さよなら?
ザンド王国に来てから、もう4ヶ月になる。季節は冬に差し掛かっている。
絶対王政をアッサリ達成したバルク王によって、ジリジリとではあるが着実に国力は増大している。
国家予算は前年よりほぼ倍増した。これはまぁ、貴族の取り分が無くなったせいであって、急に生産力が上がったわけじゃ無いが。
軍隊はそれほど増えてはいない。人口が急増したわけでも無いのに、軍隊ばかりデカくしても持て余すだけだ。
金食い虫でもあるし、某半島の世襲将軍様国家の如く、軍隊以外は飢餓状態じゃ洒落にならん。
バルクやニートは国造りで大忙しなんであるが、俺らは読書の秋である。
この国の蔵書を片っ端から読んでいる。
壁について調べてるんだが、思ったとおり大した事は載って無い。
ただ、300年ほど前に、俺らと同じく異界から来たと云う者が居たらしい。
この国に、じゃ無いけどね。
ザンドは大陸の南東部に位置している。北側にメビラス、南端は例のジャングルに接している。
では、西は?っつーと、砂漠である。
ジャングルと同じく、国土として擁したところで旨みは少ない地勢であり、確たる国境とかは無い。
一応、この辺までウチの領土ね、って主張とかはしてるが、関所があるのは砂漠の入り口であり、
砂漠自体は何処の国家もノータッチ状態である。
石油とかあるんじゃね?とか思うが、採掘技術も精製技術もアレなんで、あったとしても無意味だな。
砂漠にだって住んでる人は居る。地球にも居るでしょ。
貴重なオアシスの周りで、集落やら都市やらを営み、遊牧とか交易とかして暮らしている。
それらを結んでいるのが、この大陸のシルクロードである。
まぁ流れは逆なんだけどね。絹は西から来る。
コッチから送るのは、主にガラスだったり。全く地球と逆だな。
んで、件の大昔の異界人てのは、砂漠の向こうに来たらしい。
マランカって国らしいんだが、ホントかどうかは判らない。
日本がジパングと呼ばれたように、こっちの呼び名が正確とは限らないからな。
ザンドでする事も無くなったし、マランカに行ってみようと思う。
異界人の事調べたいしね。大昔の事だけど、こっちよりは記録とかあるだろうし。
あーそうそう、異界で思い付いたんだけど、大陸ごとに分かれてるこの世界、
各々の大陸のある、壁に囲まれたエリアを『界』と呼称する。
ナンバリングは大陸と同じね。
マランカに行くにあたって、どうやって行くかで揉めた。
歩いて行くか。ミューに乗って、ひとッ飛びで行くか。
前者はちとツラい。砂って歩きにくいじゃん。それに時間かかるし。
後者はツマラン。せっかくの異国。初めて見る砂漠。すっ飛ばすのは惜しい。
結局馬で行こうって事になった。駱駝は居ないらしい。
砂漠に馬はあまり向いていない。特に蹄鉄付けただけの蹄は砂に潜りやすい。
接地圧ってやつが高いからだ。簡単に云うと、同じ重量なら地面についてる面積を広げるほうが潜りにくくなる。
新雪の上を歩くと沈みまくるけど、スキーなりボードなりに乗ってれば平気でしょ?
で、馬の蹄に、ちょい大きめの金属板をくっつけてみた。アルミ缶並みに薄い奴だから、重くはない。
うん、結構効く。付けてない馬よりかなり足跡が浅い。
俺らのうち、俺とエルは乗馬が出来る。一応貴族だし、騎士学校出である。馬に乗れない騎士は居ない。
残る二人は今、エルに乗馬の特訓を受けている。かなりのスパルタらしい。
戻ってくると涙目で、お尻が腰がとあうあう言っている。
いやさ、垣根越えとかやらせなくても良いんじゃね?とか思うけどね。
乗馬スタイルってのはあんまし萌えない。
鞍に当たる部分は、それなりに丈夫な素材にしないと素肌がエラい事になる。
ミニスカで馬に乗るのは二次元の住人だけである。あんな事したら、皮が剥けて大惨事請け合いだ。
西部劇のカウボーイとかインディアン(今はこう呼ぶとマズいんだが、異世界なんでスルーして頂きたい)とか、皮製の股当てとかしてるでしょ。
競馬のジョッキーとか、馬術の選手とかはそんな分厚いの付けてないけど、あれは乗ってる時間が
短いから。
一日中乗ってるような人たちは、必ずそれなりのを付けてるってわけ。
「どうだー?」
「順調よ。」
「うー、うー・・・お尻が、お尻が・・・。」
「あぅぅ・・・わ、わらわも・・・。」
「よし、俺がマッサージしてやろう♪お尻だkぼふぅぅぅっ!」
「このエロ魔人っ!」
「ありがとうですエル。うー、私、今はワザ撃てません・・・。」
「わらわもじゃ・・・あぅぅ。」
「ふふふふ・・・まだ終わりじゃ無いんだけど?」
「はぅっ!」「あぅっ!」
「でもアレよ?乗馬って足腰使うから、良いダイエットになるのよ?」
「「!」」
「特に、お尻とフトモモが引き締まって・・・。」
「さぁ、休憩は終わりです。」
「うむ、練習再開じゃ!」
「ふっ、扱いやすいわね。」
「いつ頃行くんだ?」
「明後日あたりかな。」
「淋しくなるよー。」
