表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/43

お姉ちゃんは役立たず

 上空を十数頭のドラゴンが飛び交っている。

 だが、犬っころサイズだっつー仔ドラを見つけるってのは至難だろー。

 なんせ森だし。見晴らし良いわけない。


 俺らは、オッサンたちと連絡を取り合い、仔ドラを捜して坑道に入っている。

 逆方向からだが。

 漆黒の森の北側には、かなり古い廃坑道の入り口があるのだ。


 今掘ってる坑道からは大分逸れるんだが、かつては繋がっていたらしい。

 人は通れなくとも、声は通る。

 小さな穴とか割れ目とかが残ってて、そこから声が本坑道に届いたんではないか。


 ドラゴンの住処は洞窟。

 落っこちた仔ドラが、似たような場所ともいえる廃坑に潜り込んでも不思議じゃ無い。

 んで更に廃坑内でダブル迷子になっちまったんだろうなぁ。

 で、泣いてるってわけだ。まー子供だし仕方ねーよな。


 けどまぁ、アテが出来て良かった。

 あの森中捜し回るってのは、この人数じゃしんど過ぎる。

 ハズレた場合も考えて、ギルドから20人ほど出て、森を歩いてる。

 ゴールドドラゴンの依頼だぜ?報酬は期待出来る。


 そうなのだ。

 あの姉ちゃんドラゴンを通じて、長老ドラゴンから正式に依頼が入ったのだ。

 迷子の事を考えたら、プライドなんて言ってられないって分かってるんだな。さすが長老。



 「気配とか感じられないのか?ミュー。」

 「うーむ、微かには感じられるのだが・・・方向までは・・・」

 「使えねーなー、お前。」

 「うぐ、むむむぅ・・・。」

 「そいや、また喋り方戻っちまったんだなー。」

 「こ、これが本来のわらわじゃ!あ、あのときは、その、い、いれぎゅらぁじゃ!」

 「はいはい、っと。んじゃセリア、分かる?」

 「はい、その別れ道を左ですね。あと少しのハズです。」

 「土の精霊にゃ、こーゆートコは云わばホームだしな。」

 「わ、分かるのなら何故わらわに訊くのじゃ?!」

 「いやだって、お姉ちゃんも少しは役に立たないと、可哀想じゃん。」

 「う、うぐぐぐ・・・余計にだめーじが来た気がするのじゃが・・・」

 「長老にもめっちゃ怒られたんだっけか?」

 「うー、思い出したくも無いのじゃが・・・わらわが愚かだったのじゃ、仕方あるまい。」

 「よしよし。自分の非が認められるだけ、お前は偉いぞ。」

 「///・・・き、気安く頭をなでるでないっ!///」

 「いやなんか、なでてやりたくなって。」

 「///うぅぅぅぅ・・・と、特別になでるのを許してやるのじゃ・・・」

 


 「あ、あっちから何か聞こえない?」

 「お?・・・ん。何か聞こえるな、確かに。」

 「っ!あの声はっ!マルトっ!! へぶっ!」

 「足元見ないで走るなアホ。てか暗闇でも見えるんだろお前。」

 「ぐぐぐ・・・バカに続いてアホ呼ばわりされるとは・・・わらわのあいでんてぃてぃが・・・」

 「ドジっ娘かしら?」

 「ツンデレは確定ですよね。」

 「空回り属性だろ?」

 「ドラゴンのイメージ崩壊には、スゴく貢献したわよね。」

 「ですねー。全然怖く無いですー。」

 「いぢり易いしなー。」

 「うぐ、ひ、酷いやつらじゃ・・・わらわの繊細な・・・はぁとは・・・ぼろぼろじゃ・・・」

  

 

