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オークさん、こ、困りますっ

 ヘリル村はごく普通の村である。

 北は山脈、東は漆黒の森に阻まれているが、それ以外は平坦であり、農耕牧畜には十分である。

 近辺に都市らしい都市が無いので、概ね自給自足の生活である。

 一番近いのがノーテルンなんだが、間は漆黒の森である。道もロクに無い上、魔獣の縄張りだ。

 あまり交通の便が良いとは言えないだろう。つか危険過ぎる。


 今回の依頼はお馴染みのオーク退治である。ここの村長からノーテルンのギルドに依頼が入った。

 元々オッサンたちが請けて来たんだが、思ってたより数が居る上、森に潜んでるんで範囲魔法もイマイチ使えない。

 あーヒルダさん火だしな、森で撃ちまくったりしたら二次災害のほうが怖いしな。


 ってわけで俺らが増援に呼ばれたんだが、想像以上に被害が大きい。

 俺らも来る途中で何度も襲われたし、村の周囲もスゲー荒らされてる。

 オッサンたちも村守るので精一杯ってトコだったらしい。


 何処から湧いて来たんだ?

 元々森に棲んでたのは間違いないが、こんなには居なかった。

 そもそもオークには♂しかいないんで、他種の♀に産ませる以外繁殖出来ない。

 そうそう増えるもんじゃ無いのだよ、明智君。


 どっかから大量の♀を調達してきた?

 有り得ん。そんな悲劇的な噂は流れて来ていない。人間以外にそんな大量の♀なんていないし。


 なら、何処かから別の群れが流れて来たとしか思えん。

 元から居た連中と新参の連中がガチって、負けたほうが食うために村に出て来た、か。

 あるいは両者が混じって、飽和状態になっちまって、やっぱ食うために出て来た、か。


 あいつらバカで好戦的だからな、後者はあるまい。同族だから受け入れるなんて善意があるわけ無い。

 まーそのほうがコッチは楽だし。

 あぶれた連中だけ始末すれば、残りは放置出来るからね。

 原状復帰って事だから、元々棲んでたんだし、元通りになるってだけ。


 後者だった場合、最悪前者の2倍以上を相手にしなきゃならんからなー。

 まー俺らからすれば、2倍でも3倍でも雑魚以上にはならんのだがね。チートあーんど規格外だし。

 

 

 「んじゃ、オッサンたちはこのまま村を守って、俺らが森で狩る、で良いのね?」

 「ああ、俺たちはもうココ守るのにも慣れたしな。

  お前たちが今更一からやるより効率良いだろ?」

 「ですね。慣れない私たちだと、思わぬ穴とかあったりするかも・・・」

 「そうね。それに攻めるほうが向いてるしね、私たち。」

 「お前だけだろ?この突撃娘。大体お前の場合”攻める”ぢゃ無くて”責める”dごはぁぁぁぁぁっ!!」

 「失礼ねっ!誰が突撃娘よっ!? そ、それに責められるほうが・・・ハッ!///」

 「相変わらずねー、貴方たちって。」

 「だぎゃ。緊張感とか無縁だぎゃ。」

 「しっかし、龍の娘さんだろ?この娘。龍を仲間にしちゃうなんてなぁ・・・」

 「何でもアリよねー、この子たちって。」

 「今更だぎゃ。」

 「わらわは確かに龍じゃが、もうこやつらの仲間じゃ。特別扱いなどは遠慮するぞ。」

 「です。私たちもしてないですし、するつもりもありませんから。」

 「ええ、いぢりがいありますよ、この娘。」

 「っ!いぢるのは無しじゃ! もうこやつらだけで十分なのじゃ!」

 「あらら、あっという間に染まっちゃってるのね。」

 「まーこいつらだし。」

 「だぎゃ。」

 「・・・なんか、酷い事言われてる気がする・・・。」

 「・・・多分、気のせいじゃ無いと思います・・・。」

 「・・・わらわも一緒くたにされておるのか・・・。」



 「これは何じゃ?金棒か?」

 「ん。金棒。お前リーチ短いからさ。得物は長めが良いと思ってな。

  棒ってのは使い勝手良いからな。殴って良し、突いて良し。

  刃の向きとかも気にしなくて良いし、大雑把なお前向きだ。

  持つ位置によって長くも短くも使える。まー使いこなすには相当練習必要だが。」

 「むぅ、大雑把じゃと・・・じゃが、威力とか低いのでは無いのか?」

 「お前バカ力だからな、お前が使うってだけで十分強力だ。

  ただの棒だって、高速で振り抜けば鎧を斬る事だって不可能じゃ無いんだぞ。

  それにな、お前には軽いだろうが、そいつは普通の人間に振り回せる重さじゃ無いぞ。」

 「バ、バカ力・・・まぁ良い・・・じゃが、さっきエルたちも振り回しておったぞ?」

 「・・・俺は”普通の人間”と言ったと思うが?」

 「・・・そうであったな。すま・・・ごめんね、おにいちゃん♪」

 「許す!完全に許す!!」

 


