あいでんてぃてぃ?
キャンプに戻ると、もう食事の準備は粗方終わっていた。
見ると、護衛は全員纏まって座ってる。
見張りも立てていないわけだが、なんかそれっぽいのが四囲に要る。
幻影魔法。ヒルダさんだな。あれで斥候を誤魔化してるってわけだ。
気付くの早いよなぁ。セリアあたりか。精霊さんネットは侮れないからな。
平静を装って合流する。みんなも普通に応じてくる。
ベテランのオットーさんたちはともかく、エルとセリアが落ち着いてるのはスゲーよな。
やっぱあいつらデキるわ。
うぅ、娘たちよ、立派に成長してくれてお父さんは嬉しいぞ。
とくにおっぱいとかおっぱいとかおっぱ・・・今はやめておこう。
「ただいまー、薪も結構拾いましたよ~。」
「おう、ご苦労さん。揃ったしメシにしようか。」
「ターク、お気付きと思いますが・・・」
「ん。本隊の事も知ってるんだよな? エル、パン取って。」
「はいパン。 全部判ってる。商人さんたちにはまだ知らせてないわ。」
「なんか策でもあるの?坊や。」
「だぎゃ。このままってわけにゃあいかないだぎゃ。」
「それなんですけど・・・」
「それでいこう。ただ、奴らは固まったままでいるかな?」
「無理でしょうね。もうそろそろ準備してるんじゃないですかね?」
「そうみたいです。4つに分かれたようです。」
「左右の丘、カーブの出入り口ね。35人だったかしら?」
「今エリックさんが34人にしたみたいですよ。」
「あとは本隊のみ、か。俺は依頼主に知らせてくる。騒がれても困るしな。」
「大丈夫でしょ。彼らも慣れてるわ。」
「あの丘か。丘ってーより岩山だな。」
「ですね。下の街道からじゃ、発見も反撃もしにくい。向こうは岩陰から打ち放題。」
「この辺の賊は、こないだ討伐されたハズだぎゃ。」
「オイシイ縄張りが空きゃ、スグ後釜が来るでしょ?」
「それで、どうしますか?丘ごと焼け野原に?」
「うーん、アタシでも左右同時はねえ・・・」
「それなら、エルの魔法ではどうですか?」
「え?私もそんな器用な真似は・・・」
「精霊さんに手伝って貰いましょう。」
「なるほどな。上空からカマイタチだっけ?アレを降らせりゃ・・・」
「ウインドカッターよ!・・・でも数はともかく、当たるかは・・・」
「そこを精霊さんに助けて貰うんです。エルは撃ちさえすれば良いんです。
あとは精霊さんに当てて貰いましょう。
エルは風属性ですから、風の精霊さんは喜んで手伝ってくれると思いますよ。」
「出来るか?」
「うん、30くらいなら何とか出来るわ。」
「左右の丘に13人ずつ。出入り口に5人ずつ居るわ。」
「良し。丘は嬢ちゃんたちに任せる。入り口は俺とタークで。出口はお前らな。」
「ういだぎゃ。姐さん行くだぎゃ。」
「ったく、レディを走らせるんじゃ無いわよ!」
「じゃ、エル頼んだぞ。討ち漏らしはセリアよろしく。」
「うん、任せて。」
「お任せを。」
二つの丘の間、丁度街道の真上の空に歪みが見え始める。あ、渦っぽくなった。
岩山っぽい丘は、下からには有利だが、上空からだと丸見え状態だな。木とか無いんで。
一番遠い出口に向かったヒルダさん組から合図があった。準備完了。
状況開始。
上空の渦が高速回転し始めたと思ったら、渦がバラけ、無数の陽炎が急降下していく。速い。
あっという間に、二つの丘は阿鼻叫喚の巷と化した。一瞬だったけど。
陽炎は、それこそ銃弾並みのスピードで賊どもに殺到した。
頭から真っ二つになっていく。スゲー。クラスター爆弾なんて目じゃ無え。必中ってのが凶悪だよなー。
そう、陽炎はほぼ同時に着弾したんだ。賊どもは逃げ回るヒマも無く、全員瞬殺されたんだ。
多分、自分が死んだ事にも気付かなかったろう。
確認の必要も無いな。丘の賊は全滅だ。エル一人によって。
もしエルが精霊の加護とか受けたら、俺なんかミリ単位にバラされるんじゃ無かろうか。
怒らせるたらヤヴァ過ぎる。うん、自重しよう。怖過ぎる。
出口のほうも静かになった。流石だねー。1分かかって無いよ。
ほぼ同時に俺らも役目を終えた。入り口の奴らを奇襲し、オットーさんが3人、俺が2人片付けた。
状況終了。
開始から終了まで1分以下・・・雑魚とはいえ、哀れ過ぎる気もしたが。
あとは死体を集めて焼くだけだ。まーカネとか持ってたら頂くけど、期待出来る連中じゃ無えしなー。
死体は出来るだけ焼く。
死体即ちアンデッドのモトだからだ。特に殺された場合はなり易いらしい。
灰にしちまえば問題無いってわけ。
あーあれだ。死体集めはセリアがやった。正確にはセリアが頼んだ精霊が。俺以下出番無し。
山と積まれた死体にの下に、ヒルダさんが火を起こす。魔法だけどね。
火力ハンパ無えぇぇ!火葬場より早いんじゃ無えか?
