オワタ
八方塞がりだな。
封印は良い案だと思ったんだが。
封印そのものは、出来なくも無い。アイツを千年くらいは閉じ込めておけるだろう。
問題はその後だ。
俺は不老不死じゃ無い。あと50年もすれば大往生する。この世界から消える。
だがアイツは残る。950年だか経ったら復活する。
誰がアイツと闘うんだ?
俺の子孫?無理だね。
徳川将軍は15人だぜ?300年足らずで、だ。900年とか経ったら何代だ?
俺の二代目か三代目くらいなら、相当なモンかも知れないから可能性はあるが、
そんな未来の子孫に期待出来るかってーの。
俺が死ぬ直前に封印解いて、アイツぶっ飛ばす?
俺いつ死ぬかなんて判らんての。事故死とかは無いけどさ、寿命は判らん。
腎虚とかで案外早死にしそうだし。
困ったなぁ。やっぱ死ぬしか無いのかなぁ。
あいつら残して逝きたく無いけど、他に打つ手無いんだよなぁ・・・。
相打ちになって、アイツと一緒に逝くか。
それなら、あいつらも諦めつくか、な・・・。
「って、ゾンビになってもブレス吐くのかよっ!」
「右っ!3体来るわっ!」
「まかせるのじゃ!」
「後方はクリアですっ。」
「ドラゴンゾンビなんて、嫌いですぅっ!」
「あぁ、もうキリが無えっ!」
「っ!このっ!ドラゴンゾンビもっ!」
「ただの、じゃ、無いっ!ですねっ!」
「まだ来るのかっ!」
「後ろから幻獣がぁっ!」
「くそぉ!吶喊~~~っ!」
「あっ!コラっ!」
「くっ!一人で行くつもりじゃな!」
「うー、邪魔ですっ!」
「にゃぅぅ!行っちゃいましたぁ!」
「くっそーっ!スグ追いついてやる!一人で逝かせるもんですかっ!」
「邪魔するなぁっ!」
「どきなさいっ!」
「ふぅぅ~~~っ!」
懐かしい、と言えるのか。
白いワイシャツと濃紺のスラックス。俺の高校の夏服。
ワイシャツの左胸には、俺が突き刺したナイフがそのままだ。
血はあまり出て無いな。ナイフ抜いたらスゴいだろうが。
なんでだろうか。あまりトゲトゲしい感じがしない。ああ、眼だ。眼が違うんだ。
今までだったら、すぐさま狂気と憎しみを込めた視線をぶつけて来たのに。
今のアイツの眼は、なんか違う。
「よぉ、待たせたな。」
「全くだ。」
「お前、ヤンキー口調はどした?」
「ずっと一人だぞ。人格も変わるさ。」
「遅すぎじゃ無えか?」
「確かにな。遅すぎた。」
「ココのゾンビやら何やらは、お前がやったのか?」
「俺は何もしてない。ただココに居ただけだ。」
「居ただけ、だと?お前が?」
「そうだ。俺はココに現出した。そのままココにいる。何もせず、ずっとな。」
「・・・じゃぁ、精霊弄って幻獣にしたりとかは・・・。」
「俺が故意にしたんじゃ無い。勝手になっちまったんだよ。」
「お前の力にアテられただけだってのか?」
「そんなところだろうな。トカゲどももそうさ。勝手にああなった。」
「居るだけで災厄か。難儀な奴。」
「そういえば、今回は随分遅かったな。」
「お前がエグい事やってくれたから、コッチ来るのが遅れたんだ。」
「それはすまなかったな。だが、おかげで俺は待ちくたびれたよ。」
「自業自得だろが。って、ホントに待ってたのか、俺を。」
「あぁ。もう疲れたからな。」
「そりゃ、お互い様なんだがな。」
「良く言うよ。毎度毎度美女侍らせてたくせに。今回は特に粒揃いのようだが。」
「あ、あれは、その、まぁ、役得だ。」
「俺には何も無かった。」
「・・・」
「嫌われ、憎まれ、恐れられた。それだけだ。お前の妹にされたように。」
「お前・・・気づくの遅いよ。」
「悪かったな。だが気づいたんだよ、やっとな。」
「ひとりぼっち、だってか。」
「そうだよ。俺を愛してくれた者は居ない。誰一人。」
「けど、最初の人生の家族とか・・・。」
「戸籍と血縁だけの家族さ。円満な家庭とはほど遠い、な。」
「・・・だからって。」
「解ってる。いや、解ったんだよ。お前の妹にした事が、どれほど酷い事だったかはな。」
「・・・そうか。それなら・・・もうお前憎む必要は無いな。」
