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卒業~

 結局俺は、騎士学校に進んだ。まーなんつーの、家庭内の力関係に配慮した結果なんだけどね。

 淋しそうな眼で見てくるオヤジには、心の中で謝っておいた。ごめん、俺もこの若さで死にたくないのよ。

 こうして13歳から3年間、立派な騎士になるべく研鑽を重ねたわけだ。実際はどうあれ、ね。


 「こら、ターク!もう卒業式始まるわよ!」

 「なんだ、エルか。相変わらずイイ乳だzおぶぅうッ!」

 「まったく・・・ほら行くわよ!」


 俺の鳩尾に光速のエルボーを打ち込んだ幼馴染は、悶絶する俺を文字通り引き摺って、式場へと歩き始める。


 校長の催眠演説をやり過ごし、卒業生代表以外「以下同文」な紙切れを貰い、進路を分かつ友人たちと名残を惜しんだ後、お世話になった寮の人たちとかに挨拶も済ませ、俺は幼馴染と肩を並べて校門を出た。


 「タークルード・クルーゲ。公爵御曹司にして歴代最強の騎士候補生、ねぇ・・・似合わな過ぎだわ。」

 幼馴染が隣で毒を吐く。

 「第33回卒業生首席、エレーネ・バルクホルン伯爵令嬢、キミこそ似合わな過ぎだと思うが?」

 「どこがよ?品行方正にして座学トップなんだから良いでしょ?」

 「どこが?ってのは俺の台詞だ。

  座学トップてのは確かだが、お前のどの辺が品行方正なんだ?

  ガキの頃からお転婆通り越してハネっ返りとかじゃじゃ馬としか言いようの無い行動パターンのお前が。」

 「あら、問題無いわよ。学校じゃちゃんとお嬢様してたでしょ?

  私は貴方と違って、場を弁えてるの。」

 「ただの猫かぶりだろーが・・・。

  俺とハインツには鉄拳とか踵落としとかチョークスリーパーとか・・・」

 「当たり前でしょ!

  貴方と兄さんてば、女子の着替え覗こうとしたり、いっつも階段の下で怪しげな姿勢で待機してたり・・・私が制裁するしか無いじゃない!」

 「そんなん、健全な青少年ならば当然の欲求だろう。

  お前には寛大なる優しさっつーのが絶対的に不足している!

  美人だし乳もデカいのに、残念過ぎるぜ・・・

  大体覗きとかも全部未遂じゃんか!それにお前の着替えは覗いて無いzごふぅうっ!」

 「っ!それが一番ムカつくのよっ!」


 綺麗としか形容しようが無いサラサラの金髪を逆立てんばかりにしながら、再度俺の鳩尾に痛打を加えた幼馴染の最後の言葉は、なんか良く聞き取れ無かった。



 「よぉお二人さん、相変わらずの痴話喧嘩か?」

 「ちょっ、兄さん何言ってるのよっ!」

 「まぁまぁ落ち着け妹よ。やり過ぎると嫌われちゃうぞ? んで、タークは生きてるか?」

 「・・・何とかね。まぁ慣れてるし、っと。んで、ハインツは何の用?」

 「おいおい、可愛い妹と弟分の卒業だぜ。お祝いに来たって良いだろ?」

 「・・・兄さん、また何か企んでるのね?」

 「実の兄に対してこの仕打ち・・・タークどう思う?」

 「ん~、妥当?」

 「お前もかよっ!この皮かぶrげふぅうっ!」

 「往来で変な言葉叫ばないでよっ!この変態兄貴っ!!」

 

 鳩尾に痛恨の一撃を喰らって悶絶中のハインツに合掌しつつ、俺はエルに問いかける。

 「なぁ?ハインツの台詞の何処が変なんだ?教えてくれないか?エレーネ嬢。」

 「っ、そ、それはっ・・・か、かわk・・」

 「かわ?」

 あー顔がニヤけてくるなぁ。

 コイツこーゆーの弱いんだよな。

 なんか赤くなってモゴモゴ言ってるトコなんざ、反則としか言えないくらい可愛いんだよなー。

 でもやり過ぎるとキレて、また痛い目に遭わされるのが判りきってもいるので、この辺でやめとこう。

 うん、俺も命は惜しいしな。

 

 「ハインツ、復活した?」

 「・・・お前、なにげに足で突付くな。」

 「いやだって、ハインツだし。素手で触るとビョーキが・・・」

 「俺は厄病神かよっ!」

 「「うん」」

 俺とエルがハモったせいで、更に重いダメージを受けたようだが、コイツはそれぐらいじゃ死なんしな。


 「で、マジで何の用だったんだ?」

 「・・・あ~なんだ。最後の悪あがきっつーか・・・」

 「勧誘か。それはもう諦めてくれよ。悪いけどさ。」

 「私もよ。騎士団には入らないわ。」

 「やっぱダメか。

  しっかしよー、実技最強と首席卒業生が、揃って騎士団蹴っちまうなんてよー・・・

  団長とか先輩とかから、お前の妹と幼馴染なんだから、何とかして来いってさー。」

 「前から言ってたじゃん。俺は冒険者になるってさー。」

 「同じくよ。急に決めたわけじゃ無いんだし、私もタークも両親の許可も貰ってるしね。」

 「仕方無ぇか。団長たちに怒鳴られに帰るとするか・・・。」

 「ごめんな。黒龍なんて俺には合いっこ無いって判ってるしさ。」

 「まーな。お前には向かないよな。実力も無いのに、ただ先輩だってだけで威張り散らす人ばっかだもんな。

  俺だってホントは入りたく無かったしさ。」

 「・・・兄さん、私・・・」

 「いや良いんだ。こんな俺でも伯爵家嫡男だもんな。オヤジやオフクロの顔も少しは立てておかないとな。

  ま、お前らは俺の分まで世界を見て来てくれや。」

 「あぁ、たっぷり見て来るよ。巨乳美人とか爆乳美女とか美乳美少jがはぁあっ!」

 「おのれぇ、羨まし過ぎるぞこの皮かぶほぅうっ!」

 「いい加減にしなさいっ!この発情魔人どもっ!」


 あまり爽やかとか平和とか言えないが、これが俺たちの日常だ。


 でもこの日常とももうじきオサラバだ。

 明日俺はこの街、「王都ハイベルグ」を発つ。

 アイツの情報を集める為、冒険者として世界を廻るのだ。

 ここでノンビリ暮らしたいとも思うんだけど、んなコトしてたら手遅れになりかねない。

 アイツには50年先行されてるのだ。


 あんまし会いたくは無いんだけど、会わなきゃならんしね。

 んで、会う以上は勝たなきゃならんしね。絶対に。

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