俺って・・・
全員無言である。
俺が湯舟から救助され、部屋で寝かされた時は、女性陣が大騒ぎだったらしいのだが。
俺が救助された状況を聞き及ぶにつれ、俺が遭難した理由に思い当たったに違いない。
照れとか恥ずかしさとか気まずさとかが入り混じった、何とも言えない空気のまま、俺らは森に入った。
俺自身の体調は完全回復している。倒れてる時にセリアが治癒してくれたそうだし、起きてから自分でチート回復したし。
だがしかし。
重い。この空気は重過ぎる。
俺は多分悪くない。盗聴してたわけじゃ無いのだ。聞こえるから聞いてただけなのだ。
とは言え。
聞こえてる事を伝えなかったのは事実。
それをしていれば、今の空気は無かったハズ。
うん。やっぱ俺が悪いな。
漢だしな。女の子から謝らせる状況じゃ無いよな。彼女たちだって悪い事してたんじゃ無いんだしな。
「あー、あのさ・・・その、なんだ、ごめん。俺が悪かった!」
「え、あ、う、ううん、その、私たちも、その・・・。」
「あぅ、ですー。タークさんは別に・・・」
「そ、そうじゃ。わらわたちが羽目を外し過ぎたのが・・・。」
「う、あ、まーそう言ってくれると助かる・・・。」
「こ、これからは、お互いに気をつけるって事で・・・。」
「ですね。それが一番です。」
「そうじゃ、もう忘れるのが一番じゃ!」
「・・・」
「ターク?」
「・・・」
「どうしたんでしょう?」
「さてのぅ?」
「・・・セリアとミューが・・・生えて無い・・・のを・・・忘れるなんて、無r」
「王虎猛裂掌っっっっ!!!」「おにいちゃんのどへんたい!しんじゃえっ!」
「おごぶはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「スゴいわ。人間てあそこまで飛ぶんだ・・・。あ、木に刺さってる。」
「うーうー・・・生えて無くたって、生えて無くたってー・・・。」
「そうじゃそうじゃ。種族のとくちょーなのじゃ!」
「え、えっと・・・私が言うのもなんだけど・・・バカにしてるわけじゃ・・・。」
「うー?そうなのー?」
「どっちかって言うと羨ましいんだってば。」
「それはエルがでしょう?タークさんがそうだとは・・・。」
「おんなじよ、絶対。だって・・・毛深い女の子なんて、あいつの好みじゃ無いから。」
「そ、そうなのか?」
「あいつに限らず、オトコって大体そうらしいし・・・兄貴が言ってたわ。」
「そ、そうなんだ・・・うふふふん♪」
「そうか、それは・・・ふふふふん♪」
「っ!な、何よ二人ともっ!その勝ち誇った顔はっっ!!」
「べっつにぃ~、です♪」
「さて、何の事かの~♪」
「くっ、悔し過ぎるっ!・・・私が普通なハズなのに・・・何でこんな敗北感をっ!・・・。」
なんとか普通に戻って良かった。
エルだけ何か凹んでるけど、まぁこいつは後引くタイプじゃ無いからな。
俺のダメージは深かったけどね。マジで死ねるよアレは。チートじゃ無きゃ全身骨折どころじゃ無いよ。
さて、オークどもは昨日半減させたもんだから、更に捕捉が面倒になった。
だもんで、今日はオッサンたちも狩りに出てる。
もう村に近い群れは殺っちまったんで、留守にしても村が襲われる心配はまず無くなった。
んでまぁ、今日中に仕上げっつーか、ケリ付けちまおう、と。
「おー、やってるなー。」
「ココから見えるんだもんね。やっぱりスゴいわよね、ヒルダさんの魔法。」
「ですねー。ほとんど木々に被害も出してないみたいですし、流石ですー。」
「判るのか?って、あー精霊か。」
「ですー。木の精霊さんがそう言ってますー。」
「昨日のミューの事は?」
「あぅ・・・出来ればその・・・訊かないでくれると・・・。」
「・・・ノーコメントだそうですー。」
「あぅぅぅぅ。」
「でも、今日は良くやってるから、偉いって言ってくれましたよー?」
「そ、そうか・・・えへ♪」
「昨日の事は、ちゃんと謝っておけよ。」
「あぅ、そうじゃった・・・申し訳なかったと伝えて欲しいのじゃ。」
「気にするな、だそうです。良かったですねー。」
「うぅ・・・精霊は優しいのじゃ・・・。」
「優しい精霊に迷惑かけないように、ちゃんと練習しましょ?ね、ミュー。」
「です。ミューちゃんは強いですけど、強いからこそ責任もあるんですよ?」
「お前らからそんな立派な台詞が聞けるとわ・・・・成長したのはおっぱいだけjぐぼぉぉぉぉぉっ!」
「こいつは全然成長しないわね。」
「ワザを磨き続ける必要アリですね。」
「激しく同意じゃ。」
1号が右翼、2号が左翼に突進し、オークどもを文字通り蹴散らしていく。
お前ら得物あるんだから、わざわざ蹴り使うなよ。まー俺は眼福だから良いんだが。
おー、エルはまたピンクか・・・む!紐ぱんだとぉぉぉぉっ!
そ、そんなに脚上げて、解けたらどうすんだっ?!・・・嬉しいけどっ!
ミューは、と、白だなやっぱし。にしても発育良いよな。身長とのギャップが・・・。
しっかし短過ぎだろ、スカートが!膝上何cmだ?!
チラチラどころか、ほぼ見えっぱなしのぱんつとか無防備過ぎっ!
お兄ちゃんは、お前の将来がちょっと心配だぞっ!
セリアは・・・ぶっ、片膝立ちかよっ!丸見えぢゃ無ぇかっ!
いや、弓射るには普通の体勢かも知れんが、ミニなんだぞお前っ!
っ!またしても黒っ?!
い、いや・・・あれは・・・あの色は・・・バカなっ!紫だとぉっっ!
ってかお前ら、ワザと見せようとしてないか?
俺が、内なるリビドーと葛藤してる間に、戦闘は終わっていた。
ぶっちゃけ、俺の出番は無かった・・・。
最近、自分の存在意義に疑問を感じ始めている。
アイツが居なければ、俺の存在も不要なのかも知れない・・・。
アイツ在っての俺・・・イヤだなー、イヤ過ぎる。
でも多分、それが真実。悲しい現実。
アイツが来たから。
何かするから。
俺はこの世界に来た。
アイツが来てなかったら、俺はココにはいない。
あいつらにも会ってない。
あいつらに会えたのは幸運だ。信頼出来るし、強いし、何より一緒に居て楽しい。
そういえば。
過去の人生も楽しかった。
必ず良い仲間に出会えて、わいわいじゃれ合いながら旅して。
苦労もそれなりにしたけど、必ず仲間が居た。居てくれた。
俺はずっと一人じゃ無かった。
家族が居なかった人生もあったけど、仲間は必ず見つかった。そして助けてくれた。
そうか。
俺がアイツに勝てるのは。
アイツが必ず敗れるのは。
仲間。
アイツには仲間が居なかった。
手下や手駒は居ても。
アイツはいつも一人だった。いや今も一人だろう。
可哀想だな。
俺がアイツに同情したのは、初めてかも知れない。
戦闘がアッサリ風味なのは仕様です。
主人公チームがチートで規格外なので、ボスでも出て来ない限りこのままです。