「お前を殺したのは俺だぞ?」
「お前を殺したのも俺だ。チャラだな。」
「憎く無いのか?俺を。」
「俺が憎んでいたのはな、妹を苦しめた男だ。妹を苦しめているのに気づこうともしなかった男だ。」
「お前は俺に殺され、俺のせいで何度も世界を渡らされたんだぞ。」
「だから、殺されたのはアイコだしな。世界巡りさせられたのも、お前のせいじゃ無え。
どっかの誰かか、力か知らんが、そいつのせいだ。」
「・・・お前は、本当に俺を許すと言うのか?クルスタカシ。」
「っ!そ、その名前・・・。」
「そうだ。思い出したか?お前の最初の、いや本名か。来栖隆志。」
「隆志・・・そうだ、それが俺の名だ。ゴトーアキノリ。」
「っ!ごとうあきのり・・・後藤・・・後藤明紀。」
「お前も忘れてたのか。本名。」
「お互いに覚えていたのか・・・相手の名のみ。」
「さっきまで忘れてたけどな。」
「俺もだがな。」
「そんなもんかもなー。長すぎたよな。」
「ああ、長すぎた。いや、遅すぎた。」
「お前がなー。」
「うるせぇ、俺はバカなんだよっ!」
「お、昔に戻ったかぁ?」
「けっ、自分の名前も忘れて、チャラチャライチャイチャしてただけの奴に言われたかねーな?」
「な、なんだとっ!テメェこそ、ブッコワスブッコロス喚いてただけのガイキチだろがっ!」
「ああ?やるってのかオメェ?ミンチにすっぞぉゴラァ?」
「へっ、連敗記録更新させてやるぞオラァ!」
「「ブッコロス!」」
「へへへ~ん♪やっぱ俺の勝ちだな。」
「く、くそぉ・・・さっさと殺れよ・・・。」
「・・・なぁ。」
「あん?んだよ?」
「お前さ、もう終わりにしたくね?」
「・・・」
「俺は終わりにしたいんだがな。」
「出来る・・んか?」
「多分・・・な。お前次第だけどな。」
「どうするんだ・・・?」
「謝れ。俺だけにじゃないぞ。俺はあくまで代表だ。今まで悪い事してきた人全部に謝れ。」
「・・・許してもらえるのか?」
「さぁな。」
「さぁな、てお前・・・。」
「でも俺が許す。代表して俺が許す。」
「・・・許してくれるのか?お前が一番・・・」
「一番エラい目に遭った俺が許すんだ。他の人も許してくれるさ。」
「・・・けどよ・・・。」
「あーうだうだ言うな。ダメモトなんだし。ダメだったらまた大人しく次で待ってろ!」
「・・・解った。・・・俺が悪かった。許してくれ。来栖隆志。」
「ああ許す。お前を許すよ、後藤明紀。」
「な、なにっ!まぶしっ!」
「あっちですっ!」
「な、なんじゃこの光は・・・」
「眼が、眼がぁぁぁぁぁぁ!あぁぁ!」
「終わったの?」
「みたい。」
「みたいって・・・。」
「また・・・飛んだのか?」
「いや、多分もう・・・。」
「にゃ?死んだんですかぁ?」
「アイツはもうとっくに死んでるよ。俺が殺した時に。」
「じゃ、じゃあ?」
「消えた?散った?とにかくもう、アイツは何処にも居ない。」
「この世界以外にも、ですか?」
「うん。何処にも居ない。消えちゃった。」
「そ、それじゃぁ・・・。」
「貴女も死ななくて良いのね!」
「多分・・・。」
「なんだか元気が無いのぅ。」
「きっと・・・淋しいんですよ。」
「強敵と書いて”とも”と呼ぶ、ですぅ。」
「私たちが、いーーーっぱい慰めてあげるから。」
「元気出してくださいね。」
「これから子作りに励まねばならんしの。」
「いっぱい産みますぅ。」
「ネコだと・・・6つ子とか出来そうだよな・・・。」
「あ、復活した。・・・ふ~んだ。私もいっぱい産むもん!」
「私だってたくさん産みますっ!」
「わらわも負けぬぞ!10人は・・。」
「私だって、多産なんですからぁっ!」
「いやもうお前ら、とにかく帰ろう。みんなで帰ろう。な?」
「うん」「はい」「うむ」「はいぃ」
後悔とか悔恨とか、もうそんなのばっかです・・・
中盤以降ダレちゃったのが大きな反省点だと思っています。
お付き合いありがとうございました。
次作はもっと練ってから投稿します・・・したいけど・・・無理かも。