でも無理だと諦めざるを得ないと思ったが「わかった 全力を尽くそう」と簡潔に答え町の広場で敵を待ち始めた 町人達は老人が心配になり、今なら逃げられる一緒に逃げよう と言ったが老人は首を縦には振らなかった 町人達はあの老人がいかに騎士になりたいかと言う確固とした覚悟を見せつけられて

老人の最期を見届けるため自分たちも一緒に残る事にした


呑んだくれの男は老人と楽しく歌っての酒を飲んだ 老人は意外に酒豪で樽いっぱいのエールを飲み干して人々を大いに驚かせ楽しませた


馬屋の主人は「立派な騎士様には立派な馬が必要さ」と言って上等な馬を一頭譲ったが老人には大きすぎて乗りこなせなかったが馬車でも引かせると言って喜んだ


町の子供たちは「僕も大きくなったらおじいさんの様な立派な騎士になるんだ」と毎日母や父に言っていた その話を聞き子供達の遊び相手になったり 子供達に騎士物語、戦士の伝説などを語り子供達から深く慕われた


一週間が過ぎ町人達は老人に深い敬愛の念が芽生えており、町人達は老人には死んでほしくないと考えていた

一人の町人が「なぁ…敵が来たらみんなで降伏しないか…?抵抗しない者には寛大な処置がくだされているらしいんだ…」と提案した 勿論自分達の命も惜しいが老人の命を大事と思っての提案だった 町人達は皆それに賛同した 例え敵に頭を下げても老人の命も守りたかったのだ


敵の軍隊が町の入り口にやって来た

町人達は皆で歓迎し、敵の司令官に自分たちは敵意が無いことを説明し人命と町の安全を願った

司令官は「わかりました 兵士達には略奪と町人達への暴行を固く禁じます」と約束を交わしただが、それに続けて「ただここでの滞在を許して頂きたい 遠征で兵士達は疲れている」一瞬町人達の顔に難色を写したが渋々承諾した 「では、中に入れて貰うぞ」馬の足が入り口に入ろうとした瞬間



「ここには入れさせんぞ!!!!」 老人が立ち塞がった


「止めろじいさん!殺されちまう!」「退くんだじいさん!」「やめてちょうだい!おじいさん!」「誰か止めてくれ!!」町人達が老人の身を案じて大きな声で諭すが、老人の目は敵を睨んで離さない

「ご老人何をなさっておいでで?」司令官が落ち着いた口調で訪ねる

「わしは、騎士じゃ!お前さんらを追い返し皆を守る様にと頼まれとる!!」ほう…と呟き司令官は町人達を見た 町人達は一瞬たじろいだが、「そうだ俺達が頼んだのさ!」「じいさんを殺るなら俺らも殺れ!」「こうなったら俺ら一緒に戦うぞ!」と司令官に交戦の意を伝えた 「わかった 皆殺だ……というところだが、ここはどうだろう私とそこのご老人との一騎討ちということで」

老人はすかさず「いいだろう!」と強く返事をした





町人と兵士達は広場で円を作りその中心に老人と司令官が相対していた 兵士の側からは勝利を確信してか大いに盛り上がっていたが、町人達は老人を心配して今生の別れを惜しむかのように嗚咽が混じり泣き崩れている者もいる

「さぁ、始めようか」片手で金銀装飾されたレイピアをヒュンヒュンと振ると 腕を前につきだし構えた 余裕の表情だ

「むう…」老人は覚悟を決めた様に唸るような返事をした「はぁ!!」司令官の剣は蛇の様にしならせ、老人の鎧の隙間を狙って切りつけた

「くっ…!」老人は声を漏らさず堪え忍んだ

「とりゃあ!!」司令官が十分に近いたところを素早く槍で一突き 咄嗟のところで司令官は避けて距離を取る 服が切れていた

「鋭い突きだ 驚いたよ…まさかご老人にこんな槍さばきが出来るなんてね… もう少し近づいていたら危なかったよ…」司令官は素直に老人を称賛した 「だが、次で決めるよ…」司令官は構えながら