 「あ、居ましたよっ!」

 「マ、マルトっっっ!!!!」

 「あ!あぎゃ!あぎゃぎゃぁ!!」

 「へぶっ!し、心配したんだぞ・・・良く、無事・・・えぐっ」

 「ここでコケるあたり、素質あるよな、やっぱ。」

 「鼻真っ赤よ。痛そう・・・。」

 「すぐ治癒してあげましょう。」


 「ミュー、弟くんは大丈夫なのか?」

 「う、えぐ、だ、だい・・じょう、ぶ・・えぐ・・おなか・・すいてる・・み・・たい・・ぐす。」

 「いい加減泣き止めよ、お姉ちゃん。弟くんが心配そうに見てるぞ。」

 「何か食べる物・・・干し肉で良いかな?」

 「きゅー♪」

 「「///か、可愛いっ♪///」」

 「きゅきゅ、きゅ」

 「うーむ、なんつーか・・・癒し系?」

 「「///はふぅ・・・可愛いすぎぃ~///」」


 「・・・心から礼を言う。そなたらのおかげで、弟を無事見つけられた。感謝の言葉も無い。」

 「お、復活したか。」

 「う、うむ。早速マルトを連れて帰りたいのじゃ。すまんが・・・」

 「あー皆まで言うな。後の事はこっちでやっとくから。」

 「うん、早くマルトちゃんをご家族に会わせてあげて。」

 「お腹いっぱいゴハン食べさせてあげてくださいねー。」

 「っ、そなたらには、本当に・・・」

 「きゅ?」

 「ほらさっさと行け。マルトがまた心配するから。」

 「ん、では行かせて貰う・・・」

 

 「行ったか。」

 「行っちゃったね・・・あ、コケた。」

 「はぁふぅぅ~、マルトちゃん、また会いたいですー。」

 「子供の可愛さって、反則だよなー。」

 「そうよねー・・・子供の頃の私も可愛かったでしょ?」

 「・・・そんな昔の事は憶えていない。」

 「ぶー。私は憶えてるんだからねっ!いっぱい泣かされたしっ!」

 「・・・記憶にございません。」

 「むぅぅ、あんなに意地悪ばっかしたくせに!」

 「・・・過ぎ去った、と書いて過去と読むのだよ、エレーネ嬢。」

 「くぅぅ・・・私のお尻に悪戯書きまでしたくせにぃぃぃっ!」


 「うぅぅ・・・私空気に・・・幼馴染ってズルい・・・」



 

