越えられない?壁
「壁、かい?」
「はい。何でも良いです。知ってる事があったら教えてください。」
「そうだな・・・知ってると云うより推測なんだがね・・・それでも良いかい?」
「お願いします。」
「恐らくアレは結界の一種。但し人工では無く自然の物だと思う。」
「天然の結界ですか・・・。」
「ああ。結界と云うより障壁だな。魔力とは異質のなにかの力が滞留しているような、ね。」
「文字通り、壁、なんですね。」
「私も船に乗ってね、実際に見てきたんだがね、アレは壁としか表現しようが無かったよ。」
「高さとかは、どのぐらい・・・」
「ああ。もうずっと上まで。何処まで届いているのか見当も付かんよ。」
「飛び越すってのも無理・・・ですね。」
「無理だね。ドラゴンとて5000mくらいまでだろう。アレはそれより遥かに高い。」
「海の中はどうですか?」
「判らん。そこまで近づけないのだ。だが遠目で見た限りでは、海の中まで続いているように見えたよ。」
「船が近づくとどんな感じになるんですか?」
「そうだなぁ。なんだか引き寄せられると云うか・・・そうだ、小さな物はどんどん飛んでいったよ。」
「それって、もしかして金属では?・・・鉄が、じゃ無いですか?!」
「ん?ああ・・・そういえば、金属製、いや鉄製の物だけだった!
真鍮や銅製のモノは・・・そうか!船自身が引き寄せられたのも・・・。」
「船が鉄製部品ごと、って事でしょうね。」
「なるほどなるほど・・・いや、大したものだ、ターク君は。」
「いえ、そんな事は・・・細かい事まで憶えておられたヨハンさんのおかげですよ。」
「言われてみれば、確かにそうだ。そうか・・・磁力か・・・。」
「大地には地磁気という磁力が流れている、と聞いた事があります。
海底で、恐らくこちら側と反対側の地磁気がぶつかって・・・。」
「上に吹き上げている、と云う事か。・・・だがあれほど強力な磁力など・・・。」
「大地そのものの磁力です。強力なのは当然ですよ。」
「そう言われると・・・だが正体が判っても・・・。」
「そうですね。磁力に限らず、それほど強大なエネルギーに晒されれば、生物は無事じゃ居られませんね。」
「磁石の怪物って事?」
「まぁそうだ。ってかこの大地自体が磁石。」
「それにしても、どうやって破るんですか?大地そのものの力なんて・・・。」
「そうじゃ、それに仮に破ったとしたら、大地にどんな悪影響があるか・・・。」
「破らない。正体が判れば手はある。」
「どうするの?」
「くぐるのさ。ちょっとだけ流れを遮ってやるんだ。川の中州みたいな部分を作って、そこを通る。」
「そんな事出来るんですか?」
「やるしか無いんじゃろうの。」
「そ。やるしか無いし、俺ならやれる。チート7乗の人外だぜ?」
「はぁ・・・そうよね。マトモな生物じゃ無いんだもんね。」
「ですね。人間のフリした化け物ですもんね。」
「そんな可愛いモノではあるまい。歩く災厄じゃ。」
「・・・お前らの優しさが滲みるぜ・・・ああ、目から汗が止まらない。」
「良いな、絶対無理するなよミュー。調子悪くなったらスグ戻るんだぞ?」
「うむ、心配するな。そなたたちも一緒なんじゃ。無理なぞするものか。」
「信じてるからね、ミュー。」
「ミューさんが、私たちを危険に晒すわけ無いですよ。」
「そうだな。ミュー、とにかく真っ直ぐ飛べ。高度も変えるなよ?」
「了解した。」
「さてと、叔父さん、行って来ます。」
「ヨハンさん、お世話になりました。」
「礼を申すぞ。」
「君らも気をつけてな。必ず帰って来るんだぞ・・・あぁ、しかし、兄貴になんて言えば・・・」
「言わなくて良いです。余計な心配させるだけですから。」
「えーまー、黙っといてください。ふつーに旅してるとでも言っといてください。」
「う、うむ・・・そうだな。言っても仕方無いか・・・。」
「それじゃ、本当に。」
「「「「行って来ます!」」」」
「アレか。うっわスゲーな。しっかし、ココまで1日がかりとはね。」
「う、うん。ミューで1日なんだもん、船だったらスゴい掛かってるハズ。でもアレ・・・。」
「なんか、本当に力のカタマリですねー。アレに突っ込むんですか・・・。」
