北国?の春
ノーテルンの町は、そのままノーテルン伯爵の城下町でもある。
岩塩を産する鉱山を抱えているため、鉱山町の顔も持つ。
北側には万年雪を冠する山脈が連なり、その麓の鉱山開発の礎として発展してきたって聞いた。
東西も、それほど高くは無いが山に囲まれており、南に向けて開けた扇状地って感じ。
扇の要が鉱山であり、真っ直ぐ南下した扇の真ん中に町がある。
夕刻、護衛したキャラバンと別れ、俺らはオットーさんたちに誘われて酒場に居る。
ちなみに宿はここの二階。うん、呑みすぎても問題無いな。
「「「ええええぇぇぇぇっっ!!!」」」
「お前ら、驚き過ぎだっ!?幾ら俺でも凹むぞおいっ!。」
「いやだってっ!」
「オットーさんがっ!」
「25歳だなんてっ!」
「「「有り得ないっ!」」」
「言い切られたわね。まぁ当然の反応だけど。」
「だぎゃ。オラだって信じないだぎゃ。
けんど、姐さんがオットーと同い年ってのmごぶふうぅぅぅっ!!」
「エリック、この骨付き肉美味しいわよ?鼻から食べさせてあげるわね♪」
「おおおぉお許しをぉぉぉっ!」
「ヒルダさんなら信じられるんだけど。」
「ですね。いえ20歳と言われても信じられます。」
「・・・処世術。人の世の理、か。」
「タークちゃん、こっちいらっしゃい。貴方にもお肉食べさせてあげる♪」
「おおお、お姉さまっ!ボクはもう満腹でっ!」
「ボクとか言ってるわ。」
「ホント、女性には弱いですよね。」
「ヒルダさん、美人だしね。」
「おっぱいも大きいです。」
「でも、ライバルにはならなそうよね。」
「ですね・・・やっぱりオットーさんでしょうか?」
「エリックさんとも仲良いけど、やっぱりそうかな?」
「エリックさんて、お二人の弟さんって感じです。」
「あそっか。弟可愛がってる感じなのか。」
「いぢってるだけって気もしますけど。」
「何の話だぎゃ?オラの名前が聞こえたんだぎゃ。」
「ひゃうっ!」
「え、えっと、エ、エリックさんはお幾つなのかなー?と・・・」
「んー、オラはオットーたちの2つ下だぎゃ。
オラたちは幼馴染なんだぎゃ。
ガキの頃からずーっと一緒なんだぎゃ。」
「仲良しなんですねー。」
「だぎゃ。家族とかいねーし、オラたちが家族みたいなもんだぎゃ。」
「あ、あの、ご家族は・・・」
「運が悪かっただぎゃ。それだけだぎゃ。」
「すみません、余計な事を訊いてしまい・・・」
「良いだぎゃ。もうオラたちは家族の顔も憶えて無いだぎゃ。それだけ昔の事なんだぎゃ。」
「孤児院、ですか。」
「ああ、俺たちの村が大火で焼けちまってな。生き残った子供はみんな孤児院送りさ。」
「でさ、アタシが年頃になったら・・・その、ね。」
「それで飛び出したんですね。ヒルダさんを守るために。」
「っ!そ、そんなカッコイイもんじゃ無えよっ!」
「ううん、カッコ良かったわよ。あの頃は。」
「過去形かよっ?!」
「当然でしょ、このオッサンモドキ。」
「ぐはぁぁぁぁっ!」
「・・・容赦無いですね、お姉さん。オッサンモドキて・・・」
「仕込みは早いうちに、って言うでしょ?」
「オットーさん・・・骨は拾ってあげます。」
「ぐぅぅぅ・・・お前だっていずれ・・・俺と・・・同じ・・・道を・・・」
「はっはっはっ、俺はっ!大丈夫っ!ですっっ!」
「お前、声が裏返ってるぞ。手も震えてるし。」
「ノミスギタカナー。」
「今度は棒読みになってるわね。」
「ふっ、虚勢か・・・まだまだ青いな、ターク。」
「・・・台詞がことごくオッサンですよね。」
「オッサンよね。」
「がはぁぁぁぁぁっ!」
うーむ、マジ呑みすぎたかも。
オッサ・・・オットーさん、もう捕食されちまってるのかー。ヒルダさん美人だしなー、ちっと羨ましいぞ。
しっかし見事に座布団になってるなー。
あ、なんか過去の人生思い出してきちまった・・・シンパシィってやつ?
