嗚呼、人生は選択である
俺がこの世界に生まれて12年が経った。
んで、現在二つの問題に悩まされているんだな、これが。
原因はまぁ、両親である。
いや、決して悪い親では無い。むしろ良い親である。
問題は・・・
良すぎるのである。
父であるゲルハルト・クルーゲは、弱冠32歳にしてノルトハイム王国(今住んでる国ね)王室魔法士筆頭であり、ウェーデル大陸(今住んでる大陸ね)最強と云われるエリート。親しい人にはゲルトと呼ばれてる。
温和な性格でイケメン、おまけに実力抜群なもんだから、貴賎老若男女(女性比率がかなり高いが)問わず好意を持たれている。ぶっちゃけ勝ち組である。同世代だったら埋めてるぞ!ったく。
母マルグレーテは、そんな父にゾッコンベタボレして口説き脅し(誤字では無い)寿退役するまでは、女性王族護衛を専門とする「白鳥騎士団」最強の剣士だったらしい。ちなみに男性専門は「黒龍騎士団」。
まー結婚前はオヤジに対して所謂ツンデレで、何度か殺しかけたらしいのだが、現在はデレ全開である。
愛称はリタで、今年29歳。つまり俺を産んだ時は17歳である。やる時ゃやるな、オヤジ。
見た目はもう美女としか言いようが無い。顔立ちといい、プロポーションといい、とても子持ちにゃ見えない。やっぱり埋めるか、オヤジ・・・。
とまぁ、両親に恵まれ過ぎた結果、俺は平凡な人生ってのを送るのが非常にムズいのである。
この国(ってか世界)は、要するに中世ふぁんたじぃ世界なんで、貴族とか奴隷とかの身分制度が厳然として存在する。
なにげにウチも公爵かつ王家傍流っつーチョー名門であり、その嫡男たる俺に小市民的生活が送れるはずも無いのだ。
これで親が阿呆とか鬼畜とかだったら、俺もバカ息子演じるってー手も有ったんだが、この両親ではそれも出来ん。
なんせねー、溺愛されちゃってるんですよねー、俺。
都合6回も人生歩んできてる俺にとって、親を手玉に取るなんざワケも無い(この両親、まだ若いしねー)んだけど、ここまで愛されちゃうとね、やっぱ悪い子にはなれんのですよ。人として、さ。
親バカ丸出しだろおまいら、とか思わんでも無いんだけど、ちっとは期待に応えないと申し訳無いよなー・・・。
で、なんでそんなに平凡したいのか、っつーと、アイツに見つからないためなのだ。
今の俺ではアイツに勝てないんだよな。
何故かって?
時差があるからさ。
前回アイツを倒してから、俺は50年生きた。
つまり、アイツは俺より50年くらい前にコッチに来てる可能性が高い。つーか確実に来てる。
今までの経験で判るのだ。アイツは俺に叩き出されると、スグに別世界に侵入しようとする。
1~2年のタイムラグは有るかも知れないが、とにかくアイツはとっくにコッチに来ている。
おまけにアイツは人間として生まれていない。毎回違うけど、とにかく人外である。
よって寿命なんか無いし、神(今まで遭ったこと無いけど)とかを含むこの世界の在来の存在では対抗出来ないハズだから、既に大きな勢力なり組織なりを従えてる可能性が大きい。
え?この世界の知的生命がそんなのに加担するわけ無いって?
バカ言うんじゃ無ぇ。
何処の世界、いつの時代にも居るんだよ。
怪しげな教祖様とか、恐怖の大魔王とかを信奉する輩ってのはさ。
アイツがガシガシ力を付けてるってのに、俺はまだガキンチョで、しかも人間だ。
いくらチートでも、やっぱ限界が有る。
体力、魔力なんかまだまだで、同世代ではスゲーかもだが、鍛え抜いた大人には敵わない。
あと精神力。
この前までジジイだったとはいえ、所詮子供なのよ。
感情や欲求をコントロールしきれないんだよね。
勉強せねばと思っていても、屈んだメイドさんの谷間を凝s・・・ゴホゴホ
身体訓練してたハズが、たまたま?近くに居た白鳥騎士のお姉さんの揺れる・・・ゲフンゲフン
そこっ!ソレは子供の欲求ぢゃ無いとか言うのは禁止だっっっ!!
・・・まーそんなわけで、俺が強くならないうちにアイツにめっかると、色々マズいのですよ。
あー二つめの問題はね、進路なのだよ。
なんせ両親がああなんで、魔法系と騎士系、どっちに進むかがねー。
オヤジは口には出さないんだけど、魔法学院行ってくれー、と眼で訴えて来るし。
母さんはもう、当然のよーに騎士学校よね?とか言って来る。
母さんの尻に敷かれて、口に出せないオヤジには男の哀愁を感じちゃって、希望をかなえてやりたいなーとも思うし、と言って母さんの推す騎士ってのも、男としては捨て難い。
あーどーすっかなー?