 町に戻ったら、ギルドへの報告とかやる事一杯あって、宿に帰ったのは暗くなってからだった。

 報酬は明日届くという事だったので、疲れたしさっさと寝るべーと、部屋でうだうだしてたら来客があった。

 いかにもって感じの老人。好々爺ってこーゆー人かな。


 「夜分突然お邪魔して申し訳無い、ターク殿。ワシは山の龍一族の長老、ワルデックと申す者。

  そなたと是非友誼を結びたいと思い罷りこしたのじゃ。」

 「貴方が長老さんですか。わざわざお出でになるとは思ってませんでしたが。歓迎致します。

  しかし龍である貴方が俺と友誼をとは?」

 「いや、ターク殿は孫の恩人じゃ。感謝してもしきれぬ。まことにありがたし。この通りじゃ。

  加うるに、孫に子供を守るのに人間もドラゴンも関係ないと申されたとか。

  かような御仁とワシとそなたが友誼を結んでも、何ら不都合はあるまいと思うての。」

 「あ、頭をお上げください。って、孫?ミューとマルトですか?」

 「さよう。あやつらの母親はワシの娘なのでな。父親は人間なんじゃが。」

 「人間!?龍と人間が結婚したんですか?」

 「いかにも。

  ワシは最後まで反対したんじゃが、娘の決意は固くてのぅ。根負けしたのじゃ。

  じゃが、婿はよう出来た男での、亡くなるまではワシの片腕でもあったのじゃ。」

 「もう亡くなってたんですか・・・あ、そうか、寿命が違うんだから仕方ないんですね。」

 「その通りじゃ。娘の悲しみようは痛いほどじゃったが、あやつは二人も子を残してくれたでな。

  あの子らのおかげで、娘も立ち直ったわ。」

 「母は強し、って云いますからね。子供が居て良かったです。」

 「そこでじゃ。そなたに孫娘を娶って貰おうと思うての。」

 「ちょっ!なんでいきなりそうなるんですかっ?!」

 「いやいや、ミューレリアスめ、戻ってからそなたの事ばかり口にしおるでな。

  おまけに龍形にも戻らず人間体のままでおる。

  髪型がどうのとか、服を買いにいかねばとか、浮かれっぱなしと申して良いほどじゃ。

  まるで、娘のあの頃を見るようなのじゃ・・・。」

 「いやっ、しかしですねっ!俺はですねっ!」

 「なに、龍の娘から生まれた子は、必ず龍じゃ。父親が異種でも無問題。

  それにの、我らは一夫多妻じゃ。あやつが何人目の妻であろうと気にはせぬわい。」

 「っ!いっぷたさい・・・ゴクリ。」

 「流石に食い付きが良いのう。英雄色を好むとも云うしの。悪い話ではあるまい?」

 「ま、前向きに検討させt・・・」

 「ダメよっ!」「ダメですっ!」


 「うぉっ!お前らいつの間にっ!」

 「さっきから気配はしておったがのう。そうか、この二人がもう嫁であったか。」

 「///ま、まだです、じゃなくてっ!」

 「///そ、そん、あの、あう。」

 「ほっほ。なーに、人間の一夫多妻の国もあるようじゃしの、纏めて面倒みれば良かろうよ、婿殿。」

 「っ!人間の国にmがはぁぁぁっ!!」

 「そこに反応するんじゃ無いっ!」

 「あうぅ、でも、それもアリかも・・・」

 「ほっほっほっほ。まぁあれじゃ。婿はともかくじゃ、孫を連れて行ってはくれんかの?

  ぱーちーとやらの一員として、の。乗り物代わりにもなるぞい。

  そっちのお嬢さんたちも、そのくらいは良かろう?」

 「う、まぁ、ミューは悪い娘じゃ無いし・・・」

 「飛んで移動出来ますしね・・・」

 「・・・予想の範囲ではあったしね。」

 「流石に婿入りは想定外でしたけどー。」

 「・・・仲間としてなら。歓迎します。」

 「私もです。楽しそうですし。」


 「お爺様っ!」

 「おお、ミューレリアス。何しに来たんじゃ?」

 「何しにって台詞はわらわが言いたいですっ!突然タークに会いに行くとか伝言だけでっ!」

 「なに、そなたの未来の婿殿に挨拶をと思うての。」

 「///むむむむむむむこっ!?」

 「まぁそれは保留じゃがの。そなたも一緒に連れていってくれるそうじゃぞ?仲間としてな。」

 「えぇぇっ!何勝手に決めてるのですかっ!」

 「イヤなのかの?」

 「え、あ、い、う、い、イヤでは・・無い・・です・・・。」

 「ミュー、貴女さえ良ければ、なの。無理にとは言わないわ。いえむしろ・・・」

 「エル、往生際が悪いです。この流れを止められるとでも?」

 「う、た、確かに・・・もう止まらないわよね。」

 「・・・その、そなたら・・・本当にわらわも連れて行ってくれるのか?」

 「女に二言は無いわよ。毒喰らわば皿までよっ。」

 「エル、なんか違います・・・。歓迎しますよ、ミュー。」

 「う、あう・・・よ、よろしく頼む・・・」

 「うむうむ。そなたら、孫をよろしくお頼み致しますぞ。

  なに、遠慮せずに扱き使ってやってくだされ。」

 「勿論です。」

 「それはもう。」

 「即答なのだな・・・うぅ、ちと早まったかも知れぬな・・・。」



 てれれれってれ~♪

 みゅー が なかま に くわわった!


 全ては、俺が沈んでるうちに決まっていた。俺の立場って・・・

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