便利だけどさ・・・
「この山か。」
「火山ね。」
「暑さ倍増です。」
「うむ、暑いのぅ。」
「けど、声って聞こえる?」
「聞こえませんね。」
「わらわもじゃ。」
「俺にも聞こえない。もう居ないのか?」
「精霊は?何か知ってるかしら?」
「精霊さんによると、まだ何か居るそうです。」
「何かは解らんのか?」
「はい。ただ、そんなに強いモノでは無いと・・・。」
「強くない?」
「あー、そうかも。ココ来るまでに動物とか結構居たじゃんか。」
「そうか。もう脅威は去った、と云う事か。」
「あるいは、弱った?」
「何か居るってんだから、その確率のほうが高そうだな。」
「でも、なんで弱ったんでしょう?」
「弱ったのなら良いけど・・・弱らされたのかも。」
「もっと強いのにやられたってか。」
「豹人たちも、しばらく近づいていなかったんじゃな。」
「その間にやられたのなら、彼らも知りませんね。」
「会ってみるか。」
「そうね。弱った理由知りたいし。」
「倒すかどうかは、会ってからですか。」
「話の通じる相手じゃと良いのぅ。」
「なんつーかさー、マヌケ?」
「手出しする必要無いわね、あれじゃ。」
「弱って当然ですねー。」
「運の悪い奴じゃの。」
「氷河に棲んでる魔人?に似ているそうです。名前は分からないとか。」
「ココに居ちゃ、まー助からんわな。」
「溶岩の真上よ、よりによって。」
「良く今まで生きておったものじゃ。」
「話は出来そうかしら?」
「無理ですね、もうほとんど意識がありません。」
「哀れじゃのぅ。」
「ねえ、やっぱりコレって・・・。」
「だろうなぁ。こんなトコに出るわけ無いもんなー。」
「壁を抜けて来たんですね。精霊さんも名前知らないんですから。」
「違うな。転移して来たんだ。」
「転移じゃと?そのようなモノ・・・」
「アイツなら、って言うんでしょ?」
「なるほど。壁を抜けて来ただけなら、わざわざ溶岩の上になんか乗りませんね。」
「俺も転移は出来るけどさ、座標とかが分からんとさ、何処に出るかも分からん。
アイツが適当な座標に、あのカキ氷を飛ばしたんじゃ無いか、と。」
「使い捨ても良いところじゃの。哀れな。」
「座標が分かれば、帰れるかも知れませんね、私たち。」
「難しいな。コッチとアッチの位置関係が皆目分からんからなー。」
「そうじゃ!わらわが皆を乗せて、空で転移すれば良いのじゃ!」
「いやだから、座標・・・。」
「てきとーで良いのじゃ。転移しまくっておれば、いずれ当たるやも・・・。」
「雷雲の中とかに転移したらどーすんだ?てか転移って・・・ヤヴァいんだぞ?」
「火山の噴煙の中とか。」
「うっ、そ、それは・・・。」
「まぁでも、最後の手段として、それは保留しときましょ。」
「ですね。帰り方が見つからなかった時のために。」
「う、うむ。」
「そうだな。何も出来ずにいるよりは、運次第でもやれる事はあったほうが良いな。オススメしないがな。」
「ところでさ、ターク。」
「ん?」
「ココから王都なら、転移出来るんでしょ?」
「ああ、楽勝。」
「お願いしますー。」
「うむ。」
「あー、あんまオススメじゃ無いんだが・・・。」
「そういえば、使った事無いわよね。」
「俺一人では何度か、てか過去も入れればスゲー使ってるんだが・・・。」
「ハッキリ言うのじゃ。」
「・・・酔うぞ。俺は慣れたけどさ。最初の頃はもーハンパ無く酔った。」
「そ、そんなスゴいんですか?」
「最後の逃げ道とかに使うなら、んな事気にしちゃいられんけどさ、普段使うもんじゃねーんだ。」
「ど、どれぐらい酔うの?」
「まー、出た瞬間リバース。吐き気は2、3日続く。なんも食えんぞ。
頭ぐわんぐわんがおんなじぐらい続く。寝たきり状態になる。でも眠れない。
起き上がるのがやっと。立つだけで地獄、てかスグ倒れる。歩くなんて無理。」
「「「・・・」」」
「俺は慣れるまでに三人生掛かった。」
「何年ってレベルじゃ無いのね・・・。」
「それでさっきからオススメしないと・・・。」
「うむむむ・・・。」
「ただな、たまに居るんだ。平気な奴。ちょいヤバくなって一緒に逃げた時、ケロっとしてた奴とか居てさ。」
「わ、私たちはダメそう?」
「壁の中でアレだったろ?多分ダメだな。」
「あぅ、でもタークさんもあそこでは・・・。」
「あー、なんつーの、馬車酔いと船酔いの違いみたいな・・・。」
「なんとなく解る・・・違うもんね。」
「わらわはさほどは・・・。」
「御者とかは酔わないだろ?乗ってるだけってのが酔いやすいんだ。」
「な、なるほど。」
「じゃさ、ミューに乗って帰ろう。」
「ですね。もう汗まみれです。お風呂入りたいです。」
「んだなー。頼むミュー。」
「仕方ないのぅ。わらわだけ疲れるではないか。」
「エルたちが、腹一杯ケーキ奢ってくれるってさ。」
「まことか?!」
「え、ちょ、・・・わかったわよ、もう。」
「わ、私もですか?」
「当然じゃ!奢ってくれないなら、セリアだけ置いて行くのじゃ!」
「あぅ・・・わかりました・・・。」
「ちょっと!タークは奢ってあげないの?」
「俺はあとでナデナデしてやるよ、ミュー。」
「おぉ!それで良いのじゃ!」
「「や、安い・・・」」
「それで、豹人たちはもう暴れぬ、と?」
「口約束だけどさ、あの連中には文書だろうと口約束だろうと関係無さそうだしな。」
「だよね。いきなり破っておいて謝りもしないんだから。」
「当分は大丈夫でしょ。原因は無くなったし。」
「ですね。獲物さえ居ればそうそう出ては来ないでしょう。」
「数もだいぶ減らしたしの。食うには困らんじゃろ。」
「いや、助かったよ。これで国民を守る責任が少しは果せた。礼を言うぞ。」
「言葉だけか?俺らは元は冒険者だぞ。正当な報酬を要求する。」
「そう言うと思っていた。今すぐで無いとダメか?」
「いや。利子が付くなら出世払いでも良いぞ。」
「おいおい、私は国王だぞ?これ以上どうやって出世しろと?」
「名前だけの国王から、本当の国王に出世するのさ。」
「っ!・・・痛いぞ。」
「痛いからって、泣いてりゃ済むとも思ってないんだろ?」
「それに、もうすぐ手術始めるしね。」
「準備出来たのか?」
「ボクは優秀なんだよ?」
「ニートが寝言言ってるぜ。」
「でも確かにニートさんは、情報処理は早いです。」
「書類仕事とかも得意そうよね。」
「じむしょく じゃのぅ。」
「へっへーん♪」
「おぉ!ニートが評価されてる!良かったなニート、人間に一歩近づいたぞ!」
「ボクは最初から人間だよっ!」
「そう思ってるのはお前だけだ。ニート。」
「思い上がりは良くないわ、ニートくん。」
「ニートさんは、まず人間らしい生活から。」
「そうじゃな。太陽を浴びると灰になるようではいかんの。」
「いや、廃だろう?」
「シ、シルヴィアが居ないからって・・・欝だ死のう。」