ジリジリと老人に近づいた

「ふ…!」司令官は一気に距離を詰め鎧の隙間の脇目掛けてレイピアを深く突き刺した

「がはぁ…」老人は膝から崩れ落ちた

町人達が騒ぎだす「止めろ!じいさんもう十分だ!」「もう降参でいい!助けてやってくれ!!」町人達は敵に懇願した

「どうする? ご老人?」司令官は老人に訪ねる

「まだだ…まだじゃ…!!」老人は虫の息で 絞り出すように声を出した 槍を杖にしてなんとか立ち上がる 敵側も「すげぇ…」「なんて爺だ…」「騎士だ…本物の騎士だ…」と老人の姿に胸を討たれ司令官に助命を願う声もでたが、騎士に失礼だと却下した


「さぁ…騎士よ 行くぞ…!!」司令官が疾風の如く飛び出した


「来ぉい!!!」老人は迎え討つように槍を構え

突き出した 「あまい!!!」 握りの護拳で槍の矛先を砕き軌道をずらした


「もらったぁ!!!」司令官が脇にレイピアを突き立てようとした瞬間








老人は大きく前にでて司令官の懐に入り

「こぅおらぁ!!!」強烈な頭突きを食らわせた


「バ……カな…」


がくりと司令官は地面で伸びてしまった














それから数百年がたった


あるバックパッカーが田舎町に立ち寄った


その町で子供達が何か円になって踊りながら歌っている とても楽しそうだ



ま~ちに よぼよぼ やってきた~♪

なん~でも きしさま なりたいと~♪

そ~したら み~んな お~わらい~♪



ま~ちに いくさが やってくる~♪

は~やく みんなで にげないと~♪

そ~したら よぼよぼ やってきた~♪



よぼよぼ ひとりで おいはらえ~♪

よぼよぼ やくそく してしまう~♪

みんなは よぼよぼ しんぱいで~♪



よぼよぼ さ~けを のみほして~♪

よぼよぼ う~まを てにいれて~♪

よぼよぼ みんなの にんきもの~♪



いくさが ま~ちに やってきた~♪

いくさと よぼよぼ いっきうち~♪

よぼよぼ いくさを おいはらう~♪



えいゆう よぼよぼ たたえろよ~♪

ゆうしゃ よぼよぼ ありがとう~♪

すごいぞ よぼよぼ きしさまだ~♪



「へぇ~いい歌だね」ついつい子供たちに話し掛けてしまったようだ

「お兄さん旅行客さん?」こんな大きな荷物持っていれば、誰だってそう思うよね

「そうだよ よくわかったね」

「わかるよ~♪ だってこの町でこのお歌知らない人なんていないもの」なるほどそんなにこの町ではメジャーなうたなんだね

「ところでさ、さっきの歌をのなかでよぼよぼってあったけどあれは、一体なんなんだい?」

「うーん」子供たちはどうやって説明しようか悩んでいるみたいだ そんなに複雑なものなのか

「あっ!そうだよ!見せればいいんだ!」「うん そうだね」「そうしよう!」「お兄さんついて来て!」子供会議を開いた結果、何かが唐突に採決されだようだ


とりあえず子供の後を走ってついて行った そんなに急ぐことなのか?


どうやら町の広場についたようだ 車の行き交いは激しく、人通りも多い こんな場所に一体何があると言うのか


「お兄さん あれ!」子供の指差す方向にはモニュメントがあった それはボロボロの鎧姿の老人を中心に人々が楽しいそうに酒を飲んでいる銅像だった そして、それを見ると疑問はさっぱり晴れた

その鎧姿の老人の歯は所々抜け落ちて 身体は枯れた木の様に細々としていてなんともみすぼらしい風貌で、そうだな簡潔に表すなら……



「ねっ!“よぼよぼ”でしょ!」


「ははっ……そうだな “よぼよぼ”だな」

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