ホントなら煙と臭いがアレなんだけど、エルが風の壁で火葬場を囲んでるので、煙も臭いも上に行くだけ。
ま・ほ・う・って便利だな♪
てかさー、チートな俺の出番が無いってどーよ?
ぶっちゃけエルとセリアだけで世界救えるんじゃね?
あいつらどんどん強くなってるし。
火葬も終わったしキャンプに戻るか。
「いやぁ、皆さん流石ですな。おかげで助かりました。ノーテルンに着いたら報酬を増額いたしましょう。」
「いや、これが仕事ですので。礼などいりませんよ。」
「そう仰らず。我々の感謝の気持ちです。お受けください。」
「そうですか。ではありがたく頂きましょう。」
狐と狸に近いな。建前ってのは社会の潤滑油だ。本音でやり合ったら洒落にならんよな。
商人が報酬余計に払いたいわけ無いんだが、あんまケチると評判が悪くなる。
冒険者は一仕事したんだから、ボーナスぐらい当然と思う。
まーボーナスはそこそこってトコになりそうだ。
両方ともオトナだしな、落し所くらい弁えてるさ。
「しかし、嬢ちゃんたちはスゴいな。あれ見せられたら、俺たちランクAだなんて威張ってられんぞ。」
「ホントよね。精霊の加護って、使い方次第であんなコト出来るなんて知らなかったわ。」
「オラもビビったぎゃ。」
「そ、そんな・・・私たちなんて、まだまだ皆さんの足元にも・・・」
「そうですよ。それに皆さんは威張ったりなさらないし、頼りになる先輩です。」
「おう、嬉しいねぇ、こんな可愛いお嬢ちゃんたちに頼られるなんてなぁ。」
「だぎゃ。」
「・・・可愛くなくて悪かったわね。」
「そ、そんな事無いぞ。
そ、そう、うん、あれだ。円熟味とか大人の色気とか、お前にはそういうごこぉぉぉぉっ!」
「要するにオバサンって言いたいわけでしょっ!!」
うん、なんか俺空気。まー活躍して無いもんな・・・。
でも、オットーさんたちの気遣いは嬉しい。
エルは初めて”人を殺した”んだもんな。やっぱなんか無理してるよーなな気がする。
セリアだって、間接的とはいえ、共犯?だしな。こっちもちょっとキテるっぽい。
こーゆー場合、下手に慰めたり正論ブったりするよりは、普段どおりに接するほうが良いと思う。
あぁやってワイワイやるのが一番。
解ってるよなぁ、オッサンたち。年の功だなー。
この仕事も明日まで。
明日の昼過ぎにはノーテルンに着く予定。
オットーさんたちともお別れだな。
短い間だったけど、結構お世話になったし、なんかお礼にアイテムでもあげよう。
「着いたな。」
「うん、なんかあっさり着いちゃった感じ。」
「ホントです。」
「まー3日間馬車だったもんなぁ。歩いてたら倍かかったろうし、疲れたろうし。」
「うぅ、でもお尻痛い・・・。」
「です。馬車は楽ですけど・・・」
「お前ら、俺よりケツでかいんだから平気だrおげろぉぉぉぉぉっ!!」
「流石ね、セリア。私の邪魔にならないように当てるなんて。」
「お互い様ですよ。エルだってわざとずらしてたじゃないですか。」
「ふっ、私のソニック・ブラストは、正確さがウリよ。」
「むぅ、やはり新ワザでしたか。しかもカタカナワザ名・・・私もうかうかしてられませんね。」
「貴女が漢字ワザでしょ?だから私はカタカナにするわ。」
「・・・でも、この世界に漢字とかカタカナとかありましたっけ?」
「まだまだねセリア。そこはスルーするのが正しい判断ってものよ。」
「うー、私が正しいハズなのに、激しく負けた気がしますー。」
「そういえば、貴女のワザってなんて言ったっけ?百裂・・・えーと。」
「私も忘れてますから~。」
「えぇっ!?」
「その場の思いつきなんで、また次回のお楽しみですー。」
「そう・・・なんかダメダメね。」
「あうぅ・・・エル酷い。」
「・・・いえ、貴女の事じゃ無くてね。えーと、ほら、アレよアレ。」
「あーアレですか。確かにアレはダメダメですよね。名前とかスグ忘れるし。」
「ホント。メモぐらいしときなさいっての。」
「あははー。でもメモすら失くしちゃうんで、意味無いらしいです。」
「・・・ダメ過ぎね。」
「・・・ダメ過ぎですね。」
地面の上で、仰向けで薄目を開けてる俺。
エルはピンクか、定番だな・・・。前より布地が少なくなってる気もするが。眼福。
エルのぱんつなんて何度も見てるんだが・・・何度見ても良いモノは良いのだ。
げへへ、イイケツしてるじゃねーか、ネェちゃんよぉ。
っ!
黒っ!?
黒かよセリアっ!!
なんという吸引力!目が離せんっ!
ダークサイド、いやブラックホールかっ?!
うぉぉ、イカンっリビドーがぁぁぁっ!
仰向けだから隠しようが無いではないかぁっ!!
ふと、背中に液化窒素の冷たさを感じた刹那。
頭の両側に同時に加えられた衝撃とともに、俺の意識は深淵に飲み込まれた。