にっぽんじんなら・・・
日本である。どう見ても日本である。かつての日本の農村である。
藁葺の木造家屋とか、麦畑の替わりに広がる水田とか、手拭い頬被りで野良仕事してる人たちとか。
でも違いも多い。
お地蔵様とかお稲荷様の祠の代わりに、妙なモノがある。精霊絡みだろう、多分。
神社らしきモノはある。祀られてるのは精霊だろうな。当然だが寺は無い。
まー精霊って、日本の八百萬の神みたいなモンだから、違和感無いんだよな。
マルンク皇国って国は、政治的には進んでいるようだ。既に絶対王政。中央集権国家である。
国民性は穏やかで平和的であり、皇が代々穏健な事もあって、周りに敵対的な国も無い。
潜在的脅威としては、あのメビラス王国があるが、ザンドを獲れなかった彼の国は、そうそう動けまい。間に幾つか小国もあるし、距離的にもそう恐れるものでも無い。
なんつーかこう、平和である。平和ボケかも知れない。
国境てか砂漠の出口の検問なんてのも、スゲー簡単だったし。
平和なんだなー、ってのは、すれ違う人々を見れば判る。
武装してる人がほとんど居ないんだ。よっぽど治安が良いらしい。
こっちもつられて、ノ~ンビリと馬に揺られながら、街道を行く。
流石に国境から段々離れて行くと、俺ら異国人は珍しいらしく、結構ガン見される。
いや、多分俺以外の三人を見てるんだろうがね。
この国でも美女の基準は変わらないようである。おっぱいの重要度がどれぐらいなのかは判らんが、
少なくとも、あいつらのおっぱいは注目の的である。俺のだ見るな、コノヤロウドモ。
まぁ最初は、輝くばかりの金髪に驚いてるんだがね。
最初からおっぱいに注目しないあたり、修行が足りんな。髪色なぞどうでも良い。
この国の女性は控え目で慎ましい。性格もおっぱいも。
大和撫子である。平成日本では絶滅した種族である。
おっぱいが控え目なのは、甚だ遺憾ではあるが、性格が慎ましいのは素晴らしい。
この国にも冒険者とか居るんだろうか?平和過ぎて需要無さそうなんだが・・・。
そう思ってたんだけど、やっぱり居るらしい。ギルドもあるそうな。
まぁ呼び名とか違うんだが、めんどいのでそのままにする。
俺らが通って来た東部国境方面は、先が砂漠ってのもあって平穏だが、北部は深い森、南部はジャングルであって、魔獣とかかなり居るらしい。
もっとも、南端は海に面しているので、国境では無いんだが。
「皇都って遠いなー。」
「だって、西の端なんでしょ?」
「海に面してるんですよね。」
「首都が海辺というのは、珍しいのぅ。」
「んー、防衛しにくいよな、この世界だと。」
「そうねー、水魔法の遣い手に津波魔法とか使われたら、最悪よね。」
「ですねー。でも敢えて海辺にしたんですから、何か理由あるんでは?」
「そうじゃのぅ?交易の利とかかの?」
「その辺だろうな。あとはまぁ、昔っからソコだったから、そのままだとか。」
「なるほどね。戦争とか内乱とかでも無いと、遷都なんて中々しないもんね。」
「平和な証拠ですね。」
「良い国じゃのぅ。」
「あれが皇都か・・・。」
「城壁とか無いのね。」
「みたいですね。あ、海の匂い。」
「おぉ、家がたくさんあるのぅ。」
「デカい街だな。」
「お城も大きいわ。」
「お城以外は、みんな家ですねー。」
「びっしりじゃの。」
「ベッドかよ・・・畳はどうしたぁ?!」
「タタミって、途中の町の宿屋にあったアレね。」
「あぁ、なんか良かったですよね、アレ。」
「うむ。わらわもタタミのほうが良いな。」
「部屋替えて貰おう。宿の人は気を利かせて、ベッド部屋にしたんだろうけど。」
「ズルいなぁ、タークだけタタミ部屋なんて。」
「ふっふっふっ・・・あぁやっぱ畳だよなぁ・・・。」
「仕方ありません。タタミの三人部屋が空いてないんですから。」
「まぁ、空いたら移れるように手配してくれたしの。」
「エル、お茶。」
「な、なに偉そうに・・・。」
「・・・。」
「うっ、は、はい・・・どうぞ。」
「セリア、肩を揉め。」
「え、あっ、は、はい。」
「ミュー、おやつを食べたらゴミは片付けなさい。」
「あぅ、ご、ごめんなさい・・・。」
「なんだか、タークさんが・・・。」
「いつもと違うのぅ。妙に落ちついておると云うか・・・。」
「な、なんとなく逆らえない雰囲気が・・・怖いかも。」
「・・・ミューちゃん、ちょっと試してみましょう。」
「ど、どうするのじゃ?」
「おにいちゃん♪わたしおなかすいちゃった。ちょこれーと、たべてもいい?」
「さっきおやつ食べただろう。もうじき晩飯だ。我慢しなさい。」
「うー、だってぇ・・・。」
「言う事聞かないと、明日のおやつも無しだぞ。」
「あぅ、ご、ごめんなさい・・・。」
「こ、これは・・・。」
「ミューちゃんの甘えんぼモードが通用しないとは・・・。」
「い、一体何が・・・。」
「検索してみます・・・。え、えぇ?・・・。」
「ど、どうしたの?」
「・・・いってつモードと云う症状のようです。多分間違いありません。」
「いってつモード?」
「はい。男性がアグラと云う姿勢で座っていて、
タタミ、チャブダイ、ザブトンなどのアイテムに加え、
美少女が傍に居ると、稀に発症するようです。
更に、普段はヘタレで、女性に対して強く出られない男性に発症し易いそうです。」
「条件は揃ってるわね・・・。」
「そ、それで症状と対策は?」
「・・・症状は、一家の大黒柱的雰囲気と、威厳オーラを纏い・・・。」
「・・・当たってるわね。」
「厳格な父親的言動や行動を取り・・・。」
「ぴったりじゃ・・・。」
「・・・対策は・・・うかつに逆らわない事。」
「そ、それだけなの?」
「あぅぅぅ。」
「ただ、一晩寝れば、翌朝にはトランス状態から抜けて、普段の性格に戻る、と。」
「きょ、今日だけなのね?」
「それなら何とか・・・。」
「あとちょっとです。」
「でも、あのタークもちょっと良いかも///」
「はい、なんだかカッコイイです///」
「頼れる感じがなんとも///」
「おい、何してる。メシに行くぞ。」
「「「///ひゃ、ひゃい!///」」」