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初仕事?

 オルセンに着いたのは、まだ夕方になりかけって時刻だった。

 とりあえず宿を決めようって事で、今は宿捜しちぅ。


 メインストリートは結構広く、両側には様々な店舗が軒を連ね、路上には屋台の露店が散在している。

 

 「ん、コレ旨いな。」

 「うん、美味しい♪」


 露店で買った串焼き肉を頬張りながら、屋台のおっちゃんに教えて貰った宿屋に向けて歩いているんだけど。


 なんつーかさ、すれ違う男どもがさ、みーんなしてエルの事見て行くんだよね。

 ほとんどのヤツが、それこそ下心丸出しって視線で。

 で、ついでとばかりに、エルを左腕にぶら下げた俺にドス黒い視線を投げて行く。

 うん。気持ちは解る。解るけどやっぱムカつく。


 エルは放せって何回言っても

 「やだ♪」

 の一点張りだし。

 まー腕にぷにぷになナニカが二つばかり当たるんで、良しとしとこう。うん。

 

 そうこうしてるうちに目的地に着いた。


 『銀熊亭』


 なんかどっかの映画賞みたいだな、とか思いつつドアを開ける。

 中は普通っぽい酒場兼宿屋だな。汚くは無いし、酒場にいる客のガラも悪そうには見えない。

 (うん、アタリだな。)

 俺一人ならどんな宿だって平気だけど、エルが居るからねー。

 いくら強くてじゃじゃ馬って言っても、そこはやっぱお嬢様なんで、そこらのゴロツキとかには慣れて無い。


 内心で安堵しつつ、カウンターに陣取る女将さんぽい人に声をかけ・・・ようとして、エルに先を越された。


 「すいません、部屋空いてますか?」

 「あー空いてるけど、アンタら冒険者かい?」

 「はい、駆け出しですけど。」

 「あっはっはっ、誰でも最初は駆け出しさね。

  頑張りな、嬢ちゃんたちも。

  で、部屋は一つで良いのかい?」

 「二部屋お願いします。」

 「おや、てっきりそういう間柄だと思ったんだけどねぇ・・・まぁ良いわ。

  部屋が塞がったほうが儲かるしね。」

 「あの、食事とかは?」

 「あぁ、朝晩込みなら安くしといてあげるよ。手間はそんなに変わらないからね。」

 「あ、お弁当とか頼めますか?」

 「あぁ良いよ。前の晩に言ってくれれば、朝には用意しとくよ。」

 「ありがとうございます。」

 「おいくらになりますか?」

 「二部屋で一晩40ガル。朝晩付きなら10ガル乗せておくれな。」

 「じゃ、とりあえず朝晩付きで2日お願いします。あと明日お弁当を。」

 「はいよ。弁当は受け取る時に5ガル払っておくれなね。」

 「えっと、2日分100ガルです。」

 「はい確かに。それじゃ鍵はこれね。

  二階の一番奥とその手前を使っておくれな。」

 「はい。お世話になります。」

 「あっはっはっ、礼儀正しいお嬢ちゃんだねぇ。ま、ゆっくりしていっとくれ。」



 うーむ、エルのやつ、いつの間にあんな会話力を・・・。

 あ、ちなみにガルってのはこの国の通貨単位ね。

 大体1ガル=¥100 ってカンジだな。

 

 「お前、こーゆーの慣れてたっけ?」

 「そんなわけ無いでしょ。ちょっと練習してみたの。」

 「練習?」

 「うん。だってこれからはこう云う生活になるんでしょ?早めに慣れておこうと思って。」

 「しっかし、良く弁当にまで気が回ったなぁ。」

 「だって、明日仕事請けたら、町の外出るんでしょ?」

 「あー多分な。町中の仕事ってあんま無いしな。」

 「ならお昼の事くらい考えて当然じゃない。」

 「いやまぁ、そうなんだけど・・・お前初めてなのに大したもんだなー。」

 「な、何よ、おだてたってなんにも出ないわよっ!」

 「素直に褒めただけだっての。今さらお前おだてたって意味無ぇし。」

 「あ・・・う、うん。ありがと。」

 「改めてお礼言われるとなんだかこそばゆいな・・・。」

 「もう、自分から言ったくせに。」

 「まーそうなんだけどさ・・・。」

 「むー。・・・とにかく、さっさと荷物置いてゴハン行きましょ!」

 「そーだな。メシにすっか。」


 

