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漢の背中は・・・

 冬の海である。某△な映画会社のロゴっぽい、どぱーんな波の打ち付ける岩場である。

 打ちひしがれ、煤けた漢の背中に、これほどふさわしい場所は無いだろう。


 そう、今の俺にだ。


 エルの中のホンモノ?が、ある程度回復したらしい。

 あいつ最近やたら食うよーになったなー、と思っていたが、それが理由だったらしい。

 妊娠みたいなモンらしい。ツワリとかは無いがね。ただ食う量が倍増しただけ。


 そもそも、俺の子以外孕むなど許さん。俺の子以外、あいつの子宮に入る権利は無い。

 そう言ったら、真っ赤になったエルにバカバカと連呼され、ほぼ同数のワザをキメられ、

 何故か加わった残り二人にも激しく攻撃されて、7回目の死を意識するハメになった。


 だが、俺が煤けているのは、それが理由では無い。あれぐらい慣れている。


 ホンモノ?が、エルに入る時に言っていた、追加の便利機能とやらがスゴかったんである。

 まだ一個だけなんだが、それがスゴいんである。チートなんである。

 もっと増えるわけだから、エルは近い将来”神”になっちゃうかも知れない。


 で、その能力ってのが、転移である。おまけに全然酔わないスグレモノである。

 しかも、いちいち座標入力云々せねばならん俺のより、遥かに便利なんである。


 あいつが覚えている場所なら、一発で飛べるんである。ル○ラである。壁なんて無視である。


 あいつらは、それを使って里帰り中である。三人とも土産を山ほど抱えて帰省である。

 大半がチョコレートなのはどうかとも思うが。

 当然、俺も一緒にと言われたが、断固拒否した。

 俺にだって、俺にだってなぁ、ちっぽけだが漢のプライドつーもんがなぁ・・・。


 俺がして来た苦労はなんだったのか。

 あの転移後の苦しみに耐えた時間はなんだったのか。三人生分だぞ。

 あー、やっぱ術式だかなんだかを直すべきだったか。理数系苦手なんだよなー。 

 まさか俺とアイツ以外に、使えるヤツが出るとは思わんかったからなー。

 あいつの転移教わるってのも癪だしなぁ・・。

 

 崖っぷちで冬の海を眺めながら、俺は一人黄昏れている。


 

 「いけませんっ!」

 「どぁぁぁぁっ!落ちるぅぅぅっ!」

 「自殺なんてダメですぅっ!生きていればきっと良い事もありますぅっ!」

 「殺す気かっ!自殺幇助かっ!」

 「にゃっ?!」

 「にゃっ?!じゃねえ!、勝手に人を自殺志願認定するんじゃないっ!この、えーと・・・巫女?」

 「ほぇぇ?早まってないんですかぁ?そんなぁ・・・あれほどのマイナスオーラを・・・。」

 「崖っぷちでいきなりタックルかますな、このバカ巫女。落ちたら意味ねーだろが。」

 「だ、だってですよぉ、声かけた途端に飛び降りられたりしたらぁ・・・。」

 「だからってな、あれ俺じゃ無かったら一緒にダイブしてたぞ?

  知り合いですら無いのに無理心中に付き合わせるつもりだったのか?バカ巫女。」

 「にゃぅ、バカですよぅ、どうせ私はバカ巫女ですよぅ・・・。」

 「解ればよろしい。お前バカ巫女確定。」

 「にゃぅぅ・・・人助けしたハズなのにぃ、バカ巫女認定される結果にぃ・・・。」

 「ところでバカ巫女。お前獣人か?なんか違う気がするんだが?」

 「わ、私は獣人じゃ無くて、その、猫又ですぅ・・・。」

 「猫又だと?妖怪かよおい・・・。」

 「にゃぅ、妖怪さんですぅ・・・。」

 「さては、俺を突き落として自殺に見せかけた上で喰う気だったんだなっ?!」

 「にゃぅっ!そ、そんな事しませんっ!私は人間と同じ物しか食べませんっ!