「じゃが、引き寄せられたりはしておらぬ。そなたの結界が効いておるのじゃな。」
「効いて貰わなきゃ困るしな。おっし!ミュー、行けーっ!」
「行っけーっ!」
「ミューちゃんごーっ!」
「全く・・・乗ってるだけだからって、お気楽な連中じゃ・・・。突っ込むぞ!」
「うひょー!なんつーかこう、異次元?」
「うぅ、周りの色がころころ変わって・・・。」
「うー、なんかウネウネしてますー。」
「うむー、これは・・・進路を固定出来ぬかも・・・。」
「あーうー、酔いそうだ・・・っぷ、だが負けん!」
「あぅ・・・ホント酔いそう・・・。」
「うー、うー、うー。」
「そなたら・・・わらわの上でリバースなぞしたら・・・分かっておろうな?」
「うぷっ、ミュー、進路は間違って無いぞ。このまま行け。」
「判るのか?」
「判る。高度は怪しくなってるが、方向は大丈夫だ。」
「分かった。頼りにしておるぞ。」
「っぷ、何言ってやがる。お前が居なきゃココに来るのも至難のワザだったんだ。」
「うぅっ、そ、そうよ、船なんかじゃ・・・うぷ。」
「うー、ぜ、絶対に、ううっぷ。」
「ああっ!そなたらもう喋るで無いっ!キケンがアブナイわっ!」
「む!おい!」
「んぷっ、な、なんだ?・・・っ!」
「あ、っぷ・・・色が・・・。」
「青く、うぷっ、統一・・・。」
「「「「あっ!」」」」
「ぬ、抜けたぁっ!」
「やったぁぁっ!」
「やりましたぁっ!」
「や、やったのか?・・・おぉ・・・そ、空じゃ、蒼い空・・・。」
「ミュー!最高だ!良くやったっ!ホントに良くやったっ!」
「うんうん、ホント、頑張ったわね、ミュー。最高っ!」
「ミューちゃん、大好きですよー。最高ですっ!」
「///よ、よさぬか・・・て、照れるではないか・・・。///」
「陸地が見えないな・・・。」
「まぁ、向こうでも壁まで1日かかったし・・・。」
「ですねー。私たちの大陸でも、南の壁はもっと遠いらしいですから。」
「うむ。じゃがわらわも少々疲れた・・・降りられる場所は無いかのぅ?」
「そいやセリア、精霊はどーよ?」
「向こうの精霊さんとの回線は切れてしまったようです・・・。」
「回線て・・・じゃあ、こっちにも居るの?精霊って。」
「おるじゃろ。元は一つの世界なんじゃ。」
「だなー。あの壁は国境みたいなもんだ。」
「あっ!繋がりましたっ!HNを誰何されてますっ!」
「HNて・・・精霊って謎すぎるわ・・・。」
「まぁの。ハッキリしないから精霊なんじゃ。」
「情報はどうだ?」
「えっと・・・今MAP検索にアクセス・・・あっ!」
「どうしたの?」
「船です!ココから南へっ!ミューちゃん急いでっ!」
「お、おい!きゅ、急にどうしたのじゃ?」
「襲われてるんですっ!多分魔獣ですっ!」
「了解じゃ!飛ばすぞっ!しっかり掴まっておれよっ!」
「ちょまっ!おひょぉぉぉぉぉっ!」
「きゃぁぁぁぁぁっ!」
「あぁぁぁぁぁぁっ!」
「居たっ!って、デカっ!」
「お、おっきいっ!。ミューの三倍はおっきいわよ、アレ!」
「クラーケンと言うそうです。水中部分もありますから、全体はもっと・・・」
「ふっ、大きさの差が、戦力の決定的差では無いと教えてくれるわっ!
喰らえっ!”おにいちゃんなんかしんじゃえっ!”ブレスぅぅぅっ!」
「ぐはあぁぁぁぁっ!」
「余計なトコにダメージ入ったけど・・・沈んでくわ、クラーケン。」
「スゴいです・・・一撃です・・・。」
「ふふん♪コレがわらわのじつりょくじゃ。」
「あ、船の人たちが手を振ってる。」
「あの船に降りられますか?ミューちゃん。」
「波も静かじゃしの、大丈夫じゃろ?」
「え?ちょっと、無理でしょ?」
「大丈夫じゃ。そなたらを下ろしたら、人間体になれば良いだけじゃ。」
「ですー。」
「そっか。うっかりしてたわ。・・・ってコレはどうしよっか?」
「船の上にポイ!で良いのでは?」
「そうじゃな。こやつじゃしの。」
「そうね。死ぬようなタマじゃ無いし、それでいっか。」
難関も強敵もアッサリ風味な主人公チーム・・・。
緊張感無さ過ぎですかね?
感想とか増えない・・・orz