 晩飯は旨かった。

 半日歩いて来たから、俺もエルも結構食った。

 女将さんが、

 「若いって良いわねぇ・・・」

 と、なんか意味深な笑顔でつぶやいていた。聞こえなかった事にした・・・。



 翌朝、女将さんから弁当を受け取った俺らは、オルセンのギルドに来ていた。


 「うーむ。良いのが無いなぁ。」

 「・・・だねー。やっぱりとっととランク上げたほうが良いわね。」

 「と言ってもだ、仕事こなさなきゃランクも上がらんわけで。」

 「だよねー。世の中甘くは無いって事よね・・・。」

 「お?なんか新規依頼入ったみたいだぞ。」

 「あ、今貼り出したやつね・・・えーと、ココロゲ草の葉100枚で500ガル。100枚以上の余分は1枚あたり5ガルで買い取り、だって。」

 「期限と最低ランクは?」

 「え?えっと、3日以内。D以上推奨。」

 「良し。受けよう。」

 「初仕事だね♪」

 「あぁ、だから失敗しねーようにな。」

 「何それ!自分は大丈夫、みたいな!」

 「大丈夫だからさ。なんつっても首席様が憑いてるからなー?」

 「・・・なんか”ついてる”の発音、微妙に違わない?!」

 「さーなー?」

 「あ、こら待ちなさいよー!」



 旅立ってからの初仕事を請けた俺らは、必要な物品を買い揃えてから町を出た。

 必要な物品ってのは、採った薬草を入れる袋とか、まーそんな細々したモン。

 

 俺のチートで出しても良かったんだけど、エルに経験積ませる必要あるしね。

 キャンプとか行くと良く解るんだけどさ、あーアレ持って来れば良かったーなんて後悔したりするんだよね。

 そーゆーのって、一度経験しないと解らんから、とにかく経験させよう、と。

 まー今回は初仕事なんで、あんましマヌケなミスで失敗しちゃったら、流石にあいつが可哀想だから、先に必要な物を教えてやったんだ。


 え?薬草の生息地の情報は得たのかって?

 んなもんチートで一発ですがな奥さん。

 今回は、たまたま俺が本で読んで知ってたって事にしといたけどね。



 町から北へ延びる細い道。

 そこからさらに脇道に入って半日。

 目的地に着くのは夕方くらいかな、と思ってたんだけど、思わぬトラップががが!


 エルフの美女が倒れていたのだ。

 しかも、しかも、しかもだ!!!


 彼女は巨乳なのだ!巨乳!←ココ重要。スッゴク重要。テストに出るよ。

 この世界、この時代には、シリコンだの何だののパチモンおっぱいは存在しない。

 従って、彼女のアレは天然物なのだ!!


 見た目は20歳ちょい前ってカンジだけど、エルフは長命だしなー、まず俺らより年上だろー。

 用心しながら近付いてみると、脇腹にかなり深い傷口が見える。


 「だ、大丈夫かな?」

 「とりあえず傷を見てみないとな。何とも言えないよ・・・でも結構ヤバいかも」


 流石にちょっとテンパリ気味のエルを落ち着かせるか。

 こーゆー時は忙しくさせておくに限る。

 

 「エル。お湯沸かしてくれ。なるべくたくさん。」

 「あ、うん分かった。」

 「あと、この人の服、切る必要がある。頼めるか?」

 「うん、大丈夫・・・だと思う。」

 「俺は、この人をこんな目に遭わせたやつがまだ近くに居るかも知れないから、結界を張る。

  まー並みの魔獣じゃ破れないから安心しろよ。」

 「・・・うん。信じる。」

 「良し。じゃ、その人を頼む。服切って傷を良く見えるようにして、お湯で洗ってくれ。

  あとは俺がやる。」

 「ターク、出来るの?」

 「出来る。こういう仕事なんだ、負傷者が出るのは当然だろ?

  だからそれに備えて勉強も練習もしたんだ。」

 「でもエルにも手伝って貰うよ。一人じゃ無理だから。」

 「うん、何でも言って。」

 「ぢゃぁおっぱい揉ませtびゅああぁっ!」

 「さっさと結界張りなさいっ!」


 嘘ぢゃ無いよ。勉強も練習もしたんだよ。現世じゃ無いってだけで。

 もっとも、チート使えば一瞬で治せるんだけどね。

 エルの教育(断じて調教では無い!)のために、ちょいとエグいトコ見せておこうかなーってなカンジ。

 あいつバカじゃ無いからね。これからこーゆー場面に当たり前のよーに出くわすってのは理解してる。

 だから、昨日のあいつの台詞じゃ無いけど、早めに慣れておくべきなんだ。

 どんなに血塗れでグロくて痛そうでも。


 それで仲間の、友達の、あるいは恋人の命を救えるかどうか、って時に慌てずに済めば。

 そしてそのおかげで彼らが助かれば。


 自分が慌てたせいで彼らを救えなかった、なんて、辛過ぎるよね。後悔してもしきれない。

 そうならない為に、今はちょっとだけ辛い思いをして貰う。


 大丈夫だ。俺なら彼女は助けられる。

 そして、あいつはきっと耐えられる。乗り越えられる。

 首席だもんね。



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