  それに、そんな事思いつくほど頭良くないですっ!」

 「自覚はあるんだな・・・バカ猫。」

 「にゃぅぅ・・・バカ猫にクラスチェンジですぅ・・・。」

 「しかし、なんで妖怪が巫女なんぞ?」

 「にゃ、ここの御社・・・私のいる霊社は商売繁盛の精霊様を祀ってるので・・・。」

 「・・・招き猫?」

 「はいぃ・・・。その、私はイヤなんですけどぉ・・・。」

 「うーむ。なんか弱味握られてるとか?」

 「にゃっ!違うですぅ。招き巫女やってれば、いつか人間になれるからって・・・。」

 「・・・ホントにバカだな、お前。」

 「にゃっ!?」

 「猫が猫又に変化する事はあってもな、猫又が人間になる事は無い。絶対に。」

 「にゃにゃっ!じゃ、じゃあぁ、私はぁ・・・。」

 「騙されたんだよ。そこの神主だかなんだか知らんが、そいつに。」

 「うぅぅぅにゃぁぁぁぁっ!怒ったですぅっ!許さないですぅっ!!」

 「落ち着け。」

 「にゃっ!シ、シッポはダメですぅ!・・・うにゃぁぁ。」

 「この霊社、お前が居なくなると困るのか?寂れてるっぽいんだが。」

 「はいぃ・・・お札とかおみくじとか、私が売らないと買って貰えないみたいですぅ・・・。」

 「大きいお友だちしか来ないのか・・・。どこが商売繁盛やねん。」

 「元々、どんな精霊様をお祀りしてるのかも、良く判らないんですぅ。」

 「・・・それもう霊社じゃ無いから。なぁお前、もうこっから逃げちゃえ。」

 「にゃっ!やめちゃうのは良いですけどぉ、で、でも他に行くトコ無いんですぅ・・・。」

 「妖怪のくせに一人じゃ生きられないってのか?」

 「にゃぅぅ・・・生まれた時から招き巫女しかやった事無いんですぅ・・・。」

 「むぅ・・・。」


 「コラ!マナミっ!何を遊んでおるか!?さっさと売り場に戻れっ!」

 「おお、貴殿が神主殿か?」

 「カンヌシとは何じゃ?ワシはれっきとした御霊主・・・。」

 「これは失礼、私の故郷では神主と呼ぶので。

  それにしてもご立派な霊社。御利益もさぞかし。参拝客もさぞや大勢・・・。」

 「当たり前じゃ!参拝客は引きもきらず、お賽銭はもう溢れんばかりじゃ!」

 「流石はれっきとしたミタマヌシ?いや素晴らしい。」

 「はっはっはっ、いやなに、それほどでもあるのう・・・。」

 「それにしても妖怪なぞ、このご立派な御社にはふさわしくありませんな。」

 「あ、いや、こやつはじゃな、放っておくと何をしでかすか分からんのでな・・・。」

 「にゃっ!」

 「それはご奇特な・・・しかし、この御社には似つかわしくありませんなぁ。

  私が引き取り、しかるべき処置を致しておきましょうぞ。」

 「にゃにゃっ!?」

 「あ、いや、そ、それは・・・。」

 「なに、私はこれでも故国においては王家に連なる者。妖怪なぞ放っては置けませぬ。

  お任せあれ、必ずや成敗してくれましょう。

  あ、貴殿の今までのご苦労にも報いねばなりませんな。些少ながら、これを・・・。」

 「っ!・・・あ、まぁ、そのような御仁にそこまで申されると・・・

  こりゃマナミ、おまえはもうこちらの方にお任せする。

  この社に戻るで無いぞっ!成仏せぃっ!」

 「にゃにゃにゃっ?!」

 「では、そういう事で。おい、行くぞ妖怪。人目に付かぬ場所で引導渡してくれるわ。」

 「にゃっ?!にゃにゃにゃにゃぁ~っ!?」



 「にゃぅ・・・ホントに殺されるかと思ったですぅ。」

 「んな事するか。悪さなんてしてねーんだろ、お前。」

 「はいぃ、した事無い、と思いますぅ。でもぉ・・・。」

 「ん?」

 「私ぃ、これからどうすれば良いんですかぁ?」

 「勢いつーかノリで連れてきちまったからな、なんも考えてないぞ。」

 「にゃっ!?ひ、酷過ぎですぅっ!」

 「はっはっはっ!まぁ考えてやるから、テキトーに。」

 「///にゃぅっ!な、なでる、の、は、にゃぅぅぅん///」


  

 「で、連れて行くしか無いって事?」

 「あーまー、うん。」

 「・・・行き当たりばったりと云うか・・・。」

 「はっはっはっ!そう褒めるな。」

 「何も考えて無いと云うか・・・。」

 「いつもの事じゃん。それに・・・。」

 「///ごろごろごろごろ~♪///」

 「な~んか懐かれちゃったし。」

 「「「くっ!」」」

 



 「油断してたわね・・・。」

 「まさか、ここまで来て新キャラとは・・・。」

 「うかつであった・・・。」

 「ネコミミシッポ・・・しかも巫女・・・。」

 「色々装備してます・・・。」

 「あぅ、妹系キャラが、わらわとカブるのじゃ・・・。」

 「ネコのくせに、おっぱいが・・・。」

 「かなりのモノです・・・ネコなのに・・・。」

 「むぅ、わらわにひってきするとは・・・ネコごときが・・・。」

 「と云って、いぢめたりしちゃ可哀想だし。」

 「ですねー。大体タークさんの周りに集まる女の子って・・・。」

 「自分で言うのもなんじゃが、良い娘だけじゃからのぅ。」

 「きっと、なんかスゴい能力とかあるんだろうし。」

 「ちょっと癒し系ですし。」

 「おバカっぽいがの、そこがまた・・・。」

 「認めるしかないわねー。」

 「ですねー。」

 「負けじゃのぅ。」


 「でもそうなると・・・。」

 「ですね。」

 「出歩く時が問題じゃのぅ。」

 「全員くっつけなくなるわ。」

 「残るはおんぶに抱っこだけです・・・。」

 「それは許せんのじゃ。」

 「んー、両腕だけにして・・・。」

 「ローテーション組むしか無さそうですね。」

 「そうじゃな、わらわもタマにはぶら下がってみたいのじゃ。」

 「みんな公平にしないとね。」

 「独り占めは良くないです。」

 「あのネコ娘にも分かるじゃろ。」

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