あー、目から汗が止まらなくなってきたぞ。オッサ・・・もうオッサンで良いや、強く生きてくれ。
「あら?ターク寝ちゃってる?お酒強いほうなのに。」
「きっとお二人にアテられちゃったんですね。」
「きっとそうだぎゃ。オラはいっつも辛い目に遭ってるだぎゃ。」
「そういえば、エリックさんだけ方言なんですね?」
「あー、俺たちは同じ村だけど、エリックとは孤児院で知り合ったんだ。」
「アテられて、ってトコを華麗にスルーするあたりが、なんか羨ましいです。」
「いや、ソコは最後までスルーして欲しいんだが・・・」
「アタシは嬉しいんだけど?」
「う、え、あ、いや、うん。」
「なんかオットーさんて、タークよりヘタレ?」
「みたいですねー。」
「ヘタレどころじゃ無いわよ。オッサンモドキのドヘタレ。」
「ごふぅぅぅぅっ!」
「打たれ弱いんですね。」
「タークさんには物理攻撃しか効きませんから、新鮮ですねー。」
「こいつには何でも効くから、飽きないわよ。」
「攻撃戦力が3倍になったぎゃ。オットー、安らかに眠るだぎゃ。」
んあ?寝ちゃってたのか俺・・・ここどこだ?
あー宿屋かぁ・・・誰かが運んでくれたんだな。ご迷惑おかけしました。
・・・って、天井にしちゃ妙な・・・
むぉ!これはエルのおっぱいでわ無いかっ!!しかもこのアングルは真下から視点かっ!
って事は膝枕っ!! うむ。速攻狸寝入り決定。
嗚呼、フトモモのぷに感が・・・なんか視線ずらすと白いモノ見えるし・・・。
うーむ、デカい。立派。見事。
なんせおっぱいに隠れて顔が見えん。耳掻きサービスとかは断念すべきかも知れない。
って、なんかこいつ全然動かないなー。寝てるのか。
このままだと、こいつが風邪とか引いちゃうなー。
仕方ない。起きるか。フトモモに多大な未練はあるんだけど。
エルをお姫様抱っこして、隣の部屋へ。エルはセリアと同室。
んにゅーとか、あむーとかワケ解らん寝言こいてるエルを、ベッドに寝かせる。
部屋の鍵?開いてました。セリアが気を利かせたんだろな。デキるやつ。
反対側のベッドで、これまた意味不明な寝言こいてるセリアに感謝しつつ廊下に出る。
ドアはチートでロックしとく。
「あら、タークちゃん、起きちゃったんだ?」
「起きちゃったって、もう朝とか?」
「まだ夜中よ。日付変わったくらい。
そうそう、エルちゃんにお礼言っとくのよー?
あの娘が部屋まで引き摺ってってくれたんだから。」
「・・・どおりで、なんかアチコチ痛いな、と。」
「階段も引き摺ったまんま上ってったしねー。」
「・・・」
「セリアは、自力で?」
「あの娘もダウンしちゃって、エルちゃんが貴方より先に運んでったわ。」
「まさか、引き摺って?」
「ううん、なんか風魔法で空気担架みたいなの出して運んでたわね。」
「・・・なんで俺にはソレ使わんのだ、あいつわっ!」
「めんどくさい~って。」
「・・・さいですか。」
「でもスゴいわよね、あの娘。階段でも貴方の事軽々と引き摺ってたわ。」
「まーなんつーか、規格外ですから。」
「そうよね。あんなに強いんだものね。まだ若いのに。」
「お姉さんだってまだまだ若いじゃないですk・・・」
「まだまだ?」
「い、いえっ!ぜっっんぜん若くあらせられますっ!」
「ま、良いわ。許してあげる。」
「は、ははーっ!ありがたき幸せっ!」
「じゃ、アタシはオッサンモドキで遊んでから寝るから。」
「おやすみなさいませ。お姉さま。」
「うふふ、おやすみ坊や♪」
明日は一日休むかなー。
馬車旅で、身体バキバキになったし、あいつらも疲れてるっぽいし。
報酬あーんどボーナスで、カネもあるしな。
この辺りは涼しいなぁ。まぁ王国北辺だし当たり前か。春だからまだ良いけど、冬には来たく無いな。
寒いの苦手なんだよね。暑いのもだけど。
そこっ!軟弱とかゆーなっ!
真夏にエアコン壊れたら、絶対そんな事言えなくなるぞっ!
うとうとし始めて、ふと思った。
俺のオヤジ、オットーのオッサン、あとエルの親父さんとかも。
みんな嫁の尻に敷かれてるじゃねーか!
俺の周りには、浪漫を追い求める漢が居ねーって事かよ!
っ!
まさか、まさかっ!
俺もか?俺もそうなるっつー暗示とか予兆だとでもいうのかっ?!
くぅぅ、負けるものか。負けてなるものか。
俺は彼らの屍?を乗り越え、必ずや浪漫を実現してやるっ!
ユニーク1000突破しました。
ありがとうございます。
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