「ニートに淋しがられても、ホントに全くカンペキに嬉しくない。」
「ひどっ!」
「まぁそうだろうな。私だって嬉しくないな。」
「へ、陛下まで・・・。」
「大体、お前には姫さんが居るだろ?淋しくなんか無かろが。」
「うぅ・・・それがさー。」
「シルヴィはな、騎士団長としての職務に忙殺されててな。」
「会えないってか。やーいやーい、ザマミロ。」
「ひ、ひどっ!そこは慰めるとこでしょっ!」
「ふむ。このまま疎遠になり、イケメン騎士あたりによろめいてしまうかもな?」
「えぇぇっ!そ、そんな・・・シ、シルヴィアが、まさか・・・。」
「有り得るねー。自分から会いにも来ないニートなんて、ポイされて当然だよな。」
「だ、だって・・・忙しいのに邪魔は・・・。」
「ダメ過ぎだな、お前。やっぱり婚約は解消すべきか・・・。」
「しょ、しょんな・・・。」
「いや解消すべきだな。下手に婚約なんてしてると、姫さん嫁き遅れるかも。」
「い、いやだぁぁっ!シ、シルヴィア~っ!」
「おー、ダッシュだな。」
「まぁ、シルヴィはニート溺愛だしな。心配は無いんだがな。」
「とか言って、実は悔しくて仕方ないんだろ?シスコン王。」
「シスコン言うな。もう私は妹離れしたのだ。」
「威張って言うな。今まで出来なかったってのがもうアレだ。」
「う、うるさい・・・。」
「けどさー、姫さんてさ、なんでアレが良いんだ?」
「・・・あぁ、学校でな。同級生だったんだ。」
「姫さんのほうが年上だろ?」
「いやな、ニートがかなり優秀でな、一年早く入れたんだ、私が。」
「後悔先に立たず、ってか。」
「こ、後悔はスゴくしたが、今はしていないっ!・・・多分。」
「多分かよ。で、ただの同級生が?」
「シルヴィがな、ちょっと風邪気味だった時にな、ニートが・・・。」
「あー、そいや薬ヲタだったっけ。すっかり忘れてたわ、その設定。」
「そのヤクがエラく効いてな、シルヴィがあいつに興味持ってしまって・・・。」
「ヤク言うな。ニートが売人になっちまうぞ。いやジャンキーのほうが似合うな。」
「ニートでショタなジャンキーか。もうクズだな。」
「あぁ、人間のクズだな。生きてる価値は皆無だ。」
「・・・欝だ死のう。」
「っ!ど、どうしたんですの?!会いに来てくれたと思ったら突然っ!?」
「・・・あ、その、なんかね、急に自分が生きてるのはいけないような気がして・・・。」
「そ、そんな事言わないでっ!あなたが居なくなったら、わたくしは、わたくしは・・・///」
「///シ、シルヴィア・・・。」
「///あぁ、わたくしのヤーデク・・・。」
「んじゃ、世話になったな。」
「いや、それはこちらの台詞だ。本当に世話になった。」
「また来てねー。」
「来てもニートには会わん。ジャンキーの仲間入りはごめんだ。」
「ひどっ!最後までソレっ?!てかジャンキーって何っ?!」
「皆さん、お気をつけて。またお会いしましょう。」
「ありがとう。シルヴィも元気でね。」
「ニートさんが居れば、いっつも元気そうですけどね?」
「///そ、そんな・・・。」
「ニートは果報者じゃのぅ。」
「逆タマだしね。」
「でもお兄さんがああですから・・・。」
「お兄様と云えど、わたくしのヤーデクには指一本触れさせませんわ!」
「まったく、最後まで惚気とはの。」
「かならず、”わたくしの”だもんね。」
「妬けちゃいますね。」
「まぁ、ニートには、これぐらい圧倒的な嫁がお似合いであろ?」
「///よ、嫁・・・あぁぁ、嫁・・・きゅぅぅぅぅ///」
「婚約者なのに・・・。」
「年上ですよね?」
「意外と弱いのぅ。」
「私たちも頑張らないと!」
「です。目指せ一夫多妻!です。」
「うむ!独り占めはせんぞ!」
「差別されるのもイヤだしね。あいつは絶対しないと思うけど。」
「です。正妻と愛妾はイヤです。」
「みんなで”嫁”になるのじゃ!」
「おーい、そろそろ行くぞ・・・って、姫さんどしたの?」
「大丈夫よ。ニートくんが居るから。」
「良く解らんが・・・まいっか。」
「出発ですね。」
「でっぱつなのじゃ。」
「おーし、でっぱつー!」
「「「おー!」」」
「・・・行ってしまったなぁ。」
「はい・・・。」
「お兄様・・・。」
「淋しくなるがな、我々にはやるべき事があるしな。」
「淋しがってるヒマ無いですねー。」
「二度とお会い出来ないわけじゃありませんですし。」
「彼らが遺してくれたものは、我々が育てなければな。」
「ですよー。なんせ”国”ですからねー。」
「また来てくださった時に、自慢出来る国にしておかなくては。」
「うむ、そのとおりだな。
手始めに、お前たちの盛大な結婚式でもやるか!」
「えっ!」「あっ!」
「「/////」」
「はっはっはっはっはっはっ!その後はキリキリ働いて貰うがな!」
うーむ、ネタ切れっぽい・・・
長編書いて居られる方々に脱帽。
超展開ブチキリは避けたいです・・・。