 「なんか悪口言われてる気がするわ。」

 「奇遇ですね。私もです。」

 「あいつね。」

 「ですね。」

 「そろそろ貴女の新ワザ見たいわね。」

 「ふふふ・・・見たいですか?」

 「っ!出来たのねっ?!」

 「名付けて、”王虎猛裂掌”です。」

 「ス、スゴそうな・・・私もそろそろソニック・ブラストを卒業すべきなのかも・・・」

 「いえ、アレはもうカンペキです。磨きをかけるのに徹したほうが良いと思いますよ。」

 「え、そ、そうかしら?」

 「です。ワザ名考えるのも覚えるのもめんどくさいですし。」

 「そうね・・・めんどくさいのは私じゃ無いけどね。」

 「私でも無いですけどね。」



 あーめんどくせー。

 オークども、纏まっててくれねーから、小群をプチプチ潰してくしか無いときた。

 セリアのおかげでレーダー要らずだし、突撃娘コンビが大活躍してくれるしで、捕捉しさえすれば瞬殺なんだが。


 ミューは突撃娘2号に認定した。

 技の1号、力の2号。なんかピッタシじゃね?

 何にピッタシかって?

 訊くな。色々ヤヴァいからな・・・。


 オークどもは大体20匹ぐらいで行動してる。

 セリアの精霊ネットでMAP検索?すれば一発で見つかるんだが、なんせ森は広い。

 まー奥の方のやつらは出て来ないと思われるので、近場の群れだけ叩いてるんだが、終わらん。

 やつらも移動するし、森は歩き易いとは言えないしな。

 殲滅自体は問題無いんだが、捕捉に手間食ってる状況。

 一旦村に帰って、明日出直すか。半分ぐらいは殺ったしな。



 「いっぺん戻るべ。」

 「うん、そうね。流石にちょっと疲れちゃった。」

 「お風呂入りたいです。」

 「わらわもじゃ。」

 「お前は暴れ過ぎだ。もっとセーブしろ。オークより森の木々のほうが大惨事じゃ無えか。」

 「あぅっ、た、確かに・・・今度から気をつける。」

 「まぁ初めてだしな。森には悪い事したが、お前は良くやったぞ。」

 「///あぅ・・・」

 「むー、私は?」

 「よしよし。」

 「///えへへ♪」

 「あぅぅぅ・・・私だけナデナデして貰えないです~」

 「あー、ミューの次な?」

 「ミュ、ウ、ちゃ、ん♪もう良いですよね?」

 「うっ、あ、ああ、も、もう良い・・・・え、笑顔が怖いのじゃ・・・」



 「ふぅ・・・良い気持ち♪」

 「やっぱりお風呂は良いですねー。」

 「人間は贅沢じゃのぅ・・・じゃが確かにコレは良いのぅ。」

 「はぁ・・・やっぱりセリアの肌って綺麗よねー、流石エルフって感じ。」

 「///あぅぅ、きゅ、急に何を・・・」

 「エルとてスベスベでは無いか。ほら。」

 「///きゃぅっ!ど、どこ触ってるのよ、もうっ!」

 「乳じゃが?」

 「///いくら女の子同士でも、気安く触っちゃダメ!」

 「そういうものなのか?」

 「そういうものなのっ!」

 「でも、ホントに綺麗ですよ、エルの肌も。」

 「む?わらわはどうなのじゃ?」

 「貴女の肌を綺麗じゃ無い、なんて言う人いないわよ。」

 「///そ、そうか、ならば良いが。」

 「あら?ミューちゃん、生えて無いんですね?」

 「っ!ホントだ・・・。」

 「っ!な、何がじゃ?」

 「何って、ほらココ。私もセリ・・・あれ?」

 「///うぅぅぅ///」

 「セ、セリアもなのっ?!」

 「///あぅぅ、ち、違うんですっ!エルフは首から下は全身無毛なんですっ!!!///」

 「龍族もそうじゃな。」

 「っ!な、なんですってぇぇぇぇっ!!

  う、羨まし過ぎる・・・お手入れも何もしないで良いなんて・・・あぁぁぁ。」



 隣の男湯で、逆上せたあげく湯舟に浮いていた俺が発見救助されたのは翌朝だった。


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